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葉書が残った
仕事してれば嫌な上司っているもんだ。だけどそれが心底憎い!ものではないことは、仕事を離れて会えばわかる。

久しぶりに会ったある上司は、当時会社でも有名なうるさいひとで、わたしはろくに言うことをきかず、辞めるときもまともに御礼もいわずに飛び出てしまったのだった。布絵作家としてますます活躍していたそのひととの再会は一瞬びびったが、とても楽しくて気持悪いくらいだった。
翌日彼女から、作品の葉書セットが届く。その翌日、同じものがまた届く。「きのうも送りましたがきっと切手が足りなかったでしょう、ごめんなさい」とある。こんなに几帳面なひとだったっけ?と驚く。翌年、そのひとは突然逝ってしまった。

オークションで分散するから
「お別れ会」の席で、そのひと、石井菊江が残した短編小説を初めて読む。彼女がわたしたちに強く伝えようとしていたことの理由を知る。わたしはそのことに抵抗して結果的に離れたので、なんだかひとり、気恥ずかしい思いをする。
帰宅して、以前いただいていた葉書を見直しながら、これをまとめて本のかたちにしようと思う。二枚づつ和紙でくっつけた葉書を折って12頁一折にしたものと、お別れ会で読んだ短編をテキストにうちなおしてプリントしたものとを、糸でかがって製本した。
石井さんは絹布で絵を描いていたので、あやかって絹布をパッチワークして和紙で裏打ちし、表紙にする(右一番上の写真)。タイトルは絹糸で刺繍。
葉書になっている石井さんの作品は、遺言により全てオークションによって分散された。ひとつの記念になればと思い、この本をご遺族の方に送る。
カバーに表紙になってもらう
お別れ会で会った当時の同僚にもあげようと思い、もう一冊つくってみる。1mm厚のボール紙を表紙にして、背にはマーブル紙を使った。これに、xixiang 製文庫本カバーをかければ、簡単布装のできあがり。このカバーに、刺繍やアップリケして、表紙替わりにしてもいい。
そんなことを思って、これをxixiangに送る。(2001.8.31記)