全60数行程。終わるころには最初の作業を忘れている |
■ばらばらになった本文を、折でまとめて重ね糸のこやのこぎりで穴をあける。針と糸でちくちくかがり、背はノリで固めて金槌で叩いて丸みを出し、プレスに入れてさらに固め、凹凸は厚紙を貼ってはヤスリがけして整形する。
■花ぎれはシルクの糸で細やかに編み、表紙の厚紙(カルトン)は手に自然なまるみを感じさせるようにゆるやかにヤスリをかける。かがりで使ったフィセル(麻糸)は表紙のボール紙に固定して、苦労した背の丸みはここで一応住処を得る。
■あとはさてさて表紙に使う紙を作り、革は革すき包丁や手術用メスで薄くすいたりノリを入れてひものにしたりで下準備をし、そしていよいよ全てを貼り合わせ、ヘラやスパチュラを器用に使いながらひたすら直方体をめざして被服していく。
■次はそれに合わせた箱を作る。これまた厚紙をシザイユで切るところから始って、内側にはネルを貼り、バンドや剪定ハサミなども使って成型し、紙をつくり革をすき、全てを貼ったら乾かして。最後にタイトルを押して完成、ああはや3年。(パッセ・カルトンの手順はこちら) |
本の『世界反転陰謀説』により読めない本を作り続ける |
残念なのは、完成してしまうと開きたくなくなるってこと。みだらに脂ぎった指で触れたくないし、本文を押し広げて読むのもはばかる。そんなのナンセンスと思うでしょう、わたしもそう思う。そんなことになんでテマヒマかけるのか?さぁ...なぜか。
本の『世界反転陰謀説』からすると、それは答える必要のない質問である。「なんでこんなことにこだわるわけ?」と呆れながらも、長い時間をかけて、本の陰謀に見込まれて培われてきた、我らニンゲンの細やかさに感動する体験なのだ。媚びず奢らず本に向き合うために、それは不可欠な時間なのであります。
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