ある業界ではとても普通で日常的に使われるものが、往々にしてその他の業界の人からすると奇妙だったりかっこよかったり珍しかったりするものである。おおかたそれは、美しい。
はたしてそれが紙の場合はどうか。ここでは、デザインとしてそれらを採用しているものではなく、それらの紙に「道具美」を見い出し、その敬意が本全体にみなぎっていると思う二冊をbookyします。
同じ意味で美しいと思う、子どもの頃に使ったようなノートやお仕事系罫線シリーズをおまけでbooky。
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レイアウト
上の写真は2001年2月、東京渋谷の古本バー『NON』で購入(1800円)したときのもの。透明な袋に入れてNONオリジナルのシールを貼ってくれるのがうれしい。右の写真に映っている洋書は一緒に買った別の本。
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![]() ![]() これは印刷にかかわる全てのひとにむけてつくられた「レイアウト指導書」である。印刷についての説明は当然だが、課外読本として和紙や装幀、いい印刷とはなにか、またその心構え、といったことまでかかれていてとてもバランスがいいと思った。ちなみに著者は、谷崎潤一郎の本が大好きらしい、装幀造本も含めて。そういうことも自然に書かれているってのがいいでしょ。
上の写真 |
ほかに挿入見本として、「映画世界社」のレイアウト用紙とネーム紙も付いている。別にどってことなくどこの編集部にもあふれてあるものだが、きれいだと思う。本文級数に合わせた文字枠の□が印刷されていないものであった。
下の写真 |
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クララ洋裁研究所
CD 立花英久 |
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小池一子氏の両親が昭和の大戦をはさんで創設移転倒壊再建してきた出版と洋裁の『クララ』。そのモダンで端正な社屋が2000年に解体を余儀無くされ、その前日にプライベートエキシビジョンのなかで立花氏が行ったインスタレーションの記録でもある。 |
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洋裁の過程には線がたくさん出てくる。直線曲線、どれも人の体に寄り添っていてとても美しい。 |
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中国の子供ノウト
これは中国の子供用のノートで、作文用紙と方眼用紙。表紙のずれずれの印刷やぱくぱくパクリな絵柄もいい。 |
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農家の出納簿
大正期、神奈川県農会が農家に配付した現金出納簿記帳。例えば通常家事費なら、勝手道具、青物、乾物、佃煮、郵便、奉公、兵隊...などなど細かく分けて書き込むようになっていて、その分類のしかたがおもしろい。 |
これを買ったのは鎌倉の游古洞。ここは最近めっきり骨董やっぽくなってきたが、店の左奥にずいいと進むと見えてくる平積みされたもののなかにこの手のものがたくさんある。昭和の奥様系のものは特に豊富。 「変わったものをお買いになるのね」と鎌倉マダムな女主人、「ええ、こちらには変わったものがたくさんあるので、つい」と応じる。変人扱いは不愉快だが、こういう場合は共有できるから愉快である。 |