2002/1/13
全国社会人大会 決勝

神戸製鋼 VS サントリー
神戸製鋼VSサントリー
3124
前半1950
3TRY3
3GOAL2
1PG0
0DG0
7後半31
1TRY4
1GOAL4
0PG1
0DG0


ほぼ予想通りの点差になった。
(予想では、47対28ですから、互いに3点ずつ多く取ったということですかね。トライ数も互いに予想より多かったけど…)
ただし、さすがに神戸製鋼も強かったというのが正直な感想だ。
今まで厳しい試合を、何度も奇跡の逆転でものにしてきた力は伊達ではなかった。
それでもサントリーの破壊力は、やはり神戸製鋼を完全に上回っていた。

前半15分過ぎまでサントリーが圧倒的に攻め続けたが、その猛攻を厳しいディフェンスで耐え凌ぐと、神戸製鋼は僅かなチャンスをしっかりモノにした。
ハーフウェイ付近のマイボールラインアウトからNO8伊藤がキャッチして、突進。ラックからSOミラーがゲインしてポイント。素早く右に回してWTB平尾がトライを奪う。
立て続けにSOミラーがサントリー陣深くキックを蹴り込むと、ボールを受けたサントリーWTB栗原が相手の頭を越すキックを蹴った後、まともにFB八ツ橋に当たりにいき、サッカーのようにレフェリーにオブストラクションをジェスチャーで大きくアピールしたが岩下氏はこれを認めず。この軽率なプレーがミラーのトライを呼び込んだ。
ボールをキャッチしたミラーは再びサントリー22mライン内にキック、楕円球の転がりはミラーに微笑み、ボールを上手くチェイスして再びインゴールに蹴り込み、これを押さえ込んで、14対0と差を広げた。

このあたりは、さすがのサントリーもかなり不安が過ったに違いない。今まで10年以上も勝てなかった相手ということで意識過剰だったのではないか、という気がした。今年の完成度の高いサントリーではなく、昨年のサントリーに戻ったようで、つまらないパスミスが目立った。

しかし、20分に連続攻撃で神戸製鋼G前に迫ると、最後はウルイナヤウが抜け出し、トライを返す。神戸は自陣ゴール前で、再三の故意のオフサイドや、寝たままのプレー、或いはキリングザボールの反則で凌ぐしかなく、このプレーが続けば、神戸製鋼の誰かがシンビンを取られる予感はすでにこの時からあった。岩下氏も今度同じプレーをしたらシンビンと注意したのはミラーだけではなく、他に二人ほどいたはずだ。

神戸製鋼は素晴らしいチームであるのは認めるが、ことフォワードの密集でのプレーに関してはいまだに好きになれない。
神戸製鋼の密集でのプレーは、上手さというよりは、どちらかというとずるさではないのか?、と私は思う。

トライを取られそうな場面になると、明らかに意図的なオフサイドなどで、球出しを遅らせるからだ。レフェリーの見えにくいところで実に巧妙に行っている。これは数年前から神戸製鋼に対して指摘されている事でもあり、日本のレフェリーはその辺を上手くペナライズしていない。
ここでタッチジャッジの重要性が問われる。

この試合、岩下氏はイヤフォンを着けていない様に見えたが、タッチジャッジからのアピールは正確に伝わるのだろうか?すでに世界では、レフェリーが確認できない場面などで「ビデオレフェリー」と呼ばれる、ビデオで確認してトライなどを認定するレフェリングが行われている。レフェリー一人でも無理、タッチジャッジを加えても無理、結局最も確実に判断できるビデオの導入が取り入れられているのだ。

大相撲の世界でさえも、今やビデオで確認する時代だ。
日本のラグビーも早く取り入れるべきだと思うが、如何なものだろう? こういう事に対してラグビー協会の腰が重いという事実が日本ラグビーの発展を妨げているように思う。協会のご老体が幅を利かせているうちは無理なのだろうか? その気になれば、すぐにでも導入できそうな気がするのだが。

ここでついでに、この試合のポイントになったミラーのシンビンについて、触れたい。
彼のシンビンは妥当だろう。
岩下氏の言う通り「今度同じようなプレーをしたらシンビン」とミラーにコールしていたのだから。ミラーは、昨年も一昨年もそうなのだが、レフェリングにクレームつけたり、意図的に反則を犯すというプレーが多すぎる。一昨年だったか、国立での東芝府中戦で密集で東芝府中FL渡邉と小競り合いを起こし、渡邉だけがシンビンを取られた記憶があるが、ビデオで良く見れば、あの場面はミラーの方にも問題があった筈だ。
現在、実力ではダントツで日本NO1のSOだが、ああいったプレーを常に起こすのは問題にせざるを得ない。
すでに3年前の1999年1月3日の対東芝府中観戦記で、私はこの事を書いた。性格というのは、やはり一生直らないものなのだろうか?

(とりあえず、今日はここまでで。ゴメンナサイ)(1/15 午前2時)

(ここからが続きです。風邪を引いて大幅に遅れました。ごめんなさい。m(__)m)

試合はその後、互いにトライを取り合い、24対19で前半を折り返すのだが、サントリーにとって大きかったのは前半のインジュリータイムのワンチャンスを活かし、バックスのサインプレーで栗原がG左に飛び込んでトライを奪い、5点差で前半終えた事だろう。
たらればを言えば、あのトライがなく12点差のまま、前半を折り返し、後半、先に神戸製鋼が点を追加してたら、勝負の女神は神戸製鋼に微笑んでいたかもしれない。サントリーは、相手が神戸ということで、必要以上に意識し、浮き足立っていたような試合運びをしていたのだから。

後半、神戸製鋼G前のマイボールスクラムからNO8斎藤がサイドアタック。神戸製鋼のNO8伊藤とSOミラーを引きずりながらインゴールに飛び込んだ。まさに新旧交代を象徴するようなトライだったと思う。
(神戸の伊藤剛臣君は、法政が大学日本一になった時から好きな選手で、準決勝で下馬評を翻し、明治に完勝した試合での彼の力強い走りが印象的だった。個人的な見解だが、あのスピードと運動量はNO8というよりは、第一回ワールドカップのオールブラックスの至宝、マイケルジョーンズのようにオープンサイドフランカーとしてこそ、力量を最大限に発揮出来たのではないか?と今でも思うのだが・・)

このトライで遂にサントリーが逆転。俄然サントリーペースになる。
この後、ミラーのシンビンの間に3トライを奪い、ほぼ勝利を決定付けた。なかでもウルイナヤウに代わって出場したイエレミアは、さすがに前オールブラックスの凄さをまざまざと見せつけた。まずはライン参加し、タックルに来たCTB吉田を跳ね飛ばして自らインゴールに。(タックルした吉田が脳震盪を起こしたほどの凄まじい破壊力)
再びギャップを突いて、ゴール前まで迫るとフォローした栗原にパスして、栗原がトライ。
(この場面も無理すれば自分で行けたかもしれないが、フリーで確実にトライできる栗原にラストパスを放るところなどはさすが、としか言いようがない)
結局、試合は50対31と19点差でサントリーが勝利を治めた。

最後、神戸ゴール正面のペナルティで、キックを選択した時、場内からはブーイングが起きたようだが、これは昨年、彼のキックが入れば単独優勝の場面で決められなかった無念さ、或いは10年以上神戸に勝てなかったが、サントリーをずっと引っ張ってきた永友への大久保主将からのプレゼントだったに違いない。このキックが決まったところでノーサイドのホイッスルが吹かれ、永友は大きく手を挙げて万歳。彼にとっても感無量だったことだろう。多くのサントリーの選手が涙し、試合後のインタビューで土田監督の声が震え気味だったことからも、サントリーの選手、スタッフの万感の思いが伝わってきた。

ミラーのシンビンというアクシデントがあったにせよ、やはり今年のサントリーは強い、と改めて感じた。そして来年は更に強くなるだろう。これから数年、日本のラグビーを引っ張っていくのはサントリーに間違いない。そして現在のサントリーのラグビースタイルこそが、ジャパンが世界に通用する唯一の道だと信じている。80分間切れないフィットネス。徹底したボールキープ。15人全員が走りまわり、フォロワーとなる。誰かが抜け出せば、必ず誰かフォローが付く。ペナルティを得れば素早い攻撃。早く鋭いパスでワイドにボールを振る。そして個人個人のパワーとスキルアップ。

全てごく当たり前の事のようだが、この当たり前の事が今までのジャパンにはできなかった。今のサントリーに唯一、不安点があるとすれば、ディフェンスだろう。タックルに厳しさがやや欠けているように思える。来年度の修正点はそこにある。今日も、神戸WTB平尾に大きくゲインを許した場面など、かなり甘さがあった。WTB栗原、FB小野澤もディフェンス面ではまだまだだ。
然し、だからこそサントリーはもっと強くなれる。来年はディフェンスもしっかり整備された無敵のサントリーが見られるのではないか。

選手個人に目を向ければ、この試合のMVPは間違いなくNO8齊藤だろう。
前述のトライといい、神戸が無人のサントリー陣にボールを蹴り込み、あわやトライかと思われた場面で、誰よりも早く戻りピンチを防いだのは彼だった。そのスピード、豊富な運動量。あらためて彼はジャパンの宝だ、と思った。昔はボールを片手で持ってノックオンする場面が良く見られたが、今ではそのシーンは殆どない。フォローワーに上から下から見事にボールを繋いでいる。後はタックルの厳しさを身につけてくれれば文句なしだ。

神戸製鋼では大畑のディフェンスと小村が目立った。大畑はオーストラリア遠征の成果なのか、ディフェンスのスキルが格段に向上した。タックルした後立ったまま相手ボールを奪うような意識の高いプレーが何度か見られた。アタック面では、イエレミアとの最初の対決では簡単に捕まり、逆にボールを奪われターンオーバーされたが、2回目では持ち前のスピードを活かし、スワーブで振りきり、しっかりとお返しをしたのは見事だった。

小村は今時のFLとしては体が小さいが、その運動量の豊富さで、全てのデメリットを補っている素晴らしい選手だ。体格的なものでなかなかジャパンには選出されなかったが、ジャパンで徹底的に鍛え上げていたらどういう選手になっていたのだろう。イングランドのニール・バック(彼もイングランド代表FLながら身長は180そこそこしかない)のような選手になっていた可能性もあり、やや悔いが残る。

さて、これで社会人大会はひとまず終わり、次は日本選手権へと選手やチームの目標は向けられる。
サントリーの次の相手は恐らくトヨタ自動車になるだろう。
この試合ではかなり苦戦するかもしれない、というのが正直な気持ちだ。関西リーグと準決勝で見せた神戸に対するトヨタの激しい当たり、ディフェンスは、今シーズンのサントリーがまだ一度も経験していないハードなプレーだ。怪我人も何人か出るかもしれない。ただ、サントリーはリザーブメンバーが豊富でレベルが高いので、それほど心配することもないかも知れぬ。トヨタも決定力に欠ける嫌いがあるので、結局は勝利を治めて、再び決勝で神戸との再戦になるだろう。

問題は、その決勝戦だ。

社会人でのサントリー戦には頬骨骨折で出られなかった元木が戻ってくる。テレビに何度も映った彼の表情から察するに、内心忸怩たる思いだったに違いない。その元木が獅子奮迅の体を張った凄まじいプレーで観客の度肝を抜く。そんな気がする。ウルイナヤウにもイエレミアにも臆することなくぶつかって行くだろう。

彼は現在の日本の選手の中では最もそういう熱い魂を持った選手だ。ここ数年のジャパンを先頭に立って引っ張ってきた自負もあるはずだ。まだまだ負けられない、そんな気持ちで立ち向かって行くだろう。彼のそんなプレーに、万が一サントリーの若いプレーヤー達が怯むようなことがあれば、サントリー苦戦も免れない。
それでも、やはりサントリーが勝つだろう、というのが現時点での私の見解だ。

今日のサントリーは、前半浮き足立ったプレーが見られたように全体として見れば80点の出来。
特にチャンスと見られた場面でのラインアウトのミスが苦戦の原因にもなった。(坂田君…)神戸を打ち破っての悲願の単独優勝を成し遂げた事で、神戸コンプレックスも、様々な呪縛からも解き放たれたはずだ。
となれば、トヨタ戦でキープレーヤー(齊藤、栗原、小野澤など)に怪我人が出なければ、今シーズンの本当に強いサントリーの力を、決勝戦ではほぼ100%発揮できるはずだ。
ならば神戸が100%の力を発揮したとしても、まだ及ばないと見る。
まだトヨタ戦も終わってないので、点数予想などは、その後にしておきます。

最後に一言。花園のグラウンド状態は最悪だった。
半分以上、芝ははげかかり、砂地のような状態。日本最高レベルの試合を演出するステージとしては、全くふさわしくない場所に思えた。
高校ラグビーで散々使われた後だけに、仕方ないかも知れぬが、どうにかして改善できないものか? 今までのお役所仕事のようにではなく、ここは協会一丸となってスポンサー探しに奔走し、サッカーのように緑の芝生が生え揃った素晴らしいグラウンドが早く日本中に出来あがる事を願って止まない。

この試合にも3万近いファンが押し寄せ、日本選手権の決勝戦などは今年から秩父宮に変わったせいか、指定席はすでに完売状態で、ヤフーのオークションでは高値で取引されるまでになっている。レベルの高い試合を見せる事でラグビー人気も徐々に復活の兆しを見せつつある。選手には最高のコンディションのなかで試合をさせたいと思うのは私だけではないだろう。
協会には積極的な対応、改善を求めたい、と思う。

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