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8.上野駅には北斗星が似合う(1)

大改札口も自動化されてしまった

 1997年も暮れのある日、久しぶりに、懐かしい上野駅へ行ってみました。

 しかし‥‥‥明治以来、 無数の人々の思い出を刻み込んできたはずの由緒正しき上野駅を、 これほどまでに平凡な駅に変えてしまったのは、いったい何の力なのでしょう。

 私は東京生まれの神奈川育ちですから、上野駅とはあまり縁がないのですが、 それでも家族旅行した那須、修学旅行で出かけた福島、 合宿に行った赤城‥‥‥などの情景には、かならず上野駅の姿があったものです。

『首都・東京の北の玄関口』としての威容を誇りつつも、 遥か故郷から上京する人々を暖かく迎えてくれた正面口の大改札も、 無愛想な自動改札が並ぶ、ただの改札口になってしまいました。 天井の高さだけが、虚しく昔日の栄光を物語るようです。
当然窓口も自動販売機

 かつて、上野駅の構内放送は、東京の駅の中でも特別のものでした。 『ういの〜、ういの〜』という、東北訛りを聞くと、あぁ、 ここはたしかに日本の故郷、北の玄関口なのだな、と思わせたものでした。

 でも、これが新しい上野駅の姿。たしかに自動精算機は効率的で、JRの人員削減、 ひいては運賃値上げの抑制になっているでしょう。 でも何も上野駅が‥‥‥せめて東京でも上野駅くらいは、 駅員さんのいる窓口をちゃんと置いて欲しい。 故郷から見知らぬ大都会を訪れる人々を暖かく迎え入れて欲しい‥‥‥と思うのは、 単なる私の感傷なのでしょうか。

女性二人連れに場所を案内する改札員 初老の紳士にも親切に

 いや、諦めるのは少し早過ぎました。人数は少ないけれど、自動改札の脇には、 ちゃんと親切な駅員さんがいるようです。昔日のような威容はなくても、 「北の玄関」上野駅を職場に持った彼らは、 きっと誇りを持って仕事をしているでしょう。
出発表示板、「宇都宮」の隣に「札幌」が光る

 合理的なLEDの出発表示板には、塗装した鉄製の札のような貫禄はありません。 「宇都宮線」という通称も、今一つ親しめません。 やはり「東北『本線』」でないと。

「十和田」も「津軽」も消えてしまった今、行き先も近距離ばかりで‥‥‥おや、 『札幌』??‥‥‥そう、昔なら決して考えられなかった、津軽海峡の彼方の地名が、 まるで宇都宮の近所のように、何気なく表示されている。

これはもう、北斗星に会いに行ってみるしかないでしょう。 しかし「13番線」とは‥‥‥あまりいい番号ではないなぁ‥‥‥・。
旧団体待合室そばにある立ち食いそば屋

 おや‥‥‥ここは、かつての懐かしい「9番線」ではないですか??

 上野駅は地上ホームが1〜9番線、11番線からあとが高架ホームだったはずですが、 駅の拡張で番号がずれてしまったのでしょう。

 手前左にあった薄汚い団体待合室に、 学生時代に何度もお世話になった覚えがありますが、 今はただの通路になってしまったようです。

『上野名物・そばうどん』‥‥‥昔はこんな店はありませんでしたが、 流行に遅れたセンスの看板が、いかにも上野らしくて食欲をそそりますから、 暖かく許しましょう。何となく懐かしい味がしました。


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Original pictures were exposured on December 23, 1997 by Olympus C-400.

This page was updated on Tuesday, May 02, 2000

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