1998/6/7
日本代表 VS 香港代表

フォト

日本代表
13-10
香港代表
3-7
16
1
T
1
17
0
1
1
G
1
0
1
2
PG
1
1
0
0
DG
0
0
0

長谷川(サントリー)
FW
へレウィン
薫田(東芝府中)
ルイス
中村直人(サントリー)
ケリー
桜庭(新日鐵釜石)
バー
田沼(リコー)
パターソン
ゴードン(東芝府中)
J・ディングリー
スミス(豊田自動織機)
エドワース
トンプソン(NEC)
P・ディングリー
村田(東芝府中)
HB
オハラ
ミルン(鐘淵化学)
イエイツ
ツイドラキ(トヨタ自)
TB
ナバロ
元木(神戸製鋼)
デーカー
八ツ橋(神戸製鋼)
リースン
増保(神戸製鋼)
ゴードン
松田(東芝府中)
FB
ゴーイング


試合経過
開始1分、日本はキックオフのボールを上手くタップ、そこから攻撃を継続します。 香港陣22mラインの内へ攻め込んだところで反則を誘い、ミルンが確実にこのペナルティキックを決めます(3-0)。
3分、香港の攻撃。日本のディフェンスも堅実で香港が攻め手に窮し、右サイドで蹴ったキックがラッキーバウンドで、ウイングのゴードンの手にすっぽり。難なくステップとスピードで日本のディフェンスを振り切り、まさかのゴール真下へのトライ(3-7)。 これは日本にとっては非常にアンラッキーなトライでした。
10分、香港が自陣正面15mのところで反則。 ミルンがこれを確実に決めます(6-7)。
23分、日本は自陣から展開し、松田、ツイドラキで大きくゲイン、ボールを繋いで香港ゴール前まで攻め込むと、香港もたまらず反則を犯します。ここで得たペナルティで日本はスクラムを選択。一気に押し込んで、最後はNO8トンプソンがインゴールに持ち込みトライし、逆転します(13-7)。
30分、日本のハイキックをキャッチしようとした香港ウイングに、猛然と飛び込んでいったのがツイドラキ、相手をへし折らんばかりの矢のような猛タックルで、タッチに押し出しマイボールにすると場内大拍手。
34分、香港の連続攻撃の前に日本は徐々にディフェンスが手薄になり、最後は苦し紛れのレイトチャージを犯します。これで得たペナルティキックを香港がしっかりと決めます(13-10)。
前半終了間際、日本は香港ゴール前に攻め込みますが、ノックオン。

後半2分、日本は集中力に欠けていたのか、タックルが悪く、香港の攻撃にやすやすとボールを繋がれ、最後はSHオハラに飛び込まれトライ。ゴールも決められます。(13-17)。
この後、日本は再三香港ゴール前に迫ります。ゴール前でペナルティをもらうと、前半と同じように、スクラムを選択。しかしさすがにテストマッチになると、同じような形で簡単にトライを奪うというわけにはいかず、得点を奪えません。 13分、ミルンが左中間30mのペナルティキックを決めて、何とか一点差に(16-17)。
然しここからが長かった。
トンプソンに変わって伊藤。増保に変わって大畑。負傷した松田に代わって広瀬がSOの位置に入り、ミルンがFBへ。長谷川に代わり溝辺。選手を積極的に入れ替えて何とか打開策を計ります。
何度も何度もチャンスはありました。
右サイドでのマイボールでのゴール前スクラム。左サイドでのオープン攻撃。 八ツ橋選手が素晴らしいステップでゴール前に迫り、「あわや!」と思わせた場面。
結局この後は30分近くもお互いに得点を許さず、16-17の一点差のままノーサイドの笛が吹かれ、日本はまたまた僅差負けということになりました。

感想

1998年10月31日、シンガポール。
ワールドカップアジア最終予選。韓国、中華台北と順当に勝利を治めた日本チームは 最後の難関、香港戦を迎えていた。
日本から応援に駆けつけたファンは1500人。サッカーWCのサポーターの数には到底及ばないものの、熱気は負けていなかった。
前半、日本は第三列の外人選手を中心に優勢に試合を進めるものの、要所では香港の厳しいディフェンスに会い、なかなかトライが取れない。互いに3つずつのペナルティゴールを決めて前半を9-9の同点で折り返した。
後半開始早々、集中力を欠いていた日本は一瞬の隙を突かれ、香港に上手くボールを繋がれてトライを奪われる。ゴールも決められ16-9。
10分、日本も香港のオフサイドの反則で得たペナルティゴールをミルンが確実に決めて16-12と4点差に追い上げる。
だが、ここからの攻防も一進一退。互いに得点には至らない。
時計が30分を過ぎたところで、日本はハイパントを受けたFB××選手がカウンターアタック。他の選手も良くフォローして香港ゴールライン付近まで攻め込む。ゴールから10m付近でのマイボールスクラムとなる。
この日もスクラムは日本が優勢。 当然このスクラムも日本がプッシュをかけてフォワード周辺の攻撃からチャンスを見出すものと思われた。
その時、日本から応援に来たファンの胸には6月の秩父宮の試合の記憶が悪夢のように蘇った。スクラムに拘り、結局トライを取れるバックスのオプション攻撃を何ら成功させられなかったあの試合。勝てるはずの試合を一点差で失ったあの6月7日の秩父宮の戦いだった。
しかし、日本チームはファンのそんな不安をいとも簡単に裏切った。
スクラムを組もうとする後方でバックスが形成した陣形は、何と数年前、ラインが作られた瞬間に思わず客席からどよめきが洩れた、あの同志社タテ十字のライン。
初めてそのラインを見た香港バックスも動揺が隠せない。SOやFBから、怒号のように様々な指示が飛び交う。香港バックスが対処をまだはっきりと決め兼ねているうちに、スクラムが組まれた。日本はほとんどダイレクトに近い素早い球出しで、客席から見てもどこを誰が走ったのか解らないようなバックスのサインプレーから香港ディフェンス陣を突破。最後はウイングのツイドラキ選手が左中間に飛び込むと、ボールを高々と放り上げ、拳を天に突き上げてガッツポーズ。ゴールも決まり、19-16とようやく逆転する。
勢いに乗った日本はその後も積極的にバックスにボールを回し、素晴らしいパスとフォローなどで2トライを奪い、終わってみれば、31-16で見事ワールドカップ四大会連続出場を決めた。

試合後の平尾監督のインタビュー。
「いやあ、とにかく勝ててほっとしています。 試合を決めた後半30分のプレーは練習で何度も繰り返しやっていたプレーです。 何とかものに出来てよかったですわ。 6月の日本での試合では"攻撃の手段がない"と皆さん心配しておられたと思うんですが、 あそこでいろんなプレーを見せるわけにはいきませんからね。 ラグビーだって情報戦やから。 まあ、僕が非難されていればいいことだと思ってたんです。 あれで香港も"日本組みし易し"と思ってくれればいいなあと…。 マスコミやファンの皆さんを騙したようで済まないとは思ってますが『敵を欺くにはまず味方から』ですからね」

・・・『希代の策士』だったのか、平尾誠二・・・。

続く…

と希望的観測で書いては見たものの、本当のところはどうなのかわかりません。 単純に攻撃の手段を何ら持ちあわせてないのかもしれないし、この試合には 絶対に勝ちたかったというのが本音だったのかもしれません。
でも様々なメディアでの平尾監督の行状を見ていると、やはりこの人は結構な戦略家なのでは?と思えます。敢えて手の内を隠したのだ、と思うことにしましょう。

それともう一つ。現在の攻撃力のお粗末さの理由として、平尾監督は今の時期はひたすらディフェンス力の向上に重点を置いているのではないか?ということも考えられます。
日本が世界と一番かけ離れているのは間違いなくディフェンス面。いまだにギネスブックにも掲載されているあの忌まわしき145点を経験した当人だからこそ(平尾氏自身は試合に出場していないじゃないか?という意見もありますが)ディフェンスの大切さを骨身にしみて感じているはずです。
ディフェンス力がワールドレベルになるまで。それが第一のステップ。それが完成したら次に得点を取るパターンの確率。ディフェンスをないがしろにして運良くWCに進出できたとしても本大会では二の舞になり兼ねません。
後半、ゴール前に攻め込まれ、今までのジャパンなら簡単にトライを奪われてた場面でも何とか凌いだところが何度かありました。ディフェンス力が確実にアップしていることは間違いありません。
サッカーでもディフェンスだけを重視していたら、結局得点力の無さがWCでは問題になったじゃないか!とおっしゃる方もいるかもしれません。でも良く考えて下さい。別に岡田監督を擁護するわけではありませんが、彼のWCまでの準備期間わずか半年余り。 それに比べて、平尾監督の方は首尾良くWC出場を決めれば、本選までの任期は約2年半ということになりますし、WC本選まではまだ1年以上も時間があるのです(予選で負けたらお話になりませんが)。 この差は非常に大きいはずです。 残り1年以上もある時間を有効に使い、協会がしっかりとサポートし、積極的に海外遠征を行って(これは絶対に必要。『サッカーWCを見て思ったこと』のところに書きました)何とか本大会で良い成績を挙げて欲しいものです。

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