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遠ざかる街に

 

ふとピノキオの寓話を思い出した。
ゼベット伯父さんの家でピノキオは深夜眼を覚める。窓の外には華やかな馬車が止まっている。
「ピノキオもこの馬車に乗ろうよ。この馬車は<遊びの国>に行くのさ。そこでは来る日も来る日も遊んで暮らせばいいんだ」
ピノキオは、ゼベット伯父さんとの約束を忘れて、馬車に乗ってしまう。
馬車は<遊びの国>に着いた。
そこでは、本当に毎日遊んでいれば、よかった。
ところが、ある朝、起きると、ピノキオの鼻が伸びているのだ。
「これじゃ恥ずかしくて外に出れない」
ピノキオは<遊びの国>から逃げる。

もともと教育用にいろいろな「意訳」の出ている寓話だし、あやふやな記憶からの記述だ。しかし、このような場面はあったような気はする。

その後、ピノキオの鼻がどうなったかは、思い出せない。

わたしは、ピノキオではないので、鼻は伸びなかったが、空しく、切なかった。
旅の終わりはいつもそうだ。
今回はとくに・・・

東京では、いつもの日常が待っていた。
あの街が、ダングたちの顔とともに、遠ざかっていくのがわかった。

あの街。
ピノキオが馬車で連れて来られた街。
海と酒と女性のいやに優しい街。
遠ざかる街に
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