


旅行前は憂鬱である。
元来めんどくさがり屋の私は、旅の手続きや、荷造りや、空港に行くといったことがだ〜いっ嫌いなのである。だったら海外旅行になんか行くなと言われるかもしれないのだが、それはそれ、その国に着いたら、ナ〜ンも忘れて、海外大好き! 大はしゃぎな人間になってしまうのだ。
今回なぜモンゴルに行ったかというと、私が、何を血迷ったか大学時代モンゴル語を専攻してたこととはほとんど関係ない(ちなみにモンゴル語は在学途中でリタイヤしている)。成田に行かなくてよかったからである。羽田から関空に行き、関空からモンゴルの首都ウランバートルまで直行便が出ているのである。私は何が嫌いって成田に行くのが嫌いなのである。だって、重いスーツケース持って成田に行くのって大変だよね? タクシーとかだと半端じゃなく値段高いし。今は、まあ、成田エクスプレスとか出てて、成田に直行行けるけど、昔は、もっとめんどうだったよね。上野からナンとかって電車が出てて(今もあるけど)、しかも、空港の手前までしか行かなくて、手荷物検査かなんか受けた上、バスに乗り換えなんかして、絶対この辺で海外旅行挫折してた人が国民の30パーセントはいたと思う。それで、海外に成田でなく羽田から行けるというのがものすごく魅力的だったのである。しかも、日程が土曜から土曜の8日間という、会社員が夏休みをとるには理想的な日程であった。それで、かつてちょこっとだけ勉強した国である。これはもう行くしかないなと思ったのである。
しかし、問題がいくつかある。ひとつはツアーだということ。わがままな自分が団体行動がとれるのだろうか? だいたい日本人の顔を見るのが嫌で毎年海外に行くのに、これじゃあ日本人とより親睦を深めに行くようなものだからな〜、しかも知らない人たちと。若い女の子(しかも美人ね)でもいりゃ〜少しは話が違うのだが、モンゴルだからな〜。モンゴルなんかに行く奇特な若い娘さんなんていないんじゃないか? ふたつめは文化の具合。何しろ、街大好きな私は不便なところが苦手だ。モンゴルってナンもないよな〜。そんなところに1週間もいて正気でいられるだろうか? しかも、水が貴重なんで、シャワーは時間によってお湯が出ないとか書いてあるし、よく停電になるとも書いてあるし。
しかし、そんなこんなも結局成田に行かなくてもよい、ただそれだけに勝てなかったのである。

案の定徹夜である。
雑誌の編集という職業故夜遅くなることが当たり前なので、いつも旅前は徹夜になる。中途半端に寝ると起きるのが大変だし、上にも書いたようにめんどくさがりな私は、ぎりぎりまで荷造りをしていない。ま、飛行機で寝りゃいいやっていうのがいつものことなんだが、今回はちとわけが違う。ニューヨークあたりに行くときは、10何時間乗ってなきゃいけないから、する事がないんで(すぐ気持ち悪くなるので、本とかあまり長い時間読めないのです)、ひたすら寝るのはちょうどいいし、時差の調整にもけっこー便利なんだが、今回は成田に行かなくてもいい分、羽田から関空、関空からウランバートルと乗り継ぐのだ。それぞれ1時間と4〜5時間と乗ってる時間が短い。寝る時間はあまりないぞ。しかも時差はないので時差の調整もできない。ま、でも時差がないんだったら、夜、ちゃんと寝りゃいいか、そうすれば日常夜型なパターンから、早起きさんになれるから。などと、わけのわからない計算をしながら、とろとろと荷造りをし始める。
しかし、なんだか眠くなってきて荷造りの手が遅くなり始めた。腹も減ってきたし。要領がすっかり悪くなってきている。こんなに辛いなら旅行止めよーかななどと考えはじめている。しかし、ここまで来たんだからと何とか荷造りをすます。
ふと時計を見ると、もう10時。やばい! 羽田からの飛行機は11時半発だ! 慌ててスーツケースとかばんを引っ提げ世田谷通りへ向かう。ここが一番近い大きな通りなのだ。しかし、いつもながらタクシーが来ない。10時15分にやっと拾う。朝飯を食べる暇がすっかりなくなった。まあいいや、関空で2時間以上時間はあるし。
普段の土曜はあまり高速は込まないのだが、今日に限ってなんだか込んでいる。しまった、環7にすりゃよかったか、でも、ここからは引き返せない。てなわけで、三軒茶屋からレインボーブリッジまででもうすっかり11時だ。結局羽田に着いたのが11時15分。でも、まだ15分もあるから、、、なんて余裕かまして受け付けカウンターに行ったら、おねーさんが「ええ!? もう荷物の受け付けは終わってます!」と大声を上げた。おねーさんは大急ぎで電話を掛けると、私の手荷物を自ら持って「付いてきて下さい」と駆け出した。何ともすごいパワーとスピードだ。私はその後をとろとろと付いていった。非常事態らしく手荷物検査もほとんどすっ飛ばして、何とか飛行機に乗り込んだ。後に、友人に「15分も前に着いたのにねぇ」とこのときの話をしたら、「飛行機は新幹線なんかとは違う」とあきれ顔をされてしまった。
1996.11.17