1997/5/18
日本代表 VS カナダ代表
【第二回パシフィックリム・チャンピオンシップ】


日 本

VS
カナダ
TRY
4


3

GOAL
3


2

PG
2


3

DG
0


1

合計

32


31



出場選手
FW
溝辺圭司
東芝府中

薫田真広
東芝府中

浜辺 和
近鉄

桜庭吉彦
新日鉄釜石

田沼広之
リコー

中村  航
東京ガス

伊藤剛臣
神戸製鋼

ゴードン
東芝府中
HB
村田 亙
東芝府中

岩渕健輔
青山学院大
TB
ツイドラキ
トヨタ自動車

元木由記雄
神戸製鋼

マコーミック
東芝府中

増保輝則
神戸製鋼
FB
今泉  清
サントリー

途中交代:ツイドラキ→大畑


まだ感動の余韻に浸っています。
前半17分、カナダの中央付近へのトライで始まったこのゲームは、80分間、観衆を飽きさせることなく、感動の結末を用意してくれました。特に最後の10分間は、私も絶叫し続けたためか、喉のみならず、頭まで痛くなり、血管が切れるかと思いました。あのスコットランド撃破以来の感動の余韻が、いまだに私を包み込んでいます。

個々に検証してみましょう。
プロップはスクラムも踏ん張りました。自陣ゴール前、渾身の力を込めて押し込んで来るカナダのスクラムにも簡単に負けることなく良く辛抱しました。
フッカーの薫田選手、見事なスローインでジャンパーとの呼吸もぴったり合い、マイボールを確実にキープする原因となりました。ロックや伊藤選手のキャッチングも見事でしたが。
そのロック陣、良く走りました。キックオフからのキャッチングも数人で堅実なサポートを組んで、マイボールとしていましたし、相手ボールへの働きかけも今までのようにやみくもに突っ込んで行くのではなく正確にボールのある所で、プレッシャーをかけていました。
第三列は、『私の選ぶジャパン』通りの三人でしたが、私の提言通り(笑)オープンに伊藤選手、ブラインドに中村選手という布陣l(第一回ワールドカップのNZスタイル)を取り、それが美事に機能して、今日の勝利の影の立役者となりました。(自分自身の目利きの鋭さにもあらためて唸ってしまいました)

伊藤選手の抜群の運動量による骨惜しみないサポートとタックル、(彼は試合後も全然疲れた素振りも見せず、お得意の両手を高く掲げるポーズをとってご機嫌でした。まったく人を食った面白い選手です。あのスタミナから見ると、彼だけは続けてもう一試合くらいできるかもしれません・・・・)
大東大の主将時を思い出させるような、中村選手の気合のこもった一撃必殺のタックルと最後まで途切れなかった集中力と掛け声。
ゴードン選手はもうあらためて言うことなど何もありません。

村田選手、今日はほとんどポカもなく、結果的に勝負を決めることになった最後のトライは彼のスピードがあってこそのものでした。
岩淵選手、いいですねえ。臆することなくラインを動かし、度胸のあるところを見せてくれました。多少冒険しすぎ、と思われるかも知れませんが、これが彼のスタイルなのかも、と思います。このまま順調に伸びて欲しい逸材です。兎に角、ここぞ、と言う時のパスが正確です。

センター陣、これも『私の選ぶジャパン』の、まさに鬼に金棒の元木選手とマコーミック選手のペア。一次防御を突破された後、二の矢、三の矢となり、相手の攻撃の目を摘み取っていたのは、このセンター陣とフランカー陣に他なりません。後半30分頃、繰り返されるカナダの波状攻撃に対して、ゲインを切らせなかったジャパンのタックル、サポート、フォローは、地味なプレーながらも秩父宮の観客から大きな拍手を浴びていました。

途中からツイドラキ選手に代わって入った期待の大畑選手でしたが、今日は派手なトライよりも地道なプレーで貢献した、というところでしょうか。
散々、苦言を呈してきた増保選手でしたが、今日のようなプレーをしてくれればもうあまり言うことはありません。このまま酒もギャンブルもせず、精進してください。
最後に今泉選手。良いプレーも見せてくれましたが、まだまだです。ハイボールのキャッチングに対する安定感もなく、フェアキャッチの後のイージーなキックのミスもありましたし、彼がボールを持つたびに<何か変なことしないでね>、と不安になったのは私だけではないでしょう。フルバックに求められるのは、何よりも安定感なのですから。

トライについても触れておきましょう。
この試合、ジャパンは四個のトライを取りました。
最初のトライは、カナダに先制トライを許した僅か二分後、ラックサイドを伊藤選手が抜け、彼の持ち前のスピードと突破力で右中間に押え込んだもの。
このトライは大きかったと思います。

下馬評では今回のカナダは相当手強く、香港にさえ敗れている日本に勝ち目は薄い、と思われていたはずです。そのカナダに先制トライを奪われ、このまま無し崩し的に惨敗してしまうのでは、という雰囲気もあったのですから。
二つめのトライは久々に完璧なジャパンのトライを見た、という感じです。今日のポイントでもあったP&GOからの素早い展開から、岩淵選手がうまく相手の穴を見つけ(彼はこの辺りの状況判断に非凡なものがあるようです)ゴードン選手(ちゃんとここに絡んでるんですね)からのラストパスも増保選手の手に奇麗に渡り、右隅から中央付近まで良く回り込んだトライでした。この回り込むこともキッカーのいないジャパンにとっては非常に重要な事だと思います。

三つめもやはり連続攻撃、右過ぎにウイングを余らせてとった素晴らしいものでした。
そして四つめが勝負を決めた村田選手のトライです。
後半30分過ぎ、4点リードのジャパンを執拗に攻め続けるカナダ。ジャパンも素晴らしいタックルで攻撃を寸断するも、じりじりと日本ゴールへ迫る。結局ジャパンの左サイドの人数が足りなくなり大畑のタックルも届かずトライを許し、27-28と逆転されてしまいました。スコアボードの時計は40分近くを指しながらも1点差ですから、まだ勝負は予断を許さなかったのです。然しこの後のキックを村田選手がミスして、相手ボールとなってしまい、逆に攻め込まれ、伝家の宝刀DGをカナダのSOリースに決められ、誰もがジャパンお得意の『善戦負け』を連想したはずです。

しかし、今日の主審はロスタイムを正確にとっていたのが幸いしました。
まだまだプレーは続いたのです。
(あまりにも長いロスタイムに、ジャパンがリードした後は手のひらを返したように、『早くおわれー』と怒鳴ってしまいましたが・・・・)
この直後、村田選手のノーホイッスルトライでジャパンは劇的な勝利を治めることとなりました。秩父宮の観衆からスタンディングオベーションが起きたのは言うまでもありません。
(はっきり言って、この辺はもう誰がどういうプレーをしたのか正確には覚えていません。わかっているのは、村田選手と思しき選手がサイドを抜けて左隅へトライを決めたことだけです。)

勿論この勝利に浮かれているわけにはいきません。
まだ問題点がないわけではありません。
しかし、しばらくはこの余韻に浸っていたい気分です。
【1997年5月18日、記=== 試合が終わってまだ七時間です】