この『かめくん』評は筆者(目黒強さん)の許可を得て、下記のメールマガジンより転載させていただきました。筆者の目黒強さん、メールマガジン発行人のひこ・田中さん、有り難うございます。
【児童文学評論】 No.38 2001.02.25発行
http://www.ne.jp/asahi/book/1/
徳間デュアル文庫。「SF」ではなく、「空想科学超日常小説」という括り方が似つかわしい作品。
リストラされた「かめくん」は、ヒトではなくカメを募集している仕事を見つける。仕事の内容は、フォークリフトの運転。時には、荷物に紛れていることがあるザリガニイという怪物を退治しなければならない。実のところ、「かめくん」は、カメ型ヒューマノイド・レプリカメで、木星戦争において開発された兵器であった。レプリカメのジレンマ(自らの存在を疑う思考そのものもまたプログラムされたものかもしれない)を生きる、「かめくん」の「His−Story」。
映画『ブレードランナー』のレプリカントがカメの着ぐるみを身にまとっていたら奇妙ではなかろうか。そのようなことが許されるのは、ウルトラマンなどに代表される「特撮もの」の世界だから。イラストは、平成ガメラのデザインで有名な前田さんだし。特撮そのものの世界観は、もはや私たちが世界を特撮のようにしか生きられないからこそ、リアルなのだと思う。傑作。
(Copyright by 目黒強)
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