1998/5/10
日本代表 VS 米国代表
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(その2)

とここまで書いてきたのに、どうもアウェーの香港戦の広瀬選手起用は既定の方針のようです。
というのは今日発売のラグビーワールド誌によれば、「パシフィックリムは3つのターム(期間)に分けて選手選考を行う」というのが、4月27日にスコッド26名を発表した時にすでに公表されていたようなのです。うーむ、私の単なる勉強不足でしたか。それにしてはスポーツ紙で、いかにも「岩淵の起用をついにあきらめ、広瀬を使う」みたいな論調で書かれていたのが不思議な気がしますが…。
まあ、広瀬選手も使ってみたい、というのが平尾監督の率直な気持ちなのかもしれません。でも、もしそれで勝ってしまったら岩淵選手をどうするのでしょう…? 疑問はまだ残ります。

負け癖なのか?
「ジャパンお得意の」という形容詞をつけたくなるような毎度毎度の善戦負け。
勝ってもおかしくない試合というのを何度見てきたことでしょう。負けグセが体に染みついてしまったのでしょうか?試合後半、僅差になると、何故かジャパンの選手だけが自信なげに見えてくるのは私だけでしょうか?去年のカナダ戦のロスタイムでの逆転劇で、このあたりの精神的な弱さも解消されたのでは?と思っていたのですが。
昨今、様々なスポーツで話題になるメンタルトレーニング(似てるけどマインドコントロールではありませんよ、念のため)。諸外国に比べ日本のスポーツ界の最も遅れている分野といえるでしょう。野球やサッカーなどでもそれほど積極的に取り組んでいるようには見えませんが(恐らくこの分野で最も進んでいるのはゴルフ)ラグビー界ももっと進んで取り入れるべきかもしれません。

増保の復活
それにしても増保選手は本当に良くなりました。
一時は90kg近くまで増え、フランカーばりの体型に近づいていた彼を思うと「いったい何があったのだ?」と不思議にすら感じます。(禁酒でもしたのでしょうか?まさか失恋なんてわけじゃないでしょうが)
学生時代のような引き締まった体(70kg台?)に戻り、スピードも復活、ディフェンスでも大いに活躍してくれました。
ツイドラキ、大畑、仙波、或いは秋山、そして復活を狙う吉田選手など、ウイングの定位置争いは本当に楽しみです。

本木(元木)に勝る末木なし?
それに比べて元木選手。失望感がどんどん広がります。
こちらの方は逆の意味で「いったいどうなってしまったのだ」と唸りたいような気持ちです。
この試合でも高いタックル、コンビネーションの悪さで、必要以上にマコーミック選手に負担がかかっていたようです。
今の元木選手はアタック、ディフェンスともプレーに迷いが見られます。ここは思い切って先発メンバーから外すような荒療治を施し、彼の奮起を促した方が良いような気がするのですが。
じゃあ、その場合誰を使うのか?ここが頭の痛いところでもあります。ミルン選手をセンターで使うという選択肢もありますが、そうなるとフルバックの方が不安になります。CTBとしては、難波、沢木、織田、朽木など試してみたい選手は数多くいますが、いざ使ってみると、期待ほどではなかった、ということも考えられます。結局のところ『本木(元木)に勝る末木なし』というまるで諺のような結果に終わる可能性もありますが。
* 『本木に勝る末木なし』
(「本木(もとき)」は、樹木の根元や幹。「末木(うらき)」は、こずえや枝。何度取り替えてみても、やはり最初の相手がいちばん良いということ)『故事ことわざの辞典。小学館』
それにしても諺というのは恐ろしい…。

またまたここまで書いたところで違う事実が判明。
今日(21日付け)のサンスポを見ると、『23日の香港戦はSOにミルン選手を起用』と書かれているではないですか。
まったく一部スポーツ紙(サンスポもそうですが、今回は他のニュースでも同じ発表になっていたので間違いないでしょう)の報道を鵜呑みにした私が愚かでした。ここまで私が肩肘張って書いてきたのはいったい何だったのでしょう?
これじゃあまるで『一人も客の来ない飲み屋で、次から次へとせっせと焼き鳥を焼き続けているマスター』のようなものです(何のことだ?)。或いは、『大枚はたいて単勝馬券を買った馬がスタート直後に落馬したステイヤーズステークス』といっても良いかもしれません。(もっとわからないですね。要するに「空しい…」ということです)
ま、とりあえず香港戦の結果を楽しみに待つしかありません。
(ということは、第二ターム(対香港の二試合)はSOミルンを試すことがポイントなのでしょう。6月の秩父宮の香港戦もSOミルンとなりそうです)

平尾監督はなぜ元木を使い続けるのか?
話は前に戻りますが、これだけ悪くなっている(ように見える?)元木選手を どうして平尾監督は使い続けるのでしょう?
もちろん『元木に勝る末木なし』の恐れや、他の人材が『帯に短し襷に長し』的なこともあるのでしょうが、どうもそれだけではなさそうです。
その謎を解く鍵はこんなところにありました。

私は、どんなに凄いといわれる選手でも、自分に似たタイプの選手にはあまり興味を抱かないが、ラグビー選手として自分にはないものを持った人間には、ものすごく興味を持つ。こいつに、こんなことを教えたら、きっと凄い選手になるだろうというイメージが自分の中でどんどん膨らむのである。例えば元木の場合は人に対する強さが魅力だった。
同じセンタープレーヤーとして比較してみても、私はタックルを受けてもそれに耐える強さがないことから、その前にボールを放るというプレーをイメージしていたが、彼の場合は相手にタックルされても、良いパスを放れるだけの足腰の強靭さを備えていた。
もともと体の線が細く、接触プレイに弱いという弱点を持っている私にしてみれば、全くうらやましくなるような強さだった。
(中略)
そこでパスワークを磨いたり、サイドステップに取り組んだり、さまざまなプレーに挑んだ結果、今の自分のプレースタイルにたどりついたのである。
つまり、自分のコンプレックスを解消するために、ここまでやってきたのだが、彼らには私にはなかった強さが最初から備わっていたのである。それだけにこの強さに回りを生かせる技術が備わってたら凄い選手になるという思いが強かったのである。
平尾誠二著・講談社刊『勝者のシステム』より

結局『となりの花は赤い』ということなのでしょうか?
彼と同じようなタイプの(つまりクラッシュ型でない。パスワークとステップやインサイドワークで勝負するような)CTB或いはSOにはあまり興味がない、つまり使いたいと思わないということなのかもしれません。 そう言われてみればなんとなく納得できそうです。 巷では評価の高い、あの選手もあの選手もどちらかといえば平尾選手に近い感じですから。 その上、元木選手などは、平尾氏或いは神戸のラグビーを慕って神戸製鋼に入社してきた選手です。平尾監督が自ら惚れ込むほどの選手と毎日顔を合わせ直接指導してきただけに、思い入れが強すぎて、眼鏡が曇ってしまったのではないでしょうか? そうでなければ、元木選手の起用にこれだけ執着するわけが理解できないのですが…。

いろいろ書きましたが、平尾監督だってサッカーの岡田監督同様、
「私が日本中でいちばん日本代表のことを考えている」
のだろうし、(もしそうじゃなかったら怒っちゃいますけどね) 身近にいるのだから当然選手達のことは私たち以上にわかってるはずです。
今まで書いてきたようなことが
「なーんだ全然心配することないじゃない。ああだこうだ言ってた自分がアホみたい」
てな感じで、スムーズにワールドカップ出場を決め、本大会でも素晴らしい戦いをしてくれれば、それ以上のことはないのですが…。

とりあえずこの話はここまでにしておきます。
『キッカーは必要なのか?』
『地球連合軍対火星軍。それでも私は地球を応援する』
は、また時をあらためて書いてみたいと思います。
テンションが下がって書くのを延ばし延ばしにしていたら、 一ヶ月も先のはずのホームの対香港戦がもう明日にまで迫ってきてしまいましたので。

(追記)
ところで先に書いたラグビーワールド誌。この雑誌の記事『つれづれなるままに』というのはいったい何でしょうか?まるまる1Pのまったくラグビーに関係のないこの記事が突然掲載されているのは異様です。なんの意図があるのでしょうか?理解に苦しみます。 表紙はセンスもイマイチだし、写真の色合いも少し変で、まだ表4(裏表紙)の広告の方が表紙になった方が良いみたいな気がします。
数少ないラグビー専門紙(2誌しかない)だけに、もっと頑張って欲しいのですが…。

(追記2)
コロンビアのイギータ選手の話については、アメリカ大会でオウンゴールを冒し、帰国して殺害されたエスコバル選手の例を挙げて、反論なさる方もいるでしょうが、あれは賭博行為とマフィアが絡んだ問題でもあり、イギータのトラップミスとは同列には語れないような気がします。

(追記3)
書き始めから終わりまでえらく時間が経ってしまったため、論調が全く異なるような文章になってしまいました・・・。
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