平成10年 1月27日
厚生省エイズ動向委員会
エイズ動向委員会は、2ケ月毎に委員会を開催し、都道府県・政令市・中核市からの報告に基づき患者発生動向を把握し、公表してきた。また、1年間の発生動向を取りまとめた総括的報告も毎年1回行ってきた。今回は、従前に比べより詳細な解析をし、我が国における対策の基礎資料とすべく、年報作成作業部会を設けて、報告書を取りまとめた。なお、国際的比較を容易ならしめるため図表の形式なども工夫した。
平成9年の発生動向については分析結果に詳細に述べられているが、委員会として特に注目した点は以下の通りである。
(1) 欧米諸国の幾つかでは新規感染が減少に転じていると報じられているのに対して、我が国の平成9年の報告数は、HIV感染者397件、エイズ患者250件となっており、いずれも前年を上回った(エイズ患者は過去最高)[図ア]。その結果、累積感染者・患者数は、それぞれ2,490件、1,056件となっている。従って、我が国では依然として感染の拡大傾向が続いているとの認識を持つ必要がある。
(2) 異性間性的接触・同性間性的接触による感染の増加傾向が認められ[図イ、ウ]、平成9年においては国籍・性別では日本人男性(HIV感染者の58.9%, エイズ患者の68.0%)が多数を[図エ]、感染地別では、国内感染が多数(HIV感染者の56.7%, エイズ患者の46.8%)[図オ]を占めている。従って、特に日本人男性の国内における性感染症としての側面の重要性が高まっているとの認識を持つ必要がある。
日本人の場合、HIV感染について年齢別に見ると、男性異性間性的接触による感染は45〜49歳、男性同性間性的接触による感染は25〜29歳及び女性異性間性的接触による感染は20〜24歳がピークとなっており[図カ]、こうした年齢層を中心としたきめ細かい啓発活動に結びつける必要がある。
平成9年の患者・感染者の報告は、関東甲信越ブロック(HIV感染者の75.8%, エイズ患者の74.8%)の比重が大きいが[表ア、イ]、前年と比べ全てのブロックで患者感染者の増加が認められ、地域に根ざした予防から医療体制の整備にまで及ぶ総合的対策の強化が望まれる。
北海道 | 東北 | 関東・甲信越 | 東海 | 北陸 | 近畿 | 中国・四国 | 九州 | 合計 | |
HIV感染者(H9) | 2 | 4 | 301 | 38 | 1 | 37 | 8 | 6 | 397 |
HIV感染者(累積) | 13 | 32 | 1,934 | 194 | 18 | 199 | 43 | 57 | 2,490 |
人口10万対(累積) | 0.23 | 0.33 | 4.28 | 1.33 | 0.57 | 0.96 | 0.36 | 0.39 | 1.98 |
北海道 | 東北 | 関東・甲信越 | 東海 | 北陸 | 近畿 | 中国・四国 | 九州 | 合計 | |
エイズ患者(H9) | 5 | 10 | 187 | 16 | 1 | 21 | 1 | 9 | 250 |
エイズ患者(累積) | 21 | 27 | 756 | 100 | 10 | 85 | 17 | 40 | 1,056 |
人口10万対(累積) | 0.37 | 0.27 | 1.67 | 0.69 | 0.32 | 0.41 | 0.14 | 0.27 | 0.84 |
「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」において、「当該感染者が血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる場合には、当該感染者について報告することを要しない」となっているため、かかる感染者の状況は「HIV感染者発症予防・治療に関する研究班」の調査研究の報告によっていたところ、平成10年1月に研究班中間報告を受けたので、参考までに関連諸表に記載した。研究班では、今まで把握しえた症例の重複報告などの整理作業を続けており、確認できた症例のみ報告を頂いたものと理解し、協力に感謝するものである。
年 | 献 血 件 数 ( 検 査 実 施 数 ) |
陽性者数 ( )内女性 |
10万人 当たり |
件 | 件 | 人 | |
1987年 (昭和62年) |
8,217,340 | 11 ( 1) |
0.134 |
1988年 (昭和63年) |
7,974,147 | 9 ( 1) |
0.113 |
1989年 (平成元年) |
7,876,682 | 13 ( 1) |
0.165 |
1990年 (平成2年) |
7,743,475 | 26 ( 6) |
0.336 |
1991年 (平成3年) |
8,071,937 | 29 ( 4) |
0.359 |
1992年 (平成4年) |
7,710,693 | 34 ( 7) |
0.441 |
1993年 (平成5年) |
7,205,514 | 35 ( 5) |
0.486 |
1994年 (平成6年) |
6,610,484 | 36 ( 5) |
0.545 |
1995年 (平成7年) |
6,298,706 | 46 ( 9) |
0.730 |
1996年 (平成8年) |
6,039,394 | 46 ( 5) |
0.762 |
1997年 (平成9年1〜12月) |
5,998,504 ( 速 報 値 ) |
54 ( 5) |
0.900 |
注) | ・昭和61年は、年中途から実施したことなどから、3,146,940件、内陽性件数11件(女性0)となっている。 ・抗体検査陽性の献血血液は、焼却されており、使用されていない。 |