【無責任喩噺】カーディーラーにて

Sunday, January 25, 1998


 キャッチアップ・プロジェクトでお馴染みの 「KATOCHANの出鱈目放送局」 を、ここでも始めてしまおう。ただ、題名まで同じという訳には行かないので、【無責任喩噺】 とすることにした。


U「この新車、なかなかいいじゃないの。」
D「そうでしょうお客様。それに、M社自慢の純正カーステレオが標準装備ですよ。」
U「え、カーステレオ付いてるの?でも僕はN社のカーステレオが好きなんだけど。」
D「N社?あんなのダメですよ。やっぱりクルマを知り尽くしたM社のでないと。」
U「そんなことないでしょう。N社は音がいいし、使っている人が一番多いもの。」
D「でもね、M社の方が、ずっと性能いいですよ。」
U「僕はN社のが使いたいの!これ外して、その分値引きしてもらえないかな。」
D「ダメです。これは標準装備ですから、いわばタダで付いてるんです。」
U「タダ?そんなことないでしょ。これだって原価かかってるはずでしょ。」
D「いえいえ、値引きはムリです。それにこれね、そうそう簡単に外せませんよ。」
U「外せない?どうして?」
D「実はね、クルマと一体化してるんで、外すとクルマの性能に影響するんです。」
U「あはは、そんなの冗談でしょ。ホラ、ここのネジを回せば外れるじゃない。」
D「でもね、それじゃエンジンルームに、ぽっかり穴が開いてしまうんですよ。」
U「いいよ、かわりにN社のカーステレオをここに入れるんだから大丈夫。」
D「お客様、それは甘いです。それにまだ、ここにカーステレオの一部が残ってます。」
U「え、それはハンドルじゃないの。どうしてそれがカーステレオなのさ。」
D「いえいえ、これはまさしくカーステレオの一部です。ほら、ロゴが入ってます。」
U「そんなの屁理屈じゃないのさ。」
D「あのね、このカーステレオ、ハンドルに一体化したスイッチで操作するんですよ。」
U「変なの。そんなの嫌だな、普通のハンドルはないの?」
D「ありません。それにバッテリーも、このカーステレオ専用に新開発したんです。」
U「特殊品なの?あとで困るから、普通のバッテリーと取り替えてよ。」
D「それは出来ません。このクルマには、このバッテリーしか付きませんよ。」
U「困ったなあ。」
D「それともお客様は、ハンドルやバッテリー無しでクルマを走らせられますか?」
U「そんなムリなこと言わないでよ。」
D「では、こちらの旧式モデルにされますか?これはカーステレオ無しですよ。」
U「えー、いまさらそんな古いクルマなんて乗れないよ。」
D「そうでしょう、だからこちらのM社のカーステレオ付きの新車にしなさい。」
U「わかりました。他の店に行きますからもういいです。」
D「お客様、ご存じないんですか。世の中にM社以外のクルマなんてないですよ。
U「もういいです、僕はA社のクルマ買いますから。」
D「A社‥‥‥ははは、A社がM社の子会社になったのを、ご存じないんですか?」
U「まさか、ライバルのA社が?そんなの信じられない‥‥‥」
D「A社も今年から、純正カーステレオはM社製になるんですよ。」
U「じゃあ、N社のカーステレオはどうなるの?」
D「そんなこと私は知りませんよ。ま、いずれは、N社なんてつぶれるでしょうね。」


  いい加減にこの話題から離れようとしつつも、色々と入ってくる情報を見ていると、ついこんなたとえ話を思い付いてしまう。米国司法省の係官が、「アプリケーションの追加と削除」 を使用して、 Windows95 のシステムから インターネット・エクスプローラ (IE) をアンインストールしてみせると、Microsoft の担当者が「ほら、ここにも、そこにも、 IE が残っていますよ。」 と指摘したとか。困ったものである。

 もっとも、最近両者は和解したそうで、Microsoft も、IE 抜きで、しかも完全に動作する (当然だ‥‥‥) 最新の Windows95 を供給することに合意した、との事だ。しかしライバルの Netscape も、1月23日に突然、ブラウザの無償供給という対抗手段に出てきており、まさに 『肉を斬らせて骨を斬る』 戦いは、まだまだ続きそうである。


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