機動戦士ガンダム

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第31話〜第43話 (その3)
ガンダムの題名及び内容概略一覧です。

再び宇宙に出撃したホワイトベース。ニュータイプに覚醒したアムロ。ララァとの出会いそしてシャアとの戦いを経て。。


第31話 ザンジバル,追撃! ティアンム艦隊出撃の2時間前、19:00にホワイトベースはティアンム艦隊陽動のために出撃することとなっ
た。ティアンム艦隊のソロモン攻略を悟られないようにするため、正反対の衛星軌道を通り、陽動をかけな
がらソロモンへ向かうという算段である。出撃命令が下り、にわかにあわただしくなるホワイトベース艦内。
そこに着任してきたスレッガー・ロウ中尉。そのお調子者の様子はすぐさまカツ・レツ・キッカの心を捕らえた
様子。フラミンゴの群れに見送られながら、宇宙に向けて発進した。
シャアもホワイトベースを追って、ビグロをたまたまテストしていたザンジバルを使って追撃のため宇宙に上
がる。ホワイトベースを攻撃範囲に捕らえた段階で、テスト中のビグロ、宇宙戦用に改造されたリック・ドムを
使って攻撃をしかけることを考えていた。
ザンジバルの攻撃範囲に入るのは20分後。ホワイトベースではそのように予測が出ていた。ブライトはホワ
イトベースが月に向かうように見せかけるため、加速地点を指示する。そこにセイラの一言。「シャアが出て
くるわ。必ず来る。」Gアーマーのチェックを指示しつつも、セイラに問うブライト。「なぜわかるんだ。シャアが
来ると。」「い、いえ、ホワイトベースってあの人と因縁あるでしょ、だから。」「恐いのか?」「恐くない人、いて
?」そう言い残し、ブリッジを離れるセイラ。
ホワイトベースが月に向かうという予想値を聞き、シャアは自分たちが陽動にひっかかったことに気づく。だ
が反転して本隊を攻撃しに向かえば、ホワイトベースとの挟み撃ちにあう。引き返す訳にはいかなくなった
シャアはそのままホワイトベース追撃を選択する。
ついにザンジバルの攻撃範囲に入ったホワイトベース。ザンジバルは手はず通りビグロと2機のリック・ドム
を発進させる。迎え撃つホワイトベースはアムロのGスカイとセイラのGブル・イージーを発進。だが、異常に
速いビグロの動きに翻弄される。ビグロに捕まったセイラは、至近距離からの攻撃を仕掛けようとしたが、
もしこれにシャアが乗っていたらと考えためらう。そのためらっている瞬間、ビグロに投げ出され、地球の重
力から抜け出せなくなってしまう。
ホワイトベースではモビルスーツが3機であることをキャッチ、カイにガンキャノンの出撃を命じる。そしてスレ
ッガーを呼び出すブライト。スレッガーに主砲に回ってもらうように指示。だが、自分が主砲を担当するのは、
ホワイトベースをザンジバルに向けたときだと言い張る。渋るブライト。なかなかザンジバルに向けないのに
業を煮やしブリッジに上がってくるブライト。
セイラが重力に捕まり逃げ出せない中、アムロは1機で苦戦をしていた。そこにようやくガンキャノンが援護
に向かう。ガンキャノンを出撃させたホワイトベースはようやく180度回頭。ザンジバルに向けて針路を変更
する。スレッガーも満足げに主砲へ向かう。
カイが援護に来てくれたお陰で、アムロはガンダムへの換装を急ぐ。落下するGブル・イージーの手前にミ
サイルを打ち込み、減速をさせた瞬間にドッキングを敢行。攻撃を受けながらもガンダムへの換装に成功
した。
ホワイトベースとザンジバルは艦隊戦を開始。「よし、木馬にぶつかるつもりで突っ込め」シャアの、この言
葉にホワイトベースに特攻してくるザンジバル。「ザンジバル、よけません。突っ込んできます。」マーカーの
この言葉に背筋が凍る思いのブライト。「シャアだ。こんな戦い方をする奴はシャア以外にいないはずだ。
セイラの言った通りだ、シャアが来たんだ」
このホワイトベースの恐怖心を感じ取ったシャア。「木馬は怖気づいている。砲撃手はよく狙ってな」と余裕
の笑みを浮かべる。が、すれ違いざまスレッガーの担当する主砲が見事に命中。エンジン部分に被弾した
ザンジバルは急速にホワイトベースから離れていく。
アムロはビグロとの戦いに苦戦。ビグロのアームにひっかかり、その激しい加速で一時気絶。ビグロのパ
イロット、トクワンはガンダムのパイロットが気絶していると思い、ガンダムに向けてビームを撃つため、そ
の銃口を向ける。その瞬間正気に戻ったアムロはそこに目がけてビームライフルを発射。爆発するビグロ。
何とかザンジバルの攻撃を退けたホワイトベース。ブリッジに戻ってくるアムロ達を労うブライト。スレッガー
はアムロ達を誘ってシャワーへと向かう。憔悴しきったセイラは椅子に一人もたれかかる。なおも気を抜け
ないホワイトベースは予定の衛星軌道を目指し進んでいた。
第32話 強行突破作戦 接近する物体をキャッチしたホワイトベース。すぐに出撃できるガンタンクが先行して出撃。アムロは考えて
いることがあるからと、ガンダムを出撃すると報告、許可をするブライト。一方、何となく疲れている素振りを
感じたセイラを重力ブロックで休ませる。
接近していたのはテスト中に開発を放棄されたザクレロだった。速い動きに苦戦を強いられるハヤト。そこ
にGアーマーの下だけドッキングさせたガンダムが現れる。ザクレロとのすれ違いざまに攻撃を受けながら
も、エンジンと思われる箇所をビームサーベルで貫き、見事ザクレロを撃破。アムロはなぜザクレロがああ
も単純な攻撃パターンで攻撃をしかけてきたのかに悩む。
修理するガンダムを見つめながら、スレッガーとシャアの話をするアムロ。スレッガーには、なぜみんな二言
目にはシャアの話が出てくるのかを不思議がり、そのシャアに会ってみたいと漏らす。そこにセイラが割って
入ってくる。セイラに話しかけようとするスレッガーだったが、アムロに戦闘中ですと言われ、すごすごと主砲
に戻る。
シャアはドレンに連絡。ホワイトベースの頭を押さえられる位置にいるキャメル艦隊で、時間稼ぎを頼むシャ
ア。「ご縁がありますな。木馬とは。わかりました。追いつけますか?」と言うドレン。「ドレン、私を誰だと思っ
ているのだ?」と答えるシャア。ドレンは自分の先ほどの言葉を謝り、ホワイトベースに向け針路を変更する。
シャアの夢を見たセイラ。その不安からガンダムを整備中のアムロに、つい話しかける。
「私ね、どうしたら早くいいパイロットになれるかしら?」
「セイラさんは今でもいいパイロットですよ」
「お世辞はやめてよ、アムロ。私はどうしても生き延びたいんだから」
「おかしいですよ、急に」
「私だって、シャアぐらいと」
「無理です。そりゃザクタイプの時には僕でも戦えました。でも今は」
「たとえ話よ、アムロ」と言い、立ち去ろうとするセイラ。「私があなたみたいならね」という言葉を残し。
何かをセイラに話しかけようとしたアムロ。その瞬間、警報。進行方向にムサイ3艦を確認したホワイトベー
ス。後ろにもシャアのムサイ。ブライトはムサイを強行突破することを決断する。
接近するホワイトベースに対し、ドレンはムサイ3艦とリックドム6機で攻撃をしかけることにする。スレッガー
は予備のGファイターで出撃することを命じられる。セイラもみんなの心配をよそに出撃。
スレッガーの気の早い一撃でつばぜり合いが始まる。敵が二手に分かれたのを見て、先行するハヤト、カ
イ、スレッガーも二手に分かれる。それを見て同じように二手に分かれては勝てないと言うセイラ。ハヤトを
説得し、カイとスレッガーの後ろに付くことにする。ついに本格的に攻撃が開始される。最初のすれ違いで
リックドム数機を潰したものの、残りはホワイトベースに取り付いてしまう。ホワイトベース援護のために引
き返すセイラ達。リックドムの攻撃を受けながらもムサイとの艦隊戦に突入するホワイトベース。だが、なか
なかムサイを直撃させることができない。ようやく修理が終わり発進するアムロにも、「目標はムサイだ。
スカート付きのモビルスーツは構うんじゃないぞ。」と命令するブライト。出撃と同時にガンダムにまとわり
つくリックドム。「スカート付きめ」とモノアイを破壊し、リックドムを蹴飛ばしながらムサイ攻撃に向かうガン
ダム。
トクメルのムサイが撃沈され、焦り始めるドレン。ホワイトベースに張り付くリックドムを後退させ、ホワイト
ベースへの艦隊戦に集中しようとする。そこにガンダムがキャッチできないという連絡が入る。ガンダムが
どこにいるかと不安になるドレン。そこにゼロ方向から接近する物体があると報告を受ける。ドレンの見て
いる側で撃破されていくスワメルのムサイ。あっという間にスワメルのムサイは撃沈。それはガンダムの攻
撃だった。続いてアムロは、ビームサーベルでドレンが乗るムサイのブリッジを叩ききる。そしてムサイの
エンジンを破壊し、戦闘は終わる。「あのドレンが私の到着まで持ちこたえられんとはな」遅ればせながら
到着したシャアはこうつぶやく。
ブライトはその地点からティアンム艦隊と合流すべく、ルナツーに向けて加速をすると、98%の確率でシャ
アのザンジバルと接触することになることという報告を受け、サイド6へ向かうことを決断する。ミライはサイ
ド6へ向かうことを何となく反対する。「でもブライト、サイド6に向かったってどうなるというものでもないし。」
それに対し、「このままザンジバルと戦ったとしても、勝つ見込みはほとんどないぞ」と答えるブライト。ブリッ
ジに上がっていたスレッガーも「そうだな。外から見てもホワイトベースのやられ方はひどいもんだ」と後に
続く。
「・・・まさかね、針路変更。ホワイトベース、サイド6へ向かいます。」そう言いながらミライはホワイトベースを
サイド6に向ける。
第33話 コンスコン強襲 ドズルはキシリアがシャアを使っているのを快く思っていないものの、ドズル自らがホワイトベース追撃に出る
訳にはいかず、コンスコンを代わりに追撃の任に命じる。シャアがいかに無能かをキシリアに分からせるた
めに。
Gアーマーとガンキャノンは哨戒の任務に。足の短いガンキャノンが先に引き上げるものの、引き続き哨戒を
続けるGアーマー。そこで岩陰に潜むブラウ・ブロを発見する。ブラウ・ブロはテスト中でエンジンが故障してい
たのである。突如のブラウ・ブロからの攻撃で、アムロはガンダムをボトルアウトして攻撃する。ブラウ・ブロ
の有線サイコミュに手こずるものの、一部を撃破。撤退するブラウ・ブロを追うことなく、ホワイトベースへの
帰還を急ぐ。
ホワイトベースは無事サイド6の中立空域に潜り込んだ。ホワイトベースに乗り込んでくるサイド6検察官の
カムラン。封印の話を聞くブライトは、修理が受けられるかどうかを尋ねる。しかしカムランの答えは戦争協
力につながるということからノー。それ以上ブライトは話すことなく、カムランをブリッジに案内する。カムラン
はそこでホワイトベースを操るミライを発見する。2人の姿を見て、入港中だと釘を刺すブライト。だが、カ
ムランのずっとミライの腕に手をやる姿を見て、何となく面白くない。
入港後、久々に話をするカムランとミライ。だが、話ははずむという方向には進まず、ミライがなぜ自分がサ
イド7に移民した時に自ら探しに来てくれなかったのかという口論へと移っていってしまう。嫌がるミライにしつ
こくつきまとうかのように見えたスレッガーが、割り込んでくる。ミライの「いいのよ」の言葉に、取り上げたカ
ムランの眼鏡を返すスレッガー。
アムロ達は買い出しを行うためにサイド6の街へと繰り出した。買い物袋を抱え、フラウ・ボゥ達と車に戻るア
ムロ。その正面の本屋に父、テム・レイの姿を見つける。バスに乗り込んだ父の姿を追うアムロ。バス停に
停まり、降りる父に近寄るアムロ。「父さん。」「おお、アムロか。ガンダムの戦果はどうだ。順調なのかな。」
父についてジャンク屋に案内されるアムロ。着くなり、「こいつをガンダムの記憶回路に取り付けろ。」アムロ
は思った。「こんな古い物を。。父さん、酸素欠乏症になって。」戦闘力が数倍になるから、早く持って帰って
取り付けろとせかす父。納得のいかない表情で機械を受け取り、地球で母親に会ったことを話すアムロ。
「もうすぐ戦争も終わる。そうしたら一度地球に行こう。」とその言葉に返事をする父。その後ろ姿を涙ぐみ
ながら見つめるアムロ。「急げ。お前だって軍人になったのだろうが。」
父親のいるジャンク屋を走りながら、機械を投げつけるアムロ。変わり果てた父の姿に悲しむのであった。
ホワイトベースに戻るとブライトの説教が待っていた。ホワイトベースは急遽出航する。ベルガミノの浮きドッ
クでの修理が受けられるようになったのだ。その護衛任務にアムロのガンダムが先行する。
ホワイトベースの動きはコンスコンに察知されていた。リック・ドム12機でホワイトベースを迎撃に向かうコン
スコン隊。浮きドックに近づくホワイトベース。突如ドックの向こう側から突き抜けてくるビーム群。コンスコン
隊の攻撃が始まったのである。浮きドックを離れ、コンスコン隊との戦闘に入るホワイトベース。だが、ホワ
イトベースの攻撃力はすさまじかった。3分も経たずにリックドム12機が全滅。ホワイトベースの攻撃により、
ムサイも1隻深手を負っていた。コンスコンはそのホワイトベースのすさまじさに「化け物か」と舌を巻く。そん
なときにシャアのザンジバルが現れる。ザンジバルの接近に動揺するホワイトベースクルー。サイド6への
撤退をブライトは指示する。カムランの乗るサイド6のパトロール艇も接近。ホワイトベースとコンスコンの戦
闘により、ビームがサイド6宙域内に入り込んでいたためである。シャアもサイド6のパトロール艇が接近し
ているため攻撃をすることができない。
サイド6に戻り、再び話し合うカムランとミライ。サイド6に定住することを勧めるカムラン。だが、ミライは自
分の力で何もやろうとしないカムランの態度に苛つくばかり。今回の封印を破った件についても父の力でと
いう言葉を何度か聞いていた。「ホワイトベースを捨てる私に、あなたは一体何をしてくださるの?」「だから
父に頼んでやるって、さっきから僕は。。」「わかってくださらないのね。それでは私は、ホワイトベースは捨
てられないわ。」ミライは戦争に中で変わっていったが、カムランは全く変わっていなかった。2人の心のす
れ違いによる辛さに耐えられなくなり、ミライは泣きながら、カムランの元を後にする。離れていくミライに、
何が悪いのかわからず、とまどうばかりのカムラン。
第34話 宿命の出会い サイド6は明らかに厄介者のホワイトベースを追い出したがっていた。アムロが帰ってくる2時間後を見据え、
3時間後に出航する命令を出すブライト。
父親の元に向かっていたアムロは、突然降り出した雨をやり過ごすため、近くの民家で雨宿りをする。湖面
すれすれに飛ぶ白鳥。それを見て、アムロは人の気配を察知する。同じ白鳥を見つめる少女が一人。
「かわいそうに。」「えっ。」飛ぶ白鳥。やがて力尽き、湖に落ちていく。少女に近づくアムロ。アムロに気付き
驚く少女。「ごめん、別に驚かすつもりじゃなかった。」ばつが悪そうなアムロ。必死で言葉を探す。「あの鳥
のこと、好きだったのかい?」「美しいものが嫌いな人、いて?」その言葉が妙にアムロの心の中に響く。
「美しいものが嫌いな人がいるのかしら。それが年老いて死んでいくのを見るのは悲しいことじゃなくって?」
「そ、そりゃあそうです、そうだけど、僕の聞きたいことは・・」その言葉を遮る少女。「あ、止んだわ」立ち上
がり、アムロの目を見る。そして微笑む。「きれいな目をしているのね。」「そ、そう?」民家を飛び出し、走り
去っていく少女。それをただ見つめるアムロ。
その少女、ララァを連れ出すため、サイド6に入港するシャアのザンジバル。ホワイトベースの真横に入港。
「へえ、これは驚きだぜ。」ホワイトベースのブリッジでは、エレベータで上がってくるザンジバルの姿を見つ
め、ざわめきが起こっていた。ハヤトは感情の高ぶりからザンジバルに向かおうとするが、それを静止し、
外出を禁止する命令を出す。出航準備のため忙しくなるホワイトベースのクルー。
父親の元に来ていたアムロ。だが、変わり果てた父親の姿を見ていたたまれなくなってくるアムロ。アムロは
心の中で決めていた。もう二度と父には会うまいと。そんな父親への想いを考えながらエレカーを走らせる
アムロ。過ってエレカーをぬかるみにはめてしまう。「近道なんかするんじゃなかった。」途方にくれるアムロ。
そこにたまたま通りかかった1台の車。「すみません。」呼び止めるアムロ。やや行き過ぎながらも引き返して
きた車。そしてそこから降りてきたジオンの将校。アムロは直感した。それがシャアだと。急に緊張し始める
アムロ。「君は?」シャアの問いかけに答えるアムロ。「アムロ、アムロ・レイです。」「アムロ?不思議と知っ
ているような名前だな。」(そう、知っている。僕はあなたを知っている。)確信に換えるため、アムロは名前を
聞く。「シャア・アズナブル。ご覧の通り軍人だ。」そして、アムロは自問自答を始める。(始めて会った人だと
いうのになぜシャアだってわかったんだ?)そして車を運転している少女、さきほど雨宿りに会ったときの少
女がララァだという名前を知り、それについて考えていた。その最中に車はぬかるみから引き上げられてい
た。片づけをするシャア。「目の前に敵の兵士を置いて硬くなるのはわかるが、せめて礼ぐらいは言ってほ
しいものだな、アムロ君。」そう言われ、「い、いえ、その、あ、ありがとうございました。じゃ、これで僕は」と
早口で述べ、去っていくアムロ。シャアはなぜそんなに早くアムロが去っていく必要があるのか合点のいか
ないものがあった。
ホワイトベースでは、カムランが少しでもホワイトベースの、ミライの手助けとなるように自分の船で盾にな
ることを申し出ていた。ミライが反応する。「カムラン、どういうつもりでそんなことを?」「き、君にそういう言
われ方をされるのは心外だ」「余計なことをしないでいただきたいわ」しばらく言い合いが続く2人。そこに業
を居煮やしたスレッガーが割って入り、ミライに頬に張り手を食らわす。「この人は本気なんだよ。わかる?
そうでもなきゃこんな無茶が言えるか。いくらここが中立のサイドだからといったところでミサイル一発飛ん
でくりゃ命はないんだ、わかる?あんたもあんただ、あんなにグダグダ言われてなぜ黙ってる?」「殴らなく
たって話せば。」「本気なら殴れるはずだ」「そ、そんな野蛮な」「そうだよ、カムランさん、気合の問題なん
だ」ブライトがスレッガーをたしなめながら割って入ってくる。「お気持ちが変わらなければお願いできません
か?」
ホワイトベースを先導するかのように飛ぶカムランの船。コンスコンはホワイトベースをキャッチし、リックド
ムを展開させながら、いつでも攻撃できる態勢をとっている。リックドムの接近により、さすがにカムランも
引き上げざるを得なくなる。近づくサイド6領空線。ブライトそしてミライの説得により、カムランは船を下が
らせる。ホワイトベースのブリッジをかすめるように下がるカムランの船。ミライはカムランの船に向かって、
片手をあげ、合図を送る。
領空を出るホワイトベース。ガンダム発進。ホワイトベース最大船速。コンスコン隊の攻撃が開始される。
アムロには、リックドムの動きがなぜか手に取るように分かっていた。リックドムはガンダムの動きを攪乱
するために数機で陽動をかけていた。が、アムロにはそのような陽動は全く役に立たず。その戦闘はサイ
ド6のテレビ局により放映されていた。そのシーンを見つめるシャアとララァ。
「何があったんだ?今日のアムロはカンがさえている」アムロは確実にリック・ドムを沈めていく。そしてエ
ネルギーの上がったビームライフルを捨て、チベを沈めるためにビームサーベルを持って接近。チベの急
所が手に取るようにわかるアムロ。ホワイトベースに特攻をしかけてくるチベにガンダムを接近させる。
「白いモビルスーツが勝つわ」シャアに言うララァ。「ん?ガンダムは映っていないぞ」「わかるわ。その為に
あたしのような女を大佐は拾ってくださったんでしょ?」「フフフ、ララァは賢いな」
ついにチベの急所を捕らえるガンダム。チベは爆発する。
「ねえ、大佐。」歓喜の声をあげるララァ。
戦いは終わった。その戦いを見つめていたカムランは、ため息をつく。「生き延びてくれよ。」
サイド6から離れていくホワイトベース。「サイド6」アムロは離れ行く姿を見つめ、そうつぶやいていた。
第35話 ソロモン攻略戦 ホワイトベースはようやく第三艦隊と合流し、補給が受けられることとなった。ブライトは艦隊司令に挨拶を
するため、ランチでホワイトベースを発進。むかったマゼランにいたのは、以前ルナツーにいたワッケインで
あった。ワッケインよりソロモン攻略の先鋒となることを聞かされるブライト。だが、ブライトはホワイトベース
そのものがオーバーワークであることを気にかけていた。特にガンダムに乗るアムロのことを。そのアムロ
に対し、ワッケインは言う。「ああ、あのガンダムの坊やか。素晴らしい才能の持ち主だ。彼は我々とは違う」
その言葉に、「違う?どう?」と反応するブライト。「そう思えるんだ」とだけ答えるワッケイン。
連邦の攻撃に備え、ソロモンではギレンからの補給部隊が到着していた。だが、到着したのは、試作型のモ
ビルアーマー、ビグ・ザム1機。戦力不足でリック・ドムが欲しいドズルにとっては、この補給内容には納得が
いかなかった。さらにティアンム艦隊の動きも正確に捉えることができず、苛ついていた。
サイド6では、シャアがララァを連れ、ようやく出航しようとしていた。カムラン達の前を泳ぐように移動していく
ララァ。その姿に言葉を失うカムラン達。「ど、どなたです?」「私の妹、とでもしておいてもらおう」とだけ答え、
カムランの前から去っていくシャア。
 
ソロモンから第三戦闘距離にまで接近した、ワッケイン率いる第三艦隊。ワッケインの指示により横一文字
隊形にフォーメーションをとるホワイトベースら各艦。ホワイトベース内でも緊張感が張りつめている。ティア
ンム艦隊の対要塞兵器の攻撃を信じ、攻撃を開始する第三艦隊。パブリック突撃艇の加速とともに、各艦
も加速を開始。ソロモンからの攻撃も開始された。
パブリックのビーム攪乱幕により、ソロモンからのビーム兵器が届かなくなったのを確認し、モビルスーツ戦
へと切り替わっていった。ホワイトベースからも各モビルスーツが発進していく。ソロモンへと進むアムロ。
「これが、戦場か。」
ソロモンからはミサイル攻撃、そしてモビルスーツによる攻撃が開始された。なかなか取り付くことができな
い連邦のモビルスーツ。ドズルは、ミネバ達の身を案じ、退避カプセルへの避難を命じる。
そのころ、ティアンム主力艦隊は、サイド1でのソーラーレイシステム発動準備を急いでいた。それに気づく
ソロモン。ドズルは衛星ミサイルの発射を命じる。衛星ミサイル着弾と同時に、ソロモンへの攻撃が照射を
開始するソーラーレイシステム。太陽熱により焼かれていくソロモン。その様を見て声を上げるアムロ。「ソ、
ソロモンが焼かれている。あれが」、「連邦軍の新兵器の威力なのか」同じくその威力に声を上げるブライト。
ソロモンの各機能が停止していく。
そんななかハヤトのガンタンクが着弾。ハヤトも負傷し、ホワイトベースへ帰投していた。ハヤトの負傷を聞
き、医療班の手伝いに向かうフラウ・ボゥ。怪我をしたハヤトの姿の前に驚愕の声を上げるフラウ。サンマロ
に叱咤され、指示された輸血セットを取りに行くフラウ。うなされて目を覚ますハヤト。それを見守るフラウ。
「静かにね。あなたは十分に戦ったわ。もう静かにしてていいのよ。」
「みんなは?」
「無事よ。元気に戦っているわ。」
「そう。く、悔しいな、僕だけこんなんじゃ。セイラさんにもカイさんにもかなわないなんて。な、情けないよ。」
「なに言ってるの、ハヤト。立派よ、あなただって。。」
「やめてくれよ慰めの言葉なんて。こ、こんな僕だってね、ホワイトベースに乗ってからこっち、アムロに勝ち
たい、勝ちたいと思っててこのざまだ。」
「ハヤト。アムロは違うわ。あの人は、私達とは違うのよ。」
その言葉を聞き、涙を流しながら言葉を失うハヤト。
 
ドズルはモビルスーツを撤退させ、ソロモンの水際でしとめる作戦に出た。ガンダムが真っ先にソロモンへ
取り付く。追ってガンキャノンもソロモンへの侵入を開始。その知らせを聞き、ティアンム艦隊もボール、ジム
各機の出撃を開始した。
「ソロモンが救援を欲しがっている?」サイド6を出航しようとしていたシャアの元に、その知らせが届いた。キ
シリアの命令により、ザンジバルをソロモンに向かわせるシャア。離れていくザンジバルを見て、「やれやれ、
やっといってくれたか。」と安堵するカムラン。
 
ドズルは、ゼナ、そしてミネバの脱出を命じた。脱出しようとする2人を見送るドズル。「行け、ゼナ、ミネバと
共に。」ソロモンを離れる脱出カプセル。その後ドズルは決戦に備え、各部に檄を飛ばしに奔走する。そして
ビグ・ザムの組み立て工場へ。怪しくたたずむビグ・ザム。「ほう、これがビグザムか。」
第36話 恐怖!機動ビグ・ザム スレッガーのGファイター帰還。左翼エンジンに被弾した模様。その帰還の知らせを心配そうに聞くミライ。ブ
ライトの方に視線を向ける。「何か?少尉」ミライに言うブライト。「..いいえ」すぐに目をそらすミライ。
ブライトはミライの個人通話の回線を開くように指示。
「戦闘中の個人通話は厳禁だが、水臭いぞミライ、君のことを見守るぐらいのことはこの僕にだってできるつ
もりだ。」「ブライト」「君の気持ちはわかっている。が、僕はいつまでも待っているよ」
現れたバンマスと操舵士を交替させ、ミライを一時ブリッジから出させるブライト。
ミライは待機ボックスに向かったスレッガーを追う。待機ボックスでハンバーガーを押し込んでいるスレッガ
ー。「中尉、怪我はないようね。」「少尉、こんな所へどうしたんです?え?」ミライが安心して涙ぐむ顔に、ミ
ライの気持ちを察知してしまうスレッガー。「少尉、やめましょうや、迂闊ですぜ。」そこにスレッガー機修理
完了の連絡が入る。「それじゃあな。」そうとだけ言葉を残し、待機ボックスから出て行こうとするスレッガー。
見送るミライ。「死なないでください。」その言葉に参ったというような仕草をするスレッガー。
「ミライ少尉、人間、若い時はいろんなことがあるけど、今の自分の気持ちをあんまり本気にしない方がい
い。」
「どういうことでしょう?」
「ん、まあいいでしょう。」と言いながら、ミライに指輪を見せるスレッガー。
「俺は少尉の好意を受けられるような男じゃない。」「スレッガー」「俺にとっちゃあ、少尉はまぶしすぎるん
だ。世界が違うんだな。」「でも。」「安物なんだがね、おふくろの形見なんだ。宇宙でなくしたら大変だ、預か
っといてくれよ。」指輪を受け取るミライ。「すまない。おっと。」震動する艦内。スレッガーとミライがその震
動で急接近する。見つめ合う2人。目を閉じるミライ。スレッガーはミライの唇に自分の唇を重ねあわせる。
「指輪を頼むよ、少尉。」そう言い残し、Gファイターの元に戻るスレッガー。残された指輪を見つめるミライ。
徐々にソロモンの中に入り込む連邦のモビルスーツ部隊。そこに現れたビグ・ザム。巨大なその姿は、連
邦のモビルスーツにとっては化け物以外の何者でも無かった。
その頃、月基地グラナダからは、マ・クベ率いるソロモン支援部隊が発進していた。途中でゼナ、ミネバの
乗る脱出カプセルを発見。マ・クベの乗るグワジンに回収される。
ビグ・ザムは威力が抜群であるものの、基地内の損害を同時に拡大してしまう。そこでドズルは残存艦隊
での中央突破を指示し、自らもモビルスーツを率いてソロモンを出る。そのビグ・ザムを追うアムロ。ソロ
モンからビグ・ザムが離れ、それを追う体勢に入るホワイトベース。同じようにビグ・ザムを追うスレッガー
のGファイター、カイのガンキャノン。ビグ・ザムの持つ攻撃力は脅威であった。
ドズルは、ソロモンからの撤退命令を出し、ビグ・ザムの操縦系統も自分に集中させた。「フフフ、こうも簡
単にソロモンが落ちるとはな。」周りの状況を確認しながら口走るドズル。
長距離ビームをはねつけるビグ・ザムは、ついにティアンム艦隊本隊にまで到達した、圧倒的な威力で、
歯が立たない連邦の艦隊。スレッガーがアムロにドッキングを指示。ドッキングしてGアーマーになるスレッ
ガー機。「磁界を張っているとなりゃ、接近してビームをぶち込むしかない。こっちのビームが駄目ならガ
ンダムのビームライフル、そしてビームサーベルだ。いわば三重の武器があるとなりゃ、こっちがやられた
って。」「スレッガー中尉」「私情は禁物よ。奴の為にこれ以上の損害は出させねえ。悲しいけど、これ戦争
なのよね。」
ビグ・ザムの真下から特攻をかけるGアーマー。「ん?下か。対空防御」ビグ・ザムの爪にコクピットを潰さ
れるGアーマー。ガンダムのビームライフルでビグ・ザムの足の付け根を攻撃するも、スレッガーは宇宙に
投げ出される。「やったな。」Gアーマーからボルトアウトし、ガンダムのビームサーベルで、ビグ・ザムの
コクピットを斬りつけるアムロ。コクピットから火の手が上がるビグ・ザム。「た、たかが一機のモビルスー
ツに、このビグ・ザムがやられるのか。」ガンダムに対して、単身オートライフルで立ち向かうドズル。
「やられはせんぞ、やられはせんぞ、貴様ごときに。やられはせん。」「ジオンの栄光、この俺のプライド、
やらせはせん、やらせはせん、やらせはせんぞーっ。」そのドズルの背後から浮かび上がる怨念のような
もの。アムロはそれに何か気持ち悪いものを感じていた。その瞬間にビグ・ザム爆発。ドズルを巻き込み、
ビグ・ザムは宇宙の塵となっていく。
その光を見つめながら、マ・クベは言う。「ソロモンが落ちたな。」マ・クベはそのままチベで残り、連邦の動
きを見守ることにした。
ホワイトベースでは、スレッガーが死んだことを聞いたミライが一人泣く。つかの間の休息に入るクルー達。
第37話 テキサスの攻防 ソロモンを後にし、敵艦掃討作戦のためのパトロールを行っているホワイトベース。とは言え、敵艦に遭遇
する危険性などなく、つかの間の休息をクルーは過ごしていた。医務室に体のチェックをしに来るアムロ。
たわいもない話をフラウ・ボゥと話する。フラウ・ボゥはアムロの成長ぶりに距離を感じるとともに、サイド6に
行った後から何か変わったとアムロに言う。アムロはいつか話せるようになったら、話すとだけフラウに告
げる。
ホワイトベースはテキサスの暗証空域に入り込んでいた。シャアはテキサスに届く予定のゲルググ、エルメ
スを受け取りに来ていた。手持ちの武器が無いシャアは、テキサスにゲルググを取りにザンジバルを進め
るとともに、近くにいるマ・クベのチベにホワイトベースのけん制をするよう連絡する。その連絡を受け、動き
始めるチベ。チベをキャッチしていたホワイトベースは第3戦闘配備に入る。
マ・クベは自分専用のモビルスーツ、ギャンで出撃しようとしていた。先行するアムロとセイラのGアーマーは
チベの空域に侵入。ギャンが隠れるテキサスにおびき寄せるという任にいるリック・ドムとの戦いが始まる。
その戦いに巻き込まれ、アムロ達はテキサスに流されていた。
そのテキサスにいるシャアとララァ。ララァはテキサスに近づくアムロの感覚を読みとっていた。「なにかしら
?来るわ」「来る?何がだ?」「なにかしら、なにかしら、これ?何かが来るわ。」「あたしと同じ人がいるのか
しら?」「ララァ、今なんと言った?」「フフフ、大佐があたしの心を触った感じなんです。」「私が?ララァ、冗談
はやめにしてくれないか。」
ついにテキサスの宙域に入り込んだアムロとセイラ。リック・ドムを全機破壊し、ほっとしたのもつかの間。そ
こにはガンダムを待ち受けていたギャンの姿があった。「こいつの所へ誘い込む為の作戦だったのか。」
「さて、来てもらおうか、ガンダム。」マ・クベがあらかじめ仕掛けた罠がガンダムに炸裂する。だが、罠から
巧みに脱出するアムロ。テキサスに逃げ込んだギャンを追い、テキサスの中に入り込む。
マ・クベが入り込んだという知らせがシャアの元に届けられた。それを聞き、シャアも黙って見過ごす訳には
いかない。マ・クベの様子を見に行くため、受領したばかりのゲルググの調整を兼ね、出撃することにする。
ララァはエレカーで、モビルスーツ戦を見るため出かけ、シャアはゲルググでマ・クベの姿を追って出撃す
る。
テキサスに入るや、仕掛けられた爆弾、ミサイル、小型機雷と様々な罠に苦しめられるアムロ。だが、その
罠をことごとく回避していく。「カンがいいのか?それともあの新しいタイプの奴なのか?」マ・クベは自分の
仕掛けた攻撃が全てよけられてしまうことに疑問を感じていた。マ・クベが攻撃中のガンダムに、シャアの
ゲルググが攻撃を仕掛ける。射撃戦となる両機。「赤いモビルスーツ?シャアなのか?」まさにガンダムと
対峙して白兵戦をしようかという時、マ・クベがシャアのゲルググの前に割って入ってくる。「シャア、退けい。
今の貴様の任務はガンダムを倒すことではないはずだ。」「味方が苦戦しているのを見逃す訳にはいかん
のでな。」「私なりの戦い方があるからこそガンダムを引き込んだのだ。」「任せたよ、マ・クベ大佐。来る
ぞ。」ガンダムからのビーム攻撃が割り込んでくる。白兵戦に入るギャン。既にビームライフルのエネルギー
切れになっていたアムロもビームサーベルで戦いに応じるしかなかった。
その戦いを遠くから見つめるララァ。「大佐はなぜ助けてあげないのかしら?なぜ?・・・こ、これだわ、さっ
きからの感じ。」アムロから出される気に反応しているララァ。
「もう剣を引け、汚い手しか使えないお前はもうパワー負けしている。」「シャアを図に乗らせない為にはガ
ンダムを倒さねばならんのだよ。」だが、マ・クベの戦い空しく、ガンダムの2本のビームサーベルが、ギャン
の胴体を挟み込む。「もうおやめなさい、終わったのよ。」ララァの心の叫びがアムロに届く。「え?なに?」
叩ききられていくギャンのコクピット。「・・・おお、ウラガン、あの壺をキシリア様に届けてくれよ、あれはいい
物だ。」爆発寸前のギャンを見て、ララァを守るためにゲルググを移動させるシャア。「それ見たことか。付
け焼刃に何ができるというか。」ララァをかばうようにゲルググをかがみ込ませたと同時に爆発するギャン。
「誰だ?誰かが僕を見ている。」誰かの視線を感じ、周りの気配を伺うアムロ。「これは?シャアじゃない。」
ララァはそのアムロからの念を感じていた。「こ、これは?ア、ム、ロ?」「ラ、ラ?」
第38話 再会、シャアとセイラ マ・クベのギャンの爆発はテキサスコロニーの外壁を破壊するほどの勢いのものであった。その外では、マ
・クベ艦隊とホワイトベースがそれぞれ障害物に身を隠し、牽制を続けていた。

コロニー内はギャンの爆発により、嵐が一層強くなっている。その中でアムロは、先ほどより感じている視線
の主を捜し続けていた。その視線の主であるララァは、未だシャアのゲルググに覆われていた。「大佐、あり
がとう。」「なにを言うのだ、ララァはただの戦士ではない。運が良かった。空気の流出が弱まってきたぞ。
急いでザンジバルへ戻れ。」残ってガンダムと一戦を交えようとするシャアの身を案じるララァ。だが、シャア
の命令に従い、バギーでザンジバルへと戻る。
アムロはもう1機のモビルスーツを探していた。「妙だ。もう一機のモビルスーツが見えない。迂闊だったな、
あれは赤いモビルスーツだった、シャアかもしれないんだ。ん?」
嵐の中を走るバギーを発見するアムロ。「あの車、ララ?」その車を追い始めるアムロ。そのガンダムを後ろ
からシャアのゲルググがとらえていた。「見つけたぞ、ガンダム。」アムロはララァのバギーを追うのに必死で
後ろのゲルググにまだ気づいていない。ビームライフルを放つゲルググ。が、その瞬間、ビームライフルの
気配を感じ、咄嗟によけるガンダム。「シャアがう、うしろから仕掛けたのか?それとも別の敵か?」
そのガンダムの動きより、ガンダムのパイロットもニュータイプであると感じ取ったシャア。本当かどうかを試
すために、続けて狙撃を試みる。が、すべて避け、ゲルググに襲いかかろうとする。とりあえず間をとるシャ
ア。「間違いなさそうだな。私の射撃は正確なはずだ、それをことごとくはずすとは。」
アムロはシャアのゲルググを見失っていた。探すアムロ。そのガンダムを正確に狙撃していくシャア。ランド
セルを被弾するガンダム。「どこだ?シャア。どっから?ようし、見てろ。」動くガンダムにつられて、身を乗り
出すシャアのゲルググ。それを見逃さなかったアムロ。「シャア、読めたよ。」大きくジャンプするガンダム。
上空からビームサーベルを逆手にとり、ゲルググに向かって大きくダイブする。そのビームライフルの攻撃で
右手を失うゲルググ。ガンダムとゲルググの白兵戦が始まる。アムロの思惑通りに動いてくれないガンダム。
「ああっ、も、もう少し早く反応してくれ。」かろうじてゲルググの右脇腹にビームサーベルを切りつけるアムロ。
「ええい、慣らし運転もしないで使うと。」その場から逃げるゲルググ。ジャンプして追おうとするガンダム。だ
が、先ほどのランドセルに受けた攻撃により、バーニアを噴かすことが出来ない。失速し、動かなくなるガン
ダム。そこに妙な爆発。ゲルググが逃げた方向である。「や、やったのか?でも、あのシャアが。」
それはシャアの仕掛けたダミーの爆発であった。「だいぶやられたな。偽の爆発であのパイロットをだませた
とも思えんが。」ゲルググのコクピットから抜け出し、ザンジバルに連絡を取るべく移動するシャア。

テキサスコロニーの外では、ホワイトベースと接触すべくワッケイン司令のマゼランが探索を続けていた。
そのマゼランが、チベをキャッチする。チベは、マ・クベ艦隊を助けるべく、テキサスコロニーに急行していた
バロム司令の船であった。艦隊戦を開始する両艦。その様子をマ・クベ艦隊がキャッチ。バロム司令を助け
るべく、艦隊を発進させるデラミン。その動きを探知したブライトは、追撃戦を行うべく、セイラのGファイター
を発進させる。ホワイトベースも程なく発進。マ・クベ艦隊との砲撃戦を挑むべく、後を追う。Gファイターとホ
ワイトベースの攻撃によりあっけなく沈むマ・クベ艦隊。ワッケインもバロム司令のチベを沈め、テキサスコロ
ニーに向け進路をとっていた。マゼランと合流したホワイトベースは、ガンダムを回収すべくテキサスコロニー
に入港していく。ワッケインは、コロニーの外でマゼランを待機させる。

コロニーに入ったホワイトベースは、オムル、セイラ、ジョブジョンの乗るバギーを降ろすべく着陸する。探索
に出発するオムル、セイラ、ジョブ。ジョブからの無線が入るも、反応しないフラウ。集中力が切れているフラ
ウをハヤトのところに行かせ、バンマスが来るまで自ら無線を受けることにする。そこにセイラからの無線。
「こちらセイラ、こちらセイラ、ホワイトベースどうぞ。」「セイラか。」「あら、フラウ・ボゥじゃないのね。」「ああ、
今休ませた。どうだ、まだ見つからんのか?」「ええ、もう少し。あっ・・・」ナビゲータシートに銃を向けた人影。
それはシャアであった。「に、兄さん。」その言葉に耳をこらすブライト。
「軍を抜けろと言ったはずだ。そ、それが軍曹とはな。」
「兄さんこそ、ジオン軍にまで入ってザビ家に復讐しようなんて、やることが筋違いじゃなくて?」
「お前の兄がその程度の男だと思っているのか?アルテイシア。」
いろいろと憶測を巡らせるブライト。(あ、相手はだ、誰なのだ?こ、声が。)
「ジンバ・ラルの教えてくれた事は本当の事かもしれない。あのじいやの口癖だったからな。」
ジンバ・ラルの言葉で、語られるジオン・ズム・ダイクンの死直前のエピソード。そしてデキンがジオンを暗殺
したであろうというジンバ・ラルの話。。
「ジオンに入国してハイスクールから士官学校へ進んだのも、ザビ家に近づきたかったからだ。しかしな、
アルテイシア、私だってそれから少しは大人になった。ザビ家を連邦が倒すだけでは人類の真の平和は得
られないと悟ったのだ。」
「なぜ?」
「ニュータイプの発生だ。」
「アムロがニュータイプだから?」
「うん、そのニュータイプを敵にするのは面白くない。今後は手段を選べぬ、ということだ。」
「ジンバ・ラルは、ニュータイプは人類全体が変わるべき理想のタイプだ、と教えてくれたわ。だったら、ニュ
ータイプを敵にする必要はないはずよ。キャスバル兄さん、兄さん何を考えてるの?」
「もう手段を選べぬと言った。アルテイシアはあの木馬から降りるのだ。」
「木馬?あのホワイトベース?」
「ああ。ここから地球に脱出するくらいの金塊を残していく。地球に行って一生をまっとうしろ。私はもう、お
前の知っている兄さんではない。」
「に、兄さん。」
「マスクをしている訳がわかるな?私は過去を捨てたのだよ。」
「兄さん。」
バギーのシートから飛び降りるシャア。「アルテイシア、その素顔をもう一度見せてくれないか?」
ヘルメットのキャノピーを上げるセイラ。「思い直してください、兄さん。」
「きれいだよ、アルテイシア。お前に戦争は似合わん。木馬を降りろよ。」走り去っていくシャア。その姿に向
かって叫ぶセイラ。「兄さん、キャスバル兄さん。」
その会話を聞き、呆然としているブライト。「ブライト?ブライトどうしたの?アムロが?」話しかけるミライ。
「い、いや、なんでもない。雑音がひどくてな。」「そうなの。」「あ、ああ。心配だな、アムロ。」その場を取り繕
うブライト。
バギーの前で涙を流し続けるセイラ。「キャスバル兄さん。に、兄さん。」

コクピットから降りてランドセルの状況を確認しているアムロ。そこに通りかかるセイラのバギー。すぐさま、
ガンペリーの発進を命じるブライト。そこにワッケインからザンジバルタイプの戦艦が、反対の港から出港す
るとの連絡が入った。それを聞き、ブライトはガンペリーの発進を中止、ホワイトベースで直接ガンダムを回
収し、ワッケインの援護に向かうことを命じる。
ガンダムを収容後、ザンジバルの使った港に向かうホワイトベース。そこで発信物体が検知される。ホワイト
ベースのカタパルト内に入ってきたところをオムルの手によって回収される。どうやらトランクらしい。
テキサスの港を出たホワイトベースを待っていたのは、変わり果てたワッケインのマゼランであった。その姿
に言葉をなくすホワイトベースのクルー。「・・ワッケイン司令。」涙を流し、敬礼を送るブライト。

セイラの私室。先ほどオムルが回収したトランクはセイラ宛であった。ブライトがトランクを持ち込み、そこに
貼り付けてあった手紙をセイラに渡す。
「トランクに貼り付けてあった手紙がセイラ宛てだということしか私は知らん。オムルもだ。心当たりはあるの
かね?」
「あります。」
「私には検閲する権利もあるが、教えてもらえんか?トランクの中身と差出人のことを。」
「トランクの中身は、きっと金塊だと思います。」
「間違いないのだな?」
「おそらく。」
「差出人は?」
「シャア・アズナブル、赤い彗星です。」
「そ、そんな馬鹿な。」絶句するブライト。
後ほど一人になり、シャアからの手紙を読むセイラ。「先の約束を果たされんことを切に願う。あのやさしき、
アルテイシア・ソム・ダイクンへ。キャスバル・レム・ダイクンより愛をこめて。」ただただ、涙を流すしかない
セイラであった。
第39話 ニュータイプ、シャリア・ブル 地球連邦軍拠点となったソロモンで奇妙な事件が発生していた。「ラ・ラ」という声が聞こえた瞬間、戦艦や基
地などが爆発するという現象である。それはエルメスに乗っているララァの操作するビット攻撃によるもので
あった。その威力にはシャアも舌を巻くより他ならなかった。「すごいものだな。あの輝きがララァの仕掛けた
ものとは、この私にも信じられん。ニュータイプのララァとモビルアーマー・エルメス、これほどのものとは。」
その攻撃はホワイトベースの近くにまで達していた。ホワイトベースに第1級戦闘位置の命令が出る。ブライ
トはガンダム、ガンキャノン、Gファイターの出撃を命令する。
Gファイターに乗り込んだセイラにブライトは問いかける。「セイラ、君を信じているが、戦いに私情は持ち込
むなよ。」「ブライトさん、私の今までの行動は嘘ではなくてよ。」「指揮官として確認したまでだ。信じている
よ。」
出撃した側からララァのビット攻撃が始まる。ララァの気を感じ取るアムロ。ララァのいる方向で自分を呼ん
でいるような気を感じるアムロ。その方角にララァの姿を見るアムロ。そのアムロの気はララァにも影響を与
えていた。それを疲れと感じたララァ。シャアはそんなララァの様子に気づき、一端引き上げる。感じた気の
方向に向かっていたアムロであったが、突然その気が無くなったことに気づく。「き、聞こえなくなった。何が
聞こえていたんだ?」周囲を見渡していても何も見えない。「確かに何かが呼んでいたのに。」

その頃、ジオン本国では、ギレン・ザビ総帥がシャリア・ブル大尉を謁見していた。ギレンはシャリア・ブルを
ニュータイプだと感じ、フラナガン機関にその調査をさせていた。そのレポートを見せるギレン。ギレンはシ
ャリア・ブルをキシリアの元に送ろうとしていた。ある考えに基づいて。。「私がなぜ君をキシリアのもとにやる
かわかるか?」と尋ねるギレン。シャリア・ブルは明確に返答するのを避ける。
「わたくしには閣下の深いお考えはわかりません。しかし、わかるように努力するつもりであります。」
「それでいい、シャリア・ブル。人の心を覗きすぎるのは己の身を滅ぼすことになる。ただ、私が君をキシリア
のもとにやることの意味は考えてくれ。」と話すギレン。
空母ドロスでグラナダのキシリアの元に到着したシャリア・ブル。キシリアは早速シャリア・ブルをブラウ・ブロ
に乗せる。戦果によってはエルメスをララァと交代も考えての投入である。

そのララァについて、何故それほどまで疲れを感じたのかの調査がフラナガンとともにシャアのザンジバル
で行われていた。多少のサイコミュの回路変更により、解消できそうだということが分かったところで、ララァ
がシャアを呼びに来る。シャリア・ブルがまもなく到着すると。程なくシャリア・ブル大尉とブラウ・ブロパイロッ
トのシムス中尉がザンジバルのブリッジに上がってくる。シャリア・ブルはララァに何かを感じた様子である。
「大佐、この少女、ああいや、ララァ少尉から何かを感じます。力のようなものを。」
その言葉を受け、意地が悪そうに質問するシャア。「で、大尉は私から何を感じるのだね?」
「いや、わたくしは大佐のようなお方は好きです。お心は大きくお持ちいただけるとジオンの為に素晴らしい
ことだと思われますな。」とだけ返すシャリア・ブル。
「よい忠告として受け取っておこう。私はまた友人が増えたようだ。よろしく頼む、大尉。」握手を求めるシャ
ア。その握手を返すシャリア・ブル。「いえ、もし我々がニュータイプなら、ニュータイプ全体の平和の為に案
ずるのです。」
「人類全体の為に、という意味にとっていいのだな?」「はい。」ララァの方を向き、問いかけるシャア。「ララ
ァ、わかるか?大尉のおっしゃることを。」「はい。」その言葉にシャリア・ブルは答える。「ララァ少尉はよい
力をお持ちのようだ。」
話を変えるシャア。「だがな、シャリア・ブル大尉、厄介なことはガンダムというモビルスーツのパイロットが
ニュータイプらしい。つまり、連邦はすでにニュータイプを実戦に投入しているということだ。」
シャリア・ブルはブラウ・ブロで単独出撃する。その出撃を見て、シャアに抗議するララァ。「なぜ大尉だけ
おやりになるんです?」「律儀すぎるのだな。ブラウ・ブロのテストをしたいといってきかなかった。」「そうで
しょうか?」「不服か?私はエルメスを完全にララァに合うように調整してもらわぬ限り、ララァは出撃はさ
せん。」その言葉に返す言葉が見つからないララァ。

ホワイトベースでは、ガンダムの操縦系がオーバーヒート気味だということでちょっとした騒ぎになっていた。
軍服を着て勝手に抜け出したハヤトとともに。そんな騒ぎとは別に、ブライトはセイラの呼び出しを受け、セ
イラの部屋にいた。「あなたの誤解を解いておきたくて。」「僕の誤解?」「腹が立つんでしょ、私があのシャ
アを知っていて隠していたこと。」「まあな。」「シャアは私の兄なんです。」「兄?兄さん?またそれがなんで
?」「事情はいろいろとね。」「で、艦を降りるつもりなのか?」「いえ、もうそれもできないでしょうね。ホワイト
ベースに愛着もあるし、それにできもしないことをできると信じている兄を思うと、刺し違えてもいいって。」
その言葉に驚くブライト。続けるセイラ。「兄は鬼子です。父の本当の望みを歪めて受け止めて、自分がで
きるなんて。キャスバル兄さんじゃありません。」興奮するセイラ。「ごめんなさい、ブライト。これ、兄が私に
くれた金の延べ板です。これをホワイトベースのみんなでわけてください。」「その方がいいのか?」「私がす
っきりします。こんな自分勝手な言い草はないと思いますけど。」セイラの手に自分の手を乗せ、励ますか
のように言うブライト。「セイラの選んだ道はつらいぞ。」「承知しているつもりよ。」「わかった。以前と同じよ
うに君を扱うだけだ。」「ありがとう、ブライトさん。」「いや、君の強さには敬服するだけだよ。」
出がけに言葉を残すブライト。「頭で考えるほど楽なことではないと思うがな。ま、あてにするぞ、セイラ。」
その言葉に「わかっているわ。」とだけ答えるセイラ。

ソロモンに接近するパトロール機に対し、ホワイトベースへ迎撃命令が下る。文句を言いながらも出撃命令
を出すブライト。いち早くパトロール機を捕捉するアムロ。アムロはそれがララァの機体では無いことを感じ
ていた。それはシャリア・ブルとシムスの乗るブラウ・ブロだった。「これはすごい。敵のパイロットはこちらの
位置と地球の一直線を読めるのか?」接近するガンダムに感心するシャリア・ブル。ガンダムのビームライ
フルを合図に、ガンダムに対してオールレンジ攻撃を開始するシャリア・ブル。実体の見えないビーム攻撃
にとまどいながらも避けるアムロ。だが、ガンダムの反応の鈍さに苛立ちを覚えていた。でありながらも、オ
ールレンジ攻撃をすべてかわすガンダム。「すごいモビルスーツとパイロットだ。あのパイロットこそ真のニュ
ータイプに違いない。そうでなければこのブラウ・ブロのオールレンジ攻撃を避けられる訳がない。おおっ。」
支援に来たセイラ、カイ、ハヤトの攻撃を受けるブラウ・ブロ。セイラ達にオールレンジ攻撃をかける。どこか
ら来るかわからないビームに足を破壊され撤退するガンキャノン。「下がれ、この敵はいつものモビルアー
マーとは違うぞ、下がれ。」叫ぶアムロ。なおも攻撃を受け続けるセイラ達。「下がれ、この敵は違うんだ。ク
ッ。」ガンダムのビームライフルを構えようとするアムロだが、その反応の遅さに思わず舌打ちをする。また
しても攻撃を避けられたシャリア・ブル。「あのパイロットは反対からの攻撃も読んだ。」
ビーム砲を1機破壊したが、なおも続く攻撃についにガンダムはオーバーヒートする。「オ、オーバーヒートだ。
・・・敵は。」冷静に敵を探すアムロ。そしてある気を見つける。その気を感じたシャリア・ブル。「なんだ?見
つけたのか?シムス中尉、逃げろ。」だがすでに懐深くまで入り込んだガンダムを回避する術は無かった。
一発のビームライフルで沈むブラウ・ブロ。だが、ガンダムもオーバーヒートを起こしていた。「ガンダムの操
縦系が僕のスピードについてこれないんだ。今さっきのような敵が来たらもうアウトだぞ。」
シャリア・ブルの仇討ちのため、出撃を進言するララァ。だが、シャアはララァの出撃を許さない。「あなどる
な、ララァ。連邦がニュータイプを実戦に投入しているとなると、ガンダム以外にも。」「そうでしょうか?」「戦
いは危険を冒してはならぬ。少なくともソロモンにいるガンダムは危険だ。それに、シャリア・ブルのことも考
えてやるんだ。彼はギレン様とキシリア様の間で器用に立ち回れぬ自分を知っていた不幸な男だ。潔く死な
せてやれただけでも彼にとって。」その言葉に驚くララァ。「大佐、大佐はそこまで。」「ララァ、ニュータイプは
万能ではない。戦争の生み出した人類の悲しい変種かもしれんのだ。」「そ、そんな、そんなこと。」ララァは
シャアの言葉にショックを隠さずにはいられなかった。

ホワイトベースでは、ついに破綻を来したガンダムの操縦系の問題に対し、どのように対処すべきかが検討
されていた。
第40話 エルメスのララァ ガンダムの動力系整備が開始され、ソロモンの技術本部への呼び出しがブライトにかかる。ブライトは、ア
ムロが妙に勘が鋭くなっていると感じてはいるものの、戦い上手になったかどうかということに疑問を未だ抱
いていた。だが、ガンダムがアムロについていけなくなったのは事実である。技術本部へ行くため、ソロモン
に入港するホワイトベース。入港したホワイトベースを待ちかまえていたのは、モスク・ハン博士であった。
モスク・ハン博士はマグネットコーティングをガンダムに施す作業を開始した。その理論に疑念を持ちながら
も、ガンダムへの作業を見守るしかないアムロ。「たまんないな。」とぼやくしか、今できることはない。

キシリアの元には、シャリア・ブルが破れたことの報告がシャアより届いていた。そしてア・バオア・クーを最
終防衛ラインとしたソーラー・システムを発動させることも。ソーラー・システムへの転用が決まったマハルで
は150万人の市民の強制疎開が始まっていた。ジオン本国では、ギレンがデギン公王への作戦説明を行っ
ている。公国制をひきながらも、ギレンの軍政によりジオンが動いていることを憂慮するデギン。作戦を一通
り説明し、デギンへのサインを迫るギレン。「そこまでして勝ってどうするのだ?ギレン。」
「サインをいただければ幸いです。」
「やっておって、いまさら。」
「デギン公王あってのジオン公国ですから。」
「で、どうするつもりか?」
「せっかく減った人口です。これ以上増やさずに優良な人種だけを残す、それ以外に人類の永遠の平和は
望めません。そして、その為にはザビ家独裁による人類のコントロールしかありません。」
「貴公、知っておるか?アドルフ・ヒトラーを。」
「ヒットラー?中世期の人物ですな。」
「ああ。独裁者でな、世界を読みきれなかった男だ。貴公はそのヒットラーの尻尾だな。」
「わたくしが?」
「わしはジオンの国民を急ぎまとめる方便として公王制を敷いた。ジオンの理想を実現する為に。しかし。」
「ヒットラーの尻尾のわたくしが独裁制に持ち込んだ。」
「キシリアとな。」
「はい。絶対民主制は連邦ごとき軟弱を生むだけです。それでは人類は共食いになります、今度の戦争の
ように。ま、勝ってみせます。ヒットラーの尻尾の戦いぶり、御覧ください。わたくしはア・バオア・クーで指揮
をとります。」
デギンの元を去っていくギレンに向かってつぶやくデギン。「・・・ヒトラーは敗北したのだぞ。」

シャアのザンジバルは、連邦軍の艦隊と戦闘状態に入っていた。ララァは初陣。エルメスはリックドム2機の
護衛とともに出撃する。シャアはザンジバルのJミサイルで連邦軍艦艇の攻撃を見届け、ララァ達に遅れて、
ゲルググで出撃する。ララァはビットを使って、うまくサラミスを沈めていく。ベテランパイロットのように。それ
を見てリックドムのパイロットは舌を巻く。そして自分らより実力が上であろう、エルメスの後ろへと下がって
しまう。援護が無くなり途端に集中力を乱すララァ。ビットを操ることが出来ず、エルメスへの攻撃がうまくで
きず、焦るララァ。そこにシャアのゲルググが到着。下がっているリックドムへ指示を出すものの、それに従
わない2機。さらにララァは単独でサラミスに突っ込み、ビームで沈めようとする。が、それもうまくいかず。
「射撃をあてにしてはいけないということ?」
そこにシャアのゲルググが合流。「ララァ、援護するぞ。」「大佐。・・・大佐がいれば。」集中力が戻るララァ。
あっという間にサラミスを沈める。「ララァ、よくやった。」「大佐、援護してくださってありがとう。」

ソロモンでは星一号作戦のため、各艦艇が出撃していた。が、第13独立艦隊のホワイトベースの出航は、
ガンダム整備のために遅れていた。そのガンダムへのマグネットコーティング作業はようやく終わろうとして
いた。
「理論的な自信だけはある。メカニック的な干渉はすべて打ち消したはずだ。」
「ということは、無限大にスピードは速くできる。」
「うん、理論的にはな。しかし、ガンダムのパワーはそうはいかん。」
「そうですね。博士は僕らの救い主です。」
「君が生き残ったらそう言ってくれ。今回のデータだけはなんらかの方法で私の手元に届けてほしいものだ
な。」
「だから人の本音というのは聞きたくありませんね。」
「まったくだ、アムロ・レイ君。君のガンダムに対するセンスに期待するよ。」
「ありがとうございます。」握手をするアムロとモスク・ハン博士。
ようやくホワイトベースはソロモンを出航する。「港を出たら最大船速に移る。先行する隊を追う。」ブライトの
指示により最大船速に移るホワイトベース。

ザンジバルの艦内では、シャアに対し、リックドムのパイロットの釈明が行われていた。
「ひょっとしたらエルメスはシャア大佐のゲルググ以上でありましょう。」
「歴戦の勇士のお前達がそう言うとはな。」
「我々はニュータイプの能力というものを初めて見せられたのです。あれほどの力ならばララァ少尉はお一
人でも戦闘小隊のひとつぐらいあっという間に沈められます。その事実を知った時、我々は馬鹿馬鹿しくな
ったのであります。ララァ少尉ほどのパイロットが現れたなら、我々凡俗などは。」
「ララァに嫉妬しているのではないのか?」
「心外であります。…いや、皆無とはいえませんが、なによりもニュータイプの実力に驚きました。」
「うん。」
「軍法会議も覚悟しております。が、エルメスの出る時後衛にまわることだけは認めてください。」
これにより、エルメスとリックドムとのフォーメーションが決定される。
その後、シャアとララァは、キシリアに謁見するためサラミスへと移動していた。シャアのザンジバルはキシリ
アの遊撃隊に組み込まれることとなる。ララァの戦績を尋ねるキシリア。2隻のサラミスを初陣で沈めたとの
報告に感心するキシリア。「ニュータイプの実戦部隊の実現、いよいよかと。」と進言するシャア。

ホワイトベースでは、アムロがガンダムのテストを行っていた。その様子を見てブライトに話しかけるミライ。
「モスク博士、たいしたものね。」
「いや、アムロだよ。」その言葉に答えるブライト。「あれだけ使いこなせるというからにはニュータイプ、存在
するのかもしれんな。」
「ニュータイプ?」ミライが疑問を抱きつつ、そう発言する。
そこにガンダムが何かを示すような素振りをする。「ん?艦隊戦か?」「合流予定ポイントよ。本隊が敵と接
触したらしいわ。」艦隊戦用意と、各機の発進を命じるブライト。

アムロは自分への呼び声を感じていた。シャアともう1つ何か違うものを感じるアムロ。遠方よりシャアのゲ
ルググに照準、発射するビームライフル。ゲルググに命中する寸前、エルメスのビットがそれを阻止する。
「大佐、退いてください、危険です。」叫ぶララァ。自分の呼ぶもの、エルメスに接近するガンダム。「邪魔
だ。」破壊されていくリックドム。その素早いガンダムの動きに驚くシャア。「ガンダム、昨日までのガンダム
とまるで違うぞ。」射撃戦となるガンダムとゲルググだが、すでにシャアはアムロの敵では無かった。「大佐、
どいてください、邪魔です。」ララァはビットを操作しようにもゲルググが邪魔でガンダムをとらえることができ
ない。アムロの出す気におされ、ララァの集中力が乱れる。ついにゲルググは被弾し、左腕が破壊される。
「うおおっ、ガンダム。」さらに接近し、ゲルググにとどめを刺そうとするガンダムであったが、エルメスの至
近攻撃に阻まれ、一度離脱する。すぐさま、ゲルググに近寄るエルメス。
「大佐、脱出してください。」
「大丈夫だ。この程度ならゲルググは爆発しない。」
「で、でも。」
「エルメスに掴まらせてもらう。攻撃は続けろ。」
「続けています、け、けれど。」
「けれど?なんだ?」
「あ、頭が押さえつけられるように重いのです。」
制御を失ったビットは、いとも簡単にガンダムに打ち落とされる。そこに聞こえる声。(悪い人だ。)(なに?)
(シャアをいじめる悪い人だ。)

ララァはこの戦闘で2隻のマゼランを沈め、初陣であるにもかかわらず1日に4隻の戦艦を沈めるという快挙
をやってのけた。キシリアと謁見し、その功績を誉められるララァ。だが、シャアは、今回の頭痛の原因が、
ガンダムのパイロットにあるとした場合、憂慮できる問題ではないことを一人感じていた。
第41話 光る宇宙 デギン公王はすでに自分の意志をはずれた戦局をおさめるべく、連邦軍との講話を結ぶため、ジオン公国
を後にした。離れていくグレート・デギンを見ながら、つぶやくギレン。老いたな、父上。時すでに遅いのだが
な。」そこにソーラ・レイの稼働開始の連絡が入る。いよいよ、連邦軍との最終決戦準備へと入るギレン。

そのころシャアはキシリアに呼ばれていた。キシリアはシャアの真意を伺おうとしていた。
「で、その前にひとつ聞いておきたい事がある。お前の打倒ザビ家の行動が変わったのはなぜだ?」
「キシリア様に呼ばれた時からいつかこのような時が来るとは思っていましたが、いざとなると恐いものです、
手の震えが止まりません。」
「あたしだってそうだ、お前の素性を知った時にはな。」
「それを、またなぜ?」
「ララァだ。お前はフラナガン機関にララァを送り込んでいたな。そのお前の先読みする能力を知って徹底的
に調べさせた訳だ。お前もララァによってニュータイプの存在を信じ、打倒ザビ家以上のことを考えだした。」
「そのあとの事はすべて連邦に勝ってからのこと。よろしいか?」
この場でもシャアは自分の真意を語らず、ただキシリアに従う素振りを見せる。「は、確かに。」

ニュータイプ、そしてララァの存在はホワイトベースでも話題になっていた。結局はホワイトベースもララァが
出てきたらアムロ頼みだという意見に傾いていく。そのみんなの意見を代弁する、ミライの言葉。
「でも、それほど深刻じゃないわ。あのとんがり帽子が出てきたらアムロには気の毒だけど。」
「そ、それはそうです、今となっては。」
「そうね。今のアムロにそのニュータイプの表れ方をしているから。」
「そうとでも考えなければ説明のつかない事が多すぎるんです、僕の中に。」ミライの言葉を否定せず、素直
に自分のニュータイプの資質を認めるアムロ。だが、自分だけではないことも付け加える。
「でも、ニュータイプっていっても僕は特別な人間じゃありませんよ。これだけ戦い抜いてこられたホワイトベ
ースのみんながニュータイプです。でなければ勝ち抜けなかったはずです。」
「それは、そうかもしれん。しかし、アムロには特別何かを感じるな。」アムロの言葉に対して、やはりアムロ
は特別な存在であることをいわざるを得ないブライト。
「ええ、否定しません。ことにあのとんがり帽子と接触してそう思えるんです。あの、ラ・ラって音。」

キシリア、シャアの艦隊に動き。シャアは出撃準備をするララァの元を訪れていた。
「私もゲルググで出るが、今度は私がララァの命令に従う。」
その言葉に返す言葉を失うララァ。「大佐。」
「今はララァの方が優れている。」そう言い、ララァに口づけをするシャア。
立ち去ろうとするシャアにララァは声をかける。「大佐、今日からノーマルスーツを着けて出撃なさってくださ
い。」「うん。ララァがそう言うのならな。」そう答え、ゲルググに向かうシャア。

ア・バオア・クーに進路をとるホワイトベースを始めとする連邦軍各艦ともキシリア、シャアの遊撃軍の動き
をキャッチ。迎撃体制をとるべく、モビルスーツを発進。程なく艦隊戦に突入する。
最初の連邦軍、キシリア・シャアの遊撃軍との艦隊戦の結果、両軍とも2艦ずつの船を失っていた。
続いてモビルスーツ戦が始まる。そんな中、アムロはひたすらエルメスの姿を探していた。
「む、とんがり帽子だな。」エルメスを発見したアムロは、その方向へとガンダムを移動する。程なくガンダム
を襲うビット。素早いビットの動きに翻弄されるアムロ。「クッ。そうか、コントロールを。」ビットの攻撃パター
ンを解読し、ビットをことごとく破壊していくガンダム。そこに現れるエルメス。ララァはガンダムに対し、直接
ビーム攻撃を試みる。それを回避するガンダム。アムロの念を感じ取るララァ。「アム、ロ?」そしてララァの
念を感じ取るアムロ。「ララ?」その瞬間動きの止まるガンダム。エルメスのビームはガンダムのビームライ
フルを破壊した。「うっ。ララァならなぜ戦う?」「シャアを傷付けるから。」「なに?」「シャアを傷付けるいけな
い人。」「そ、そんな、馬鹿な。」ララァの念が強くなり、再びビットがガンダムを襲う。ビットをビームサーベル
で破壊していくガンダム。「そのあなたの力が示している。あなたを倒さねばシャアが死ぬ。」「あなたの来る
のが遅すぎたのよ。」「遅すぎた?」「なぜ、なぜ今になって現れたの?」またも襲うビット。それを破壊する
アムロ。
「なぜ、なぜなの?なぜあなたはこうも戦えるの?あなたには守るべき人も守るべきものもないというのに。」
「守るべきものがない?」
「私には見える。あなたの中には家族もふるさともないというのに。」
「だ、だから、どうだって言うんだ?」 「守るべきものがなくて戦ってはいけないのか?」
「それは不自然なのよ」
「では、ララァはなんだ?」
「私は救ってくれた人の為に戦っているわ。」
「たった、それだけの為に?」
「それは人の生きる為の真理よ。」
「では、この僕達の出会いはなんなんだ?」
「ああっ。」何か取り返しのつかないことをしてしまったことに気づいたような素振りを見せるララァ。そして、
言葉を続ける。「これは?これも運命なの?アムロ。」
「ああ、そうだ、そうだと思う。これも運命だ。」
「なぜ、なぜなの?これが運命だなんてひどすぎるわ。」
「しかし、認めなくちゃいけないんだ。ララァ、目を開いて。」
「そ、そうなの?そうなのかしら?アムロの言う通りなの?」
アムロとララァの意思の疎通を感じ取るシャア、セイラ、そしてミライ。
「でも、なんで今、今になって。」
「それが人の背負った宿命なんだろうな。」

そこに割って入ってくるシャアのゲルググ。「ララァ、奴とのざれごとはやめろ。」そしてセイラもその空域に
入ってくる。「兄さん、下がってください。」「ここは危険です、セイラさん下がって。」アムロの制止も聞かず、
ゲルググに接近するセイラ。ゲルググのビーム長刀がGファイターの装甲を破壊する。「ああっ。兄さん、
私よ、わからないの?」
シャアはララァに呼びかける。「ララァ、私はガンダムを討ちたい。私を導いてくれ。」だがララァは放心状
態。「ララァ。」再度のシャアの呼びかけに反応するララァ。「お手伝いします、お手伝いします、大佐。」
「すまん、ララァ。」
シャアのゲルググに肉薄するガンダム。「シャア。」構えるゲルググ。「ララァを手放す訳にはゆかん。」気
迫のこもるシャアの攻撃に押され気味のアムロ。そしてゲルググをかわしても、エルメスのビームはガン
ダムを襲う。セイラのGファイターもアムロの援護をすべく攻撃する。そのGファイターに対し、まずは動き
を止めようと攻撃に移るシャア。Gファイターのコクピットを長刀でたたききろうとした瞬間、ララァの声が
聞こえる。「大佐、いけない。」その声にコクピットを見るシャア。「ん?アルテイシアか。」シャアがGファイ
ターへの攻撃を止め、気を抜いた瞬間、ガンダムのビームサーベルが、ゲルググの右腕を切り落としてい
た。「シャア、覚悟。」とどめを刺そうとするアムロ。「チィッ」そこにエルメスが割って入ってくる。ゲルググの
コクピットを狙ったビームサーベルは、エルメスのコクピットを貫く。「ララァ」シャア、そしてアムロがララァへ
呼びかける。「きゃーっ。」
「人は変わってゆくのね。あたし達と同じように。」
「そ、そうだよ。ララァの言う通りだ。」
「アムロは本当に信じて?」
「し、信じるさ、き、君ともこうしてわかり合えたんだから。人はいつか時間さえ支配することができるさ。」
「ああ、アムロ、時が見える。」
エルメスは、眼前で爆発していく。「…うわーっ」ララァを失った悲しみでコンソールをたたくシャア。「ラ、ララ
ァ、と、取り返しのつかないことを、取り返しのつかないことをしてしまった・・・」同じく悲しみに沈むアムロ。

連邦との戦闘が終わり、シャア、キシリアの遊撃軍はグワジンを残すのみとなっていた。そんなときにキシ
リアの元にギレンより特命が入る。「連邦軍主力艦隊はア・バオア・クーへ侵攻しつつあり、ソーラ・レイの
ルート上のジオン艦隊はすべて退避、作戦タイム2105。」「ソーラ・レイを?30分後に使うというのか?」
マハルより転用されたソーラ・レイではまさに発射直前の準備があわただしく行われていた。「ア・バオア・
クーのギレンである。ソーラ・システム最終目標を伝える。敵のレビル艦隊の主力は三つの隊に分かれて
はいるものの、ソーラ・レイ、ゲルドルバ照準に合わせれば敵主力の三分の一は仕留められるはずであ
る。ソーラ・レイシステム、スタンバイ。」
ゲルドルバに向け姿勢制御が行われるソーラ・レイ。そして発射。その先には、レビル将軍率いる連邦軍
主力艦隊、そして、和平交渉へと出向いてきたデギン公王の乗るグレート・デギンがいた。

その光に反応するアムロ。「だ、駄目だ、前へ進んじゃ駄目だ。光と人の渦がと、溶けていく。あ、あれは
憎しみの光だ。」
第42話 宇宙要塞ア・バオア・クー レビル将軍の乗るサラミスのブリッジを見ながらつぶやくデギン。「これで和平が。」その時兵士からの声
が。「デギン公王。」「なにか?」とデギンが振り返った瞬間、グレード・デギン、そしてレビルの乗るサラミ
スを包み込む光。ゲルドルバ標準で放たれたソーラ・レイの光である。飲み込まれる連邦軍主力艦隊。
そして、その光を前に騒がしくなるホワイトベース。「なんだ?あの光は。」「レビル艦隊の主力部隊のいる
所よ。」ブライト、ミライの話す中、ややおびえた顔のアムロがつぶやく。「ぜ、全滅じゃないけど、ぜ、全滅
じゃないけど。」

キシリアが乗るグワジンでは、発射されたゲルドルバ照準にグレード・デギンがいたことがキャッチされて
いた。「グレートデギンの識別信号がゲルドルバの線上で確認されたのですが、どうも。」その兵士の情報
に不信感をあらわにするキシリア。「グレートデギンが?」「はい。しかも敵艦隊の主力とまったくの同一地
点であります。」(グレード・デギンが?妙な?)一度疑問を胸の中にしまうキシリアであった。
一方、ア・バオア・クーでは、ソーラ・レイによる先制攻撃に成功したことを受け、ギレンが作戦前の演説を
行っていた。
「我が忠勇なるジオン軍兵士達よ。今や地球連邦軍艦隊の半数が我がソーラ・レイによって宇宙に消え
た。この輝きこそ我らジオンの正義の証である。決定的打撃を受けた地球連邦軍にいかほどの戦力が残
っていようと、それはすでに形骸である。あえて言おう、カスであると。それら軟弱の集団がこのア・バオア・
クーを抜くことはできないと私は断言する。人類は、我ら選ばれた優良種たるジオン国国民に管理・運営
されてはじめて永久に生き延びることができる。これ以上戦いつづけては人類そのものの危機である。地
球連邦の無能なる者どもに思い知らせてやらねばならん、今こそ人類は明日の未来に向かって立たねば
ならぬ時である、と。ジーク・ジオン。」響くジーク・ジオンのかけ声。

ソーラ・レイの攻撃により明白な戦力不足に陥っている連邦軍であるが、何とかホワイトベースを中心にし
てア・バオア・クーへの攻撃が開始されようとしていた。作戦説明で不安をあらわにするホワイトベースの
クルーであったが、「でも、大丈夫だと思います。ア・バオア・クーの狙い所は確かに十字砲火の一番来る
所ですけど、一番もろい所だといえます。作戦は成功します。」というアムロの方便にすがるしかなかった。
出撃をするため、カタパルトに降りる、セイラ、カイ、そしてアムロ。カイが尋ねる。「アムロ、さっきお前の
言ったこと、本当かよ?」「嘘ですよ。ニュータイプになって未来の事がわかれば苦労しません。」と返すア
ムロ。「アムロにああでも言ってもらわなければみんな逃げ出しているわ、恐くてね。」続けるセイラ。「そり
ゃそうだな。逆立ちしたって人間は神様にはなれないからな。」

ついに連邦軍のア・バオア・クーへの攻撃が始まった。ソロモン攻略戦と同じようにビーム攪乱幕をはりつ
つ連邦軍の侵攻が続いていた。そんな中、キシリアのグワジンが入港する。
「新型のゲルググタイプはすべて出動しているようで。私が使えるのは残っていないでしょう。」とキシリアに
言うシャア。「ジオングを使ってみるか?80パーセントしか完成していないようだが。」シャアの言葉を受け、
答えるキシリア。「ジオング?」「エルメスを開発した時にな、あのサイコミュを部分的に取り入れたモビルス
ーツだ。お前なら使いこなせよう。」「では、ブラウ・ブロ的な要素を持つ?」「うむ。あれは出動していまい、
やって見せ。私はギレンの所に行く。」
その足でキシリアはギレンのいる指揮所に向かう。「キシリア様が戻られました。」「遅かったな。」「申し訳
ありません。」「ふん、エルメスが沈んだそうだな?」「はい。」「ガンダム一機にてこずるものだな。」「ジオン
グを使います。」「未完成品をか?」「少しでもニュータイプと思える者をぶつける以外、ガンダムは倒せま
せん。」「また、シャアか。こだわり過ぎるな。」そしてキシリアは、ギレンに一番の疑問をぶつける。
「グレートデギン、どこに配備されたのです?ズム・シティですか?」「沈んだよ。先行しすぎてな。」「ほう。
デギン公王から調達なさったので?」「歯がゆいな。キシリア、父がグレートデギンを手放すと思うのか?」
「思いません。」「では、そういうことだ。」その言葉に顔がきつくなるキシリア。
シャアは、ジオングがあるカタパルトに来ていた。「80パーセント?冗談じゃありません。現状でジオングの
性能は100パーセント出せます。」「足は付いていない。」「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからん
のですよ。」「使い方はさっきの説明でわかるが、サイコミュな、私に使えるか?」「大佐のニュータイプの能
力は未知数です、保証できる訳ありません。」「はっきり言う。気にいらんな。」「どうも。」ジオングに乗り込
もうとするシャアに言葉をかける兵士。「気休めかもしれませんが、大佐ならうまくやれますよ。」「ありがと
う。信じよう。」

指揮所。予想外の空母ドロスの奮闘に満足そうなギレン。そこに連邦軍の新たな艦隊発見の知らせ。キシ
リアはジオングのシャアを呼び出す。「何か?」「ジオングはどうか?」「行けます。」「ならばSフィールド上に
新たな敵艦隊が発見された。第34モビルスーツ隊と共にこれを。」「は、Sフィールドに侵入する敵を撃滅し
ます。」シャアが向かうことで「連邦の戦力もこれまでだな。」と安心をした様子のキシリア。そしてギレンの
方を向く。「Sフィールドとて、このくらいの戦力なら支えられるな?」「はい。」涼しい顔のギレンに対し、憎し
みのあまり、腰のビームライフルに手をやるキシリア。(父殺しの男が。)

ジオングで出撃したものの、うまくサイコミュを使えるか自信のないシャア。「さて問題は、私に明確なニュ
ータイプの素養があるかどうかだが。」ジオングを使い、サラミスを撃沈させたことで自信を持つシャア。
「よし。しかし、奴はどこにいるのだ?」ガンダムを探すシャア。「ん?あれか。モビルスーツ隊。」そしてその
中にガンダムの姿を見つける。「奴め。」ガンダムを追うジオング。「大物だ。シャアか?」ジオングに気づく
アムロ。サイコミュの攻撃に翻弄されるアムロ。「うしろから?なんだ?チッ。」攻撃を回避しつつ、ジオング
に狙いを定める。「シャア以上のニュータイプみたいだ、しかし、」一度はハイパーバズーカを放ったものの、
続けての攻撃をしないアムロ。「しかし、今はア・バオア・クーに取りつくのが先だ。」ア・バオア・クーの方に
目をやるアムロ。「本当の敵はあの中にいる、シャアじゃない。」

再び指揮所。「フフ、Nフィールドはドロスの隊で支えきれそうだ。」「結構なことで。」キシリアの声に振り返る
ギレン。座るギレンのすぐ後ろにキシリアが立っていた。
「グレートデギンには父が乗っていた、その上で連邦軍と共に。なぜです?」
「やむを得んだろう。タイミングずれの和平工作がなんになるか?」
「死なすことはありませんでしたな、総帥。」ビームライフルの銃口をギレンに向けるキシリア。
「ふん、冗談はよせ。」
「意外と兄上も甘いようで。」発射されるビームライフル。ビームはギレンの後頭部から額に貫通。ビームの
威力でギレンの体は指揮所のモニターまで飛び、そして宙を浮いていた。騒ぐ指揮所の兵士。
「死体を片付けい。」一喝するキシリア。
「父殺しの罪はたとえ総帥であっても免れることはできない。異議のある者はこの戦い終了後、法廷に申し
たてい。」沈黙の指揮所。崩れかかる指揮所の天井。
「ギレン総帥は名誉の戦死をされた。ドロス艦隊が破られたぞ。キシリア閣下、御采配を。」助け船を出す
ある兵士。「うむ。トワニング、助かる。」キシリアがギレンの代わりに指揮を執り始める。

ア・バオア・クーに接近しつつあるホワイトベース。「ミライ、さっき一時的に敵の防御力が弱くなったろ?」
ブライトは一時的に薄くなった攻撃がどうしてか、疑問を感じていた。「そうね、なんか妙だったわ。こちらも
そうだけど、むこうもうまくいってないようね。」ミライのその言葉に納得するしかないブライト。
そのホワイトベースの近くでは、カイ、ハヤト、セイラがしっかりと奮戦していた。そこに合流するアムロ。
そのガンダムを追っていたシャアは、完全にガンダムを見失っていた。「情けない、ガンダムを見失うとは。
どこだ?奴は。」

徐々に連邦軍のモビルスーツは、ア・バオア・クーにとりつき始めていた。「やりますな。Nフィールドもモビ
ルスーツが取りついたようです。」トワイニングから報告を受けるキシリア。「うむ、気がかりだな。Sフィール
ドはどうなのだ?」「ガンダムらしいモビルスーツが血路を開いて・」その言葉を遮るように質問するキシリ
ア。「シャアのジオングは?」「敵に阻まれてガンダムに近づけぬようです。」「いきなりジオングだからな。」
ガンダムもついにア・バオア・クーに取り付いていた。そこに自分の方に向かって一直線に飛んでくるジオ
ングの姿を見つける。「シャアか。こちらを見つけたな。」
シャアはようやくガンダムを見つけていた。「見えるぞ、私にも敵が見える。」
「やるしかないのか。」ガンダムをジオングの方に向け、飛び立たせるアムロ。
ジオングとガンダムの戦いが始まる。が、現時点ではガンダムの方が一枚上手。ジオングはわずかながら
もガンダムの攻撃を受けていた。「チッ、またか。」シャアはうまくジオングを動かせないと焦りを感じていた。
「しかし、私もニュータイプのはずだ。」
第43話 脱出 「ガンダムめ。」ガンダムの攻撃に未だ押され気味のジオング。ついにガンダムはジオングに取り付く。
「これだけ近付けば四方からの攻撃は無理だな、シャア。」「な、なんだ?」「なぜララァを巻き込んだんだ?
ララァは戦いをする人ではなかった。」「チィッ。」再び離れる両者。ジオングは両腕を破壊され、そして、ガン
ダムは左腕を失っていた。一時ア・バオア・クーへ退くジオング。「シャア。」
ア・バオア・クーの表面ぎりぎりにジオングを飛行させながら、ノーマルスーツに着替えるシャア。「ガンダム
のパイロットはアムロといったな。どうする?あのニュータイプに打ち勝つ方法は?ん?」爆光からジオング
に向かって一直線に飛んでくるガンダムの姿。「ララァ、教えてくれ。どうしたらいいのだ?」

ア・バオア・クーに接近し、攻撃を続けていたホワイトベース。左エンジンに直撃をくらう。ア・バオア・クーに
着地するしかないホワイトベース。「全員に告げろ、白兵戦の用意をさせろ。」ブライトの指示が飛ぶ。
ホワイトベース着底。すかさず後方からのリック・ドムの攻撃。右エンジンの爆発で、ア・バオア・クーに突き
刺さる様な姿勢で止まるホワイトベース。「うあっ、ホワイトベースのエンジンが両方とも。」先にア・バオア・
クーに取り付いていたカイが、援護に来る。「ああっ、乗組員のみんなは?」カイに続き、ハヤトもホワイトベ
ースの援護に駆けつける。

「どこだ?シャア」ジオングの気配を感じつつも、未だジオングを発見できないガンダム。そのガンダムの様
子を隠れて伺うシャア。そして気配を感じ、後ろを振り向いた瞬間、ガンダムのビームライフルから放たれた
光が、ジオングの胸を貫通する。「違うか。」コクピットだと思って攻撃した箇所は違ったらしいと気づくアム
ロ。「ガンダム。」ジオングの顔を切り離したシャアは、逃げざまにガンダムへ攻撃を加える。見事にメインカ
メラをやられるガンダム。「ううっ、・・・シ、シャアめ。」当てずっぽうのビームライフルでは、シャアは避けるこ
となど造作もない。早々とその場を離れるジオング。「まだだ、たかがメインカメラをやられただけだ。」アムロ
は、シャアの後を追う。

ジオングの識別信号が消えたことはすでにキシリアの耳に届いていた。「赤い彗星も地に落ちたものだな。」
近づいてきたトワイニングにア・バオア・クーの降伏を告げるキシリア。「私の脱出15分後にここを降伏させる
がよい。」「し、しかし。」「グラナダの戦力と本国の戦力が残っているうちにな。」「し、しかし、今となっては脱
出こそ至難の業かと。」「私が生き延びねばジオンが失われる。」

「シャアだってわかっているはずだ。本当の倒すべき相手がザビ家だということを。それを邪魔するなど。」
ジオングを追い続けているアムロ。ア・バオア・クー内に入り込み、通路を進む。そしてシャアの気配を感じ
る。「シャア、いるな。」ガンダムにプログラムを施し、ガンダムを降りるアムロ。ガンダムはアムロのプログ
ラム通り、上空に向かってビームライフルを発砲、ジオングを打ち落とす。だが、ジオングも最後の攻撃。
ガンダムはその攻撃で完全に沈黙する。
その間、シャアが逃げ込んだと思われる場所に移動したアムロ。「・・今の僕になら本当の敵を倒せるかも
しれないはずだ。ザビ家の頭領がわかるんだ。」
後ろから聞こえる声。「その力、ララァが与えくれたかもしれんのだ、ありがたく思うのだな。」
「貴様がララァを戦いに引き込んだ。」銃を構えるアムロ。そこにシャアがいた。
「それが許せんというのなら間違いだな、アムロ君。」「な、なに?」ゆっくりと近寄って来るシャア。
「戦争がなければ、ララァのニュータイプへの目覚めはなかった。」
「それは理屈だ。」
「しかし、正しいものの見方だ。」
「それ以上近付くと、撃つぞ。」銃を構え直すアムロ。
「今、君のようなニュータイプは危険すぎる。私は君を殺す。」シャアに向かって銃を発砲するアムロ。銃撃
戦が始まる。アムロの銃弾がシャアの腕をかすめる。逃げるシャア。追うアムロ。シャアはある一室へと逃
げ込んでいった。閉まるシャッターをくぐり抜け、そこを目指すアムロ。

ホワイトベースでは、援護のガンタンク、ガンキャノンがすでに稼働不能となり、白兵戦が主流になってい
た。セイラのGファイターも近くに不時着。「みんなは?」ホワイトベースを目指すセイラ。だが、そこにシャア
の気を感じ取っていた。「あっ、兄さん。」その方向に進むセイラ。「あの向こう。」その目指す部屋でなにや
ら剣を重ねる音がしていた。

「貴様が最強の兵だからだ。」「本当の敵はザビ家ではないのか?」「私にとっては違うな。」フェンシングで
の戦いを続けるシャアとアムロ。
「わかるか?ここに誘い込んだ訳を。」「ニュータイプでも体を使うことは普通の人と同じだと思ったからだ。」
「そう、体を使う技はニュータイプといえども訓練をしなければ。」「そんな理屈。」
その戦いを止めようとするセイラ。「やめなさいアムロ、やめなさい兄さん。」「二人が戦うことなんてないのよ、
戦争だからって二人が戦うことは。」
「ヤアッ。」「チィッ。」アムロの剣が、シャアのヘルメットに突き刺さり、そしてシャアの剣はアムロの右肩を貫
通していた。そしてにらみ合いとなる2人。
「い、今、ララァが言った。ニュータイプはこ、殺しあう道具ではないって。」
「戦場では強力な武器になる。やむを得んことだ。」
「貴様だってニュータイプだろうに。」 
「やめて、二人が、ああっ・・」セイラが説得をしようとした瞬間、その背後で爆発が起こる。爆風に流され、に
らみ合う2人の間に割り込んでくるセイラ。セイラに押され、剣の残る右肩の傷を悪化させるアムロ。
「あっ、アムロ、大丈夫?」アムロを気遣うセイラ。そこに後ろからシャアが近づく。「アルテイシア。」「兄さん、
やめてください。アムロに恨みがある訳ではないでしょう。」
「しかし、敵にする訳にはいかん相手であれば、倒せる時に。」
「兄さんの敵はザビ家ではなかったの?」
「ザビ家打倒なぞもうついでの事なのだ、アルテイシア。ジオン無きあとはニュータイプの時代だ。アムロ君が
この私の言うことがわかるのなら、私の同志になれ、ララァも喜ぶ。」
その言葉に驚きを隠せないアムロとセイラ。「・・なに?」「兄さん、なんてことを、あっ。」
再び起こる爆発。アムロは廊下へ押し出され、セイラはその爆発に巻き込まれそうになる。セイラを助けるシ
ャア。「兄さん、ひ、額の傷は?」「ヘルメットがなければ即死だった。」

廊下に流され、2人と離れたアムロは、肩に残った剣先を抜き、治療をしていた。
一方、シャアは生き残った兵士より、キシリアが脱出しようとしていることを知る。「キシリア閣下が脱出され
るので護衛にと思いましたが、残念です。た、大佐なら。」「安心しろ。貴様に代わって閣下は必ずお守りし
てみせる。」「あ、ありがとうございます。噂の火傷はございませんな・・・」息絶える兵士。
「ここもだいぶ空気が薄くなってきた。アルテイシアは脱出しろ。」割れたヘルメットを捨て、近くに浮いていた
ヘルメットをかぶるシャア。「兄さんはどうするのです?」「ザビ家の人間はやはり許せぬとわかった。そのケ
リはつける。」近くに浮いていたヘルメットをかぶり、そしてバズーカを手にするシャア。
「お前ももう大人だろ。戦争も忘れろ、いい女になるのだな。アムロ君が呼んでいる。」「アムロが?」
その場を後にするシャア。ザンジバルで脱出を図ろうとするキシリアの元へ急ぐシャア。
まさにザンジバルは出航寸前であった。そのザンジバルのブリッジの前に姿を見せるシャア。その姿に気づ
くキシリア。シャアは、敬礼をする。(ガルマ、私の手向けだ。姉上と仲良く暮らすがいい。)
「シャアか。」気づくキシリア。離床するザンジバル。その瞬間、シャアの構えたバズーカより閃光。恐怖にお
びえた顔のキシリア。そのキシリアの顔を吹き飛ばす閃光。
ザンジバルはア・バオア・クーから飛び立とうとした瞬間、サラミスの攻撃により沈む。

アムロは脱出路を失っていた。「・・・だ、駄目か。」そしてシャアと離れたセイラも同じだった。「み、みんなの
所になんか、い、行けない。い、行ったって、生き延びたって兄さんが。」
アムロは爆風に行く手を阻まれ、すでにどうすることもできなかった。「ち、ちくしょう、こ、ここまでか。」垂直
の通路を降りていくアムロ。その先に、横たわったガンダムを発見する。「・・・まだ助かる」。ガンダムの上
半身を排除し、コアファイターに向かうアムロ。「し、しかし、ホワイトベースのみんなは?セイラさんは?」
コアファイターのコクピットで一息つくアムロ。「ララァの所へ行くのか。」その時ララァの声が聞こえる。「殺し
あうのがニュータイプじゃないでしょ。」「えっ?そ、そうだな。どうすればいい?」「フフ、アムロとはいつでも
遊べるから。」「ララァ。」「決まってるでしょ。」「あ、見えるよ、みんなが。」
ホワイトベースの人たちが、今何をしていのかが見えるアムロ。「ね、アムロなら見えるわ。」聞こえるララァ
の声。 「セ、セイラさん、た、立って、立つんだ。」

まずセイラに指示を与えるアムロ。アムロの声に従い動き始めるセイラ。次にブライトに退艦命令、ミライに
ランチの準備を指示する。フラウ、カイ、そしてハヤトもアムロの声を聞き、ランチに向かう。
何とかホワイトベースにたどり着いたセイラ。発進しようとしていたランチに拾われ、一緒に脱出する。ア・バ
オア・クーを後にするランチ。その瞬間、ホワイトベースは爆発する。「ホ、ホワイトベースが。」「ホワイトベー
スが、沈む。」光に包まれるホワイトベース。感慨深げにそれを見つめるクルー達。「アムロが呼んでくれな
ければ、我々はあの炎の中に焼かれていた。」そのブライトの言葉に反応するセイラ。「じ、じゃあ、このラン
チにアムロはいないの?ブライト。」「いない。セイラやミライの方が聞こえるんじゃないのか?」「えっ?」「ジ
オンの忘れ形見のセイラの方が我々よりよほどニュータイプに近いはずだ。捜してくれ、アムロを。」そう言
われて困るセイラ。「私がホワイトベースにたどり着くまではあれほどに。アムロ。」
各所からの爆煙につつまれるア・バオア・クー。「人がそんなに便利になれるわけ、ない。」ア・バオア・クーを
仰ぎ見て、悔しさをあらわにし、涙を流すセイラ。そこで突然はしゃぎ出すカツ、レツ、キッカ。「そう、ちょい
右。」 「そう右。」「はい、そこでまっすぐ。」「そう、こっちこっち、大丈夫だから。」その言葉に何かがわかった
ように声を上げるセイラ。「アムロ?」「わかるの?ど、どこ?」セイラの言葉に反応するミライ。
「いい?」「4、3、2、1、0!」そのかけ声の瞬間、セイラは発見する、アムロの乗ったコアファイターがア・バオ
ア・クーから飛び出してくるのを。「・・・ああ。」
ランチを一直線に目指すアムロのコアファイター。「み、みんなは?」ランチから発せられる光に気づき、ラン
チにいるみんなを確認するアムロ。安堵し、涙を流すアムロ。「ごめんよ、まだ僕には帰れる所があるんだ。
こんな嬉しいことはない。わかってくれるよね?ララァにはいつでも会いに行けるから。」コアファイターを捨て、
ランチに向って体を投げ出すアムロ。ランチの上にみんなは手を広げ、アムロを待ち構える。

宇宙世紀0080。この戦いの後、地球連邦政府とジオン共和国の間に終戦協定が結ばれた。


2004.10.16 Update

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