テストシナリオ01 プロローグ

テストシナリオ01 プロローグ

○Prolog of silver dagger

 凶報はいつも突然にやってくるものである。しかも頼みもしないのに友を連れて。
古代の詩人はそう詠ったが、まさしくこの砦の兵達は見知らぬ凶報の神を呪いたくなったろう。

 イルニアシア大陸の中央よりかなり東に行ったところにある大平原の中に建つ国”草原の騎兵王国”エルベラン王国。その名の通りクレセント王国と並ぶと賞される騎兵兵団を有するこの国の不運はクレネリアス帝国の隣国であったことだろう。
”好色皇帝”とまで言われたクレネリアス帝国現皇帝ジギスムントが、13歳になったばかりのエルベラン王国の第3王女を自らの宮殿へ召し上げようとしたところに今回の戦は端を発していた。
表向きは”両国の親善のための留学”としていたが、ジギスムントが王女を後宮に召し抱えようとしていたのは明白であった。
なぜならば王女は齢13歳にしてすでに近隣諸国に東部1の美姫として名高かったからである。
もちろんエルベラン国王クリス・ハーンは断固として拒絶したが、ジギスムントはそれくらいで引き下がるような男ではなかった。
実力で美姫を手にいれんと些細なことに難癖をつけ、エルベランに攻め込んだのだ。
それ以来数年、幾度かの小康状態を保ちながら今現在も戦は続いていた。

 戦の最前線にあるいくつかの砦の一つにルクスという名のものがある。
  2本の大河が交わる中州に建てられた200名ほどが常駐する砦であった。
主戦場からは遠く離れており、また近くに大きな町もないことから、今までそれほど大きな戦にはならなかったあたりである。
しかし敵帝国領内に比較的に近いこともあり、敵の後方攪乱の一翼を担っている砦でもあるのだ。
そしてクレネリアス帝国がそのことにようやく気がついたとしたら・・・・・
 2日前いつものように見回りの兵がルクスの発っていた。
最近は敵の軍勢の影も見えず、見回りが発つのも毎日から二日に一度に減らされていて兵士達は少しでも労働が減ったことを喜んでいた。
夏の終わりまだ厳しい日差しの下でさえずる小鳥達のように、平穏な日々が続いていた・・・・はずであった。
その二日前に発った見回りの兵が帰ってくるまでは・・・・・。
クレネリアス軍がにわかに大挙してこのルクスの砦に押し寄せてきていたのだ。
旗印から相手が”血塗れの”というふたつ名で呼ばれるアギウス将軍であるらしいことが分かったのだ。
守備隊超や百人隊長達は砦の一室に集まり、対応を協議し始めるのだが・・・・・


○In room........

シルバーダガーは自分の部屋の窓際で銀のダガーを弄んでいた。
部屋は小さいながらも個室で、むろん彼以外の姿もなく、窓の外の張りつめた空気とは裏腹に穏やかな時が流れていた。
すでにクレネリアスの大軍がこの砦目指して行軍して来ていることは知っていた。
常駐の兵200人程度の小さな砦のことだ。
さして労力を要しないでも、たいていの情報は手に入れることが出来た。
もっとも彼の場合は、その情報を受け取る立場の方がより近いのだが。
 クレネリアス軍来襲の報を聞いても、彼は驚きはしたものの意外だとは思わなかった。
この砦の目的を考えれば、むしろ遅すぎたくらいなのだ。
 そして10倍の敵、と聞いても彼の脳裏には不安の影すらよぎらなかった。
彼自身はどんな状況の中でも生き残れる自信があった。
それは生まれいでてより、盗賊として数十年過ごしてきた男の自信であった。
− クレネリアスがこの砦に攻めてくるまで後7日あまり。さてどうするか・・・・・

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