早起きは苦手である。

およそ午前中に起きるなんて事は拷問である。それが6時には起きなくてはいけないのである。今日は南ゴビのツーリストキャンプに向かう。8時には国内線に乗らなくてはいけないので、集合が7時過ぎである。南ゴビには2泊の予定であるが、ゲル(いわゆる皆さんがパオって言ってる奴ですね)生活なので、荷物をシンプルかつ生き延びるための用意をしなければならない。ツーリストキャンプっていうぐらいだから、まさにキャンプする覚悟がいるのである。自分で買った旅行書や、代理店からもらったパンフには様々な脅し文句が書いてある。お湯は出ないとか、すぐに停電するとか(これは街でも同じとのこと)、トイレには紙があっても硬いとか、、、その他いろいろ。

昨晩は疲れていたので、何もしないで寝てしまっていた。その準備を朝しなくてはいけないのである。

私の朝は非常にゆっくりとしている。目覚めが非常に悪いので、ぼーっとしながら熱いシャワーを浴びて、髪を洗って、ヒゲを剃って、身繕いを諸々すると、起きてから家を出るまでに1時間はかかるのである。勿論それからちゃんと食事をとる。

今回モンゴルに行くにあたって、お湯が出ないなどの理由からヒゲは剃らずにのばすことにしていた。それで20分近くは節約できる。だから、ぎりぎりまで寝て、朝シャワーを浴びて、旅支度をし、食事をとるには6時起きとなるのである。昨晩疲れて寝てしまったものの、目覚ましはきっちりかけていた。団体行動、迷惑はかけられない。などと、普段の私からは想像もできないような殊勝な事を思っていた。非常に外面のいい奴なのである、私は。

などと諸々書いてきたが、実は6時に目覚ましがなると、きっちり目が覚めたのである。ははは、実は私、海外に行くと案外早起きができるのである。貧乏症なんでしょうか、少しでも多くのことを経験したいため、早く起きちゃうのです。しかもカーテンなんか開けちゃって、外を見たりなんかして余裕じゃん。

このホテル実に変わっていて、客室が1階からあるのである。私たちのツアーはそのまさしく1階に泊まっていた。しかも建物が古いから(よく観光地にある明治の頃建てられましたなんていう、「元〜邸」みたいな感じの洋館風)、窓なんか簡単に開けられそうである。だから、昨晩はそのへんが不安であった。こんなの簡単に人が入ってこられるじゃん、大丈夫か? そう思ったのある。しかし、それは杞憂であった。ここは町から離れているし(ほとんど山ん中ですね)、この土地に入るには門番を通さなければならないからである。それでも、やばい動物が襲ってきたらなどとしつこく思っていたのではあるが、、、

モンゴルの朝は白かった。日本の晩秋を思わせる、そんな白さであった。木々は枯れ、空気は明らかに冷え切っていることがわかる。夜寝付けなくって、朝方、ようやくうとうとしたかなと思ったら、急にぱっと目が覚めちゃって、しょうがないから、あきらめて布団から這い出て、カーテンをさーっと開けて、窓開けて、どうしようもないからベランダへ出ると、少し肌寒くて、そして、何げに外を眺めると、妙に白くて、空はもとより、その白さがグラデーションで風景の中に溶けこんできていて、人の声はするんだけど、そんなの全然耳には入ってこなくて、何だか、この白いあやふやな空間にたった独り取り残されたようで、胸が締め付けられるような気がして、そこへもって、どこからかAMラジオから太田裕美の「しあわせ未満」か渡辺真知子の「ブルー」なんかが流れてきた日には、涙がそっとこぼれる、そんな、ちょっぴり心に切なさを覚えるあの日本の晩秋の朝そっくりであった。

このホテルの敷地内は自然保護地区らしく、様々な動物がそのままいるとのことであったので、何かいないかと期待したが何もいなかった。

そんな余裕をかましていたら、その後、急速にあわただしくなった。思ったより旅支度に手間取ったのである。あれやこれやいろいろ用意すると荷物が多くなってしまう。それで、何度もやり直しをしたのである。それでもウォークマンをはずさないのはさすがと言えるであろう。

何とか旅支度は終わった。しかし、その後のシャワーが驚いた。お湯が出ないのである。昨晩、ホテルでは朝お湯が出るって言っていたのに、、、うそつき! でも、まあしょうがないか、ここモンゴルだもんななどと思って水を浴びることを決心すると、表が騒がしくなってきた。どうやら従業員が起きてきたらしい。おいおい、客より後に起きるなよと思っていたら、ようやく水がお湯になってきた。

準備は整った。

朝食へ行こう。



1997.5.4
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