Last Up Date 22.Oct 1996

借地権の設定に伴う経済的利益

目次
  1. 概要
  2. 条文上の表現
  3. 課税されるべき経済的利益の性格
  4. 条文算式の誘導
  5. 「通常の利率」と「十分の五」の意味
  6. 譲渡所得で課税することの意味

  1. 概要

    借地権(建物または構築物の所有を目的とするものに限る。以下同じ。) 又は地役権の設定の対価として受ける権利金(経済的利益がある場合にはその経済的 利益の額との合計額)が、次に掲げる金額の十分の五相当額をこえる場合には、その 権利金は譲渡所得として課税される。

    1. その建物又は構築物の全部の所有を目的とするものの場合には、 その土地の価額。
    2. その建物又は構築物の一部の所有を目的とするものの場合には、 その土地の価額を床面積で按分した価額。
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  2. 条文上の表現

    借地権又は地役権の設定に伴い通常の場合に比し特に有利な条件で 金銭の貸し付け等を受けた場合の経済的利益の額は、次の算式により計算した 金額とする。

    経済的利益の額=借入金−借入金×複利現価率(注)

    (注)(10%−約定利率)の十分の五の利率に相当する複利現価 率を使用する

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  3. 課税されるべき経済的利益の性格

    通常の場合に比し特に有利な条件で金銭の貸し付けを受けた場合には、 通常の利率により計算した利息と約定利率により計算した利息との差額のうち、実 質的に贈与を受けたと認められる部分の金額を各年において課税するべきである。

    その金額は借入金の元金をA、実質的利率をrとすると次の算式で 表現される。
    各年分の経済的利益の額 = Ar
    n年分の経済的利益の額 = n(Ar)

    このn年分の金額は実質的に過去の土地の値上がり益であることから、その譲渡 した年分の譲渡所得として一気に課税することにより、課税の公平化を図ろうと いう趣旨であると考えられる。

    しかし本来ならば、n年間かけて実現する受贈益なので上記の金額を そのまま使うのは不適当である。そこで、この金額に複利現価率を乗じた計算し た現在割引価値に対し課税をする方法が考えられた。
    つまり、複利現価率をQ^nとした場合

    n年分の経済的利益の額 = n(Ar)Q^n
    となる。 目次へ戻る

  4. 条文算式の誘導

    2.の条文算式を3.と同じ記号で表現すると
    経済的利益の額=A−AQ^n
    3.の式を上記の式に展開する。

    まず、複利現価率の意味を考える。例えば利率rが10%と仮定した場合、 1年後の110円と今の100円は同じ価値である。1年後の110円を現在 価値に直すと
    110円×(1/1+0.1)=100円
    つまり
    110円×{1/(1+r)} =100円 となる。
    ∴Q^n={1/(1+r)}^n……………………………(イ)
    1年目の利息の現在割引価値=ArQ^1
    2年目の利息の現在割引価値=ArQ^2
    3年目の利息の現在割引価値=ArQ^3
    なので、
    経済的利益の額=Arq+ArQ^2+ArQ^3+……+ArQ^n
    また、等比級数の和の公式「初項×(1−公比^n)/(1−公比)」なので
    経済的利益の額=ArQ(1−Q^n)/(1−Q)
    ここで、Q^n以外のQに(イ)を代入
    =Ar{1/(1+r)}(1−Q^n)/{1−(1/1+r)}
    =Ar{1/(1+r)}(1−Q^n)/ {(1+r−1)/(1+r)}
    =Ar{1/(1+r)}(1−Q^n)/ {r/(1+r)}
    =A{r/(1+r)}(1−Q^n)/ {r/(1+r)}
    =A(1−Q^n)
    =A−AQ^n
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  5. 「通常の利率」と「十分の五」の意味

    この通達では、「通常の利率」を10%と規定している。この規定は 実際に経済的利益を測定することよりも、そのような租税回避行為自体を無意味に する為に設けられているため、抑制効果を狙ってこのような高い利率であると 考えられる。

    この場合、「10%−約定利率」で計算した利息の額が受増益となる が、これに通常の課税(雑所得等)を行なうと手取り利回りはもっと少なくなる。 この課税の負担率を便宜的に50%と定め「十分の五」としたと考えられる。

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  6. 譲渡所得で課税することの意味

    これまでの計算は、支払うべき利息の将来に向かっての金額の計算 でした。しかし、その金額を譲渡所得の金額上総収入金額に算入するのは、その 土地の過去の値上がり益が、その時にその価額で実現したと考えるからである。

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