「どうして・・・この子を産んでしまったのだろう。」

20になって結婚し、1年で離婚した。

別れてから半年後、私は「他人」の子供を産んだ。

離婚したときに、身籠もっている事を知らなかった訳ではなかった。

友達は言った。

「その若さでコブつきなんて・・・」

親の猛反対を無理に押し切って、駆け落ち同然で進めた結婚。

両親は、そんな私と電話をすることさえも拒んだ。

毎晩、夜泣きに悩まされた。

自由に出かけることも、ままならなかった。

一人で子供を育てることがこんなにつらいなんて。

「この子がいなければ・・・」

泣き声が、時間を追う毎に苦痛に変わっていく。

・・・私はもう、限界だった。

もう、声を聞きたくない。

首元に向けて、右手が、ゆっくりと動きかけた。




チャイムの音に引きずられて扉を開けると、老夫婦が立っていた。

結婚式以来の対面だった。

テーブルの上に置かれたお茶を挟んで数分間の沈黙が続いた後、ゆっくりと話し始めた。

「あなたにとっては、もう、息子は他人かもしれません・・・でもね」

噛みしめるように、続けた。

「私たちにとって、この子は初孫なんですよ」

そう言って、風呂敷包みから小さな紙袋を差し出した。

お金だったら、受け取らなかっただろう。

中には・・・赤い小さな手縫いの洋服が入っていた。

帰り際、玄関で見送る私に、それまで全く口を開かなかった義父が、ゆっくり頭を下げた。

そして、一言だけ、つぶやいた。




「産んでくれて、ありがとう。」




誰でもよかった。

ただ私は・・・その言葉が聞きたかった。

私はその場で泣き崩れることしか出来なかった。

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