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ある日、ダングは自分のパスポートを自慢していた。
「ライク・ユアズ」
でも、白紙のパスポート。
飲みながら、ABIKOに連れて帰ろうか、とも思ったものだ。

年末、ダングからメールが来た。

「妹のゼンがニューイヤーズのあいだ、××ビーチの家にいます。とても静かでいいビーチです。一緒に行きませんか?ニューイヤーズはそこで過ごしましょう」

「あなたのフライトを早く教えてください。空港まで迎えに行きたいのです」

「この前、あなたはバンコクのチャイナタウンが好き、って言ってましたね。チャイナタウンで一泊してから、××ビーチに行ってもいいですね」

あの年末、結局チケットが取れなかったのだ。

大晦日の日、ダングからメールが来た
ソイ・ダイヤモンドから最後のメールだ。

「いま、どこにいるの?ホテルには電話しました。あなたは泊まってないって。××ビーチの街にいるの?すぐケータイに電話ください」

もう2月になった。
あれ以来、ダングとは連絡を取っていない。
正月休みはABIKOでひとり沈没していた。
昼ごろ起きて、ガスストーブの火を見ていた。
そんなとき、思ったものだ。
いまごろ、南のビーチの街で、ダングやゼンと、また一緒に暮らしている自分を。

夢が、怖かったのかもしれない。

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