事件から2年が過ぎて
30代女性
毎週日曜日、妹を見舞いに行くのが習慣になっている。
往復100Kある道のりの為、休日の半分は病院通いである。
体の麻痺のため未だに食事ができない妹は、私たちが途中で買ってくるアイスクリ−ムやヨ−グルトがお気入りのようだ。
私の子供たちは、自分も食べたいため病院の近くのコンビニを見つけると『おみあげかわないの?』と催促する。
また、通りかかった神社仏閣に手をあわせる義母が、うっかり見すごしていると『おばあちゃん神様、神様。』と教えてくれる。
妹は、私たちが日曜日に来る事を承知しているらしく、午後遅くなると 騒いでいるらしい。妹を車イスにすわらせ 休日のガランとした外来ロビ−で、みんな一緒にアイスをたべる。この時こそ、妹にとってやすらぎの時間なのかもしれない。
この生活もすでに3年目の春を迎える。
子供が、『今日は、OOちゃん家(ち)へ行かないの?』などと言う事がある。
病院は妹の家になってしまったようだ。
1日おきに洗濯物を取りに行く夫は、妹専用のボストンバックを通勤カバンにしている。30分程の面会だが兄の妹に対する愛情があってこそ、ここまで妹を回復させたのだと思う。
義父は、喉頭癌で声を失ったが娘に『がんばれ』の一言をかけたくて最近機械を購入した。義母も、痛い腰に鞭打ちながら妹の車イスを押し、戸外へ散歩にでかける。
私たちの生活の中にすっかり溶け込んでしまっている妹の闘病生活は、さらに続くだろう。義父義母のためにも私たちが支えになってゆこう。
ただ、満足にあそんであげられない子供達がかわいそうでならない。
いつだったか、『また、病院へ行くの』と不満を言ったことがあった。その時『もし自分が病気になって家族が誰も見舞いに来てくれないと悲しいでしょ。』と言い聞かせた事があった。
小さい子にはなかなか理解できないかもしれないが、家族の絆の大切さを語っていきたいと思う。
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