私の住む藤沢市は、「湘南」の中心地にあります。藤沢の名は知らなくても、「湘南」という名は、古くからの別荘地として、またオレンジと緑の配色の「湘南電車」、加山雄三・ワイルドワンズ・サザンオールスターズ・チューブと続く「湘南サウンド」などなど‥‥‥恐らく全国の皆さんがご存じの事でしょう。
正式には「湘南」という地域名は存在せず、相模の国の南部を表す「相南」が転じたとか、中国の同名の景勝地にあやかったとか、諸説紛々なのですが、某テレビ局が面白がって始めた「湘南ナンバーで走ろう」キャンペーンが、いつの間にか現実のナンバーになってしまうほど、湘南の名称は地域に密着しています。
「湘南」に、皆さんはどんなイメージを描くでしょうか。やはり『若者の集まる観光地』というイメージが強いと思います。それは概ね間違っていません。特に江の島を中心とする、いわゆる「湘南海岸」は、良くも悪くも‥‥‥夏は道が混んで車が動かないし、ゴミは散らかるし、海はサンオイルでギトギト、ナンパ族・暴走族のメッカ‥‥‥あ、ちょっとばかり、皆様のイメージを落としてしまいましたかね。
しかし、「湘南」の名を正式に地名に冠したここ「湘南台」は、同じ藤沢市内にありながら、少々「湘南」のキャラクターとは違うかも知れません。若者が集まるのはたしかですが、西には日本のインターネットの先進地でもある慶応大学藤沢キャンパス、南には牧場や実験農場もある日本大学生物資源科学部と、文教都市としての発展を図る新しい街です。
大学ばかりではなく、近くにはCDも無料で借りられる藤沢市総合図書館や、カブトムシ型のユニークな外観でも知られるスポーツのメッカ・秋葉台体育館もあります。
そんな湘南台にあって、ランドマークとしてはあまりにもユニーク過ぎる建造物がこれ‥‥‥けっして「ガスタンク」ではありません、巨大な地球儀です。その正体は「湘南台文化センター/子ども科学館」。地球儀の中身は、直径20mの宇宙劇場。プラネタリウムと全天周映画を交互に上映しています。
それにしてもこの外観。デザインコンペの入賞作品だそうです。あまりの意欲的デザインに最初は驚かされましたが、いまではすっかり街のシンボルとして馴染んでしまったようです。
地球儀を始め、中心部を構成する建築物のステンレスを主体とした素材の色は、周囲の光を反射して、微妙に変化します。これが、周辺に植えられた木々の緑と不思議なほど調和するようで、こんな角度から見ても、実に不思議な雰囲気があります。
地球儀の左側のドームはアマチュア無線局。ベテランのハムの皆さんが、ボランティアで子ども達を指導しているそうです。右側は時計塔。毎正時には、オルゴールに合わせ、網の中から森の動物達が顔を出して踊ります。
実は、この地球儀の後ろには、弟分に当たる「天球儀」があり、そちらの方が図体も大きくて立派なのですが、外観が完璧なまでにノッペラボーなので、ちょっと絵にならないのが残念なところ。天球儀の中は市民劇場になっていて、現代劇や小オペラの公演が頻繁に行われています。
三角形のガラスを組み合わせた屋根の下は、工作教室などが催される「ワークショップ」になっています。地球儀の周囲には空中回廊があり、その足元の茶色のセメントの中には、貝の化石や動物の足跡が、思わぬところに埋め込まれているなどの遊び心も。
もしかして、美術関係志向の学生さんかな?と思われるこの若者も、人工物でありながら、自然に必死に溶け込もうとする、けなげな(?)彼〜地球儀〜の姿に、思わずカメラを構えてしまったのかも知れません。
地球儀へは、小田急江ノ島線を湘南台駅で降りて徒歩5分、国道467号線(前・県道藤沢町田線)沿いにあります。間もなく、相模鉄道いずみ野線と、横浜市営地下鉄とが、湘南台駅へ同時に乗り入れを開始する予定で、ますます注目される存在になる事でしょう。
Original pictures were exposured on April 27, 1997 by Olympus C-400.
This page was updated on Tuesday, May 02, 2000
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