○しげなま論壇
From the view ponit of SHIGENAMA
●「加速器とは?」
2000/09/29 18:11
加速器は何を調べる為にあるのだ。その問いに答えるべく少し勉強してみました。
事務屋の思いこみですが、とりあえずイメージ作りになればと...。
間違っていることは事務屋のにわか勉強と笑って許して頂ければ幸いです。
<本文>
加速器は「宇宙はどうやってできたのか?」を調べる道具です。
(その他の派生的な目的はいろいろありますが、究極の目的はこれです。)
この道具は、宇宙誕生のプロセスを逆に辿るものだと言えます。
つまり、ビッグバン直後、といっても10-44乗〜10-4乗
(0.000...0001秒以下の世界)程度の時間内での反応を調べるものです。
詳細は、技術陣の解説に譲りますが、このビッグバン直後には素粒子は
光の速さで動いており、互いにぶつかっては中間子などが生まれていたと
考えられています。
その状態を地球上に創り出す為の装置が加速器です。
実は、素粒子にはそれと対をなす反粒子があります。これらは相互に出会うと
お互いを打ち消し合って消滅します。
宇宙創生期(といっても上記の0.000...0001秒以下の世界)には
これらが同数生まれて、消滅しあっていたと考えられています。
この状態がずっとつづいていたら1+(−1)=0で現在の世界は生まれていません。
なんらかの理由でこの1>(−1)となり、やがて1だけになり現宇宙ができました。
この粒子と反粒子のバランスが崩れたことを「CP対称性の破れ」と称されます。
CP対称性が崩れたからこそ宇宙は誕生したと言えるでしょう。
現象の確認としては現在稼動中の高エネ研究のBファクトリーで陽子と反陽子を光速に
限りなく近い速度で衝突させた際に生じるB中間子と反B中間子の崩壊確率の差を
調べる手法が使われています。
更に、この非対称性を生み出す元になった未知の場が「ヒッグス場」と呼ばれ、それを形成
している粒子をヒッグス粒子と呼びますが、この探索が最新の研究目標です。
ヒッグス粒子は1000GeVよりも高い領域に存在する可能性が高いので、
次世代加速器LHC(スイス2005完成)やJLCのリニアコライダー計画(日本計画中)
で発見が期待されています。
しかし、今回のハドロン計画では50GeVレベルの加速器なので
どちらかというと上記の究極目標の為とというよりは、中性子科学研究が中心目的
と思われます。つまり、究極の基礎科学研究よりはもう少し実用性のある研究目的の為に
建設が進められていると考えるべきでしょう
では、中性子研究は何に役立つのか?
これは別な機会に譲ります。
お読み頂きありがとうございました。
<事務屋の似非科学エッセイ:お急ぎの方は飛ばして結構です>
「人は何の為に生きるのか?」
これは哲学の命題ですが、
「人はどこからきてどこへ行くのか?」
問いをこう変えると、哲学と物理学という一見相反する学問が
同じ領域で語られ始めます。
昔、量子力学の本を読んでいて「シュレーディンガーの猫」という思考実験を知った時
「物理学も最先端になると哲学の領域になるんだなあ」と感慨を持ったことを思い出します。
そういえば、かのハイデガーの歴史的名著も「存在と時間」でしたね。
物理学と哲学はとても親和性を持っています。
相対性理論と量子力学。昔の若者がマルクスの資本論に熱を上げた様に、ちょっと物理に
興味のある世紀末の少年は皆ハイゼルベルグの不確定性原理に魅了されたものでした。
人はどこからきてどこへ行くのか?
まず、進化論が思い浮かびます。直線的な進化を信奉するネオダーウィズムは
あまり好きではないのですが(先カンブリア紀の種の爆発、バーチェス頁岩の話などが
大好きですがここでは脱線しないようにして...(^^;。)あえて直線的に語ると、
(間違っていたらすいません)
ヒト→類人猿→哺乳類→両生類→魚類→...→微生物→嫌気性細菌→アミノ酸→水素原子→
陽子...→素粒子
||
(物質粒子)6種のクオークと6種のレプトン
(力の場に伴う粒子)グルーオンと光子 =質量が100GeV以下の素粒子
↑
0秒:ビッグバン:宇宙の誕生・・・「真空のゆらぎ」??
↓
10-44秒:「重力」の誕生
10-38秒:「大統一理論」の相転移⇒「強い相互作用」と「電弱相互作用」が分離
10-11秒:「ワインバーグ・サラム理論」〃⇒「電磁相互作用」と「弱い相互作用」が分離
↓
現在知られている「重力」「強い力」「弱い力」「電磁気力」の誕生
(ここ迄の経緯はまだ良く解明されていない。いわゆる「CP対称性の破れ」も
ここで生じたと考えられている=ここを解明することが加速器の目的)
↓
10-04秒:「ゲージ理論」のQCD相転移
⇒クオークとグルーオンからハドロン(パイ中間子、中性子、陽子等)の誕生
+1分:中性子+陽子=重水素の誕生
核融合の進行〜ヘリウム、リチウム、ベリリウムの誕生
↓
↓ (時は流れて)
↓
+数十万年:原子核と陽子が結合してほとんどが中性原子となり、光子は物質と反応しなくなる
(この時代の光子の名残が宇宙背景輻射...だそうです)
↓
やがて鉄も誕生する訳ですね...
宇宙は約100億年前のビッグバンと呼ばれる大爆発から誕生したと言われています。
では、その前には何があったのか?良く自問自答したものです。
一般的な科学者の答えは「時間も空間もビックバンで生まれたからその前という概念そのもの
に意味がない」というものですが、良く分りません...(^^;。
最近では「真空のゆらぎ」という用語が良く言われます。ホーキングの宇宙論で言うと
「ベビーユニバース」は絶えず誕生している、「鼻先でも宇宙は生まれている」といったところで
しょうが、はっきりいってお手上げです...(^^;。
つまり、加速器はこの「人はどこからきてどこへ行くのか?」
=「宇宙はどうやってできたのか?」を調べるための道具です。あえて言い切ってしまいます。
失礼しました。
以上
Created by Asano Enterprises Inc.
asanos@mars.dti.ne.jp