東京神田神保町の、玩具・昭和・東京・風俗・芸能・へんな古本・面白い古本を扱う本や『キントト文庫』にて購入。ガラスケースの中には怪しげなグッズも並ぶ。

本の背はばらばらだが中身は結構しっかりしている。破れた表紙の下からは古紙が覗いていて、それもまたいい。

農学博士・松井佳一(農学博士。大正3年農商務省水産講習所本科養殖科卒業。昭和9年東京帝国大学農学博士、昭和11年メキシコ共和国水産顧問、昭和13年兵庫県立水産試験場長。著書は、科学と趣味から見た金魚の研究 (昭和10年、弘道閣)、実際金魚の愛玩と飼育法(昭和11年、弘道閣)、科学新書・金魚(昭和16年、河出書房)他)著 昭和18年アルス発行 アルス文化叢書37 定価一圓五十銭+特別行為税相当額七銭=一圓五十七銭、B6版104ページ。
「遺伝学の実験に金魚を使用したのが始まりで、研究の必要と懐古趣味からの蒐集に凝って本を著すにいたる。(『まえがき(昭和17年12月8日、欣魚荘文庫にて)』より)」
目次
1.金魚の種類
2.金魚の進化と其の系統
3.金魚飼育の沿革
4.浮世絵に表された金魚
5.金魚の古文献



科学的芸術的興味のもと、写真、写生画、X線写真、標本、そして多くの図版に簡潔な文章で貫かれている。これは編まれた『アルス叢書』のスタイルでもある。

金魚の原産地は中国、1600年前にはいたらしい。飼育するようになったのはその500年後、日本に来たのは1502年(室町末期)、今の大阪堺へ明人によって持ち込まれたらしい。ワキンの大型のものは食用種として飼育され、美味であったとか。江戸時代には贅沢な愛玩物となり、元禄の贅沢禁令には江戸中の金魚を没収したことがあるらしい。その後再び繁殖して庶民に普及。

浮世絵には多く描かれているが、特に春信は多いらしい。

また芳年は『通俗西遊記』(元治元年)で「金魚の怪物が法師を悩ますの図」を描いている。全然怖くないんだけど。

←ランチウ(魚泉庵の名魚山桜)とヂキン(六鱗園の名魚鶴鱗)

↑芳幾 見たて似たか金魚(文久3年)
右下のロールシャッハ的釣り人のモダンさ。
目録一覧
1)錦絵 
イ、人物に金魚鉢又は池を配したもの
ロ、硝子器にある金魚
ハ、衣装の模様に金魚のあるもの
ニ、金魚売
ホ、装身具に金魚のあるもの
ヘ、玩具としての金魚のあるもの
ト、風刺画又は見立絵
チ、金魚を主題とせるもの
2)玩具絵
3)指物
4)絵本
5)埒外本
6)金魚の絵のある草双紙
7)金魚に関する絵のある明治以前の刊行本


古文献目録

1)金魚の本質ならびに来歴を記したもの
2)金魚の飼育及びその風俗を表したもの
3)小説、その他文学的のもので金魚を取り入れたもの
4)川柳、俳句、狂歌
←三代国貞 奥御殿泉水遊覧の図(慶應元年)の部分
金魚には当時の役者を表す家紋が。