川沿いの桜並木の美しさに目を惹かれ、路肩に車を停めた。

FMラジオは、昼間から酔っぱらって盛り上がっている人々に

インタビューを繰り返している。

抜けるような青空、絶好の花見日和。

エンジンを切り、車を降りてゆっくりと川沿いを歩く。

追いかけっこをする子供達が、僕を後ろから追い抜いていく。

他よりもちょっと大きな木の下に、一人の老人が座っていた。

グラスに入った日本酒を飲む老人の左手には、

小さな黒い額縁に納まった着物姿の女性の写真が握られていた。

ふと僕は小さな桜の枝を2本折り、またゆっくりと歩いて車に戻った。

幌を開けたままにしておいた車のシートに、

風に揺らされて散った桜の花びらがまばらに散らばっていた。

車に乗り込み、助手席の足下に摘み取った桜の枝を置き、エンジンをかける。

今は言葉を交わすことも、一緒に酒も酌み交わすことも出来ないけれど。

・・・墓の下の親父に。

今年も綺麗に咲き揃った地元の桜を見せてあげたいなぁ、と思った。

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