ニムの木かげの家池上永一インタビュー@SFセミナー2001
2001.5.3 

レキオス、翔ぶ!


〜会場でのメモから印象的な部分を書き出してみました〜

 一見フツーの少年のように見えた池上氏は、いったん口を開くや、そのぶっ飛びぶりを発揮し、司会の鈴木力氏はすっかり毒気を抜かれっぱなし(がんばれ、チカラっ!)。聴衆は爆笑しっぱなし、受けまくり、私は何度涙を拭いたことか。

 「作品を書くのに頭は使ってない、ひとりでに手が動いていた、自動書記状態(とキーボードを打ちまくるジェスチャー)」。
 『レキオス』は1500枚あったものを現行の体裁にするために500枚削ったという。その部分にあった空飛ぶろみひー、マユミがみゆまーになる話、サマンサとコニーの対決の真実(オフレコ)、などなど。池上「読みたい人〜?」会場「はいーっ!」池上「ネットで流しまぁす!」(拍手)

 デニスは作者もすごく好きな主人公で、「ここが正気の座標軸」だそうだ。「主役は作者と一緒に歩んでる。悪いことしてもマジメなの!脇役は、何しててもいいんじゃない、ねぇ?」振られたチカラ、悩む。

 サマンサのコスプレ(40着くらい)は色々な職業のコスプレをさせていたがそのうちにネタ切れになり、そのときに役立ったのが『世界の衣装をたずねて』で、それ以降俄然コスプレが絢爛豪華になった。プロットを作るのはむずかしい、無理だなァ。創作意欲をかき立てる曲は、青木亜依『アンドロメダの異星人』で、これは何遍も何遍も聴いた(会場にその曲が流れるが、ピョロピョロピョロと始まるその曲は、これぞ『レキオス』のサントラか、という、ぴったんこの曲!爆笑)。
 「とにかく頭を使わない方がうまく書ける、これは鉄則。」

 後追いで取材をした話。下着の取材など、また通産省(当時)の○○室へ行ったときは役人に「馬鹿を輸出してはいけない!」とばかりの仕打ちを受け、あとでループ状無限ファックスを送った話。沖縄の基地へ取材に行ったときにはデニスみたいなかっこいい女性兵士がいたので「デニス〜」と手を振りたかったが、終始ライフルを向けられていたのでそれどころではなかった。コスプレパブには編集の人たちと取材に行ったが、抵抗のあるコスプレも色々演出してもらってやってみると、姫川あゆみのように「つかんだ、この感覚!」という心境になった。

 セヂについて。『おもろさうし』に出てくるのは「霊力」のようなものだが、実際はそれとも違う。マナに似ている?物質、非物質に転移していくある種の感覚。コニーが看板にバン!と撃ったときに「つかんだぜ、セヂの感覚!」(爆笑)と思った。質疑の際にもセヂは話題になった。「スターウォーズのフォースみたいなものか?」という問いには、それとも違うと言う。生命力みたいな概念で、一つ所にあるものではなく転移するもの。人間と物質の間のグレーゾーンにあるもの。デニスがセヂを集められても、あれほど願ったのに父親を救えなかったのは、集めたセヂの現れ方というものが、その人その人で違っているからだ。セヂを集めてただ取っておく人もあれば、どのようにしてかその手続きはわからないが、人に配る人もある。デニスは、父親を救う形には、セヂを使えない。

 「魔術って、言葉なんだ!」気持ちがあって言葉があって、それがぴたっと重なったとき言葉が何かを作用する。

 「小説は、構造、骨格を登場人物達が飛び越えてなんぼのもの。」小説は自分から離れてゆくもの、飛び越えてゆくものだ。巣立つ、子育てのようなもの。

 鈴木「小説は作者にとっても意外性のあるものですか?」池上「あるよ〜、意外性!」

 「小説の中にいる、ってことは、パッ!としたことなの。カメラを抱えて、小説の中を(登場人物と一緒に)駆け抜けたい」

 自分のルーツは沖縄本島にあって、住んでるのは八重山。宗教は本島で、生活習慣は八重山。東京にいると沖縄がナンセンスに、沖縄にいると東京が馬鹿らしいとおもう。

 パースペクティヴが二つぶつかり合うのがマジックリアリズム。東京を舞台にしたい、と思っているが、どこがファンタジーの入り口か見つけかねている。沖縄にファンタジーがあると思われているが、生活している沖縄にファンタジーはない。語り手がいて初めてファンタジーになる。

 「原稿を持っておさんぽしてると楽しいでーす」という意味不明?な発言。サマンサの出てくるところだけ、ろみひーの出てくるところだけを抜き出して持っておさんぽするとたのしいよー。鈴木「おさんぽ、ですか??」

 「これからの作品は?」いつ終わるのかなー、というものもある。(書くことで)パッとしたいね。血中やる気濃度が沸々と。東京の下水道や暗渠になっている川を取材したので、何かに使いたい。迷路のようではなく、きちんとしたパターンになっている。(取材した材料は)物語の密度とうまく一致したときに初めて使える。

 ファンレターがもっとも集まるのがサマンサで、女性からのものが意外に多い。ポーポー売りのマチーとガルーも人気がある。マチーとガルーのようなキャラクターがでてくるのは吉兆なんだ。ポーポーは、おいしい!

などなど。爆笑に次ぐ爆笑、わき起こる拍手。最高に面白いインタビューだった。昨年の雑誌『ムー』での東雅夫・『幻想文学』編集長によるインタビューでも、すっかり東へんしうちょうを喰ってしまっていた池上氏であったが、今日はそれを目の当たりに出来て実に楽しかった。マジックリアリズムの定義は、多分現在これが一番すんなり受け入れられている説だと思う。出典は何だったかな?

 終了後舞台袖に『風車祭』を持ってサインを頂きに行ったが、意外にふたたびフツーの感じにもどっておられ、サインも大変几帳面に書いてくださった\(^o^)/


ニムの木かげの家
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最終更新
2001.05.10 00:58:34