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ディープスペースナイン エピソードガイド
第146話「過信」
Valiant

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・イントロダクション
忙しく働くクワーク。
客が怒っている。「おーい。」 「ねえ、いつまで待たせるつもりなのよー!」 「何やってるんだ。」 「クワーク、これも注文と違うぞ。どうなってんだ。」 「ちょっと、こっちが先でしょ!」
オドーが店に入る。「今日は厄日だな。」
クワーク:「面白いか? えー、フィズ、フロス、フリップ、フィニアル、フォーム、それにフレア。あのテーブルは何騒いでる。」
「なるほど。ドリンク・レプリケーターが故障でもしたようだな。」
「故障だと? まさか。違うね。もし故障なら、朝一で緊急の修理を依頼してるに決まってる。で、もし依頼してりゃあ、チーフ・オブライエンはロムがすぐ直すから心配ないと言ってくれるねえ。するってえとロムは俺に約束する、閉店の時間までにノーグが来て修理するとな。でもって今日もそろそろ閉店だが、ノーグの背中はどこにも見えない。つまりこういうことだな、初めから故障はしてなかった。」
ダックスがやってきた。「レプリケーターが故障ですって?」
クワーク:「今日早いね。」
「修理に来たんだけど、違った?」
「おたくが?」
「ええ、そう。ノーグはフェレンギ星へ行くことになったから、留守の間私が代わりをしてあげることになって。」
「どうして?」
「先週ちょっと手伝ってもらったから、そのお返しに。」 カウンターの中へ入るダックス。
「でも…そんな仕事するのはメカニックだとか、修理係だろう。下っ端のね。」
作業に取りかかるダックス。「チーフ・オブライエンに伝えといてあげる。」
クワーク:「ああ…。スーパーノヴァ※1に、シルヴェン・サプライズ※2だ…。やめさせよう。」
オドー:「なぜいけない。」
「なぜ? こんなの間違ってるからだ。あの人のすることじゃない。」 ダックスはレプリケーターの汚い付着物を取り除いている。「あの手は汚いドリンク・レプリケーターなんかいじくり回すためにあるんじゃないんだよう。もっと清らかなものだ。」
「…お前惚れてんのか?」
「……今年一番の寝ぼけたセリフだな。」
「そうか?」
「そうだ!」
「…ウォーフと結婚した時は辛かったろうなあ?」
「何わけのわかんないこと言ってる。」
笑うオドー。
クワーク:「何か注文するんじゃなきゃ、そこどいてくれないか。仕事の邪魔だよ。」
オドー:「そりゃそうだ。余計だがそれはシルベン・サプライズじゃなくて、シルケン・サンライズ※3だ。」 店を出て行く。
クワークは間違ったアルコールを捨て、作業をしているダックスを見つめた。

宇宙基地のそばにいるランナバウト。
パッドを持ったノーグ※4が、ジェイクのところに戻ってくる。
ジェイク:「それか。」
ノーグ:「そうだよ。」
「…見せてくれ。」
「だめ。」
「……ノーグ!」
「だめだ! 連邦議会がグランド・ネーガスに宛てた正式な外交文書だぞ。ほかの者には見せられない。」
「でも内容を知ってるんだろ?」
「…まあね。」
「同盟の申し出なんだろ? だから連邦はわざわざ艦隊で唯一のフェレンギ人のお前を派遣して、外交文書を届けさせるってわけだ。何か起こってるんだ。」
「お前記者としてついてくるんじゃないと言ったよな?」
「そうだよ。僕はフェレンギ星を見に行くんだ。いろいろ聞いてるから、この目で確かめたくて、雨だとか…泥だとか。」
「よし、俺がグランド・ネーガスに文書を届ける間、ゆっくり観光してくれ。」
通信が入る。『シェナンドー※5、こちら第257宇宙基地※6。防空域を離れる許可を確認しました。境界まで、通常エンジン 2分の1 を維持して下さい。』
ノーグ:「了解した。」 操縦を始めるノーグ。
ジェイク:「僕はネーガスに会えないの?」
「何でグランド・ネーガスに会いたいんだよ。」
「父さんからよろしく言ってくれって頼まれたんだ。だからつまり…その父さんの気持ちを、ネーガスに伝えなきゃならない。」
「それだけなら会う必要はない。」
「それから…出発する前、艦隊ニュースサービスの編集部に、ゼクに独占インタビューすると言った。」
「ジェイク、記者として来るんじゃないって約束したろ?」
「約束したわけじゃない。僕が言ったのは、何て言うかつまり…」
ジェイクを見るノーグ。
ジェイク:「ああ、そう、約束した。でもこれは特ダネになるんだ、ノーグ。みんなには知る権利がある。」
ノーグ:「ふざけるな。グランド・ネーガスには近づかせない。この話はもう終わりだ。」
警告音が鳴った。
ジェイク:「どうした?」
ノーグ:「ああ、よくわからない。長距離スキャナーに何かトラブルが発生した。多分、センサーが妨害されてるんだと思う。」
そして非常警報が鳴り響いた。
ノーグ:「まずい。」
前からジェムハダー船が次々とやってくる。
ノーグ:「捕まれ!」
ジェムハダー船を避けるシェナンドー。
ジェイク:「どっから来た。」
ノーグ:「知らないよ、でも宇宙基地に向かってるみたい。」
「もちろんすぐ逃げんだろ?」
「決まってるだろ、相手はジェムハダーの戦闘機だぞ。」
シェナンドーはワープに入った。

指示するノーグ。「ディープ・スペース・ナインを呼び出してくれ、連絡だ。」
ジェイク:「…おかしいぞ。通信も妨害されてるみたいだ。でもどうしてだ?」
「1機反転してきたぞ。…俺たちを狙ってるからだ。」
顔を見合わせる 2人。


※1: supernova

※2: Silven surprise

※3: Silken sunrise

※4: Nog
(エイロン・アイゼンバーグ Aron Eisenberg) DS9第138話 "One Little Ship" 「ルビコンの奇跡」以来の登場。声:落合弘治

※5: U.S.S.シェナンドー U.S.S. Shenandoah
宇宙艦隊ランナバウト。ダニューブ (ドナウ) 級、NCC-73024。DS9第140話 "Change of Heart" 「至高の絆」より

※6: Starbase 257

・本編
ワープを続けるシェナンドー。
ジェムハダー船が追ってくる。
ジェイク:「僕たちどんどんドミニオンの支配域深く入り込んでるぞ。」
ノーグ:「ほかにどうしようもないだろ、こっちがコースを変える度に差が詰まってくる。」
「どうせ最後は追いつかれる。連邦の支配域に向かった方がいいよ。このまま進んだらカーデシア・プライムに突っ込む。そうなったらおしまいだ。」
コンピューター:『警告。敵の射程圏内に入りました。』
揺れるランナバウト。
皮肉を言うジェイク。「警告ありがとう。」
ノーグ:「よし、通常飛行に移る前に、シールドを張って補助パワーをフェイザーに回そう。」
「待てよ、ワープをやめる気か?」
「戦わなきゃならないなら通常飛行だ。少なくとも機動力がずっと良くなる。」
「お前フェレンギだろ? そんなのより取引か何かしろよ!」
また攻撃を受ける。
ノーグ:「…敵は聞く耳なんてもたないって感じだね。それじゃいくぞ。」
シェナンドーはワープを終え、反転した。
ノーグ:「よーし、来たぞう。」
更に攻撃を受ける。
反撃するシェナンドー。応戦が続く。
ジェイク:「シールド、30%だ。」
ノーグ:「わかってる。」
「メインパワーがダウンする。」
「武器を生かして、ほかのものはみんな切るんだ。生存維持装置もだ。」
「別の船がやってくるぞ。方位 1-7-0、マーク 2-1-5。」
「ジェムハダー? カーデシア?」
「これは…ディファイアントだよ!」
「何?」
ジェムハダー船を攻撃する連邦艦。
ノーグ:「違う、ディファイアントじゃない。船の番号が NCC-74210。U.S.S.ヴァリアント※7だ。」
ジェイクは窓からヴァリアントを見る。「ヴァリアント? いい名だ、ジェムハダーの船なんか吹き飛ばして木っ端微塵に…」
爆発で吹き飛ばされるジェイク。
近づくノーグ。「ジェイク! ジェイク…」
2人は転送された。

ヴァリアントの転送室に実体化する 2人。
「大丈夫ですか?」 女性の候補生が声をかける。
ジェイク:「ああ…ああ。あー、平気。別に大したことない。候補生? ああ…チーフ?」
その候補生は階級章とは別の記章も首元につけていた。「臨時代理チーフ、ドリアン・コリンズ※8です。艦長がブリッジにお連れするようにと。よろしいですか?」

戦闘が続くブリッジ。
女性の候補生が報告する。「メインパワー維持、補助パワー復活。シールド 84%。」
艦長席に座っているのも候補生だ。「操舵手コースセット、方位 2-1-5、マーク 3-1-0。」
もちろん、操舵のシェパード※9も。「2-1-5、マーク 3-1-0、了解。」
艦長:「量子魚雷用意、出力最大※10、フルスプレッド。」
コリンズたちがブリッジへ入る。※11
女性:「核出力最大、フルスプレッド了解。」
艦長:「操舵手、攻撃パターン・シエラ※12 4。」
シェパード:「シエラ 4、了解。」
女性:「現在シールド 78%。」
艦長:「補助パワーをシールドに回せ…」
ノーグはジェイクに言った。「これレッド・スクワッド※13だ。」
ジェイク:「レッド・スクワッド?」
「アカデミー候補生のエリートクラスだ。彼らは最高の連中だ。レッド・スクワッドは訓練も特別、部屋も特別、何もかもが違う。」
「船までもってるのか。」
「ランナバウトとかシャトルなら、指揮を執るって聞いたけど、まさか宇宙艦なんて。」
女性:「…9.5、1.0。」
ジェムハダー船を追う。
艦長:「撃て。」
攻撃を受け、敵船は爆発した。
歓声が起こる。「やったー!」 「よし!」
艦長:「元に戻れ。」 通信を行う。「こちら艦長だ、レッド・アラート※14解除。各部署は被害と負傷者の状況を、副長に報告せよ。」 席を立ち、ノーグたちに近づく。「君たちが無事でよかった。僕が指揮官のティム・ワターズ※15だ。この船にようこそ。」
握手するノーグ。「ありがとう。艦長?」
ワターズ:「その通りだよ、少尉。戦場での指揮とこの船を、亡くなったラミレス艦長※16から任された。その権限で、レッド・スクワッドのメンバーを昇進させ、必要な配置に就かせた。」
「…なるほど。えーと、僕はノーグ少尉、彼はジェイク・シスコ。ディープ・スペース・ナインから来た。」
「シスコ? ベンジャミン・シスコの息子か!」
ジェイク:「そうだよ。」
「ああ…お父さんの噂は聞いてる。同じ道を歩まなかったようだねえ。」
「そう、僕は記者だ。」
「手当てをしなきゃな。チーフ。」
コリンズ:「はい。」
「シスコ君を医療室へ案内しろ。」
「はい、艦長。こちらです。」 出て行く 2人。
女性:「被害の続報が入りました、艦長。」 パッドを渡す。
ワターズ:「ああ…どうもありがとう。ああ、ノーグ少尉だ。カレン・ファリス※17中佐、この船の副長だ。」
ノーグ:「よろしく。」
素っ気ないファリス。「ええ、少尉。…艦長、デューテリアムインジェクターの始動時に、相変わらずパワーの急変動が見られると、機関室から報告です。」
ワターズ:「解決したんじゃなかったのか。」
「そう思ってましたが…」
ノーグ:「側面インパルスコントロールシステムの再設定は?」
「…いいえ? …インジェクターと何の関係があるの?」
「ええ、インジェクターの始動時には、インパルスシステムが同じパワーリレーを共用してるんです。」
ワターズ:「…やってみよう。」 不服そうなファリス。「ノーグ君、待機室※18で待っててくれ。」
ノーグ:「はい、艦長。」

ジェイクを治療するコリンズ。「訓練航海は 3ヶ月の予定で、7人の士官と 35人の候補生が乗り組んだ。候補生に操縦させ、士官が観察して評価する予定で。」
ジェイク:「それじゃあ、この船は訓練艦だったの? ほら、ほかにもあるだろ。そう…リパブリック※19みたいな。」
「いいえ。そうじゃない。リパブリックは古い船で、もう 50年もテラ系を離れてない。…ヴァリアントは最新型の戦艦よ? 私たちの任務は、連邦の全域を回って帰還すること。」
笑うジェイク。「連邦の全域だって? だって候補生が動かす船でしょ?」
コリンズ:「ただの候補生じゃない、シスコさん。レッド・スクワッドの候補生よ。」

壁にレッド・スクワッドのエンブレムが貼られている。
ワターズ:「ケプラ星域※20を通過してた時、戦争が起こった。知ってると思うけど、ドミニオン軍は初日にその星域を制圧した。」
ノーグ:「前線の向こうに取り残されたんですね。」
「その通り。僕たちは連邦の支配域に戻ろうとしたが、その時カーデシアの巡洋艦に遭遇した。アル・ガターク※21近くだ。それが初めての戦闘だった。戦いが始まって 15分で 4人の士官が戦死…ラミレス艦長含む残りの 3人も重傷を負った。」
「それであなたが艦の指揮を?」
「違う。ブリッジに行くと、艦長はひどい怪我だったけど、意識ははっきりしてて、医療室には行かないと言った。この船はメインパワーを失い、漂流していたんだが…カーデシアの巡洋艦も似たような状況だった。だからそれは時との戦いだった。先にメインパワーを回復した方が…決定的優位に立てるわけだ。……ラミレス艦長は、気丈な方だった。肺が破裂したボロボロの体で、最期まで緊急対応の指揮を執り続けたんだ。偉大な人だったよ。」
「競争に勝ったんですね。」
「僕たちは武器と通常エンジンを、たった 3時間で復旧させた。そしてカーデシアの船を破壊した。翌日艦長が亡くなる直前に…僕にヴァリアントの指揮を執るよう命じた。」
笑うノーグ。「すごいな、信じられない。もう 8ヶ月も前線の敵側にいるなんて。」
ワターズ:「僕の手柄じゃない。クルー全員の力だ。17歳の候補生たちが、倍の年の士官たちの仕事を立派にこなしてる。しかも極端に少ない人数で。士官を増やすのもいいかなあ。」
立ち上がるノーグ。「できることは何でも手伝います、艦長。」
ワターズ:「君はクラス7※22 のワープドライブに詳しいようだなあ。」
「よく知ってます、艦長。ディファイアントと同じエンジンです。」
「それはいい。今から君を機関長に命じる。おめでとう。」 握手するワターズ。
「…機関長ですって?」
「階級は少佐に昇進だ。まずは、なぜこの船がワープ3.2 を超えられないか調べてくれ。パートン※23君の話じゃ…」
「あ、あのすみませんが艦長、そ、そんな大役を受ける準備はまだできて…」
「僕たちに、誰一人準備ができてた者なんかいないよ、少佐。各自が臨機応変に対処してるんだ。するべきことをしてる。準備がどうであれ、君は機関長だ。」 レッド・スクワッドの記章を見せるワターズ。「きっと君ならできる、自分を信じるんだ。そして仲間を信じる。全てうまくいく。」
記章を見つめ、受け取るノーグ。「はい、艦長。拝命します。」
ワターズ:「頼むぞ、よく言ってくれた。それじゃあ、ワープドライブの問題が片づき次第、任務を続けよう。」
「…任務を続ける? どういうことですか。」
「この星域で活動してる、ドミニオンの新型戦艦※24のデータ収集が我々の任務だ。彼らの通信を傍受し、この区域にいるのはわかってる。でも、ワープ3.2 を超えられないからセンサーレンジに近づくことができない。」
「あなたがヴァリアントを指揮してることを、宇宙艦隊は?」
首を振るワターズ。「知らない。戦争が始まって以来、ずっと無線を停止して、交信を絶ってる。それはラミレス艦長の任務だったが、艦長が亡くなって…僕が引き継いだ。ミスは許されない。任務は必ず遂行する。どんなことをしても。」
ノーグは記章を見つめた。
ワターズ:「以上だ。」
うなずき、作戦室を出て行くノーグ。


※7: U.S.S. Valiant
NCC-74210、ディファイアント級。ヴァリアントという名前は当初ディファイアントのものとして考えられていたもので、またディファイアントのクラス名とされていた時期もあります。結局ディファイアント級ということになりましたが、ディファイアントの初期の製作イラストでは「ヴァリアント級」という表記が残っているものもあります。

※8: Dorian Collins
(Ashley Brianne McDonogh) アポロ11号の宇宙飛行士、マイケル・コリンズにちなんで。声:湯屋敦子

※9: ライリー・オルドリン・シェパード Riley Aldrin Shepard
(David Drew Gallagher) 宇宙艦隊候補生。DS9第84話 "Paradise Lost" 「地球戒厳令(後編)」以来の登場。声:浜田賢二

※10: 「光子魚雷」と誤訳。「出力最大」とも

※11: この付近に記念銘版があり、書かれているのはジョン・F・ケネディの次の言葉です。"We set sail on this new sea because there is new knowledge to be gained and new rights to be won."

※12: 「CR」と訳されているような…?

※13: Red Squad
宇宙艦隊アカデミー候補生のエリート集団。DS9 "Paradise Lost" より

※14: 吹き替えのまま。言うまでもなく「非常警報」の意味です

※15: Tim Watters
(ポール・ポポウィッチ Paul Popowich) 声:成田剣

※16: Captain Ramirez

※17: Karen Farris
(Courtney Peldon) 声:落合るみ

※18: これも吹き替えのまま。普通は「作戦室」と訳される、艦長がいる部屋のことです

※19: U.S.S.リパブリック U.S.S. Republic
連邦宇宙艦。カークが候補生の頃に乗っていた船 (NCC-1371、コンスティテューション級、TOS第15話 "Court Martial" 「宇宙軍法会議」) と同一かは不明ですが、このエピソードの脚本ロナルド・D・ムーアによれば恐らくそうであるということです

※20: Kepla Sector

※21: El Gatark

※22: 「Mクラス」と誤訳。一体どこから?

※23: Parton

※24: ドミニオン戦艦 Dominion battleship

ワープ中のヴァリアント。
候補生ばかりの食堂に、コリンズとジェイクが入る。
コリンズ:「コーヒーは?」
ジェイク:「ああ、ラクタジーノ。」
席につくジェイクに注目する、レッド・スクワッドのメンバーたち。
コリンズ:「どうぞ。」
ジェイク:「ありがとう。……出身はどこ?」
「…私? ティコ・シティ※25。」
笑うジェイク。「ルナ※26自動車※27か。」
コリンズ:「そんな言葉、久しぶり。」
「ああ、僕もおじいちゃんから聞いた。おじいちゃんは今でもルナを『月』って呼んでる。あれは月なんだって。」
「そうね。月の住人だって誰もルナなんて呼ばない。地球でそう呼ばれてるだけ。」
「月ってどんなとこ?」
「地球の出身でしょ? 月には来たことないの?」
「たまたまチャンスがなくてね。教えてよ。」
「そうね…。人は…不毛で厳しい土地だって言うけど、それは違ってて…綺麗なとこ。ティコ・シティは普通の街だけど、外に出ると重力は弱くて、空気もなく…一月に一度しか太陽は昇ってこない。…月の朝はいつも父と二人で宇宙服を着て、雲の海※28をハイキングしたわ。西の端にある岩が堆積したところで立ち止まって、じっと日の出を待った。…月の夜明けはとっても…劇的に訪れる。直前まで真っ暗な闇の中にいるのに、次の瞬間太陽が昇るとパッと明るく…神々しいほどの純粋な光で…辺り一面が輝き出す。…神様に会ってるみたいだった。」
涙をこらえるコリンズ。「任務があるから、失礼。」 食堂を後にする。

機関室で尋ねるワターズ。「どうやって解決する。」
ノーグ:「プラズマインタークラーと磁束調整機と、圧力制御計の安全装置を外せば、それで解決します。」
ファリス:「そんなことしたら 50項目もの安全規定に違反よ、わかってる?」
「はい、わかってます。でもチーフ・オブライエンがディファイアントに同じことをしましたが、問題は起こってません。」
「どうでしょう、艦長。私には危険に思えます。」
ワターズ:「パートン※29君は?」
2階に立っている候補生。「もう 7ヶ月もワープ3.2 でモタモタしてきたんですから、何でもやってみたいと思います。」
連絡するワターズ。「ワターズよりブリッジへ。ワープに備えろ。」
シェパード:『了解。』
「それじゃノーグ君、ワープ4 を見せてもらおうか。」
うなずくノーグ。
ヴァリアントはワープに入った。

パッドを読みながら、コリンズは独り悲しんでいた。
医療室にワターズが入る。
顔を見せないようにするコリンズ。
ワターズは奥のコンテナに近づく。
コリンズ:「何でしょうか?」
ワターズ:「いいんだ、ここにあった。」
涙を拭くコリンズ。
ワターズ:「シスコの傷はひどいのか。」
コリンズ:「大丈夫です。」
コンテナから取り出した薬を飲むワターズ。「…ならどうかしたのか。」
コリンズ:「いえ、別に。」
コリンズに近づくワターズ。「……泣いてたのか。」
コリンズ:「…少し。」
「どうしてだ。」
「…ただ、ちょっと…家のことを考えてました。」
「ふーん…。」

作戦室。
ワターズとファリス、コリンズがいる。
ワターズ:「入れ。」
連れてこられたのはジェイクだ。
ワターズ:「君はもう下がっていい。」
コリンズ:「わかりました。」
ジェイクを見るコリンズ。入れ違いに部屋に入るジェイク。
ファリス:「さてシスコさん。今日の午後チーフとちょっと会話を楽しんだそうね? 家や、家族や、美しい月の夜明けについてとか。それで全部だったかしら?」
ジェイク:「ああ、そう。そんな話だ。どうかしたの?」
「どうかしたですって? シスコさん、気づいてないようだから言うけど、私たちは今戦争の真っ最中よ? 任務で集中しなきゃならない時、若い候補生をホームシックにかからせてる余裕はないの。」
「僕はうちのことを聞いただけだ。」
「あなたのせいでクルーの一人が心を乱されて、混乱してるのよ?」
ワターズ:「ジェイク。…そう呼んでいいかな。君は記者だ。仕事は出来事を観察することで、参加することじゃない。だから今は一歩引いて、自分の立場と周りを見ててくれないか。君は今大スクープのど真ん中にいる。このドミニオン戦争でも最上級かもしれない。……この船は特別だよ、ジェイク。クルーも特別だ。何がこの宇宙を導いていようと、我々はこの戦争で、何かの使命を果たすため選ばれた。君がこの船に乗ることになったのだって、単なる偶然じゃない。ストーリーを書くためなんだ。ヴァリアントの話を伝えるためだ。そのストーリーを台無しにするな。巻き込まれちゃだめだ。ただ成り行きを見守るんだ。観察して、聞いて、書き留めるんだ。コリンズには近づかないと約束してくれるか?」
ジェイク:「……わかった。」
「ありがとう、ジェイク。もう下がっていい。」
部屋を出て行くジェイク。
ファリス:「彼は信用できません。」
ワターズ:「目を離すんじゃない。」
「ノーグさんはどうします?」
「ノーグ君は軍人だ、任務は果たす。この件は以上だ、中佐。次は 18時に報告だ。」
「はい、艦長。」 部屋を出る前に、尋ねるファリス。「艦長、大丈夫ですか?」
「ああ、なぜだ。」
「夕べもまたブリッジにいらしたと聞いたものですから。最近艦長はあまり寝ていません。」
「みんなも同じだ、中佐。」
「確かに、そうですね。」
「……気遣ってくれてありがとう。でも平気だ、カレン。本当だ。」
「はい、艦長。余計なことを申しました。」
「別にいいんだ。」
出て行くファリス。
すぐにワターズは目を押さえ、ため息をついた。取り出した錠剤を口にする。


※25: Tycho City
月の居住地。映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」より

※26: Luna

※27: Lunar Schooner

※28: Sea of Clouds
月に実在する地名

※29: Parton
(Scott Hamm)

廊下。
ノーグはジェイクに出会った。
ジェイク:「どこにいた。」
ノーグ:「機関室。ワープの問題を解決した。」
「それ何だ?」
「レッド・スクワッドの記章だよ。そうだ、念のため言うと、階級章※30も変わってるぞ。今はノーグ少佐、機関長だ。いい響きだと思わないか?」 笑うノーグ。
「クルーになったのか。」
「それが悪いか?」
「ちょっと早すぎるだろ。まだ来たばかりだ、機関室を任されるなんて。」
「ワターズ艦長は何事も決断が早いんだ。僕がふさわしいと認めたから昇進させたんだよ。」
ファリスの声が響いた。『レッド・アラート。総員、戦闘配置につけ。繰り返す、総員、戦闘配置につけ。』
走っていく候補生たち。

ブリッジ。
シェパード:「距離、1.32光年。速度、ワープ4.7。」
ジェイクと共に入るノーグ。「どうしたんです。」
ファリス:「敵の戦艦を発見。」
対応に追われるクルー。
「方位 1-7-0、マーク 1-6-5。速度、ワープ 3.97。」 「ブリッジよりフェイザー・コントロールへ。サブシステムの値が 5.3 よ。気をつけてね。センサーの感度を調整して、ワープドライブのモニターを強化して。」 「迂回させ補助パワーインターフェイス、OK。コースを変更した!」
ワターズ:「感知された痕跡は?」
ファリス:「ありません。まだセンサーの範囲外と思われます。」
「コースと速度を合わせて、距離を維持しろ。」
シェパード:「了解。」
「クラス3 センサープローブ※31、発射用意。」
ファリス:「了解。」
ジェイクはノーグに尋ねた。「これからどうなる。」
ノーグ:「…センサープローブを発射して敵艦をスキャンする。それならヴァリアントが敵にスキャンされずに済む。」
「プローブは見つからないの?」
「クラス3 プローブは見つからないよう設計されてる。感知される可能性はほとんどない。」
「ほとんどって?」
ファリス:「誰もあなたをブリッジに招待してないと思うけど?」
離れるジェイク。

『艦長日誌、宇宙暦 51825.5。ドミニオンの戦艦を追跡して、3時間になる。これまでにプローブが収集したデータは興味深く、連邦に貢献する絶好の機会であることを示していた。』
食堂。
集まって話しているクルー。
シェパードが叫んだ。「全員、気をつけ!」
ワターズとファリスが入る。
ワターズ:「休んでよろしい。」
休めの姿勢を取る候補生。
ワターズ:「この 8ヶ月間に必死に働き、多くの犠牲が出たが、ついに任務を達成した。」 ジェイクとノーグも聞いている。「戦艦を発見し、感知されず、相手を完全にスキャンできた。ようやく帰れるぞ。」 喜ぶ候補生たち。
ワターズ:「だがその戦艦は、50光年以内にある、連邦の全ての前哨基地やコロニーにとって、大きな脅威となるものだ。その戦艦を、破壊しなければならない。」 動揺が走る。「そして破壊することができる。中佐。」
ファリス:「スキャンでわかったけど、敵の反物質保存システムには弱点がある。メインの構造体がヴァイテリウム※32で作られてるの。」
「その材質は強く、弾力性に富む合金だが、デルタ放射線※33にさらされると極端に不安定になるという性質をもつ。」
「だから魚雷一発でも、放射性弾頭を組み込めば、構造体を茹でたパスタみたいにグニャグニャにできる。」
「その結果、反物質保存システム全体がバラバラに崩壊する。」
騒ぐクルー。
ワターズ:「ノーグ少佐。疑問があるようだな。」
ノーグ:「…はい、艦長。デルタ放射線を放出する弾頭を、魚雷に組み込むためには、ほとんどの誘導システムを外さなきゃなりません。手動で狙うことになります。」
ファリス:「その場合の訓練も受けてる。問題にはならない。」
「しかも至近距離まで近づかなきゃならない。」
ワターズ:「どれぐらいだ。」
「…300メートル以内です。」
驚く候補生たち。「…近すぎる。」
ワターズ:「それが危険なのは議論の余地もない。ここで引き返して帰還しても、誰からも責められないだろう。だがその場合、代わりにほかの船が…ほかのクルーを乗せて、我々が始めた仕事を片づけることになる。我々はできるはずだ。…我々がやるべきだ。」
クルーは納得する。「ああ、やろう…」
ジェイク:「あ…発言していいかな?」
ファリス:「あなたはこの船のクルーじゃない。」
ワターズ:「話を聞こう。」
ジェイク:「…きっとみんな、僕の父を知ってるよね? ベンジャミン・シスコだ。だから大げさな話じゃなく、父が艦隊でも指折りの指揮官だってことはわかってもらえると思う。で、今君たちに言いたいのは、たとえディファイアントのクルー全員が一緒でも…あ…もし父なら、こんな作戦絶対にしないってこと。あ…父にできなければ、それはできないんだ。」
ワターズは大きな声で言った。「レッド・スクワッドに、不可能の文字はない!」
声を合わせる候補生。「イヤー! レッド・スクワッド! レッド・スクワッド! レッド・スクワッド!…」 唱え続ける。
あきれるジェイク。ノーグも言い始めた。満足な様子のワターズ。


※30: 喜ぶノーグですが、階級章はどう見ても中尉のものです (黒が一つ増えただけ)

※31: クラス3 プローブ class-3 probe
ここでは「センサー」という単語は原語にはありません

※32: viterium

※33: delta radiation
エネルギー形態。TOS第16話 "The Menagerie" 「タロス星の幻怪人」など

機関室で話すジェイク。「これは自殺行為だ。」
ノーグ:「うーん…そうじゃない。」 魚雷の準備をしている。
「ノーグ、よく聞くんだ。完全にこっちの能力を超えてる。聞いた話じゃ、相手の戦艦の大きさはギャラクシー級の船の 2倍で、戦闘力は 3倍だぞ?」
「その通りだ。」
「そんな船と張り合えると、本気で思ってるのか?」
「大丈夫だ、ワターズ艦長はちゃんとわかってる。」

その 2人の様子がモニターに映されている。
ジェイク:『…ふーん、そうかな。それじゃこの 2月、ワターズがずっとコーダフィン※34刺激剤を飲んでるのを知ってるか?』
それを観ているのはワターズだ。
ノーグ:『…どこで聞いたんだ。』
ジェイク:『ドリアンから聞いた。』
『彼女に近づくなって言われたろ? 命令されたことに従わないのか。』
ワターズ:「ワターズよりシェパード。すぐ待機室まで来てくれ、大尉。」
ジェイク:『…ちょっと待てよ。宇宙艦隊はそんなところじゃないぞ。』
画面を消すワターズ。

話し続けるジェイク。「…ワターズが言うことは何でも鵜呑みにするわけだな。」
ノーグ:「艦長はいい加減なことを言ってるんじゃない。使命を思い出させてくれた。」
「まるで壁を相手に話をしてるみたいな気分だよ!
「どうせお前には理解できない。この制服を着たことがないんだからな。何もわかっちゃいないね! 犠牲も、名誉も、任務も。士官の暮らしがどんなものか知らないんだ。俺は自分より大きなものの一員だ。お前は自分のことだけだ。」
「そうとも! 殉職したがってる狂信者の集団の巻き添えで、自分も死ぬかもしれないってことだ!」
「出て行け。」
「…お前って奴がもうわからないよ。」
「僕は宇宙艦ヴァリアントの…機関長だ。」
「お前の墓石にそう刻むよ。」
出て行くジェイク。作業を続けるノーグ。

機関室を出たジェイク。
背後から声をかけるシェパード。「シスコさん。」 他の保安部員と共に、フェイザーを突きつける。
シェパード:「せっかくですが、戦闘は見られません。任務が終わるまで拘留室で過ごすんです。」

ブリッジ。
作業を続けるクルー。
転送室ではフェイザーライフルを配る。
艦長席に座っているワターズ。
フェイザーを持って廊下を歩く候補生。
確認作業を続ける。機関室、食堂でも同様だ。
廊下を走るクルー。

ノーグがブリッジの席についた。
ファリス:「全員配置につきました、艦長。」
ワターズ:「こちら艦長だ。……これより戦闘を開始する。これまでの 8ヶ月、一つのことに集中しろと言ってきた。任務だ。だが今、その任務から一歩下がって、見回して欲しい。」
全艦のクルーが聞いている。『…壁を見ろと言ってるんじゃない。人生のこの瞬間を見つめて、感じるんだ。』
拘留室にはジェイクがいる。『…今この船で、この仲間たちと…一つの歴史を分かち合ってることを。』 首を振るジェイク。
「…だが何よりもこれだけはよく理解してもらいたい。」
『…この瞬間はもう二度とやってこない。しっかりと、思いっ切り噛みしめるんだ。宇宙艦隊の、レッド・スクワッドは、最高だ。』 転送室で聞き入るコリンズ。
「…では、敵の戦艦を倒しうちに帰ろう。以上だ。」
お互いに声をかける候補生。「がんばりましょうね。」 「ええ。」 「幸運を。」
ワターズは命じた。「ワープ6 だ、ノーグ君。」
ノーグ:「ワープ6、了解。」
加速するディファイアント。


※34: cordafin

ブリッジ。
ファリス:「感知されました。…敵はワープを抜けます。」
ワターズ:「通常飛行に戻れ。」
シェパード:「了解。」
ファリス:「敵の映像を捉えました。」
ワターズ:「スクリーンへ。」
巨大なドミニオンの戦艦※35が映し出される。
席を立ち、見つめるワターズ。
戦艦はこちらへ向かってくる。
ブリッジのクルー全員、息をのんで見つめる。
ワターズ:「…上部構造に沿って、攻撃コースに入るすれすれを飛べ。そうすれば敵はロックオンできない。船体のペイントを引っかいてやるんだ、大尉。」
シェパード:「了解!」
「シールド起動、フェイザー装填。狙えるターゲットは片っ端から撃て。」
ファリス:「了解。」
「魚雷の用意は!」
ノーグ:「はい、魚雷用意よし。」
ファリス:「防御システムよし。」
シェパード:「操舵よし。」
ワターズ:「…よろしい、シェパード君。突っ込むんだ。」
戦艦へ向かうヴァリアント。
敵船は攻撃を始めた。いくつかが命中する。
ファリス:「シールド維持。」
シェパード:「コース安定。」
ワターズ:「攻撃開始!」
戦艦の上部を攻撃しながら、飛び続けるヴァリアント。
コンソールが吹き飛んでクルーが飛ばされ、梁が落ちる。
ワターズ:「操舵手、急旋回! 戦術士、構造体のターゲットにロックオンしろ!」
ヴァリアントは反転する。
救出チームがブリッジに駆けつける。
ワターズ:「通常エンジン、最大出力。」
ファリス:「センサーを妨害しようとしています。」
コリンズがブリッジに入る。
ワターズ:「ノーグ君、対抗システム作動。」
ノーグ:「わかりました。」
ファリス:「ターゲット、捕捉しました。」 画面に反物質保存システムの位置が表示される。「魚雷セット、ロック。」
ワターズ:「前面のシールドを最大にしろ。操舵手、脱出コースを Z軸に設定。」
シェパード:「セット。」
「攻撃開始!」
再び下側からドミニオン戦艦に向かうヴァリアント。
シェパード:「敵、左に旋回。」
ワターズ:「ついていくんだ。離されるんじゃない!」
「了解。」
コリンズ:「第2デッキ、船体破損。緊急フォースフィールド起動。」
モニター上の表示が揺らいでいる。
ファリス:「コースを安定させて。ターゲットのロックが維持できない。」

ジェイクがいる拘留室にも攻撃の影響が及ぶ。

スクリーンに映る戦艦は攻撃を続ける。
またクルーが倒れた。戦術コンソールの者だ。
ワターズ:「…カレン、君に任せる。いつでも撃て!」
ファリス:「…わかりました。もう少し近づいて。」
シェパード:「左舷のシールド、消滅。」
「そのまままっすぐ進んで。」 モニターを見続けるファリス。
さらに戦艦に近づくヴァリアント。
ファリス:「魚雷、発射しました。」
2発の魚雷は戦艦に命中する。連鎖爆発が起こっていく。炎から逃げるように飛び続けるヴァリアント。
ワターズ:「後方スクリーンへ!」
戦艦は大きな炎を上げていた。
シェパード:「やったー!」
他のクルー同様、喜ぶファリス。
だが戦艦は向きを変え、こちらを正面に見据えた。
ワターズ:「目標を外したのか?」
ファリス:「…違います。命中しました。ただ…効かなかったんです。」
無言になるワターズ。
シェパード:「艦長、命令を。」
ワターズ:「新しいコースをセット! 方位 1-2-7…」
爆発で吹き飛ばされるワターズたち。ワターズは血を流し、動かなくなった。
その死体を見るファリス。
ブリッジではあちこちに炎が上がる。
間髪入れずドミニオンの攻撃が続く。
炎を上げるヴァリアント。
倒れたコリンズは起きあがった。頭からは血。「船体破損、第2デッキ、第3デッキ、第4デッキ。」
ファリス:「回避行動をとって。コース変更、方位 1-2-7、マーク 3-2-0。」
シェパード:「もう舵が利きません。」
ノーグ:「メインパワー、オフライン。迂回させて…」
次の攻撃で、ファリスも、シェパードも倒れた。
死んだクルーを見るノーグ。
戦艦の攻撃で次々に爆発を起こすヴァリアント。
コリンズが操舵席につく。「補助パワーもオフラインです。…まだフェイザーは使えます。反撃しますか?」
映し出されているドミニオン戦艦は、なおも攻撃を緩めない。
もう一度死体を見るノーグ。
スクリーン一杯に映った戦艦も見る。
コリンズ:「少佐!」
ノーグ:「いや、もう終わりだ。」
「でも艦長は私たちに…」
「艦長は死んだんだ、チーフ。全員死んだよ。」 コンピューターを操作するノーグ。「この船は終わりだ、僕たちまで死ぬ必要はない。」
警報が鳴らされる。ブリッジを出て行く 2人。
コンピューター:『総員待避、総員待避。訓練ではない。総員速やかに脱出用ポッドに乗り込め。』

ジェイクは拘留室で、独房のフォースフィールドに阻まれたままだった。「おい、誰かこっから出してくれ! 助けて!」
ノーグたちがやってくる。「ジェイク! ジェイク!」
フォースフィールドを何とか解除するノーグ。
ジェイクは外に出た。「どうした?」
ノーグ:「やられたんだ。」
拘留室を出る。

崩壊していくヴァリアントの船体から、脱出用ポッドが発射される。
しかしドミニオンの攻撃は、そのポッドにも注がれる。もろくも破壊されていくポッド。
船体の爆発に巻き込まれるポッドもある。
最後のポッドが発射された後、ヴァリアント全体が大きく爆発した。
そのポッドは星雲へ向かっていく。

ディファイアント。
キラは報告した。「艦長、艦隊の救難信号を受信しました。方位…3-1-8、マーク 0-0-5。距離 10光年です。」
ウォーフ:「その位置ならドミニオンの支配域ですね。」
シスコ:「信号を発信している船を特定できるか。」
画面を見るキラ。「発信元は脱出ポッドのようです…搭載してたのは、ヴァリアント。」
ウォーフ:「…ヴァリアントは 8ヶ月前から行方不明のはずです。我々を誘い込むドミニオンの罠かもしれません。」
シスコ:「だが本物かもしれん。確かめる必要がある。遮蔽を起動し、コースを取れ。」
キラ:「了解。」

航行するディファイアント。
シスコは廊下に出た。「周辺をスキャンして脱出用ポッドを探したが、ほかに助かった者はいないようだ。」
ジェイク:「…いちかばちかで、もうだめかもしれないと。」

医療室で寝ているコリンズ。
別のバイオベッドにノーグが座っている。
ジェイクと共に入るシスコ。「彼女の容態は。」
ベシア:「頭蓋骨の骨折はありましたが、しばらく休めば大丈夫でしょう。」
「で、ノーグは。」
「ああ、打撲だけですよ。すぐ治ります。」
ジェイク:「話してもいい?」
「好きにどうぞ。」
ノーグの隣に座るジェイク。「……大丈夫?」
ノーグ:「ああ。……この話、記事にする気か?」
うなずくジェイク。「多分ね。」
ノーグ:「何て書くつもりだ。」
「…どう書くべきかな。」
「とてもいい船だった。クルーも優秀だった。でもミスを犯した。その…盲目的にワターズ艦長に従って、全員崖から落ちた。」
目を開けるコリンズ。「それは違う。…ワターズ艦長は、立派な人だった。」
ジェイク:「…ドリアン。彼のせいでみんな死んだ。」
「私たちが期待に添えなかったからよ。」
ノーグ:「それも記事に書くんだ。記事を読んでもらって、判断はみんなに任せよう。」
ノーグはバイオベッドを降り、コリンズに近づいた。
レッド・スクワッドの記章をコリンズに握らせる。「彼は英雄だったかもしれない。そして立派な…人だったかもね。でも艦長としては失格だった。」
目をそらすコリンズ。ノーグは出て行く。
コリンズは記章を見つめた。
帰途につくディファイアント。


※35: 初登場

・感想
あのレッド・スクワッドが再登場し、エリートならではの振る舞いを見せます。「頭でっかちの青二才」というのがよく描けていますね。艦名でもあり「勇敢な」という意味をもつ原題、全シリーズ含めて歴代最短記録に並ぶ簡潔な邦題も含め、良かったです。ノーグが自分の任務もほっぽり出して部下になるのが不思議な気もしますが、以前彼らにあこがれていたことを考えると当然なんでしょう。
スタートレックお得意の、セットを流用したヴァリアントの設定もよくできています。遮蔽装置はさすがにないようですが、あのディファイアント級を完全に破壊してしまう新型のドミニオン戦艦も迫力満点です (DS9 奪還以来の派手な戦闘が観られましたね)。もちろん船の強さはクルーの能力によるわけですが。
戦闘前の準備シーンなど、あんなにかっこよく描いておきながら、3人以外を全員戦死させてしまうのが何とも…。最後に、最近の DS9 にしては珍しく、誤訳や普段と言い回しの違う訳し方が多かったことを付け加えておきます。


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