その1 今まで一番怖かったフライト@2001-12-25
勘 |
の良い人はタイトルの日付を見て、推測できることでしょう。
そう、パリ発マイアミ行きのアメリカン航空機(AA063便)内で乗客が靴のかかとに仕掛けたプラスチック爆弾に点火させようとして捕まったテロ未遂事件の2日後。
ちょうどその時期に私はHoustonへ出張に行っていた。
本当は9月中旬からHoustonへ3ヶ月程度の長期出張の予定だった。そのために9月頭に諸事情により引越しを無理矢理した上で出張準備をしていた。
しかし9.11の事件が起きたことから出張が延期され、12月の上旬に会社サイドからOKが出たと同時にすぐにフライトチケットを押さえようと旅行代理店へ問い合わせた。
とりあえず今回の出張期間は2週間、年明けにもう一度3ヶ月間滞在することにした。正月くらいは日本で休みたいし・・・。
すると旅行代理店が電話口でこう言った、
“クリスマスにテロが発生する可能性があることから、12/23(日)と12/24(月)の両日は米国では国内線含めて全て運行中止とのことです。
従いまして現地発12/22(土)か12/25(火)のどちらかになります。
現地12/22発は満席状態でしてキャンセル待ちで往復費用は約13万円、12/25発では往復7万円弱で席も余裕があります。
いかがしましょうか?“
との話。
そのころの私は出張費用の経費削減を図ってできるだけ海外出張に行けるチャンスを他の人たちにも作ろうととっても意欲的だった。
そして選んだチケットは現地発12/25のフライト、おぉ〜6万円もコストセーブできたと喜び、そうこうして12/12に出発した。
現地でコツコツと働いているある日、同僚2人が別件で3日くらいの滞在でHoustonへ来た。しかし彼らは12/22のフライトで帰ってしまった。
何だよ〜っ、さっさと帰りやがって!
とブツブツ言いながらも12/23(日)を迎えた。
せっかくに日曜日だったのでゆっくり昼まで寝てからテレビをつけた。CNNが大好きなのでチャンネルをCNNに合わせた。
するとトップニュースでテロ未遂事件が伝えられていた。
ボケーっとしながらも“あれっ、今日(23日)と明日(24日)は米国内では一切飛行機が何で飛んでいるの?(後から聞いたら国内線だけは飛んでいた。)”
次に考えたコトは“とんでもないことが起きたゾ!”ということと、“25日のフライトどうしよう?“ということ。とにかく猛烈怖くなってきた。
人間は一度悪いことを考え出したらドンドン物事を悪い方に考えてしまい、収集がつかなくなる。私も例外なく考え始めた。
24日はあくまでもイヴ、本当のクリスマスは25日。乗った飛行機がハイジャックされて爆弾なんかさせたらもう終わりダ!
どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・・・・。
今更ではあるが、経費をケチってしまったことを後悔したと同時に、22日に発った2人が心底うらやましかった。
しかし航空券がFIXだったことから今更フライトを変えるわけにもいかない。
結果、とにかく自分のフライトはテロなんか絶対に起きないと、何の根拠もなく25日のフライトで強引に帰ることにした。
25日当日、IAH空港では当然のごとく靴まで脱がされて厳重にX線検査している。
今となっては当たり前のような光景だが、当時は異様だった。
そして9:50のBoarding timeになったが何のアナウンスもないだけでなく、ゲートは閉まったまま。ただし飛行機は目の前にある。
離陸時間の10:10になっても航空会社サイドは“ちょっと待て”の一点張り。遅れる理由の説明は何一つない。
だんだん背筋がぞぉ〜っとしてきた。
まさか、テロリストが乗客に紛れてこのフライトに乗るという情報でもキャッチしたためにその調査で遅れが出ているのか?
うぅっ、どうしよう〜っ?
しかしそうこうしているうちに離陸予定時間から30分遅れてようやくゲートが開いた。
が、今度はゲートのところで何やらおかしなことを始めている。
な、な、なんと荷物検査とボディチェックを再び念入りにおっぱじめた。
乗客にとってはこれ以上に恐怖をあおるような行動を取り出したと言っても過言ではない。
当然私もボディチェックとカバンの中を開けさせられ、パソコンチェックも再度させられた。
で、飛行機はすぐに飛ぶのかと思いきや、今度はゲートを閉めてからまた30分動かずにそのまま待機。
もうはっきり言って怖くて怖くてたまらない状況、小心者の私は内心ブルブル震えている。
でもそこで考えた。もしこのフライトが本当にテロに会ってしまったらどうしよう?
きっと起きていたらパニックに絶対なるだろう、そんな状態で死ぬのは絶対嫌だ。
じゃあ、どうしたら良いか?
そうか、寝てればいいんだ。たとえテロが起きても寝ていれば気がつかないし、爆発しても一瞬で私の一生が終わるからパニックと共に死を迎えなくても済む。
よし、絶対何が起きても起きないゾ!と心に誓い、飛行機が飛び始めてからとにかく寝た。
離陸後1時間経過したころに目が覚める。Dallasの上空あたりを飛んでいる。まだ生きているし、何も起きていない。
よし、また寝るゾ!
それから3時間後(離陸してから4時間後)に再び目が覚める。
外はちょうどカリフォルニアから太平洋へ出る、つまり米国から離れるころ。まだ生きているし、何も起きていない。
米国さえ離れてしまえば、テロの警戒はもう大丈夫だろう、きっと。
と勝手に思い込み、三度寝た。
こうして何とか無事に成田へ到着することができた。
日付は12/26へと変わり、日本ではもうクリスマスが終わっている。肌寒い中を何事もなかったように3時間かけて帰宅した。
後日同僚から聞いた話によると、日本では東シナ海で海上保安庁が北朝鮮船(当時はまだ不審船)を撃沈したニュースでごった返していたとのこと。
確かに12/23のCNN(Houstonに滞在中)ではテロ未遂事件がトップニュースで、この撃沈のニュースが2番目で繰り返し放送されていた。