本文へスキップ

研究概要RESERCH OUTLINE

介護職にとって魅力ある職場とは

 介護職にとって魅力的な職場とは、そこで働きたいと希望する人が集まり、
定着する職場でもあります。
 人材確保の基本的な条件は、労働条件の整備ですが、教育方針イメージ介護職の多くは、職業選択の理由として、「働きがい」も上げています。
 「働きがい」のもてる職場環境にしていくためには、専門職としての能力発揮や利用者とよい関係形成ができるような「働きやすい」職場環境を整備していくことが必要です。
 つまり、一定の労働条件が満たされ、次に「働きやすい」職場環境が整うことによって「働きがい」のある魅力的な職場が創られます。


介護職場の労働条件整備

 労働条件の整備は、2つの側面から行うことが必要です。
目標イメージ
 その1つは、労働の負荷を軽減する条件整備です。介護に伴う心身負荷の軽減、休暇の取得、施設の物理的な環境・設備・機器等の整備があります。
 2つめは、労働の負荷に報いるための条件整備です。給与・手当等が生計を立てることが可能となる水準であり、その内訳について、経営者との間に信頼があり、同僚との間で納得ができていることが大切です。





介護職場の働きやすさ

目標イメージ

 職場の「働きやすさ」は、@理念、Aリーダーシップ、Bチームワーク、C権限委譲、D人材育成の5つの条件によって構成されます。
 理念は、組織の社会的存在理由であり、職場の働きやすさを構成する中核的な要素です。ここで重要なのは、理念を日常のケア、サービスにいかに具現化することができるかということです。これにより、介護職は自らのケアサービスの目的を知り、大切にすべき価値を学び、実現すべき目標を見いだし、実践の方法を理解することができます。
 リーダーシップは、施設長個人だけに求められる能力ではなく、集団の機能として位置づけられることが大切です。マネジメントが職務に含まれるすべての職員がリーダーシップを自己の職務と自覚し、各種の会議や委員会が構成されて、意志決定が円滑に進むことが必要です。これにより、理念が組織の基本的な規範として現場に浸透し、経営者との間に信頼が生まれます。
 チームワークは、リーダーシップと協働で働く機能であり、職員が仲間と支え合いの関係(連帯)を形成することです。ここでは、「連帯」と「馴れ合い」を明確に区別し、「連帯」を奨励し、「馴れ合い」を戒めることが重要です。「連帯」と「馴れ合い」の境界線は、その前提として理念が共有されているか否かにかかっています。
 権限委譲は、介護職がその専門的な能力を発揮する上で、はずすことのできない条件です。権限委譲を行うためには、上司が部下を承認し、信頼していることに加え、人材育成の機会が保証されて、目標を達成して責任を全うするための能力の習得が必要となります。
 人材育成も、組織の目的を実現するうえで、不可欠な条件です。管理職、指導的職員、中堅、新任といった階層ごとに研修を行い、個人の自立と組織の成長の両面から体系的・計画的に実施していきます。長期・短期それぞれの時間的展望をもった取り組みが求められます。


介護職の働きがい

「志(こころざし:aspiration)」
 介護職の「働きがい」の中核には「志(こころざし:aspiration)」があり、明確な「志(こころざし:aspiration)」があることが職業選択とその職業を継続していく基盤となります。介護職の場合、職業選択の時点で強い「志(こころざし:aspiration)」を持っている方と介護を継続することで強まっていく方がいるようです。

「職業的自尊心」
 次に「働きがい」を構成する条件として、「職業的自尊心」があります。この「職業的自尊心」は、@職務を遂行するための基礎能力の習得、A習得した能力の発揮、B利用者からの肯定的な応答と職場や社会貢献の手応えによって、その職業を自己の天職として自覚することによって構成されます。

「職業の3要素」
 「働きがい」を構成する3つめの要素は、「職業の3要素」といわれるものです。@専門職としての固有の能力発揮である「個性の発揮」、Aその結果としての「役割の実現」、B「個性の発揮」と「役割の実現」の結果としての「生計の維持」があり、この「職業の3要素」が一定の均衡を保っていることが介護職の職場定着に大きな影響を与えます。

「人間の活動」
 4つめの要素は、「人間の活動」といわれるもので、「労働(labor)」、「仕事(work)」、「活動(action)」で構成されます。介護職の場合は、@「労働(labor)」は食事、排泄等の利用者の生命過程を円環的に支える職務、A「仕事(work)」は、利用者のADLやQOLの向上、職場組織の成長・発展等の建設的な成果としてかたちに残る職務、B「活動(action)」は、利用者の意味ある生(story)の完成や職場組織が地域社会に貢献する歴史(history)への関与、があげられます。日常の介護実践において、この3つの条件が満たされることで、介護職は専門職としての介護に意味を見出すことができるようになります。

 介護職の「働きがい」を構成するこれらの4つの条件は、主に「志(こころざし:aspiration)」が個人のレベル、「職業的自尊心」が利用者との相互関係のレベル、「職業の3要素」が職場との相互関係のレベル、「人間の活動」が社会との相互関係のレベルを構成しており、それぞれのレベルで条件が満たされることによって、「働きがい」が安定し、深まっていくと考えられます。


                                印刷資料はこちら

information

東海大学          健康学部健康マネジメント学科阿部研究室

〒259-1292
神奈川県平塚市北金目
       4−1−1
TEL.0463-58-1211(代表)
     masaaki@is.icc.u-tokai.ac.jp