1999/11/23
関東大学対抗戦
早稲田大学 VS 慶応大学
早稲田VS慶 応
2118前半529
2TRY1
1GOAL0
2PG0
0DG0
3後半24
0TRY3
0GOAL3
1PG1
0DG0



感 想
早慶戦が全勝対決になるのは、どうも15年振りらしい。
1984年、WTB若林の快走で慶応大学が逆転勝利を治めた年だ。
旅先のホテルで見たテレビ映像の記憶が微かによみがえってくる。
生のラグビー観戦は9月末の関東学院対流通経済戦以来で約二ヶ月ぶり。重いワールドカップ病を患ってしまったおかげで、なかなか外出する気力が沸き起こらなかったせいだ。

それでも、いつまでもワールドカップの幻影を思い浮かべながら、日本のラグビーを見ても楽しいわけがなく、ここはすぱっと頭を切り替えて見ようか、と。 日本のラグビーもまだまだ捨てたものではないはずだ、と言う気持ちで久々に秩父宮に足を運んだ。 神宮外苑の銀杏並木も黄金色に色づき、季節の移り変わりを如実に表していた。

しかしながら重い腰を挙げて行って良かったと思う。
今年の両校にはかなり力の差が見られ、慶応が余裕の勝利を治めると思っていたのだが、予想を覆す好試合。早稲田の頑張りは見事なものだった。

上村、井手上、江原の第三列の早い出足。辻、福田の素早い球捌きとキック、そして高野、小森のCTB陣の好タックル。ルーキー山下の力強さ。局面では常に先手先手と動き、慶応の攻撃を見事に寸断した。苦戦が予想されたラインアウトでも前半はマイボールをほとんどミスなくキープ。前半終了間際の高野のトライで13点差で折り返した。

しかし、試合の流れを変えたのは後半10分、慶応CTB瓜生の素晴らしい走り。スピードとステップ、そして腰の強さで瞬く間に早稲田のディフェンス4人をすべて交わし、50m近く走り切って、トライへと結びつけた。
この後、慶応はようやく持ち前の強いフォワードが息を吹き返し、スクラムでプレッシャ―を掛け続け、二つのトライを奪い、早稲田の息の根を止めるが、これは戦前から予想されたことであり、今日のポイントはやはり瓜生のトライだろう。4人抜きの華麗なステップには15年前の若林選手の姿がだぶった。

早稲田善戦の原因は、福田選手のロングパスの精度がかなり高くなってきた事にもある。ともすると無謀に見られる”クイック&ワイド”を完成するためにパスの正確さは必要不可欠。そのパスが決まるようになって来たこと、そしてキャッチする側との呼吸も合ってきたことは、今後の大学選手権を考えれば明るい。この戦法は、練習すればする程、或いは実践を経験すればする程、熟成の度合いは高くなるはず。大学選手権までの一ヶ月あまり。まだまだ成長する余地は残っている。

加えて、やや穿った見方をすれば、今日は少し抑え目だったのではなかろうか?徹底したフィットネス勝負で”クイック&ワイド”を仕掛けるのではなく、オーソドックスに近い戦い振りだった。大学選手権に備えて、違うスタイルも視野に入れてみたというか、そんな風にも見えたが・・・・。

早稲田は、早明戦を無事に乗りきれば対抗戦2位となり、大学選手権一回戦の相手は九州1位。二回戦が関西2位かリーグ戦4位となるが、どちらの試合も問題なく勝ちあがるだろう。そして国立での準決勝に立ち塞がるのが三連覇を狙う関東学院だ。現段階ではまだまだ力の差があるのは否めない。この一ヶ月間でどこまでクイック&ワイドをスキルアップさせられるか、スクラム対策をどうするか、そして今日の試合で少し気になったSO福田のハイパントの精度をどこまで高められるのか、というあたりがポイントだろう。山崎弘樹、西辻など故障者の復帰の度合いも気になる。

関東学院も国立まで勝ちあがれば三連覇が脳裏にちらつくはず。
必要以上に決勝が視野に入れば、早稲田にも付け入る隙が生じる。天下のニュージーランドだってあんなことになった準決勝。関東学院が同じ轍を踏まないとは言えないだろう。磐石の強さを誇る関東学院がもし負けるとすれば、決勝ではなくこの準決勝の方ではないか、という気がする。関東学院の強さや早稲田のプレーの未完成度は承知の上で、春から無謀にも言いつづけてきた”早慶の決勝戦”というのが結構現実味を帯びてきた・・・・。

慶応はさすがに強かった。
ただし、こちらもまだ未完成。攻撃の鋭さの割にはディフェンスがそれほどでもない。特にバックスのディフェンスに不安がある。強力なスクラムと高いラインアウト。セットプレーに安定感があるので、堅実な強さを見せるが、今後は栗原選手の復帰が大きなポイントになるのは間違いない。

大学選手権一回戦のリーグ戦5位、二回戦のリーグ戦3位か関西4位との戦いは何の問題もない。国立での準決勝は同志社か、はたまた流通経済か?こちらも先の決勝戦を変に意識すると足元を救われる可能性がないわけではない。早稲田は別にして、順当に勝ち進んで決勝で関東学院と当たった場合、好勝負が期待できるが、やはり関東学院に一日の長があるだろう。


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