ART織田の


週末画廊日記


8月13日

野村佐紀子@貘 何処まで倦怠

空は晴れているのにアンニュイだ。愛車シトロエンAXはエアコンのコンプレッサー修理で長期入院。それに、借り物のBXのハイドロニューマチックの揺れもアンニュイだが、何より親不孝周辺のパーキングからことごとく追放される。エンジンを切ると油圧が下がり、超シャコタンになるため腹を打つのだ。一方通行の多い親不孝を追われ、さまよい、なんとかゲート式のパーキングに寄港する。
考えて見ればシトロエンというメーカー自体がアンニュイだ。車両価格の何倍も金をつぎ込んでも完璧にはならないAX。昆虫の体液循環を思い浮かべるハイドロニューマチック。糖尿病と腎臓病を同時に患ったようと言われるBXやCX。自宅の車庫より工場の入庫が長いDS。悪夢のようなエンジンルームを持つSM。この頃のシトロエンは持つ事自体がアンニュイといえる。
野村さんの写真もこれまたアンニュイだ。「長安有男児」を思い出す。野球漫画の大傑作「アストロ球団」でも引用された季賀の「陳商に贈る」だ。最近GQという雑誌で呉智英がつっこみを入れていた。

陳商に贈る(長いんで好きなところ抜粋)

長安に男児あり
二十にして心すでに朽ちたり
人生窮拙あり
日暮いささか酒を飲む
唯今道既に塞がる
何ぞ必ずしも白首をまたん
黄昏我を訪れ来れば
苦節青陽を皺す
天眼いつか開かん
古剣をもって一吼せん

なんとも疲れた美男たちが、うらぶれたように転がっている。そう、私も(美男ではないが)、二十にして心朽ち今に至っている。倦怠歴19年。優れた才もなく、これといった器もない。シトロエンが心の友だ。だから、こういう写真は好き過ぎて心苦しいところがある。いつも私の影のように潜んでいる倦怠が騒ぎ出すのだ。
しかし、「白髪か、それ以前になくなるぞ」というアンニュイもある私なのだが。


DMより


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