優良家庭犬が演出する町のぬくもり

  元郵政大臣
優良家庭犬普及協会会長
佐藤 文生


 たまの休日に散歩をしますと、可愛い犬を連れた人達と行き交うことがあります。特別にあいさつを交わすわけでもありませんが、何ともいえぬ心温まる気持ちになり、その日一日が楽しいものになるのがわかります。

 優良家庭大普及協会の設立趣意書に「人だけが道を歩いていても他人との交流はない…(中略)…動物を配することによって心が和む」とありましたが、まったくその通りだと実感しております。

 欧米ではホテルやレストラン等に愛犬を連れた客が入ってくるのは、ごく日常的に目にすることです。ところが、日本では残念ながらそのような光景にぶっかることはほとんどありません。しかしながら私達日本人も古くから犬とともに人間社会が成り立っていたと考えても過言ではありません。鎌倉時代の絵巻物などに武家屋敷の中、路上の売り子の隣で犬が遊んでいる図があります。

 伝え聞くところによりますと、犬は高度な社会性を持っているとともに、知能も高いそうですね。先日の淡路、阪神大震災の折に救助犬のことが話題になりましたが、もうひとつ関西在住の作家、藤本義一さんがテレビで印象深いことを話しておられました。

「その日の未明、異様なもの見ました。リーダーと見られる大きな犬に引率された犬の一団が、安全な東の方角へ向かっていました。人間どもは、これから大惨事に見舞われる危険な西の方角に歩いていました。」

 ざっ,とこんなことを話されていたのですが、何とも不思議な話です。犬には私達人間が考える以上の素晴らしい能力<超能力>さえあるかもしれません。

 このように考えてきますと、温かい心の行き交う安全な街づくりのためにも、人間のよきパートナーとしての犬の存在は欠かせないものといえましょう。飼い主の愛情に応え、健全な社会生活を分かち合える犬を育てることが、愛犬家だけでなく、今や社会に課せられた使命かもしれません。

この度の優良家庭犬普及協会の設立は、そういった意味で、まことに喜ばしいことです。関係各位の皆様方のご尽力に敬意を表しまして、私の挨拶とさせていただきます。

優良家庭犬普及協会広報誌「OHワンダフル」創刊号(20.March.1995)に掲載


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