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ヴォイジャー エピソードガイド
第78話「心の罪を裁く星」
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・イントロダクション
惑星軌道上のヴォイジャー。「艦長日誌、宇宙暦 51367.2。この 3日間、惑星マリ※1の首都に滞在している。新たな友を得るのは久しぶりのため、クルーはこの滞在を思う存分楽しんでいるようだ。」
転送台からパリスが降りて来た。梱包された箱を抱えている。 「ニーリックス。」 「よー、トム。何買ってきたんだよ。」 「ベラナへのプレゼント。」 「中身は?」 「そりゃ…ノーコメント。」 「野暮だな。失礼。実は俺もこれから、ちょっとしたナニに行くんだよ。」 ニーリックスの匂いに気づくパリス。「ニーリックス、コロン付けてんの。」 「そう。テルチャック※2ムスクだ。誘惑の香りってやつ。どう思う?」 「そうだなぁ、まあ確かに、いいかも。」 「俺、またタリ※3と会うんだ。」 「上出来じゃないか。どこ行くんだ。」 「それが、まだそこまではいってないんだ。彼女の店に行って、料理の材料なんか買う振りなんかしちゃうわけさ。それから、自然にデートの話にもっていって誘うわけよ。ディナーとダンスに。」 笑うパリス。「うまい戦略じゃないか。」 「ねえねえ、ほんとにそう思う? つまり、あんた前は女にもてたから。」 「前は?」 「そう。あんたもう売れちゃってるんだから、手を出すわけにはいかんでしょうが、美しく、社交的なマリの女性たちには。」 「お前、俺に恨みでもあるのか?」 「違うよ。俺、ケス以来女っ気なかったからすごく緊張してるんだ。何かアドバイスしてくんない?」 「一番大切なのは、自分を飾らないことだ。」 「わかった。肝に命じとく。」 転送台に乗ろうとするニーリックスに言うパリス。「ちょっと待った。もっと大切なことを忘れてたよ。」 「何なんだい。」 「コロンはほどほどにするように。」 ニーリックスはうなずき、自分の匂いをかいだ。
マリの首都。市場に大勢の人が集まっている。ジェインウェイとトレスが店にいる。「ミスター・グイル※4、これ以上は出せないわ」と話すジェインウェイ。 「ご冗談を。300レン※5までなら出す用意のあることは、お見通しです。トレス中尉は、この共鳴コイルを通信システムに使いたがってる。」 「テレパシー?」というトレス。 「ちょっと待って。250レンなら、売っていいと思ってない?」というジェインウェイに、「あなたもテレパシーを?」と笑うグイル。その時突然、トレスにマリ人の男※6がぶつかった。「あー! ちょっと!」 「済まない」と謝る男性。歩いて行った。グイルはトレスに近づき、「怪我は?」と尋ねる。「ないわ。大丈夫。歩く時は前を向けってのよ。」 「ビジネスができて良かった。」 ジェインウェイはトレスにいう。「すぐ終わるから、ニーリックス呼んで来て。えーっと…」 金を数えながら渡す。
ニーリックスはタリ※7と話している。「こんな美味そうな果物、俺初めて見たよ。」 「でも今年のウォータープラム※8は不作だったのよ。あんまり甘くないと思うわ。」 もらったウォータープラムをかじるニーリックス。「うーん、うー、この酸っぱさ最高。パインにはもってこいだ。」 「ニーリックス?」 「ん?」 「どうしてひげを引っ張って欲しいの?」 「な、何だって?」 「今そう思ってなかった? 私にひげを引っ張って欲しいって。」 「あ、ああ…そう無邪気に聞かれちゃうと。」 「いいわよ。お店を閉めるまで待てる?」 「喜んでスケジュールを調整するよ。」
「あなたからみたら、時代遅れでしょうね。」 マリ人女性※9が、トゥヴォックに話している。「その根拠は。」 「この星には、もはや犯罪は存在しないの。何年もかかったけど、でもやっと成し遂げたわ。どこを見ても、暴力など存在しない。」 「素晴らしい。」 「私は最後の、マリ警察※10関係者ってとこかしら。」 「そして、最高の。あなたの犯罪防止法について、もっと聞かせて欲しい。」 「条件があるわ。あなたの防止法も、聞かせてくれない?」 「ちょうど、日課の巡回に行くところだ。来たまえ。いろいろと参考になるだろう。」 「ありがとう。」 「では、転送サイトへ。」 女性はテレパシーで話しかけてきた。 『どうしてわざわざ声を出して話すの?』 『ヴォイジャーに移って、慣らされたのだ。テレパシー能力のある者は少ないんでね。』 「大変だこと。」
トレスがやって来た。「ニーリックス! 戻るわよ。」 「あー、いや、先行ってて。俺、まだ食材の調査が終わってないから。」 ふいに大きな物音がした。「誰か、誰か、助けてくれ! 頼む。」 いまだに続く音の方へ集まる群衆。「助けて! やめろ、やめてくれ!」 マリ人の男が棒を持って、並んだ商品を叩き壊していた。「歩く時は前を向けって言ってるんだ。馬鹿野郎! 馬鹿野郎!」 店主にも殴り掛かるその男は、さっきトレスにぶつかったマリ人だ。ジェインウェイとニーリックスは男を抑えた。「誰かドクターを呼んで!」というトレス。ジェインウェイは尋ねる。「なぜ! なぜこの人を殴ったの。」 急に静かになった男は言った。「わからない。」
※1: Mari

※2: タルチョック talchok
タラクシアの動物。VOY第15話 "Jetrel" 「殺人兵器メトリオン」でも言及

※3: Talli

※4: Guill
(Wayne Pere) 声:中田和宏

※5: renn

※6: (Bobby Burns) 声:北川勝博

※7: (Rebecca McFarland) 声:山川亜弥

※8: waterplum

※9: (グウィニス・ウォルシュ Gwynyth Walsh デュラス姉妹の妹、ベトール (B'Etor) 役。TNG第100・101話 "Redemption, Part I and II" 「クリンゴン帝国の危機(前)(後)」、DS9第3話 "Past Prologue" 「スペース・テロリスト ターナ・ロス」、TNG第173話 "Firstborn" 「クリンゴン戦士への道」、映画 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」に登場) 声:高橋ひろ子

※10: マリ警官隊 Mari Constabulary

・本編
ターボリフトから降りるマリ人女性とトゥヴォック。
"Your brig... it's a puzzling concept -- shutting someone away as punishment. Do you find that it rehabilitates the prisoner?"

「拘束室って、本当に必要なのかしら。刑罰として人を、閉じ込める。それで犯罪者は、更正するの?」
「拘束室は主に、他者の安全を確保するためのものだ。」 「その根拠は?」 「例えば、敵対する異星人が出現した場合、適切な処置が決まるまで拘束しておく必要がある。」 「そうね。」 「また特殊なケースとして、クルーが重要な違反を犯した場合も、拘束の必要があるだろう。」 「驚きだわ。あなたたちの中に拘束されるほど重大な過ちを犯す者がいるなんて。」 「非常に稀だ。実際、使用期間は我々の旅の 1%にも満たない。」 「気を悪くしないでね。何だか、野蛮だわ。」 「全種族が我々のように高度なら、拘束など必要ないのだが。」 笑う女性。キムから通信が入る。『ブリッジからトゥヴォック少佐。』 「続けたまえ。」 『ニミラ※11主任調査官※12に、戻って欲しいそうです。市場で何らかの傷害事件が起きた模様。』 すぐに通路を戻る、トゥヴォックとニミラ。
ニーリックスのそばで、タリがうろたえている。「あんなたくさんの血、見たことない。」 「落ち着いて。」 「一度誰かが殴られる音を、聞いた時があって、何週間も夢に見たわ。」 「タリ、もう大丈夫だから。大丈夫、もう終わったよ。」 タリを抱き寄せるニーリックス。
ニミラに話すジェインウェイ。「混乱してたわ。自分が何をしたかわかってなかったみたい。」 「どうして誰も止めようとしないの」というトレスに、ニミラは「動けなかったのよ。暴力なんて存在しなかったから。でも起きてしまったからには、徹底的に調べなくちゃ。」「できることは?」と尋ねるジェインウェイ。「あるわ。あなたとミスター・ニーリックスとトレス中尉に、質問に答えて欲しいの。」 「できる限り協力しましょう。」 トゥヴォックは聞く。「主任調査官、我がクルーに何か疑いをおもちで?」 「いいえ違うわ。事件当時の状況を聞きたいだけよ。どうぞ、こちらへ。」 ニミラについていくトレスたち。
首都内の建物。ニミラに部屋に通されるジェインウェイ。「どうぞ、かけて。」 中央に大きな椅子が置いてある。「質問の間中、あなたの頭の中をモニターさせてもらいます。この装置であなたの精神活動を記録し、後で証言と照らし合わせるの」と説明するニミラ。 「つまり、こう? 私の質問するだけじゃ足りず、頭の中でも記録すると?」 「そうよ。」 ジェインウェイは椅子に座った。「隠し事をするのは至難の技のようね。」 スイッチが入れられ、ライトが頭に照らされる。ニミラは向かいのテーブルにつき、質問を始めた。「事件が起きた時、市場に滞在していた時間は?」 「1時間。もうちょっといたかも。」 「あなたの正確な位置は。」 ニーリックス:「現場の反対側だよ。」 「あなたの位置から、襲いかかった場面は見えた?」 「いやあ、最初は見てない。叫び声で事件に気づいて、それからそばに行ったんだ。」 「そもそもあなたは、なぜ市場に行ったの?」 トレス:「艦長と私で、ミスター・グイルと会う約束をしてたの。」 「目的は。」 「その前の日、彼から、予備の共鳴コイルを売ってもいいって言われて。」 「なるほど。事件に関わった 2人の男性の、どちらかに見覚えは。」 ジェインウェイ:「被害者は知らないけど、加害者の方は、ベラナにぶつかってきた男だと思うわ。」 「トレス中尉に? 確かなの。」 「わざとじゃないとは思うけど…。」 「それが起きた正確な時間は。」 トレス:「値段の交渉をしている時。」 ジェインウェイ:「急いでるようだった。」 ニミラ:「その時何を思ったか、覚えてる?」 トレス:「何を思ったか? どうして?」 「お願い、思い出してちょうだい。大切なことなの。」 ジェインウェイ:「別に何も。怪我をしたわけじゃないし、コインを数えるのに忙しかったから。お金には慣れてないの。」 ジェインウェイはグイルの前で、コインを数えている。 ニーリックス:「何考えたかって? そりゃ、その、ウォータープラムを、どうやって美味いパインに仕上げようかってこと。」 ウォータープラムの匂いをかぐ、タリ。 ニミラ:「本当にそれだけかしら、ニーリックス。」 「うーん? もちろんさ。ほかに何考えるっつーんだよ。」 タリがニーリックスのひげを引っ張っている。恍惚の表情を浮かべるニーリックス。 トレス:「ちょっとだけ、いらついたかも。」 マリ人男性が、トレスにぶつかった。 ニミラ:「もっと詳しく話せる?」 「いいわ。まず頭に浮かんだのは、足が痛い。あの馬鹿に踏まれたから。」 「彼に馬鹿と言った?」 「そんなまさか。」 「でも思った。」 「ええ、そう。」 「仕返ししてやりたいとは?」 「わざとじゃないのよ。」 「でも痛かったんでしょ。同じ思いをさせたくない?」 「そんなことしないわ。」 「でもしたいとは思ったんじゃないの?」 「覚えてるわけないでしょ。」 「どうなの中尉。彼に仕返ししたいと思った? 中尉! どうなの。」 「ほんの一瞬だけ思ったかもしれない。」 「ちょっと!」 逆上したトレスは、男を殴り倒した。 「よそ見してんのが悪いんだもの。でもわざとじゃないってことは、すぐにわかった。だから私、思い直したの。何。どう思おうが私の勝手でしょ。」 ニミラは立ち上がった。「ベラナ・トレス中尉。あなたを逮捕します。」 「何の罪でよ。」 「過剰思考暴行罪。あなたの思考が暴力を招いた。」

※11: Nimira

※12: chief examiner

「暴力行為を思い描いただけで、罪になると?」 ニミラに尋ねるジェインウェイ。「そうよ。」 トレス:「馬鹿げてるわ。」 「これは非常に妥当な考え方よ。私たちの社会は、暴力に悩まされていたの。でも暴力を考えることを禁じた途端に、犯罪は減り始めた。3世代を経た今じゃ、完全に消えたわ。」 「あなた、本気で人の思考まで束縛する権利があると思ってるわけ?」 「暴力的な考えが人を暴力行為に導くということに関しては、誰も反論できないはずよ。」 ジェインウェイ:「ベラナが暴力を想像したとしても、実際に暴力を振るったのはフレイン※13よ。」 「それは、彼がベラナからその凶暴な想像を受け取ったからにほかならないわ。彼の心はそのイメージに満たされ、結果としてコントロールを失った。彼は確かに加害者だけど、あなたに扇動されたの。」 トレス:「私の星じゃ、自分の行動に責任もてって習った。」 「この星では、自分の考えることに責任をもてと教えてるわ。テレパシー能力をもつ種族にとっては、何より大切なことよ。」 ジェインウェイ:「わかるわ。」 トレス:「艦長!」 「マリの人たちは、確かに他人の考えに影響を受けやすい人種よ。でもあの広場にはたくさんの人がいたわ。なぜベラナのせいだと断定できるの?」 ニミラ:「マリの人間が、暴力を想像すると思うの? 彼らにこの件の責任があるとは思えない。それに何より、ベラナには確固たる証拠があるわ。フレインに憎しみをもったのは事実よ。」 「よければその証拠を調べさせてもらえない?」 「どうぞ。失望するだけだと思うけど。」 「ベラナはどうなるの。」 「この星には高度な刑罰システムがあるの。罰するために人間を拘束するような真似はしないわ。帰してあげる。記憶の浄化※14手術が済んだらね。」 トレス:「何それ。」 「あなたの頭の中の凶暴な考えを探知して、それを消すための医療処置よ。」 「艦長!」 「もしその記憶が発見されれば、フレインの記憶も、同じように消去することになるわ。」 ジェインウェイ:「記憶を消去する? そんなの危険過ぎるわ。」 「確かに神経学上は問題があるけど、フレインを治療するためには、どうしても必要なの。」 テーブルのスイッチを押すニミラ。「だったらせめて遅らせてもらえない? この証拠を検証する間だけでも。お願い。」 警備員が入って来た。 「装置の調整に、丸一日かかると思うわ。待てるのは、その間だけよ。」 「それで十分よ。」 警備員と共に、トレスは部屋を出て行った。
転送室。待ちきれない様子のパリスがいる。合図の音が鳴り、ジェインウェイが転送されて来た。「艦長、ベラナを助け出しましょう。」
"You know the rules, Tom. We can't pick and choose which laws we'll respect and which we won't...."

「規則を知ってるでしょ、トム。星の法律は尊重しなければならない。」
「頭の中までコントロールされちゃ、たまりませんよ。」 「マリの人に言って。」 「ベラナの手術を黙って見てるんですか。」 「やれることは全てやるつもりよ。ニーリックスには正式な抗議書を出させ、トゥヴォックと私は供述書を見直す。ニミラを論破するきっかけがつかめるかもしれない。」 「無理なら。」 「ドクターがトレスの記憶を復活させられるよう、祈るだけだわ。」
チャコティに報告するキム。「船外の全クルーに、速やかに戻るように通達を出しました。」 「十分休んだろう。」 パリスがブリッジへ入る。「チャコティ。話がある。」 「座れ。」 艦長席を指差すパリス。「ここに?」 「艦長もだめだとは言わんさ。どうした。」 座ったパリスは言う。「トゥヴォックと艦長が証拠調べをしてる間、頭を開かれるのをじっと待ってるベラナの身にもなってくれ。とてもいたたまれない。」 「どうしたいんだ。」 「助け出す。」 「マリと全面対決をするつもりか。」 「奴らは平和主義者だ。大したことはない。」 「かもしれん。だがそう極端な手段に出る前に、合法的な解決策を見つけるべきじゃないのか。」 「見つかった時には、手遅れかもしれない。」 「こうしよう。救出プランを立ててくれ。被害を最小限に留められるようにだ。それを見て考える。」 「俺の口をふさぐ方法か。」 「そうだと言ったら?」 「俺は真剣なんだ、チャコティ。」 「私もだ。そのプランが的確で、艦長に進展がないなら、私はお前を支持する。」 「わかった。すぐにかかる。」 「トム。お前を艦長の椅子に座らせたが、ボスは彼女だ。」 パリスは微笑んだ。
「主任調査官の決断は、受け入れられないと?」 作戦室でジェインウェイと向き合い、証拠の調査をしているトゥヴォック。「そうじゃないわ。ただ鵜呑みにするわけにはいかないって言ってるの。」 「この数日間、ニミラと多くの時間を過ごしました。彼女は非常に優秀な調査官です。」 「わかってる。」 「また、トレス中尉の気性の荒さが問題になったのは、初めてではありません。」 「それも異論なし。ただ、ほんの一瞬怒りを抱いたために、暴力行為の責任を負わせるのは、納得がいかないの。」 「ここでの犯罪は、全て暴力的な考えをもった結果なのです。感情をコントロールするすべを学ぶ以前のヴァルカンと同じだ。私はむしろ、マリの人々を称賛すべきかと。」 「もちろん彼らの努力は素晴らしいと思う。でも黙ってベラナの頭をいじらせるわけにはいかないでしょ。」 「でしたらベラナの無実を証明するしか、彼らを止める方法はありません。」 「そうね。でもまだ、わからない。これを見て。」 パッドを渡すジェインウェイ。「あなたの友人である、ニミラの優秀性を否定するつもりはないわ。でもそれを見たら、興味くらい湧かない?」 トゥヴォックはジェインウェイを見た。
「新たな証拠?」とトゥヴォックに尋ねるニミラ。「加害者フレインに、関するものだ。彼は過去 4回に渡り、暴力的な考えを抱いたとして、逮捕されている。君は彼を良からぬ想像を抱く常習者と分類しているようだが。」 「そうよ。でも逮捕の度に記憶を浄化してるわ。何年もかけて精神の改造※15も行った。既に完治したと、書いてない?」 「しかし、フレインが再発した可能性はある。となれば、暴力行為は彼の責任だ。」 「その可能性は、ごくわずかだわ。記憶スキャンにはっきりと表れてたもの。トレス中尉が抱いた怒りが、事件を起こしてる最中の彼に影響を与えたって。」 「周囲の人間は、怒りを抱いてなかったと?」 「何だかこっちが尋問を受けてるみたいだわ。」 「単に可能性を追及しているだけだ。法に携わる者同士、理解してくれないか。」 「わかったわ。調査結果も、喜んで提供させてもらう。でも彼女の無実を証明しようとしているのなら、もう手遅れよ。この件は既に終了したの。……こんなこと平気で言えると思う? 私だってベラナを傷つけたくはない。でも仕方がないの。敵意を取り除かねば。暴力へと発展していき、全世界を混乱させかねない。あなたの種族は何世紀もかけて、暴力的な衝動を抑制するすべを学んだといってた。私たちはまだ、そのレベルに達していない。でも努力してる。わかってくれるでしょ。」 「君らを否定するつもりはない。むしろ称賛している。君と話すのは実に楽しかった。だがベラナへの責任を放棄するわけにはいかない。今後も調査は続けさせてもらう。」 「止めはしないわ。でも記憶の浄化は、予定通りするつもりよ。」
「テレパシーねぇ。俺にはなくて良かったよ。交渉には邪魔なだけだ。友達も減っちまう。ベラナもとんだとばっちりだ。」 マリの市場で作業をしながら、セブンに話すニーリックス。「自業自得だ。」 「何言ってるんだよ。」 「思考の制御を怠り、暴力を招いた。」 「ベラナはテレパシーには慣れてないんだ。責められやしないさ。」 「では罪は無知にある。お前たち共通の悩みだな。」 「ちょっとそれどういうことよ。」
"You make contact with alien species without sufficient understanding of their nature. As a result, Voyager's directive to 'seek out new civilizations' often ends in conflict."

「お前たちは異星人の性質を十分に理解せず、接触を試みる。結果、ヴォイジャーの使命である、『新たなる文明の探求』は常に争いに終わるのだ。」

"What you call ignorance... we call exploration. And sometimes it means taking a few risks....

「その無知を知ってるから、俺たちは探査をする。確かに危険を伴うこともあるけどさ。
あんたたちみたいに何でもかんでも同化しちまうよりはいいんじゃない。」 「知識の共有が目的なら、同化はそれを達成する完璧な手段だ。」 「完璧ねぇ。」
タリの店に、年取った女性がやって来た。「おはよう、ミス・テンビット※16。いつものでいい?」 「ええ、お願い。」 「はい。」 タリは誤って、果物を取り落としてしまった。「いやだ。ごめんなさいね。」 果物を拾うタリ。トレスにフレインがぶつかる。「あー! ちょっと!」 テンビットは叫んだ。「馬鹿野郎! 何てことしやがる!」 トレスはフレインを殴る。 近くにあったナイフを手に取るテンビット。 倒れるフレイン。
絶叫。振り向くニーリックスとセブン。
テンビットは血のついたナイフを持ち、茫然と立っている。人込みをかきわけ、急いで近づくニーリックス。そこには真っ赤な血を流したタリが倒れていた。セブンも来る。ニーリックスは「死んでる」とつぶやいた。

※13: Frane

※14: エングラム浄化 engramatic purge

※15: 神経性編成 neurogenic restructuring

※16: Tembit
(Jeanette Miller) 声:定岡小百合

ヴォイジャーの通路でトゥヴォックに話すニーリックス。「タリが、死んじまったぁ…。」 「さぞ辛いだろうな、ニーリックス。だができるだけ詳しく、話して欲しい。」 「セブンと一緒に荷造りをしていたら、悲鳴がして、走ってくと倒れたタリのそばに女が立ってたんス。手に血だらけのナイフを握って。タリにさよならも言ってないのに。」 「女性は何か言ってたかね。」 「別に何も。周りの人間同様、茫然としてました。フレインの件と、何か関係があるんスか。」 「確証はない。だが同じような事件が、二度続けて起きたとなると、ただの偶然とは思えんのだ。しかも、犯罪が根絶されたといわれている街で。」 通信が入る。『ブリッジからトゥヴォック少佐。』 「トゥヴォックだ。」 『ニミラ主任調査官がお会いしたいと。こちらへの転送許可を求めています。』 「いいだろう。会議室へ案内したまえ。以上だ。続きは後で。」 「少佐。タリは素晴らしい女性だった。彼女を殺した責任が、誰にあろうが、それ相応の裁きを。」 「最善を尽くすよ、ニーリックス。」
会議室。待っているトゥヴォックのところへ、保安部員に案内されたニミラがやってくる。「どうもありがとう。」 「事件のことは聞いた。今回の件について、何か心当たりは?」 「加害者の女性に事情を聞いたわ。」 「それで?」 「前回の事件同様、暴力的な考えに支配されて、被害者を襲ってしまったそうよ。」 「ベラナのか。」 「ええ。」 「彼女もフレインも、拘束されている。どうやってその考えをほかの人間に。」 「わからない。だからここへ来たの。力を貸して。」 「断る理由はない。」 「ありがとう。なぜまだ人々に怒りが伝染してるのかわからないけど、とにかく止めなくちゃ。殺人事件は扱ったことがないの。でもあなたは捜査した経験があるでしょう?」 「ああ、ある。」 「まず手始めに、今回の加害者の足取りを追って、どこでベラナに遭遇したか調べてみようと思うの。」 「懸命だ。私はより詳しく、ベラナに事情を聞くとしよう。聞く者が変われば、新たに気づくことがあるかもしれん。」 「すぐに手配するわ。」 部屋を出る 2人。
「記憶の浄化もやだけど、精神融合の方がましだとも思えないわ。」 トレスの前にトゥヴォックが座っている。「一部を融合させるだけだ。今回の事件が起きた時の記憶に限定して、融合を試みる。危険はない。いいかね?」 うなずくトレス。トゥヴォックは両手をトレスの顔に置いた。「心を一つにし、思いを伝えたまえ。フレインと会った時のことを思い出すんだ。彼にぶつかられ、君はどうした。」 トレスにぶつかるフレイン。「ちょっと!」 「彼を思いっきり殴ってやりたいと思ったわ。」 「その後。」 トレスにグイルが近づく。 「グイルがそばへ来て、怪我はないかって。」 「その時君は何を思った。」 「どうして。」 「グイルに対する、君の強い思いを感じる。思い出してくれ。重要なことかもしれん。」 「彼は私の両肩をつかんで揺すったわ。」 グイルはトレスの肩をつかみ、見つめている。「値段の交渉をしている時に、心を読まれたと言ったな。その時はどうだった。」 「わからない。」 「だが彼に嫌悪感を抱いている。」 「すごくむかついたわ。」 「その根拠は。」 「彼、何かを求めてたの。恐ろしい何かを。」 グイルはトレスを見つめ続ける。 トレスはトゥヴォックの手を払いのけた。「これ何よ! 何で今まで忘れてたの。」 「恐らく、潜在意識で感じたことなんだろう。もしくは本能だ。グイルに事情を聞く必要がある。」
夜のマリの街で、グイルが歩いている。トゥヴォックが近づく。「ミスター・グイル。私はトゥヴォック。ヴォイジャーの保安部長だ。」 「帰らないと子供が心配する。もしビジネスの話だったら、明日伺いましょう。」 「事件について聞きたい。」 「私に?」 「トレス中尉が容疑者として拘留されている。彼女は知っているな。」 「トレス中尉、ええ。彼女がなぜ。」 「彼女の暴力的な考えが、事件の引き金になったと。」 「愛すべき女性に思えましたが。」 一緒に歩き出す 2人。 「君とビジネスをしている最中、転びそうになったらしいが、覚えてるかね。」 「ええ、男が急にぶつかって来たんです。あなたはほかのクルーたちと違う。テレパシーを?」 「その通りだ。」 「なぜこの件に興味が?」 「今回の事件の捜査を指揮している。」 「なるほど。てっきり別の理由があるのかと思った。君も、激しい怒りと闘っているなぁ。恐ろしい想像を心の奥に隠している。」 「私は怒りをコントロールできる。ヴァルカン人は感情を抑制するすべを知っている。だが、君を不快にさせたのなら、より深い意識下へ沈めよう。」 「やめてくれ。そんな必要はない。はっきり感じたわけじゃないんだ。」 「君は、私の無意識の想念に魅せられている。もっと見たいと思っているのでは?」 「いや、ただ君の、力になれるかも。」 「力に。」 「扱い方を知ってるんだ。邪悪な妄想の…」 「遠慮しよう。コントロールするすべなら知っている。」 「そうだったな。」 トゥヴォックを見つめるグイル。ふと我に返ったように尋ねる。「ほかに質問は?」 「ない。」 「ではこれで失礼します。夕食に遅れるといけないので。」 グイルは歩いて行った。トゥヴォックは後を追う。
グイルは辺りをうかがい、暗い一画に入った。別のマリ人男性が現れる。「金は?」と尋ねるグイル。「3,000レンだ。」 箱を受け取り、中身を確認するグイル。「今夜はいいものが手に入った。」 歩いて行く 2人。隠れて様子を見ていたトゥヴォックも、後をつける。
だが前から 2人が出て来た。「なぜ後をつける」と聞くグイル。 「君の言ったことを考えた。私の無意識に興味があるのなら、互いに手を貸し合おう。」 「どういうことだ。」 「テレパシーで互いの怒りを、交換するのだ。君も望んでるんだろう。私の意識下を見ることを。」 「誰なんだ」という仲間の男に、「黙ってろ」と命じるグイル。 「信用できるのか。」 「私たちは、似た者同士じゃないか。…だが誤解だったらしい。」 歩いていこうとするトゥヴォック。「待て。確かに嬉しい申し出だが、これを外すのが条件だ。」 コミュニケーターを指差すグイル。トゥヴォックはそれを外し、床へ投げ捨てた。「行っててくれ、マロン※17。後でお前が想像もできないような激しい怒りを売ってやる。」 グイルについて歩いて行くトゥヴォック。

※17: Malin
(Ted Barba) 声:長克己

夜のマリ。手に持たれたナイフ。腕をかむ化け物。プラズマで焼かれる人間。吠えるイヌ。苦痛にゆがむ顔。撃たれる銃。爆発。 目をつぶったトゥヴォックの額に、グイルの手が当てられている。手を離すグイル。2人とも息遣いが荒い。「どうだ」というグイル。「素晴らしい。」 「よし。お前の番だ。」 「少しだけ、休ませてくれ。」 「随分疲れやすいんだな。テレパシー能力は高いのに。」 「最近は、滅多に使わないからな。」 「毎日クルーの怒りを盗んでるんだろう? 奴らの知らないところで。誰も、テレパシーから自分の心を守ることはできないんだ。」 「そうやって商品を仕入れているのか?」 「買うこともあるし、あんたのように自分から差し出そうという奇特な奴がいる時には、喜んで好きなだけ頂かせてもらう。」 「トレス中尉からは盗んだのか。」 「盗んだのはフレインだ。俺じゃない。」 「フレインを知ってるのか。」 「よくは知らん。」 「ビジネス相手か何かか。」 「なぜだ。」 「私もベラナの怒りに興味がある。あの気性の荒さは魅力的だ。だが心に入れた試しがない。金で買えるなら売って欲しい。」 「それは無理だ。もう浄化されたよ。」 「妙だな。君ももっているのでは?」 「俺が?」 「君もベラナの怒りを盗んだはずだ。フレインとぶつかった後にな。」 「何?」 「事件当時のベラナの記憶を見直してみた。君に心を探られたことを覚えてる。」 「何か誤解してるんだろう。」 「かもしれん。だが君が彼女の怒りを盗み、現在も売りさばいている可能性もある。今朝の殺人事件がいい例だ。」 「やめろ! 今度はお前が約束を果たす番だ。」 「君が記憶を分け合う相手は、主任調査官だ。」 グイルの腕をつかみ、連れて行くトゥヴォック。前からマロンたちがやってくる。「どこへ行く気だ。」 「下がりたまえ。」 「トゥヴォックは俺を拘束する気らしい」というグイル。「やめろー!」 トゥヴォックに殴りかかるマロン。トゥヴォックは 2人を倒すが、グイルに突進され、倒れてしまう。マロンが取り押さえる。トゥヴォックを殴り続けるグイル。
ブリッジ。「応答ありません」とジェインウェイに報告するチャコティ。「マルチ位相バイオスキャン。」 キム:「連絡が入りました。ニミラです。」 「スクリーン、オン。主任調査官、トゥヴォックの行方はわかりました?」 ニミラ:『残念ながら。』 「捜索隊を送りたいんですが。」 『許可できないわ。』 「なぜ。」 『また法律を侵す者が出たら、どうするの。』 あきれるパリス。「馬鹿げてます。」 ジェインウェイ:「トム。あなたたちの脅威になるような真似はしないわ。」 ニミラ:『これ以上話すことはないわ。トレス中尉は浄化し次第、すぐにお返しします。』 パリス:「艦長、早く止めて下さい。」 『もう決定は下されたの。残念だけど。』 通信を終えるニミラ。
警備員に連れられてきた、手錠をはめられたトレス。抵抗する。「ちょっと放して!」 ニミラが言う。「ベラナ、お願い。落ち着いてちょうだい。」 「冗談じゃないわ。」 「鎮静剤。」 「いや、やめて…」 薬が打たれ、トレスは静かになった。専用の台の上で固定される。頭に向けられた機械。「開始」と命じるニミラ。


「自分の罪は必ず償わされる」というトゥヴォックに、「黙れ」というグイル。誰もいないかを確認している。「お前は人を殺したんだ。」 「俺は関係ない。あの婆さんにイメージを売っただけだ。ここへ。」 座らされるトゥヴォック。「お前は殺人犯だ。」 「うるさい。マロン、押さえておけ。」 トゥヴォックの額に手を置く。「さあ、見せるんだ。」敵から逃げ、後ずさりする士官たち※18。叫ぶ人間。燃える体。粉々になる惑星※19。クレイディー人※20。破片。 「まだ隠している。最高の怒りを隠してるんだ。」 「そうだ。」 「見せろ。」 「もし見せたら、解放してくれるか。」 「ああ。」 「そばに寄れ。」 その瞬間、トゥヴォックはグイルの顔に手を置いた。「怖がることはない。こうすることで、心の奥の思いを伝えられるのだ。心を、一つにし、思いを、伝えたまえ。」 「ああ、いいぞ。」 怒りの形相を浮かべるトゥヴォック。後ずさりするグイル。 「これこそ俺の見たかったものだ。」 トゥヴォックはどんどん近づく。これ以上後ろへ下がれなくなったグイル。トゥヴォックはグイルの拳をつかんだ。 現実のグイルも、手に痛みを感じる。「何が、起きてる。」 「これが、ヴァルカンの精神融合だ。お前は真の怒りというものを知らない。その暗さを、パワーを!」 声を震わせるグイル。トゥヴォックはグイルの喉をつかんだ。 グイルは苦しそうに喉に手をはわせる。「やめろ…頼む…。」 グイルは気を失った。
「電気化学変異を増やしてちょうだい」と命じるニミラ。「シナプスを傷つけないよう慎重によ。ちょっとしたミスが大脳皮質へ、永遠にダメージを残すから。」 通信音が鳴る。『通信センターから、ニミラ主任調査官。』 「ニミラよ。」 『ジェインウェイ艦長が話したいそうです。緊急の用件で。』 「つないでちょうだい。何かしら。」 ジェインウェイ:『ニミラ主任調査官、直ちにトレス中尉の記憶浄化手術をやめてもらいます。トゥヴォックが彼女の無実を証明する、新たな証拠を見つけたの。』 転送されてきたトゥヴォックを出迎えるジェインウェイ。グイルも一緒だ。保安部員に連れて行かれるグイル。
会議室で待つジェインウェイとトゥヴォック。ニミラが入る。「無駄足じゃないことを祈るわ。一度開始された記憶浄化を中断させるのは、異例中の異例なの。」 ジェインウェイ:「じゃあ早速本題に入るわ。少佐。」 トゥヴォック:「調査の結果、グイルとフレインに全責任があることを突き止めた。当然、タリの殺害についても。」 ニミラ:「グイルって商人の?」 「その通りだ。」 「彼とどんな関係があるって言うの。怒りに煽られ暴力を振るったのは、フレインよ。」 「それは否定しない。しかし、トレス中尉の怒りは、偶然移ったものではなかった。」 「どういうことかしら。」 「グイルはトレス中尉を一目みて、彼女の非常に激しい気性を見抜いた。彼女の潜在意識に興味を引かれ、その意識を顕在化させるため、わざと彼女を怒らせたのだ。そして凶暴なイメージを描かせ、それを彼女の心から盗んだ。」 「そんなこと信じられない。」 「これは確固たる事実だ。残念ながら、彼らは怒りを過小評価し、ベラナの怒りの強さを測り損ねてしまった。結果として、フレインはコントロールを失ってしまったのだ。」 「なぜ、グイルやフレインのような穏やかな人物が、そんな危険なイメージを、わざわざ欲しがるのかしら。」 「マリには君の知らない、闇社会が巣食っていることがわかった。ブラックマーケットとでも言っておこう。市民の多くが禁じられたイメージを売り買いしている。グイルはその筋では有名な人物だ、いや、だった。彼を拘束するまではな。」 「この星に住む人々に限って、そんなイメージを好むとは思えない。」 ジェインウェイ:「法律では、頭の中まで規制することはできない。あなたは人々に怒りを隠させただけなの。」 トゥヴォック:「君らの種族は他人の思考まで自由にできる。問題はより、深刻だ。」 ニミラ:「私が信じたとしても、ほかの人間は信じない。」 「では、グイルの処遇は君に任せよう。彼の記憶を探れば、私の言ったことが裏付けられる。」 「どこにいるの。」 「ヴォイジャーの…拘束室だ。」
「艦長日誌、補足。ニミラ主任調査官は、ミスター・グイルを逮捕した。彼の逮捕によって、マリの司法組織が改定されるかはわからない。一方ドクターは、トレス中尉とトゥヴォック少佐の治療に専念している。」
医療室。「手術はさほど進行していなかったらしい。勤務に戻っていいぞ」というドクター。 「わずかだが、怒りの記憶がまだ頭に残っているようだねぇ。」 「構わないわ。仕事に戻ればどうせ増えるもの。」 「近寄らんでおこう。」 ベッドを降り、トゥヴォックに「いろいろありがとう」というトレス。「真実を追求しただけだ。」 2人は医療室を出る。 「じゃあ、もし私の怒りが事件の原因だったとしたら、手術をさせてた?」 「訪れた星の法律を尊重するのは、我々の義務だ。」 「ああ、そう。では今でもマリの法組織は、すばらしいと?」 「それについては、少々考えが変わった。」 「だったらもう、私の短気を説教しない?」 「では言おう。今では君の闘争心について、尊敬すらしている。」 「ほんとに? 「野蛮なクリンゴン人特有の短気さを、現在のようにコントロールしていることは、尊敬に値する。」 「それって…誉めてるの?」 「当然だ。もちろん、その自制力を高めたいというのなら、ヴァルカン人として協力しよう。」 「結構よ。」
作戦室に入り、スタスタとジェインウェイの前へ来るセブン。ソファーの上で楽な姿勢でパッドを見ていたジェインウェイは、セブンに気づいた。「あ、いらっしゃい。」 「話がある。」 「どうぞ、かけて。」 「立っているほうがいい。」 「そうだったわね。」 「あなたは以前、無意味でも自分の意見を表明した方がいいと言った。」 「その通りよ。」 「地球への帰還を望みながら、なぜ艦隊の規約をいちいち守って異星人と接触する。非常に矛盾する行為だ。」 「どうして?」 「あなたの探求に関する見解は、ヴォイジャーを常に危険にさらす。いかなる異星人とも交信せず、地球へ向かうコースを維持すれば、生き残れるチャンスは増すだろう。」 「でもそれじゃ退屈でしょう?」 「…艦長。」
"We seek out new races because we want to... not because we're following protocols. We have an insatiable curiosity about the universe...."

「私たちは新しい種族を探求したいの。規約に従ってるわけじゃない。私たちには宇宙に対する飽くなき好奇心があるのよ。」
「機関主任と保安部長は命を落とすところだった。その意見には同意しかねる。」 「ほかのクルーはそうは言わないと思うわ。マリの人たちとの交流は、私たちに新たな文化を教えてくれた。」 「そんなもの無意味だ。」 「いいえ、知識はそうやって得ていくの。」 「意見が割れたようだ。」
"I dread the day when everyone on this ship agrees with me.

「良かった。全員に同意されるほど怖いものはないもの。
あなたの忠告は感謝する。でも方針を変えるつもりはない。」 コーヒーを飲むジェインウェイ。セブンは何も言わず、またスタスタと作戦室を出て行った。ジェインウェイは「行ってよし」とつぶやいた。

※18: 映画第8作 "Star Trek: First Contact" 「ファースト・コンタクト」で使われた、ボーグの視点のシーン

※19: 映画 "Star Trek: Generations" 「ジェネレーションズ」で使われた、衝撃波によって破壊されるヴェリディアン3号星のシーン

※20: VOY第72話 "Nemesis" 「ヴォリ防衛隊第4分隊」に登場した種族。ヴォリ人と敵対しています

・感想
「思考するだけで罪になる」というテレパシー種族の話。怒りの感情が、麻薬のように裏取り引きされているのは現代社会にも通ずるものがあります。
ベトール役のウォルシュの演技は目立ちますが、全体的にはオーソドックスなエピソードだと思います。


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