機動戦士ガンダム SEED DESTINY

題名・内容
 
TV全題名・内容一覧

PHASE - 01 〜 PHASE - 13(その1)

機動戦士ガンダム SEED DESTINYの題名及び内容概略一覧です。

コズミック・イラ 71。オーブ連合首長国への連合軍攻撃に巻き込まれるシン・アスカ。その攻撃に家族が巻き込まれ、シンは単身オーブを後にする。
それから2年。アーモリーワンでの連合軍のガンダム奪取で再び悲劇の歴史が始まる。その奪取を阻止すべく、インパルスガンダムで立ち向かったのは、そのシン・アスカであった。


PHASE - 01 怒れる瞳 コズミック・イラ 71 6.15。地球連合は合流要請に従わないオーブ連合首長国に対して、まさに攻撃を開始しようとしていた。そこに投入される地球連合新兵器、レイダー、カラミティ、フォビドゥン。迎え撃つはアークエンジェルに再合流したばかりのキラ・ヤマトが乗るフリーダム。オーブの人々はそんな戦渦から逃れるべく、避難を急いでいた。 シン・アスカとその家族もそんな人々の中の一部。時折接近するモビルスーツにおびえながら、山間の道を港へ急いでいた。途中妹の携帯がポケットから滑り落ちていく。携帯をあきらめきれず、母親の言うことも無視して拾いに行こうとする妹。シンは見かねて、その携帯を取りに斜面を下っていく。そこにカラミティの砲撃とフリーダムの一斉放射が交錯、辺り一帯は炎に包まれる。爆風に体を吹き飛ばされるシン。港の近くに体がなぎ出される。
「大丈夫か」オーブの兵士に抱き起こされるシン。その時、家族のことを思い出し、目をやる。そこには爆風でえぐれ、形の変わった地肌しかなかった。岩陰に妹の手を見つけるシン。「マユ!」駆け寄るシン。しかし、それは妹の右上腕部だけ。ショックのあまり呆然となるシン。そして視界を上に上げていく。そこには爆風に巻き込まれ、血まみれで倒れている父、母、そして妹の体が横たわっていた。言葉を失い、泣きながらしゃがみ込み、そして妹の手を触ろうとするシン。だが、あまりに変わり果てた姿にさわろうとすることが出来ない。シンの頭上をかすめていくモビルスーツ。そのモビルスーツに向かい、憎しみの目を向けるシン。そして、「ウワァー」と叫び続ける。シンの悲しみの声はオノゴロ島沖に響いた。

それから2年後の73 10.2。連合とプラント間で協定が結ばれ、情勢安定を迎えつつある中、カガリはプラントのアーモリーワンにシャトルで入港しようとしていた。議長、ギルバート・デュランダルと会見するために。
アーモリーワンでは、ミネルバ出航準備に皆が追われていた。そんなあわただしい中、ギルバート・デュランダルが到着。そしてギルバートのいる部屋に、カガリ、そしてガード役のアスランが向かっていた。相変わらず無茶をやる癖が抜けないカガリに、「今はオーブの国家元首なのだから」とたしなめるアスラン。そういう小言はうんざりという態度を示すカガリ。アスランは港の待合いデッキに目をやっていた。そこにステラ、スティング、アウルの3人の姿があった。遠くを見つめるステラに何か気になるものを感じるアスラン。

ザフトの兵士に何故戦後初の新造戦艦の準備に忙しいアーモリーワンを会見場に選んだのかと愚痴をこぼしながらエレベーターで移動するカガリ。「内々かつ緊急にとお願いしたのはこちらなのです。アスハ代表。プラント本国へ赴くよりは目立たぬだろうというデュランダル議長のご配慮もあってのことと思われますが。」とその愚痴にたしなめるように言うアスラン。その言葉に黙るカガリ。その眼前に広がるアーモリーワンの大地。
「やあこれは姫。遠路お越しいただき申し訳ありません。」ギルバートの歓迎の言葉に迎えられ、会見場に入るカガリ。「いや、議長にもご多忙のところお時間をいただきありがたく思う。」始まる会見。
「で、この情勢下、代表がお忍びでそれも火急なご用件とはいったいどうしたことでしょうか。」と切り出すギルバート。「我が方の大使の伝るところによれば、だいぶ複雑な案件のご相談、ということですが。」「私にはそう複雑とも思えぬのだがな。だが未だにこの案件に対する貴国の明確なご返答が得られないということは、やはり複雑な問題なのか。」その単刀直入の言葉に後ろで控えるオーブの官僚達は顔をしかめる。「我が国は再三再四、かのオーブ戦の折に流出した我が国の技術と人的資源のそちらでの軍事的利用を、即座に止めていただきたいと申し入れている。」続けるカガリ。「なのに何故、未だに何らかの回答さえいただけない。」

アーモリーワンの街中では、ステラ、スティング、アウルの3人が移動していた。店のウィンドウに自分の姿を写し、はしゃぐステラ。その姿を見て、「何をやってんだ。」と言うアウル。「浮かれている馬鹿の演出、じゃねえの。」と答えるスティング。そして続ける「おまえも馬鹿をやれよ。馬鹿をさ。」ステラは浮かれ、踊り始める。そこに通りかかったシン。倒れそうになったステラを支えるためステラに手を添える。が、その手が胸に。。「大丈夫?」の言葉に一度は不思議そうな顔を向けるステラであったが、きつい顔に変わり、シンをはねのけて走り去っていった。何が起きたのか分からず呆然とその姿を見つめるシン。「胸つかんだな、おまえ。」後から来たヨウランの言葉に顔を赤らめるシン。「ち、違う。」「このラッキースケベ。」とだけ言い、先に行くヨウラン。後を追うシン。

カガリとギルバートの会見の続きは外に出て、モビルスーツハンガー群の前で進められていた。アスランは整備が続くモビルスーツ各機にいささか驚きを隠せない様子。ギルバートの言葉に押され気味のカガリ。かろうじて「その姫というのは止めていただけないか。」と言うに過ぎなかった。オーブでは各国の圧力に屈せず、そして軍事力もきちんと整えているということを話し、そしてその言葉に続けるギルバート。「しかし、何故?何を怖がっていらっしゃるのです。あなたが。」という言葉にカガリは一瞬当惑したような顔を向ける。「大西洋連邦の圧力ですか?オーブが我々に条約違反の軍事強要をしていると。」確かにカガリは大西洋連邦からその件で突き上げを受けていた。続けるギルバート。「だがそんな事実は無論ない。かのオーブ防衛戦の折、難民となったオーブの同胞達を我らが暖かく受け入れたことはありましたが、その彼らがここで暮らしてためにそのもてる技術を活かそうとするのは仕方のないことなのではありませんか。」

そんな会見が続く中、ステラ、スティング、アウルは、ザフトに潜り込んでいた工作員の手引きで、ガンダムのあるハンガーへの突入機会をうかがっていた。突入前に銃の確認をするスティングとアウル、そしてナイフを取り出し、その光を確認するかのように見つめるステラ。

「駄目だ。強すぎる力は争いを呼ぶ。」とカガリがギルバートに向かい啖呵を切ったそれを合図にするかのように、ステラ、スティング、アウルのガンダム奪取作戦が始まった。アクロバットをするかのように2丁の銃を巧みに扱い、警備兵を射殺していくアウル。

「いいえ、姫。争いが無くならぬから、力が必要なのです。」カガリの言葉に、優しく、諭すような口調で返すギルバート。
その頃にはステラ、スティング、アウルのハンガー制圧は終わっていた。ガンダムに乗り込みOSを起動させる3人。すべて情報通り。何の苦もなくカオス、ガイア、アビスの3機のガンダムを起動させる3人。立ち上がる3機のガンダム。戦闘ステータスとして起動され、すぐさまフェイズシフトで身を包む。生き残りの兵士が最後の力を振り絞り、警報ボタンを押す。

基地内に鳴り響く警報。それに驚くザフトの兵士、メカニック。カガリ達も突然の警報に驚く、「警報?何だ。」「6番ハンガー。」その時、数条のビームがハンガーやモビルスーツを貫通していく。爆発するハンガー。その爆風の中に現れるガンダム3機。各ガンダムはハンガーのモビルスーツを破壊するために攻撃を開始する。スクランブルがかかるザクウォーリア。
アスランにかばってもらい地面に伏せていたカガリが起き出す。「しんがた?」カガリ達の目の前に現れるアビスガンダム。「あれは?」驚きの声を上げるアスラン。「ガンダム?」同じく驚くカガリ。「姫をシェルターに。」ギルバートの命令によりシェルターに案内されるカガリ。そしてギルバートはミネルバへの応援を要請した。
アスランに手を引かれながらシェルターへと急ぐカガリ。だが、その直前でモビルスーツが爆発。案内をしている兵士が巻き込まれてしまった。安全な場所が見つけられず、ただ車両の影に身を隠すしかない2人。「何で、何でこんな。」つぶやくカガリ。そんな2人の前に倒れてくるザクウォーリア。アスランは決意する。一番安全なのは、あのモビルスーツの中であると。「来い。」カガリを連れ、ザクウォーリアへ急ぐアスラン。

ミネルバではインパルスガンダムにスクランブルがかかっていた。コアスプレンダーに乗り込むシン。エレベータでカタパルトへ移動するコアスプレンダー。カタパルトにセットされ、射出サインとともに出撃するコアスプレンダー。追ってシルエットフライヤー、チェストフライヤー、レッグフライヤーが射出される。

「乗るんだ。」ザクウォーリアのコクピットを開け、カガリとともに乗り込むアスラン。起動準備をするアスラン。「おまえ。」というカガリの言葉に「こんなところで、君を死なせる訳にいくか。」と答えるアスラン。瓦礫を振り払い立ち上がるザクウォーリア。
それに気づくステア。ガイアガンダムが眼前でビームライフルを構える。素早く避けるザクウォーリア。そしてガイアガンダムへ体当たりを食らわせる。「こいつ。」ビームサーベルを抜き、攻撃をしかけるガイア。アスランもヒートホークを構える。ガイアガンダムとの白兵戦が始まるが、いかんともパワー差は何ともすることはできない。押され気味のアスラン。そこにステアを援護するため、スティングのカオスガンダムが背後から迫る。さすがに2機を相手にすることはアスランとはいえ難しい。カオスに腕を叩き落とされるザクウォーリア。
その瞬間、何処かから攻撃を受けるカオスガンダム。その攻撃はコアスプレンダーからのものだった。コアスプレンダーは、各フライヤーとドッキングし、ソードインパルスに換装。ガイアとカオスの前に、ソードを構え、ザクウォーリアを援護するかのように立ちはだかる。
「何でこんなことを。また、戦争がしたいのか、あんた達は。」シンはそう言い、2機のガンダムに向かっていく。
「いいえ姫。争いが無くならぬから、力が必要なのです。」カガリは先ほどのギルバートの言葉を思い出していた。
PHASE - 02 戦いを呼ぶもの ガイアガンダムに向かっていくソードインパルス。スティングは突如現れたソードインパルスのデータを検索するが、該当機種なし。ステラもデータのない敵にどのように立ち向かっていったら良いのかわからず、やや守り一方の戦いを強いられていた。
一方、シンは何故このような戦いが始まってしまったのかに対する怒りが収まらない様子。その時、ミネルバ副艦長、アーサーより檄が飛ぶ。「シン、命令は捕獲だぞ。わかってるんだろうな。あれは我が軍の・・」それに対してシンはその怒りをぶつけるかのように答える。「わかってます。でも、できるかどうか分かりませんよ。一体何だってこんなことになったんです。」向かってくるガイアのビームサーベルを避けながら、なおも続ける。「何だってこんな簡単に敵に。」そこで口を挟むタリア艦長。「今はそんなおしゃべりをしている時じゃないでしょ。演習でもないのよ。気を引き締めなさい。」そう言い、席に座るのを驚いた顔で見る、アーサーとメイリン。キャプテンシートに座ったタリアはハンドセットを取り、指示を出す。「強奪部隊ならば、外に母艦がいるはずです。そちらは?」

アーモリーワンの外。確かにステラ達ガンダム強奪部隊を運んだ母艦、ガーティー・ルーはいた。だが、ミラージュコロイドによりザフト軍はキャッチできずにいたのである。アーモリーワンには強奪部隊のサポートを行うべく、ダークダガーが接近していた。
「ようし、行こう。つつましくな。」ネオ・ロアノークのかけ声でにわかに出撃準備で忙しくなるガーティー・ルー艦内。「主砲照準。左舷前方ナスカ級。発射と同時にミラージュコロイドを解除。機関最大。」一気に指示を出し、落ち着いた口調でつぶやくネオ。「さぁて。ようやくちょっとは面白くなるぞ。諸君。」突如のゴッドフリートにより、ナスカ級戦艦が一隻血祭りに上がる。にわかに忙しくなるザフト軍の迎撃部隊。近くのナスカ級からスクランブルがかかったザクウォーリア、ゲイツと、ガーティー・ルーから出撃したダガーとのモビルスーツ戦が始まる。アーモリーワンからも迎撃用のローラシア級戦艦が発進しようとしていた。が、そこに突然潜行していたダークダガーが現れる。港内でローラシア級を血祭りにするダークダガー。完全に港をふさぐ形で、戦艦は止まり、爆発する。

その爆発による振動は、アーモリーワン内で戦っているシンやステラ、スティング、アウル、そしてカガリ、アスランの元へと届く。「アスラン。」心配そうなカガリ。「外からの攻撃だ。港か?」アスランは一瞬、ヘリオポリス崩壊の時を思い出していた。
突然現れたインパルスのため、強奪計画の予定に遅れが出ているスティング達。「スティング、さっきの。」アウルがそう言いながら、カオスガンダムの側に降り立った。「わかってる。お迎えの時間だろ?」「遅れてる。バスいっちゃうぜ。」「分かってると言ったろうが。ええぃ。」「だいたいあれなんだよ。新型は3機のはずだろ。」「俺が知るか。」「どうすんの、あんなの予定にないぜ。ちぃ、ネオの奴。」「けど、放ってちゃおけないだろ。追撃されても面倒だ。」そこに警報音。接近するゲイツを叩き落とすスティング。そしてカオスガンダムをステアとシンが戦っている場へと進める。
「は、首でも土産にしようって言うの。」からかうアウル。「格好悪いっていうんじゃねぇ、そういうの。」ステアを加勢するスティング。突如現れたカオスガンダムとガイアガンダムに苦戦するインパルス。そして尻餅をつく。そこを背後からとどめを刺そうとするアウルのアビスガンダム。その瞬間、アスランのザクウォーリアが割り込んでくる。ザクウォーリアの体当たりに吹き飛ばされるアビスガンダム。「このぉ。」アウルは、ビームをザクウォーリアに発射する。ビームで左腕が吹き飛び、その爆発ですっ飛ぶザクウォーリア。その攻撃でカガリは気を失い、倒れる。アスランに抱きかかえられるカガリ。アスランはその手に血があることを感じる。カガリは額から出血していた。これ以上は危険と、アスランはザクウォーリアを撤退させる。「くそぉ。」飛び去るザクウォーリアの姿を見つけ、悔しそうなアウル。シンはガイアとカオスの2機の攻撃に手を焼いていた。「させるもんかぁー。」

ようやくレイのザクファントムに降り積もった瓦礫が取り除かれ、レイが戦線復帰した。ルナマリアもレイが瓦礫を取り除いてくれたことで出撃できるようになる。ギルバートは被害状況を確認するため、基地内を歩いていた。「ここの指揮は誰が執っている。あの3機はどうした。状況を説明してくれ。」そこでザフトの軍人よりシェルターへ避難してくれと言われる。が、反論するギルバート。「そんなことできるか。事態すらまだ良くわからんというのに。」ごねるギルバートに、「ならばせめてミネルバへ。」と進言される。見えるミネルバを見て、「ええぃ。」と悔しそうな声をあげるギルバート。

ソードは3機のガンダムを相手に善戦していた。「カオスもガイアもアビスも。」つぶやくシン。そこにステラの攻撃。「こいつ。何故落ちない。」ガイアガンダムの攻撃を振り払いながら、「何故、こんなことになるん。」と叫ぶシン。「ええぃ。この。」今度はアウルがアビスガンダムで攻撃をかける。ビームを盾で避けるインパルス。だが、反射したビームが他のザフト軍モビルスーツを破壊していく。「もう一丁。」もう一度攻撃をしようとするアウル。そこにレイとルナマリアのザクファントムが現れた。「このよくもなめたまねを。」
何機もやってくるモビルスーツにうんざり気味のアウル。スティングに言う。「スティング、キリがない。こっちだってパワーが。」「ええぃ、離脱するぞ。ステラ、そいつを振り切れるか。」「こんな、私は。わたしは。」ステラは目の前のインパルスをどうしても沈められないのに苛立ちを覚えていた。何度攻撃をしかけてもインパルスを沈められない。「離脱だ。止めろ、ステラ。」スティングの制止を聞かないステラ。「私は、こんな。」「なら、おまえはここで死ねよ。」ステラに言うアウル。ショックを受けるステラ。「それよりも僕が言っといてやる。さよならってな。」明かに戦意喪失のステラ。動きが止まってしまった。それを見逃さないインパルス。ガイアガンダムへ攻撃をしかける。寸前のところで、スティングがフォローに入る。ステラは「死ぬ」という言葉に過剰に反応していた。戦線を急速離脱する。後を追うスティング、アウル。突然離脱するガンダムに、焦るシン、レイ、ルナマリア。後を追うが、突如ルナマリアのザクファントムが火を吹き、失速していく。

後処理に追われるザフト基地に、アスランはザクウォーリアを降ろす。モニターには、エレカーで移動するギルバートの姿が映っていた。そこにカガリが目覚める。「ア、スラン。」「大丈夫か?」「大丈夫だ。」「すまなかった。つい。すぐに安全に降りられる場所を探すから。」「ああ、だけど。」カガリは戦いが終わり、変わり果てた基地の姿を見てつぶやいた。
だが、アーモリーワンの外では、未だネオのガーティー・ルーとザフトとの戦いが続いていた。時間が経つにつれ、ザフト軍もどんどん集まってくる。さすがにガーティー・ルーと搭載しているダガーだけではつらい状態になっていた。「失敗ですかね。」イアンがネオに話しかける。「港を潰したといっても、あれは軍事工廠です。長引けばこっちが持ちませんよ。」「分かってるよ。だが、失敗するような連中なら、俺だって最初からこんな作戦やらせはせんしな。」ネオがそう答えたが、イアンは明らかに納得しているような顔では無かった。「出て時間を稼ぐ。船を頼むぞ。」ネオはブリッジを後にした。

逃げながら攻撃をしかけるカオスとアビス。シンとレイが継続して攻撃をしかけるが、相手の動きは素早い。「なんて奴らだ。奪った機体でこうまで。」あまりに攻撃を避けられるため、シンが思わず愚痴る。「脱出されたらおしまいだ。その前になんとしてもとらえる。」「分かっているけど。」ミネルバのブリッジでも、逃げられるのを阻止するために応援を求めたいところであったが、工廠では有毒ガスが発生しており、避難勧告のため、すでに当てには出来ないことがわかっていた。そんなときに煙を噴いているルナマリア機がミネルバに着艦。ギルバートもミネルバに到着していた。「それにしてもどこの部隊かしらね。こんな大胆な作戦。」つぶやくタリア。
時間稼ぎのため、ネオのエグザスが発進。その気配をレイが感じ取っていた。「何だ。」

シンはどうしても止められないガンダム達を阻止すべく、ミネルバにフォースシルエットを要求。「許可します。射出して。」タリアは許可を出す。そしてブリッジに来ていたギルバートの方を向き言う。「もう機密も何もないでしょう。」その言葉に「ああ、」と答えるギルバート。ミネルバより今度はフォースシルエットが射出される。
シンは、コロニー外壁に穴を開けようと攻撃を続けるガイアガンダムをなんとしても阻止しようとしていた。「くそーあいつ。」だが、インパルスが攻撃しようとするところを邪魔するスティング。「やらせるかよ。」そこにフォースシルエットが到着。「シン。」レイの援護のもと、フォースインパルスへの換装を遂げる。驚くスティングとアウル。「こいつは。」「装備を換装する?」急に動きが速くなったフォースインパルスにとまどうスティングとアウル。2機を振り切ったシンは、一直線にガイアガンダムのところへ。「止めて。あっちへ行って。」おびえながらフォースインパルスに攻撃をするステラ。後ろからカオスガンダムのビーム攻撃。これにより、ついにアーモリーワンの外壁に穴が開く。抜ける空気。その流れに任せ、ガイア、カオス、そしてアビスの各ガンダムが宇宙へと出て行く。
「くそー。」シンはためらいもせず、宇宙へ。「シン。」後を追ってレイも宇宙に出る。「インパルスのパワー危険域です。最大で後300。」メイリンの報告にタリアがキャプテンシートより立ち上がる。「インパルスまで失うわけにはいきません。ミネルバ発進させます。」その言葉にギルバートは静かに言う。「頼む、タリア。」

ミネルバのモビルスーツデッキには、アスランとカガリの乗るザクウォーリアが着艦していた。降りてくる2人にルナマリアが気づく。「何?あの子達。」近くの兵士から銃を奪う。「そこの2人、動くな。」
ミネルバのブリッジは発進準備であわただしくなっていた。「議長は早く下船を。」タリアはギルバートに向かって言った。「タリア。とても残って報告を待っていられる状況ではないよ。」「しかし。」「私には権限もあれば、義務もある。私も行く。許可してくれ。」
「本艦は発進します。」のメイリンの声が響く中、デッキではルナマリアがアスランとカガリに銃を構え、対峙が続いていた。「動くな。おまえ達は軍の者ではないな。何故その機体に乗っている。」「銃をおろせ。こちらはオーブ首長国連合代表、カガリ・ウラ・アスハ氏だ。私は、随員のアレックス・ディノン。」その言葉に銃を下ろすルナマリア。「デュランダル議長との会見中騒ぎに巻き込まれ、避難もままならないからこの機体を借りた。」「オーブの、アスハ?」「代表は怪我をされている。議長はこちらに入られたのだろう?お目にかかりたい。」

シンは完全に3機をロストしていた。ガーティー・ルーに着艦する3機。それを出迎えるネオ。「なるほどね。これは確かに俺のミスかな。」ネオはガーティー・ルーと落ち合うため、移動する。
一方、ミネルバは発進体制に入っていた。そのミネルバ艦内をルナマリアの案内で移動するアスランとカガリ。「避難するのもこの船。プラントの損傷はそんなにひどいのか。」とアスランに言うカガリ。その時に聞こえる「コンディションレッド発令。」「戦闘に出るのか?この船は?」驚き、ルナマリアに質問するアスラン。「アスラン。」思わずカガリはアスランを本名で呼んでしまう。「ん?アスラン?」その名前に疑問を感じるルナマリア。カガリは自分の言ってしまった言葉に思わずしまったという顔をする。緊張した表情を見せるアスラン。

ネオのエグザスは、フォースインパルスへの攻撃を開始する。「さあ、その機体もいただこうか。」接近するガーティー・ルー。
そしてミネルバもアーモリーワンを飛び立った。 
PHASE - 03 予兆の砲火 ネオのエグザスのガンバレルによる攻撃に翻弄されるシン。そこにレイのザクウォーリアが援護で飛び込んでくる。シンに一喝するレイ。「何をしている。ボォーとしていたらただの的だ。この敵は普通とは違う。」割り込んできたそのレイに再び何かを感じるネオ。「何だ。これは。」
ミネルバはインパルスとザクウォーリアの探知に全力を注いでいた。そこでガーティー・ルーを検知。タリアはそれを「ボギー・ワン」と命名する。程なくメイリンがインパルスとザクウォーリアが戦闘している箇所を発見し、タリアに報告。だが、通信不能の状態。「敵の数は?」タリアの問いに素早く答えるルナマリア。「1機です。・・でも、これは、・・モビルアーマーです。」
レイは単独でエグザスに向かっていた。が、ネオの巧みなガンパレスによる攻撃に苦しむ。レイを助けに行きたいシン。だが、接近すると襲ってくるガンバレルに対してどうすることもできない。タリアは先にがーティー・ルーを撃沈することを決断する。艦隊戦に備え、ブリッジを戦闘形態に移行。各砲の準備を終えるミネルバ。その様子を見てギルバードはタリアに尋ねる。「彼らを助けるのが先じゃないか?艦長。」「そうですよ。だから母艦を撃つんです。敵を引き離すのが一番早いですから。この場合は。」一方ガーティー・ルーでも接近するミネルバを当然探知していた。ミネルバとの艦隊戦に備えるガーティー・ルー。

「ちっ、欲張り過ぎは元もこもなくすか。。」イアンからの連絡を受け、インパルスの捕獲をあきらめ、ガーティー・ルーに戻るネオ。その直後、インパルスとザクウォーリアに対し、ミネルバから帰還のための発効弾が発射される。「ミネルバ、帰還信号?何故?」それを見てシンが悔しがる。「命令だ。」冷静に答えるレイ。
ミネルバとガーティー・ルーの艦隊戦が始まる。「エンジンを狙って、足を止めるのよ。」タリアの怒号。ガーティー・ルーにはネオのエグザスが着艦。「撤収するぞ。」というネオの命令により、最大船速で戦闘空域からの離脱を開始するガーティー・ルー。ミネルバはインパルスとザクウォーリアの回収中。それが終了次第、ガーティー・ルー追撃戦を開始する予定であった。
カガリはミネルバ艦内で怪我の治療を受けていた。頭に包帯を巻かれるカガリを見つめるアスラン。

ミネルバはガーティー・ルーの追撃に入っていた。ガーティー・ルーのブリッジに戻ってくるネオ。「すまん、遊びすぎた。」すかさず状況報告をするイアン。「かなり足の速い船のようです。厄介ですぞ。」状況を判断して、矢継ぎ早に命令を出すネオ。ネオの指示により、ガーティー・ルーから推進剤タンクが切り離される。ミネルバの行く手を塞ぐような形で現れるタンク。「打ち方待て。機関10。面舵最大。」爆発する推進剤タンク。その爆発に巻き込まれるミネルバ。モビルスーツデッキにいたレイとシンは全く状況が分からない。シンは先ほど降りたインパルスのコクピットに再び戻る。レイはブリッジに上がる。そこにギルバートの姿を見つける。「議長。」ミネルバではガーティー・ルーの位置をロスト。発見した時は、すでに射程圏内から逃れていた。「やってくれるわ。こんな手で逃げようなんと。」「だいぶ手強い部隊のようだな。」とタリアの言葉に応えるギルバート。「ならばなおのこと。このまま逃がすわけにはいきません。そんな連中にあの機体が渡れば。。。」「ああ。」「今からでは下船いただくわけにはいきませんが、本艦はこのままあれを追うべきと思います。議長のご判断は。」ギルバートの言葉に注目するブリッジない「私のことは気にしないでくれたまえ、艦長。私だってこの火種、放置したらどれほどの大火になって戻ってくるか。。それを考えるのが怖い。あれの奪還、もしくは破壊は現時点の最優先責務である。」「ありがとうございます。」ギルバートの言葉を聞き、力強くガーティー・ルーの追撃を指示するタリア。ミネルバは機関最大でガーティー・ルーの追撃を開始した。
追撃に入った敵に追いつくにはまだ幾分の時間が必要であり、タリアはブリッジ遮蔽を解除。コンディションをイエローに戻し、ギルバートを艦長室へ案内するよう、レイに指示する。その時ルナマリアから、カガリとその随行員(アスラン)をミネルバで保護、傷の手当てとディランダル議長への面会を求めていたとの報告が入る。その言葉に「なぜ、この船に。」と思わず驚きの声を上げるギルバート。

ガーティー・ルーでは奪取した3機のガンダムの整備に入っていた。なにやら医療カプセルのようなもので寝るステラ、スティング、アウル。そしてその様子を黙って見続けるネオ。ブリッジに戻ってきたところで、イアンから言葉をかけられる。「どうやら成功、というところですかな。」その言葉に答えず、進路確認をするネオ。「ポイントBまでの時間は。」「2時間ほどです。」
「まだ追撃があるとお考えですか?」イアンがネオに再び質問する。
「わからんね。わからんからそう考えて予定通りの進路をとる。予測は常に悪い方へしておくもんだろう。特に戦場では。」
「ええ、彼らの最適化は?」
「特に問題ないようだ。みんな気持ち良さげに眠っているよ。ただアウルがステラにブロックワードを使ってしまったようでね。それがちょっと厄介ということだが。」
「何かある度、ゆりかごへ戻さねばならぬパイロットなど、ラボは本気に使えると思っているのでしょうかね。」
「それでも、前のよりはだいぶましだろう?こっちの言うことや仕事をちゃんと理解してやれるだけ。」
「ふん。」
「しかたないさ。今はまだ、なにもかもが試作段階みたいなもんだ。船も、モビルスーツも、パイロットも。世界もな。」
「ええ、わかっています。」
「やがてすべてが本当に始まる日が来る。我らの名のもとに。。」
”最適化”が終わったベルらしき音が鳴り、カプセルが開いて目覚める、ステラ、スティング、アウル。

ガーティー・ルーを追うミネルバ。士官室ではカガリとディランダル議長との会談が行われていた。「本当にお詫びの言葉もない。姫までこのような事態に巻き込んでしまった。でも、どうかご理解いただきたい。」ギルバートの言葉に、険しい目のまま質問するカガリ。「あの部隊については、まだ全く何も分かっていないのか?」言葉を選ぶかのように答えるギルバート。「ええ、まあそうですね。船などにも何かをはっきり示すようなものは何も。しかし、だからこそ、我々は一刻も早く、この事態を収拾しなくてはならないのです。取り返しのつかぬことになる前に。」「ああ、わかってる。それは当然だ。議長、今は何であれ、世界を刺激するようなことはあってはならないんだ。絶対に。」カガリの何かをこらえるような姿を、やや複雑な思いで見つめるアスラン。
話はついたかのように明るい表情のディランダル。「ありがとうございます。姫ならばそうおっしゃってくださると信じておりました。」そして立ち上がり、「よろしければ、まだ時間のあるうちに少し艦内をご覧になってください。」「議長。」ギルバートの言葉を塞ぐかのようなタリアの言葉。「一時的とはいえ、いわば命をお預けいただくことになるんです。盟友としての我が国の相応の誠意かと。」

モビルスーツデッキでは、ルナマリアがシンへのおしゃべりに花を咲かせていた。「オーブのアスハ?」「私も驚いた。こんなところで大戦の英雄に会うとはね。」シンはアスランが乗って、ガイアと戦っていたザクウォーリアを見つめていた。「何?あのザクがどうかしたの?」そんなシンに言葉をかけるルナマリア。「いや、ミネルバ機体の配備じゃないから、誰の機体かと思って。」シンがそんなルナマリアの疑問に答える。「操縦してたのは護衛の人みたいよ。アレックスって言ってたけど。でも。」突如シンに顔を近づけるルナマリア。「アスランかも。」「えっ?」驚くシン。「代表がそう呼んだのよ。咄嗟に。その人のこと、アスランって。アスラン・ザラ、今はオーブにいるらしいって噂でしょ。」「アスラン・ザラ。。」ルナマリアの言葉にそうつぶやくシン。
その頃、カガリとアスランは、レイの案内で、ギルバートと艦内案内を受けていた。「しかし、この船もとんだことになったものですよ。進水式の前日にいきなりの実戦を経験しなければならない事態になるとはね。」話し続けるギルバート。モビルスーツデッキへ向かうエレベータに乗り込む一行。「艦のほぼ中心にいるとお考えください。搭載可能数は無論申し上げられませんし。現在その数量が載っている訳ではありません。」開くエレベータ。そこに並ぶザクウォーリアに驚くカガリとアスラン。「ゼットジーエムエフワンサーティ(ZGMF-1000)、ザクはもうご存じでしょう。現在のザフト軍の主力の機体です。そしてこのミネルバ最大の特徴とも言える、この発進システムを使うインパルス。工廠でご覧になったそうですな。」ギルバートの問いかけに、「は、はい」と答えるアスラン。「技術者に言わせると、これは全く新しい、効率の良いモビルスーツシステムなんだそうですよ。私にはあまり専門的なことはわかりませんが。」
そんな言葉を聞いているうちに渋い表情になってくるカガリ。それを見逃さなかったギルバートの言葉。「しかし、やはり姫にはお気に召しませんかな。」
「議長は嬉しそうだな。」
「嬉しい、という訳ではありませんがね。あの混乱の中からみんなで懸命に頑張り、ようやくここまでの力を持つことができたということはやはり、」
遮るカガリ。「力か。争いが無くならぬから力が必要だとおっしゃったのに。議長。」
「ええ。」
「だが、では、この度のことはどうお考えになる。あのたった3機の新型モビルスーツのために、貴国が被ったあの被害のことを。」「代表。」興奮してきたカガリを抑えるように言うアスラン。
「だから、力など持つべきではないのだと。」冷静に受け答えをするギルバート。
だが、熱くなったカガリの言葉は続く。「そもそも、なぜ必要なのだ。そんなものが、今更。我々は誓ったはずだ。もう悲劇は繰り返さない。互いに手を取って、歩む道を選ぶと。」
カガリとギルバートの会話はモビルスーツデッキ内で響いていた。漏れ聞こえてくるカガリの言葉に対し、怒りがこみ上げてくるシン。
「それは、しかし、姫。」「さすが、きれい事はアスハのお家芸だな。」ギルバートの言葉を遮ったのは、怒り心頭のシンの言葉であった。「シン。」ギルバートの近くにいたレイが、シンの方に向かう。怒りに満ちたシンの目に、萎縮するカガリ。

その時、メイリンの「敵艦捕捉、距離8000。コンディションレッド発令。」の言葉がモビルスーツデッキに響き渡る。そのアナウンスに気を取られるカガリやギルバート。カガリをにらんでいたシンもモビルスーツに向かう。シンの代わりにギルバートに向かって非礼をわびるシン。「申し訳ありません、議長。この処分は後ほど、必ず。」「本当に申し訳ない、姫。」ギルバートの謝罪の言葉で、ギルバートに視線を戻すカガリ。「彼はオーブからの移住者なので。でも、あんなことを言うとは思いもしなかったのですが。」それっきり黙ってしまうギルバート。

各艦とも攻撃態勢に入る。モビルスーツ戦の準備に入るミネルバ。そこにギルバートがカガリとアスランを連れてブリッジに入ってきた。「いいかな、艦長。私はオーブの方々にもブリッジに入っていただきたいと思うのだが。」その言葉に断ろうにも、断る言葉の見つからないタリア。「ええ、あ、それは。」「君も知っての通り、代表は先の大戦で艦の指揮もとり、数多くの戦闘を経験されてきた方だ。そうした視点からこの船の戦いを見ていただこうと思ってね。」「わかりました。議長がそうお望みならば。」シートにつくギルバート、カガリ、アスラン。「ブリッジ遮蔽。対艦、対モビルスーツ戦用意。」

ガーティー・ルーでも、アウルとスティング、そしてステラがノーマルスーツに着替えていた。「あの新型艦だって?」アウルの問いかけにスティングが答える。「ああ、来るのはあの合体野郎かな。」「なら、今度こそ、バラバラか。生け捕るか。」「どっちにしろ、また楽しいことになりそうだな。ステラ。」だが、ステラの元気がない。ガーティー・ルーはアンカーで小惑星に固定。迎撃体勢を整えていた。

一方、ミネルバではルナマリアのザクウォーリアと、シンのインパルスが発進シーケンスに入っていた。カガリはそんな中、先ほどのシンの言葉を思い出していた。ルナマリアのガナーザクウォーリアが発進した頃、ギルバートはふとつぶやく。「ボギー・ワンか。本当の名前はなんと言うんだろうね。あの船は。」「は?」アスランはそのギルバートの言葉に疑問の言葉を発する。「名はその存在を示すものだ。ならば、もし、それが偽りだったとしたら。それが偽りだとしたら、それはその存在そのものも偽り、ということになるのかな。アレックス、いやアスラン・ザラ君。」
ガーティー・ルーが潜む宙域に向かう、ルナマリアのガナーザクウォーリアと、シンのブラストインパルス。 
PHASE - 04 星屑の戦場 いつ始まるかもしれないガーティー・ルーからの攻撃への緊張感を高めながら、宙域を移動するミネルバ。そしてルナマリアのザク、シンのインパルス。緊張感高まるブリッジの中、アスランの正体を暴いたデュランダル議長と、その正体を暴いたことを憂うカガリとの話しが続いていた。
「ご心配には及びませんよ、アスハ代表。私は何も彼を咎めようと言うのではない。すべては私も承知済みです。カナーバ前議長が彼らに取った措置のこともね。ただ、どうせ話すのなら本当の君と話しがしたいのだよ。アスラン君、それだけなんだな。」そこに何故、攻撃を仕掛けてこないのかを疑問に思っているシンからの情報が入る。「インパルス、ボギー・ワンまであと、1400。いまだ進路も変えないのか。」その時、タリアが叫ぶ。「しまった。」それに合わせるかのように叫ぶアスラン。「デコイだ。」
インパルス達の背後から突如襲ってくるカオス、ガイア、アビスの各ガンダム。「畜生!」ルナマリアの声とともに散会するモビルスーツ。完全に陣形を崩された格好となってしまう。と同時にボギー・ワンのシグナル消失。代わりにカオス、ガイア、アビスの各シグナルに認識コードが変わる。ボギー・ワンのシグナルをロストし、索敵に必死となるミネルバブリッジ。そこに背後から迫り来るガーティー・ルー。ダガーを展開しつつ、ミネルバに襲いかかる。小惑星を盾に、ガーティー・ルーからの直撃を回避するミネルバ。タリアはシン達を呼び戻すことを指示する。アスランはこの状態にいても立ってもいられないという様子。それをディランダルはしっかりと見つめていた。
シン達は各ガンダムと交戦中。一度崩された陣形を立て直すこともできず、劣勢を強いられていた。そこにミネルバからの帰還命令。「ミネルバが?私たちまんまとはまったということ?」ルナマリアからの通信に、「ああ、そうだね。けど、これじゃあ、戻れと言ったって。」と答えるのが精一杯のシン。ルナマリアはステラのガイアガンダムに手こずっていた。ガイアガンダムの追撃に追い込まれていくルナマリアのザク。逃げ込んだステーションのブロックには、シンのインパルスがいた。間一髪、ルナマリアは、シンに助けられる。インパルスの攻撃で邪魔をされるステラ。「何なのよ。あんたは、また。」インパルスに対し、怒りを露わにするステラ。

ガーティー・ルーに対してどうしても正対できないミネルバ。ネオはミネルバが盾にしている小惑星の破壊を命じ、自ら出撃するためにブリッジを後にする。接近するミサイル。そのミサイルがミネルバへの直撃コースでは無いことに疑問を持つミネルバブリッジ。そのミサイルの意味に気づくアスラン。「まずい。船を小惑星から離してください。」小惑星の岩肌へ突っ込んでいくミサイル。飛び散る岩にコースが維持できないミネルバ。さらに小惑星を襲うミサイル。えぐられた岩盤がミネルバの各部を損傷させていく。
ガーティー・ルーからはネオのエグザスが発進。ミネルバに一直線で接近してくる。「さて、進水式も未だというのに、お気の毒だがな。しとめさせてもらう。」
飛び散る岩盤にスラスターを破壊され、ますますピンチに陥るミネルバ。接近してくるモビルスーツ、モビルアーマーに対し、持ちうるモビルスーツはレイのザク1機しかいない。「この船には、もうモビルスーツはないのか?」のデュランダル議長の問いに、「パイロットがいません。」と答えるタリア。「あっ」と声を上げるアスラン。その言葉にカガリはアスランの方を伺う。デュランダルもいつアスランが動くのかに興味津々の顔を向けながら、様子をうかがっている。
レイ発進。そのレイの気配に反応するネオ。そして、シン達もミネルバに戻ろうと必死で戦っていた。
「右舷のスラスターはいくつ生きているんです。」アスランはタリアに問う。一瞬答えを躊躇するタリア。だがディランダルの頷きを見て、その問いに答える。「6機よ。でもそんなのでのこのこ出てっても、またいい的にされるだけだわ。」「同時に右舷の方を一斉に撃つんです。小惑星に向けて。」その言葉に驚くブリッジ。「爆発で一気に船体を押し出すんですよ。周りの岩も一緒に。」「馬鹿言うな。そんなことをしたらミネルバの船体だって。」オペレータの一人が反論する。「今は状況回避が先です。ここにいたってただ的になるだけだ。」「タリア」アスランの指示に従えというような口調で、タリアに呼びかけるデュランダル。「確かにね。やってみましょう。」タリアは決断する。
レイとネオの戦闘が始まった。何度か自分の攻撃を邪魔されていることに、思わす口に出すネオ。「何なんだ、君は一体?白い坊主君。」レイは、ネオの後に付いてきたダガーを迎撃していく。「下がれ、ミラー。こいつは手強い。おまえは船を。」ネオはもう1機のダガーをミネルバに向かわせる。「させるか。」それを見て、ダガーを攻撃しようとするレイ。そこをエグザスのガンバレルが襲う。その攻撃を受けながらも、もう1機のダガーを沈めるレイ。それを見て退却するネオ。

未だ続くシン達の交戦。だが、シンのインパルスは3機がかりでも落とすことが出来ない。「くそー、なんで落とせないんだよ、あいつ。これじゃまた。」インパルスを撃墜できないことに焦りを感じるスティング。

ガーティー・ルーでは、ミネルバにとどめを刺そうとしていた。直撃は出来ずとも、追撃が不可能な程度にダメージを追わせれば良いと考えているイアン。ミネルバでは、アスランの提案していたことをまさにやろうとしていた。「総員、衝撃に備えよ。いくわよ。」「右舷スラスター全開。」「右舷全砲塔、撃てぃ。」飛び散る岩塊。その中からミネルバが飛び出してくる。即座にガーティー・ルーへの攻撃進路に入るミネルバ。ガーティー・ルーへ向けタンホイザー発射。ガーティー・ルーは直撃を避けることはできたものの、小破。ガーティー・ルーをかすめ、宙域離脱をはかるミネルバ。「ええぃ、あの状況から、よもや生き返るとは。」ネオはミネルバにエグザスを向かわせる。が、そこに立ちはだかるレイのザク。ネオはやむなく、宙域離脱の発光信号を出す。「また何時の日か出会えることを楽しみにしているよ。白い坊主君。」
その発光信号はスティング、ステラ、アウル達にも届いていた。「仕方ない。ステラ、ネオが呼んでるぜ。帰って来いってな。」スティングのその言葉に、素直に「うん。」と返事し、撤退していく3機。ガーティー・ルーは3機を収容し、その宙域から離脱していった。

ミネルバは先ほどの小惑星爆破による強制離脱により、さらなる損傷を受けていた。ミネルバは既にガーティー・ルーの追撃を続行できる状態では無かった。「グラディス艦長。もういい。後は別の策を講じよう。」デュランダルのその言葉にうなだれるタリア。「私もアスハ代表を、これ以上振り回す訳にはいかん。」「申し訳ありません。」タリアのその言葉の後、インパルス、ザクに帰還命令の発効信号を上げるミネルバ。何とも言えぬ虚脱感を感じながら、その発光信号を見つめるルナマリア、シン。

「本当に申し訳ありませんでした。アスハ代表。」戦闘態勢が解除。ブリッジの遮蔽も解除された。カガリ達の滞在室である士官室向け、ミネルバ艦内を移動するディランダル、カガリ、タリア、そしてアスラン。「こちらのことなど良い。ただ、このような結果に終わったこと、本当に残念に思う。早期の解決を心よりお祈りする。」ディランダルの言葉にねぎらいの言葉を返すカガリ。「ありがとうございます。本国ともようやく連絡が取れました。」
その行く手に、先ほどの戦闘から帰投したシン、ルナマリア、レイ、そしてブリッジからカガリと一緒に来ていたのがアスラン・ザラだという情報を持ってきたメイリンがいた。「アスラン・ザラ。あいつが?」デュランダル議長とともに近づいてくる一団に、視線を送るシン達。
「既にアーモリーワンへの救援・調査隊が出ているとのことですので、うち一隻を皆様へのお迎えとして回すよう要請してあります。」タリアの言葉に「ありがとう。」とだけ返すカガリ。「しかし、先ほどは彼のおかげで助かったな。艦長。」アスランにわざと聞こえるようにタリアへ話し始めるデュランダル。その言葉に振り返るアスラン。「さすがだね。あまたの激戦をくぐり抜けてきた者の力は。」「いえ。」その言葉に姿勢を正すアスラン。「出過ぎたことをして申し訳ありませんでした。」「判断は正しかったわ。」タリアの優しい表情に、何か言いたいことを口に出せない素振りのアスラン。「では。」敬礼を送り、去っていくタリアとデュランダル。それを見送るアスラン。見送りをしながら先ほどのブリッジでの会話を思い出す(「この船には、もうモビルスーツはないのか?」「パイロットがいません」)。一人考え込むアスラン。先の大戦で死んでいった多くの人々のことが頭の中をよぎる。「それが偽りだとしたら、それはその存在そのものも偽り、ということになるな。」デュランダルの言葉を思い出し、それを振り切るかのように頭をふるわせるアスラン。そこにアスランの話しをしながら、ルナマリア、レイ、シン、そしてメイリンがアスランのいる部屋に入ってくる。アスランを見つけ、思わず身を隠すメイリン。一度ルナマリア達の方に目を向け、視線をそらせるアスラン。「へぇ、ちょうどあなたの話をしていたところでした、アスラン・ザラ。」そう切り出してアスランに近寄ってくるルナマリア。「まさかと言うか、やっぱりと言うか、伝説のエースにこんなところでお会いできるなんて。光栄ですわ。」「そんな者じゃない。俺はアレックスだよ。」「だからもう、モビルスーツにも乗らない?」そこにシンが入ってくる。「よせよルナ。オーブなんかにいる奴に、何もわかってないんだ。」そう言い、部屋から出て行くシン。「失礼します。」丁寧な敬礼を送り、後を追うレイ。「でも、船の危機は救ってくださったそうで、ありがとうございました。」敬礼を送り出て行くルナマリア。

修理作業に入るミネルバ。その艦内で、シンは一人、思いにふけっていた。妹マユの携帯を動かすシン。マユの声で留守電メッセージが再生される。ただそれを聞くシン。
プラントの監視衛星では、そのころユニウスセブンが動き出していることを感知していた。
PHASE - 05 癒えぬ傷跡 ジンへ編成された国籍不明部隊。ユニウスセブンでリニアモーターの取り付けを行っていた。カウントを刻み、そして発動するリニアモーター。「さあ、行け。我らが墓標よ。嘆きの声を忘れ、真実に目を瞑り、またも欺瞞に満ちあふれるこの世界を、今度こそ正すのだ。」ユニウスセブンは、地球に向け、移動を開始した。
突然、想定もしていなかったユニウスセブンの事態に慌ただしさを増すプラント。ミネルバにいるデュランダル議長に、即座に知らされる。

「何だって?ユニウスセブンが動いているって、一体何故。」デュランダル議長の言葉に思わず声を上げ、驚くカガリ。「それは分かりません。だが、動いているのです。それもかなりの速度で。最も危険な軌道を。」冷静なデュランダルの言葉。「それは本艦でも既に確認致しました。」タリアが付け足す。「しかし、何故そんなことに。あれは、100年の単位で安定軌道にあると言われたものだ。」アスランも驚きの声をそのままデュランダルにぶつける。「隕石の衝突か、はたまた他の要因か?ともかく動いているんですよ。今、この瞬間も。地球に向かってね。」そうとしか言いようがないというように、ただ事実を並べるデュランダル。「落ちたら、落ちたらどうなるんだ。。。オーブ、いや、地球は。」不安と絶望感につぶされまいと必死でこらえ、何かにすがるようなカガリの言葉。「あれだけの質量の物です。申し上げずとも、それは姫にもおわかりでしょう。」そのデュランダルの言葉にがっくりと肩を落とすカガリ。「原因の究明や回避手段の模索に、今、プラントでも全力を上げています。またもやのアクシデントで、姫には大変申し訳ないのですが、私はまもなく終わる修理を待って、このミネルバにもユリウス7へ向かうように特命を出しました。」そのデュランダルの言葉にはっと顔を上げるカガリとアスラン。「幸い位置も近いので。姫にもどうか、それをご了承いただきたい。」「無論だ。これは私たちにとっても、いや、むしろこちらにとっての重大事だぞ。私にも、私にも何か出来ることがあるのなら。」「お気持ちはわかりますが、どうか落ち着いてください。姫。お力をお借りしたい時があれば、こちらからも申し上げます。」「難しくはありますが、お国元とも直接連絡が取れるよう、試みてみます。出迎えの船とも早急に合流できるようはからいますので。」デュランダルとタリアの言葉に、「ああ、すまない」としか答えられないほどショックを受けているカガリ。

休憩室ではシン達パイロットと、メカマン達が、そのユニウスセブンの話で盛り上がっていた。ユニウスセブンをどうするか、それはレイもアスランも同じ考えだった。「砕くしかない。」レイの言葉にどうやって砕くのかと尋ね、可能性を探るメカマン達。その休憩室前をたまたま通りかかるカガリとアスラン。だが、ユリウス7には、まだ多数の遺体が眠っている。その話しに、一瞬顔を曇らすアスラン。でもそれを砕かなければ、ユニウスセブンだけではない。「地球滅亡、だな。」そのヴィーノの言葉に「まあ、それもしょうがないっちゃあしょうがないか。」と答えるヨーラン。その言葉に、外から聞いていたカガリがカチンと来た。そうとは知らないヨーランは話しを続ける。「不可抗力だろ?でもへんなごたごたも綺麗になくなって、案外楽かも。俺たちプラントには。」
ついにカガリは、激怒しながら部屋に乗り込んでくる。「よくそんなことが言えるな、おまえ達は。」一斉に敬礼を送るメカマンやルナマリア。だが、シンはそっぽを向く。「しょうがないだと?案外楽だと?これがどんな事態か、地球がどうなるか、どれだけの人間が死ぬことになるか、本当にわかって言っているのか?」「すみません。」カガリの言葉に小さく答える、メカマン。「やはりそういう考えなのか?おまえ達ザフトは。あれだけの戦争をして、あれだけの思いをして、やっとデュランダル議長の施政のもとで、変わったんじゃ無かったのか?」カガリを制止しようとするアスラン。だが、カガリの怒りは収まらない。
「別に本気で言ってたわけじゃないさ。ヨーランも。」シンが話し始める。カガリの目線もシンに移る。「そんぐらいのこともわかんないのかよ、あんたは。」「なんだと。」カガリは売られた喧嘩を買おうとしていた。「シン、言葉に気をつけるように。」レイが止めに入る。「あー、そうでしたね。この人、偉いんでした。オーブの代表でしたものね。」「おまえ!」シンの元に向かおうとしたカガリを「いい加減にしろ、カガリ。」と止めるアスラン。ようやくカガリの怒りも収まった様子。
ここで今度はアスランが前に出て、シンに話しかける。「君はオーブがだいぶ嫌いなようだが、何故なんだ?昔はオーブにいたという話しだが、くだらない理由で関係ない代表にまでつっかかろうと言うのなら、ただではおかないぞ。」「くだらない?くだらないなんて言わせるか。関係ないって言うのも大間違いだね。」アスランに詰め寄るシン。「俺の家族は、アスハに殺されたんだ。国を信じて、あんた達の理想とかっていうのを信じて、そして最後の最後、オノゴロ島で殺された。」その言葉にたじろぐカガリ。「だから、俺はあんた達を信じない。オーブなんて国も信じない。そんなあんた達の言う綺麗事も信じない。この国の正義を貫くって、あんた達だってあの時、自分達のその言葉で誰が死ぬことになるのかちゃんと考えたのかよ。」持っていたコーヒーの缶を握りつぶしながら、カガリに勢い込むシン。言葉を失うカガリ。「何も分かってないような奴が、分かったような口を聞かないで欲しいね。」カガリにぶつかるようにして、部屋を出て行くシン。出て行くシンを追いかけるヴィーノ。

地球では、迫り来るユニウスセブンに対して、いかにすべきかを話すため、ブルーコスモスの会合が、ある別荘屋敷で持たれていた。忙しい中、何故このような会合をしなければならないのか?それを問われるブルーコスモス盟主、ロード・ジブリール。演説めいた口調で説明を始めるジブリール。ジブリールは、今回のユリウス7の落下騒ぎの原因などどうでも良く、そもそもユリウス7などを打ち上げ、宇宙空間にとどまらせているコーディネータにその罪を償わせるべく、民衆に答えを与えるべきだと言う。コーディネータと戦争をすべく良い口実になることは皆認めつつも、今回のユニウスセブン落下で、どれほどの被害が出るのかがわからない、と好き勝手なことを言うブルーコスモスの面々。だが、ジブリールはかねてより準備していた物を投入することの許可が欲しいと述べ、そのプランへの同意をどうにかとりつけた。会合は解散、帰っていく老人達。窓の外からそれを見つめるジブリール。ビリヤードの球を握り、怒りをこめ、それを壁に投げつける。

ユリウス7の落下を阻止すべく、修理を終えたミネルバは最大船速でユリウス7に向かっていた。同じく、メテオ・ブレーカーを持ち、イザークが指揮するジュール隊が、ディアッカとともにユニウスセブンへと急いでいた。ミネルバでは、地球軍が何も動きを見せていないことにいささか疑問を感じていた。にもかかわらず、デュランダルは、ミネルバのブリッジで、そこにいる者達に檄を飛ばす。
カガリは、先ほどのシンの言葉に落ち込んでいた。カガリを慰めるアスラン。だが、カガリはシンのことを考えずにはいられなかった。「お父様のこと、あんな風に。」思い出す父との別れ。「お父様だって、苦しみながらお決めになったことなのに。それを。。」泣き崩れるカガリ。そのカガリを元気づけるアスラン。「だが仕方がない。だからわかってくれと言ったところで、今の彼には分からない。きっと、自分の気持ちでいっぱいで。」一息おくアスラン。「君には分かっているだろう?カガリ。」悲しみのあまり、アスランに抱きつくカガリ。

そのころ、ジュール隊はユニウスセブンに到着していた。「こうして改めて見ると、でかいなぁ。」イザークに話しかけるディアッカ。「当たり前だ。住んでるんだぞ。俺たちは、同じような場所に。」「それを砕けって今回の仕事が、どんだけおおごとかって分かったってことだけだよ。」ブリッジから出て行こうとするディアッカ。「いいか。たっぷり時間があるわけではない。ミネルバも来る。手際良く動けよ。」そのイザークの言葉に「了解!」と敬礼をし、愛想を振りまきながらエレベータに乗るディアッカ。

泣きくたびれたカガリが眠り、アスランは一人ミネルバのブリッジへ向かう。エレベータに乗ろうとした瞬間、そこから出てくるルナマリアとすれ違う。「あら?大丈夫ですか?お姫様は。」「彼女だって父親も友達も亡くしている。あの戦争で。何も分かってないわけじゃないさ。」エレベータに乗り込むアスラン。悪いことをしたという反省の顔を見せるルナマリア。
パイロット待機ブロック。シンは、先ほどカガリに言った言葉を気にかけている様子。そこにレイが入ってきた。レイの方を見るシン。「何だ?」尋ねるレイ。「いや別に。」すぐ視線を戻すシン。「気にするな。俺は気にしていない。おまえの言ったことも正しい。」その言葉に安心したかのような笑顔を見せるシン。
アスランがブリッジに入ってきたとき、ちょうどブリッジ内ではユニウスセブンの光学映像が入ってきたところだった。「どうしたのかね?アスラン、いやアレックス君か。」話しかけるデュランダル。その言葉にタリアも振り返る。デュランダルの方をしばらく見つめながら、覚悟を決めたように話し始めるアスラン。「無理を承知でお願い致します。私にもモビルスーツをお貸しください。」その言葉に驚くブリッジ内。「確かに無理な話しね。今は他国の民間人であるあなたに、そんな許可が出せると思って?カナーバ前議長のせっかくのはからいを無駄にでもしたいの?」きつい口調のタリア。「わかっています。でも、この状況をただ見ていることなどできません。使える機体があるならどうか。」頭を下げるアスラン。「気持ちは分かるけど。」気持ちは分かったという素振りのタリア。「いいだろう。私が許可しよう。議長権限の特例として。」突然のデュランダルの言葉に驚くタリア。「議長。ですが、議長。」「戦闘ではないんだ、艦長。出せる機体は、1機でも多い方がいい。腕が確かなのは、君だって知っているだろう。」

そんな頃、ユリウス7に到着し、メテオ・ブレーカーの取り付け作業に入っていたディアッカ達を、突如ジンが襲ってくる。「何だ?これは。」突然の攻撃に驚くディアッカ。「ジンだと?どういうことだ。どこの機体だ?」その知らせを受け、確認を迫るイザーク。「アンノウンです。ISF応答なし。」「なに?」驚くイザーク。

「ここにザフトのモビルスーツとはどういうことですかね。」ブルーコスモスの命を受け、ユリウス7に調査のために向かっていたガーティー・ルーは、ユリウスSebun 上でのディアッカ達ザフト軍とジンの戦闘をキャッチしていた。それを見て、ネオに話しかけるイアン。「さぁて、もしかしたらこの騒動は、気まぐれな神の手によるものではないのかもしれないなぁ。」「く。」ネオの言葉に返す言葉を失うイアン。「スティング達を出せ。状況を見たい。記録も録れるだけ録っておけよ。」そう命令を出すネオ。

ミネルバでは、モビルスーツに各パイロットが乗り込み始めていた。ザクに乗ろうとするアスランの姿を見つけるルナマリア。「あいつも出るんだってさ。作業支援なら、1機でも多い方がいいって。」「へえ、まあモビルスーツには乗れるんだものね。」アスランが出るという話しはシンのところにも届いていた。「あいつが?」驚くシン。発進1分前、突如、ディアッカ達が攻撃を受けている連絡がミネルバに入ってきた。「発進停止、状況変化。ユリウス7にてジュール隊がアンノウンと交戦中。」そのアナウンスを聞き、「イザーク」と口走るアスラン。各モビルスーツは、対モビルスーツ戦用の装備に換装された。「さらにボギーワン確認。位置、アイ25、デルタ。」緊張が走るブリッジ、そしてパイロット。「どういうことだ?」アスランはメイリンに問う。「分かりません。しかし本艦の任務はジュール隊の支援であることに変わりなし。換装終了次第、各機発進願います。」メイリンの言葉が伝わってくる。発進シーケンスに乗るレイ、そしてルナマリアのザク。「状況が変わりましたね。危ないですよ。おやめになります。」アスランの元にルナマリアから連絡が入る。「馬鹿にするな。」とだけ答えるアスラン。シンのフォースインパルスが発進、続いて、レイ、ルナマリアのザクが発進する。換装が終了するアスランのザク。「進路クリア、どうぞ。」メイリンの通信。「アスラン・ザラ、出る。」発進するアスラン。 
PHASE - 06 世界の終わる時 メテオ・ブレーカーを持ち、設置ポイントに向かうジュール隊のザク。そこに襲いかかるジン。「こんなひよっこどもに、われらの思い、やらせはせんわ。」ジンの攻撃にやられていくジュール隊。「えーい下がれ、ひとまず下がるんだ。」ディアッカはこれ以上の損失を避けるため、一時撤退の命令を下す。イザークはゲイツ用のライフル射出を命令、自分も出撃するためにブリッジを離れる。

同じ頃、ユニウスセブンに向かうミネルバ。眠りから覚めたカガリがあわただしいブリッジに現れる。そのあわただしい状況にしばらく呆気にとられているカガリ。デュランダルの「姫」という言葉に促され、シートに座る。そしてデュランダルに尋ねる。「アスランは?」びっくりした表情でカガリに答えるデュランダル。「ご存じなかったのですか?彼は自分も作業を手伝いたいと言ってきて。。今は、あそこです。」その先には地球への落下軌道に乗っているユニウスセブンを写すモニタがあった。

ユニウスセブンで突如始まった戦闘の支援をするための援軍とともに、イザークもスラッシュザクファントムで出撃する。「工作隊は破砕作業を進めろ。これでは奴らの思うつぼだぞ。」そう指示をして工作隊の援護をするイザーク。近くにディアッカのザクを来た。そこに現れる光点3つ。スティング達のガンダムである。「冗談じゃないぜ。こんなところでドタバタと。」スティングがそう言うと、アウルが続けて、「おまえらのせいかよ、こいつが動き出したのは。」と後を続ける。イザーク隊に攻撃を始める3機。「なんだ?カオス、ガイア、アビス?」「アーモリーワンで強奪された機体か?」
そこにミネルバから発進したシン達も到着。「あいつだ。」シンは3機を発見するや否や、先行。「ちっ、あの3機、今日こそ。」ルナマリアも後に続こうとする。そこでたしなめるアスラン。「目的は戦闘じゃないぞ。」「わかっています。けど、撃ってくるんだもの。あれをやらなきゃ、作業も出来ないでしょ。」
カオス、ガイア、アビスの3機が出現し、ジュール隊を攻撃し始めたことは、ミネルバもキャッチしていた。ミネルバもボギー・ワンを叩くべきというアーサーの言葉を受け、タリアはデュランダルに意見を求める。「議長、現時点でボギー・ワンをどう判断されますか?海賊と、それとも地球軍と」「難しいな。私は地球軍とはしたくなかったのだ。」「どんな火種になるか、わかりませんものね。」「だが、状況は変わった。」「ええ、この非常時に際し、彼らが自らを地球軍もしくはそれに準ずる部隊だと認めるのなら、この場での戦闘は何の意味もありません。」「逆に、あのジン部隊をかばっていると思われかねんな。」そのデュランダルの言葉に「そんな。」と声を上げるアーサー。「仕方ないわ。あの機体がダガーだったら、あなただって地球軍の関与を疑うでしょう。」その言葉に何の言葉も返せないアーサー。「ボギー・ワンとコンタクトがとれるか?」デュランダルの問いかけに「国際救難チャンネルを使えば」と答えるタリア。「ならば、それで呼びかけてくれ。我々はユニウスセブン落下阻止のための破砕作業を行っているのだと。」

執拗なカオス、ガイア、アビスのシン達、破砕部隊への攻撃。ついにアスランもカオスと事を構えなければならなくなる。カオスガンダムから繰り広げられる攻撃を物ともしないアスラン。アスランが操るザクの防御力は、明らかにスティングが操るカオスガンダムの攻撃力を上回っていた。「なんだ、こいつ。強い。」たじろぐスティング。ルナマリアはこないだと同じく、ステアのガイアガンダムに手こずっていた。ユニウスセブンの大地に押しつけられ、まさにとどめを刺される寸前のルナマリアのザク。「これで終わりね、赤いの!」「何を」ザクをバク宙させ、逃げるルナマリア。一時形勢を逆転したかのようだったが、結局右足を破壊される。

地球。ユニウスセブン落下に対するニュースは全世界を不安に陥れていた。ユニウスセブン落下の発表を開始する各国の首脳。オーブ政府が発表しているニュースを心配そうに見つめるマルキオ達。そしてその中には、あのラクスの姿もあった。振り返るラクス。そこには静かに椅子に座り続けているキラの姿があった。

生き残ったいくつかのメテオ・ブレーカーが作動を開始した。引き裂かれ始めるユニウスセブンの大地。ついにユニウスセブンは真二つに割れる。「グーレイト!」歓喜の声を上げ、ガッツポーズをするディアッカ。だが、ユニウスセブンの片割れは、未だ地球落下を続けている。「だが、まだまだだ。もっと細かく砕かないと。」その声に聞き覚えがあるという表情をするイザークとディアッカ。「アスラン?」ディアッカの驚いた声の後、「貴様、こんなところで何をやっている。」と怒るイザーク。「そんなことはどうでもいい。今は作業を急ぐんだ。」「お、おう。」「わかっている。」
イザーク達と合流するアスランのザク。「相変わらずだな、イザーク。」「貴様もだ。」そのやりとりを聞き、「やれやれ。」とあきれるディアッカ。その3機に襲いかかるジンの部隊。そのジンを沈めたかと思うと、次はシンの追っていたアビスガンダムが現れる。アスランが攻撃に回ろうとすると、それに先行するイザーク。「イザーク。」「うるさい。今は俺が隊長だ。命令するな、民間人が!」その怒りの矛先になったアビスガンダム。イザークとアスランの連携攻撃に手が出ないアウル。そしてスティングのカオスガンダム。加勢も出来ず、ただ呆気にとられるだけのシン。「あれが、ヤキン・ドゥーエの戦いに生き残った、パイロットの力かよ。」「シン、何をしている。未だ作業は終わってないんだぞ。」レイの言葉に我に返るシン。
そのとき、ガーティー・ルーより帰還命令の発行弾が打ち上げられる。ガーティー・ルーへ撤退するカオス、ガイア、アビス。「ようやく信じてくれたのか。」ぼそりと言うデュランダル。「そうかもしれませんし、別の理由かもしれません。」「別の理由?」「高度です。」その言葉にハッとした態度をとるアーサー。「ユニウスセブンとともにこのまま降下すると、やがて船も、地球の引力から逃れられなくなります。我々も命を選ばねばなりません。助けられるもの。助けられないもの。」「艦長。」デュランダルの方を向くタリア。「こんな状況下に申し訳ありませんが、議長方はヴォルテールにお移りいただけますか。」「えっ?」「ミネルバはこれより大気圏に突入し、限界までの艦首砲による対象の破砕活動を行いたいと思います。」「えー、艦長、それは?」その言葉に驚きの声を上げるアーサー。「どこまでできるかわかりませんが、でも、できるだけの力を持っているのにやらずに見ているだけなど、後味が悪いですから。」「タリア、しかし、」「私はこれでも運の強い女です。お任せください。」その言葉に観念した議長。ミネルバからの下艦を決断する。が、カガリはミネルバへの残留を決める。デュランダルのさしのべた手を頭を振って断るカガリ。「私はここに残る。アスランが未だ戻らない。それにミネルバがそこまでしてくれると言うのなら、私も一緒に。」「しかし、為政者の方には、まだ他にお仕事が。」「代表がそうお望みでしたら、お止めはしませんが。」
ミネルバのその行動は、ただちにジュール隊に告げられた。やむを得ずユニウスセブンから退却するモビルスーツ。デュランダルは単身、ヴォルテールへ移動した。そんな中、アスラン、ただ1機が未だメテオ・ブレーカーを動かそうと奮戦していた。それを見つけるシン。「何をやっているんです。帰還命令が出たでしょ。通信も入ったはずだ。」「ああ、わかってる。君は早く戻れ。」「一緒に吹っ飛ばされますよ。いいんですか?」「ミネルバの艦首砲とは言っても、外からの攻撃では確実とは言えない。これだけでも。」その言葉にシンも一緒になって、メテオ・ブレーカーの据え付けを手伝い始める。「あなたみたいな人が、なんでオーブなんか。」

そこにまたもジンの攻撃。防戦しようとするシンとアスラン。支えがなくなり、傾き始めるメテオ・ブレーカー。
「我が娘のこの墓標。落として焼かねば、世界は変わらぬ。」
「娘?」「何を?」とまどうアスランとシン。
「ここで無惨に散った命の嘆き忘れ、撃ったものなど、なぜ偽りの世界で笑うか。貴様らは。」衝撃を受ける2人。
「軟弱なクラインの後継者どもにだまされ、ザフトは変わってしまった。なぜ、気づかぬか。」そのジンを迎え撃つアスラン。
「我らコーディネータにとって、パトリック・ザラのとった道こそが、唯一正しきものと。」この言葉にアスランは我を忘れる。思い出す父の姿。その瞬間をジンは見逃さなかった。切り落とされるザクの右腕。援護しようとするシン。だが、そこに襲いかかるもう1機のジン。シンのインパルスはジンを叩ききる。と同時に自爆するジン。「うわぁー」吹き飛ばされるインパルス。そのジンの破片は、傾くメテオ・ブレーカーに当たる。その衝撃で動き始めるメテオ・ブレーカー。だが、大地は何の変化もない。勝ったとばかりに笑みを浮かべるジンのパイロット。
ついにユニウスセブンは大気圏高度に突入した。「我らのこの思い、今度こそナチュラルどもに。」脱出しようとするアスランのザクにしがみつくジン。そこにインパルスが突っ込んでくる。ザクの足を切り落とし、ザクを連れ、そこから離脱するインパルス。ジンは、既に赤く燃えるユニウスセブンの大地に落下していった。

大気圏高度から上昇しようとするインパルス。それに引かれるアスランのザク。だが、ついにザクの手は、インパルスの手から離れる。「うわぁー」地球に飲み込まれていくアスランのザク。

地球上。マルキオの孤児院。「さあ、みんないらっしゃい。わたくしについてきてくださいね。」子供達を連れて、マルキオ達と共にシェルターへ移動しようとするラクス。ラクスはキラがいる方を見るが、キラは椅子には座っていない。誰も座っていない椅子。「キラ?」辺りを探すラクス。キラは海岸にいた。遠くを見つめながら。。。空から落ちてくるユニウスセブンの大地、そして無数の流星。
PHASE - 07 混迷の大地 ユニウスセブンへの攻撃をしようにも、インパルスとザクの位置をロストしてしまったミネルバ。攻撃を行った場合、インパルスとザクの2機を巻き込みかねない。だが、ユニウスセブンは落下を続けている。「ターンホイザー起動」そのタリアの言葉に、顔をこわばらせるブリッジ。「ユニウスセブン落下阻止は何があってもやり遂げねばならない任務だ。照準、右舷前方構造体。」冷ややかとも思える口調で指示を出すタリア。カガリはいたたまれない気持ちで、押しつぶされそうになっていた。

シンはインパルスを大気圏突入モードへと移行させていた。姿勢制御を安定させ、安全角度での突入姿勢を維持するインパルス。一方、アスランのザクは、破壊度激しく、姿勢維持が難しい。各部の温度上昇を気にしながらも、覚悟を決めるアスラン。

ターンホイザー発射。大きなユニウスセブンの塊は大気圏内で粉々になる。地球上に甚大な被害をもたらすことだけは回避させることに成功したミネルバ。すでに高度はフェーズ3へ突入。何とか大気圏突入体勢を維持しながら、地球への降下を開始する。

大きな塊はなくなったとはいえ、無数のユニウスセブンの破片は、地球に落下。その落下物の衝撃は、各地に大きな被害を及ぼしていた。地球の各政府はシェルターへの避難勧告を出し、そしてシェルターへの避難ができない人たちは、少しでも高いところへと避難をする。
マルキオやラクス、キラ達も例外ではない。教会地下のシェルターに子供達と一緒に避難していた。時折の衝撃におびえる子供達。子供達を勇気づけるために歌い始めるラクス。そのラクスの歌に聴き入る子供達。

ミネルバ、大気圏内航行可能速度へ。姿勢制御のため主翼展開、大気圏内航行へと切り替える。即座にインパルスとザクの位置確認を指示するタリア。「平気でターンホイザーを撃っておいて、何を今更と思うかもしれないけれど、信じたいわ。」
そのタリアの期待を裏切ることなく、アスランのザクは燃え尽きず、大気圏を抜け、一直線に地表に向かっていた。だが、既に限界。ザクの機体を守っていたシールドも吹きとんでいた。「やはり、ブースターがなければ、大気圏は。」アスランが、そう諦めの言葉を口に出した時、シンの呼びかけが無線機より聞こえてくる。「アスランさん、アスランさん。」「シン、君か。」「待っててください。今。」「よせ、いくらインパルスのスラスターでも、2機分の落下エネルギーは。」そうアスランが言った瞬間、振動。アスランのザクはインパルスにがっちり掴まれていた。「どうしてあなたは、そんなことばかり言うんですか。」モニターが回復する早々、アスランをしかりつけるシン。「じゃあ、何を言えばいいんだ。」「俺を助けろ、この野郎、とか。」「ふっ、」その言葉に苦笑いするアスラン、「その方がいいのか?」「いえ、ただの例えです。」素直にインパルスに運ばれるアスランであった。

ミネルバ、インパルスとザクを捕捉。早速発光信号の打ち上げを指示するタリア。その信号でミネルバを発見、無事に着艦する2機。カガリは着艦した後部カタパルトへと急いでいた。ザクを降りてくるアスラン。ルナマリア達が出迎えようと、待っていた列に割り込んで迫ってくるカガリ。「アスラーン。」それに面食らうルナマリア。息を切らしているカガリを見て、ほほえむアスラン。その時、艦が揺れる。「何?まだ何かあるのか?」「地球を一周してきた、最初の落下の衝撃波だ。おそらく。」冷ややかに説明をするレイ。アスランは、大気圏ぎりぎりでのテロリスト達との戦闘を、そしてあの言葉を思い出し、いたたまれない気持ちになっていた。

ミネルバ、太平洋に着水。つかの間の休息となる。メカマンなどとりあえず任務のない者は、デッキで、ただひたすら地球の自然の壮大さに感嘆の声をあげている。そんななかにカガリとアスランの姿もあった。そしてその2人の会話をこっそりと聞くシンの姿も。
「大丈夫か、アスラン。」「ああ、大丈夫だ。」「けど、本当驚いた。心配したぞ。モビルスーツで出るなんて聞いてなかったから。」「すまなかった。勝手に。」「いや、そんなことはいいんだ。おまえの腕は知っているし。私はむしろ、おまえが出てくれて良かったと思っている。」その言葉に驚くシン、そしてアスラン。「本当にとんでもないことになったが、ミネルバやイザーク達のおかげで、被害の規模は格段に小さくなった。」その言葉を聞いているうちに怒りがこみ上げてくるシン。
「そのことは地球の人たちも・・」と言った瞬間、シンの怒号が飛ぶ。「止めろよ、馬鹿。」「ああ?」カガリの驚く顔。その言葉が聞こえ、遠巻きで様子をうかがっていたルナマリアやシン、ヴィーノ達は「また?」という声を上げていた。
「あんただってブリッジにいたんだろ。なら、これがどういうことだったかわかっているはずだろ。」「ええっ?」カガリは状況がちっとも分かっていない様子。「シン。」アスランはシンをたしなめるように言う。が、続けるシン。「ユニウスセブンの落下は自然現象じゃなかった。犯人がいるんだ。落としたのはコーディネータさ。」その言葉でようやく事態が飲み込め、驚くカガリ。「あそこで家族を殺され、そのことをまだ恨んでいる連中が、ナチュラルなんか滅びろって落としたんだぞ。」
「わかっている、それは。でも、」カガリの言葉を遮るシン。「でも、なんだよ。」「おまえ達はそれを必死に止めようとしてくれたじゃないか。」「当たり前だ。」声を荒げるシン。「だが、それでも破片は落ちた。」冷静に後を続けるアスラン。「俺たちは、止めきれなかった。」悔しそうに拳を握るアスラン。「アスラン。」その態度を見て、そうとしか言えないカガリ。「一部の者達がやったことだと言っても、俺たちの、コーディネータのしたことに変わりはない。」静まるみんな。「許してくれるのかな、それでも。」顔を伏せるアスラン。アスランはその場を外し、艦内へと向かう。
「自爆した奴らのリーダーが、最期に言ったんだ。」シンがカガリに話しかける。「えっ?」「俺たちコーディネータにとって、パトリック・ザラの採った道こそが、唯一正しいものだってさ。」その言葉に驚くみんな。カガリはアスランが艦内に入っていった、扉を見つめる。もうアスランの姿はそこにはなかった。「アスラン。」アスランを追おうとするカガリ。「あんたって、本当。何も分かってないよな。」シンの言葉に足を止めるカガリ。睨み付けるシン。「あの人が、可哀想だよ。」そう言い残し、カガリの元から立ち去るシン。

今回の被害について、デュランダル議長の演説が始まる。ブルーコスモスの面々にとってみても、今回の地球各所で起きた被害は、予想を超えるものだったらしい。デュランダル議長の演説を横目に、ジブリールは、今後について、ブルーコスモスの他のメンバーと話し合っていた。デュランダルの対処は早く、既に地球各地への救援物資の手配、そして人的資源の派遣を開始していた。それを気にするブルーコスモスの面々。ジブリールは、その不安を打ち消すかのように話し始める。「皆さんのお手元にも、もう届くと思いますが、ファントム・ペインはたいそう面白いものを送ってきてくれました。」映し出される落下前のユニウスセブンの画像。テロリスト達ジンがユニウスセブンにリニアモータを設置しているその瞬間の画像である。良いネタを手に入れたというような感嘆な声を上げるブルーコスモスのメンバー。「思いもかけぬ最高のカードです。これを許せる人間などこの世のどこにも居はしない。そしてそれは、この上なく強き、我らの絆となる日。今度こそ奴らのすべてに死を。蒼き正常なる世界のためにね。」ワイングラスを高く掲げるジブリール。

太平洋上、ミネルバ。アスランはテロリストの言葉を思い出していた。その言葉を打ち消すかのように激しく頭を振るアスラン。
カガリはオーブへの通信を試みていたが、レーザー通信は封鎖され、連絡が取れない状況になっていた。「艦のチェックと各部の応急処置が済み次第、オーブへは向かわせていただきますが。」タリアのその言葉に応えるカガリ。「ああ、わかっている。今更こんなところから話をしたって、もうあまり意味はないことぐらい、わかってはいるのだがな。」「島国ですものね、オーブは。ご心配も当然ですわ。」
ブリッジから士官室のある階へと到着したエレベータを降りながら、タリアに言うカガリ。「到着したらその勇気と功績に感謝して、ミネルバには出来るだけの便宜を図るつもりでいたが、これでは軽く約束もできないな。許してくれ、艦長。」「いえ、そのようなことは。」うまく言葉が見つからないタリアに、カガリは会釈をして、自室へと向かって行った。

アスランは、ルナマリア達が射撃訓練をしているのを見つけ、ぼぉーとそれを眺めていた。うまく的に当たらないルナマリアは、正確に標的を打ち抜くレイを見、自分の出来に落ち込み、そして自分達を眺めていたアスランを発見する。「あら。」「訓練規定か。」「ええ、どうせなら外の方が気持ちいいって。でも、調子悪いわ。」そのルナマリアの言葉に微笑みながら頷くアスラン。射撃に入ろうとしたところで、振り向き、「一緒にやります?」とアスランに話かけるルナマリア。「いや、俺は別に。」手で合図しながら答えるアスラン。「本当は私たちみな、あなたのこと、よく知っているわ。元ザフト・レッド、クルーゼ隊。戦争中盤では最強と言われたストライクを撃ち、その後国防委員会直属、特務隊FEITH所属。ZGMF-X09A、ジャスティスのパイロット、アスラン・ザラでしょ?」その言葉に顔を曇らせるアスラン。「お父さんのことは知りませんけれど、その人は、私たちの間では英雄だわ。ヤキン・ドューエ戦でのことも含めてね。」「ああ、いえ、」なんと返して良いかわからなくなるアスラン。「射撃の腕もかなりのものと聞いてますけど。」銃を差し出すルナマリア。「お手本。実は私、あんまりうまくないんです。」「ふん、」微笑み、銃を取るアスラン。
射台につくアスラン。ランダムに出現する標的。その射撃の正確さに歓喜の声を上げるルナマリア。「わあ、同じ銃撃っているのに、何で?」その様子を遠くから見つめるカガリ。カガリはアスランがまた、自分の元を離れ、ザフトに戻ってしまうのではないかという不安でいっぱいであった。
「こんなことばかり得意でもしょうがないけどな。」撃ち終わり、ルナマリアに銃を返すアスラン。「そんなことありませんよ。敵から自分や仲間を守るためには必要です。」「敵って、、誰だよ。」ルナマリアの言葉に突然、機嫌が悪くなった様子のアスラン。出て行く寸前、シンがアスランに声をかける。「ミネルバは、オーブに向かうそうです。あなたもまた、戻るんですか。オーブへ。」「ああ。」「なんでです。そこで何をしてるんです。あなたは。」立ち止まったままのアスランであったが、艦内に入っていく。

荒れる海を見つめるキラとラクス。「嵐が来るようですわね。」ラクスがキラに話しかける。「うん、わかっている。」そう答えるキラ。荒れている海。打ち寄せる波。
PHASE - 08 ジャンクション ミネルバ、オーブ領のオノゴロ島ドックに入港。オノゴロへの入港に心中穏やかではないシン。
ブリッジを降りるや否やユウナ・ロマ・セイランに抱きつかれるカガリ。その歓迎に驚くカガリであったが、ウナト・エマ・セイラン宰相らオーブ要人の姿を見て、すぐに代表の顔に戻り、被害状況を尋ねる。が、その場では言いづらいことも多いのか、言葉を濁すウナト。タリア達の挨拶も適当に流し、すぐにでも行政府へカガリを案内しようとする要人達。だが、カガリは未だ話したいことがありそうな雰囲気。そのカガリを強引に連れて行くユウナ。アスランをその場に残したままで。カガリはアスランの事が気がかりであったが、そのまま車に乗せられてしまう。どうもアスランはカガリ以外のオーブ要人達に歓迎されている雰囲気ではないことをタリア達は感じ取っていた。入港したミネルバの今後の処遇について、話をするラミアス、バルトフェルド。ウナト宰相は大西洋連邦側の人間であり、今後一波乱ありそうな雰囲気という内容。
その波乱が内閣府官邸で起きていた。「なんだと、大西洋連邦との新たなる同盟条約の締結?一体何を言っているんだ、こんな時に。今は被災地への救援、救助が急務のはずだぞ。」カガリの驚きの声が上がる。大西洋連邦との条約締結に渋るカガリに対して、オーブ要人達は説得を始める。この条約は大西洋連邦だけとのものではなく、今回発生した被害に対する復興を効率的に行うための世界的なものであると。ミネルバに乗っている時には分からなかった、地球上のすさまじい被害状況を見て、言葉を失うカガリ。さらにユニウスセブンでリニアモータを仕掛けるジンの姿をとらえた画像を見せられる。カガリはそれが一部のテロリストの仕業であり、今回の発生した事態が最悪の結果にならないように様々な尽力をしてくれたのがプラントだと主張。だが、例えそうだったとしても地球の人々は納得しないであろうと言われると返す言葉もない。

ミネルバはモルゲンレーテのドックで修理されていた。ミネルバの外装修理はモルゲンレーテにすべて任せることにするタリア。だが、船内については自分達の手でやっておきたいという思いを告げる。その言葉に頷くメカニック。「でも、いいんですか?艦長。本当に。」アーサーのその問いかけに「うん?」と顔を向けるタリア。「補給はともかく、船の修理などはカーペンタリアに入ってからの方が良いのではないかと自分は思いますが。」そう、アーサーが言い終えた時、マードックが運転してきたジープが止まり、そこから飛び降りるラミアスの姿が近くにあった。「言いたいことは分かるけど、一応、日誌にも残しましょうか?」その言葉に「いえ?そんな」と恐縮するアーサー。「でも、機密よりは艦の安全、ですものね。」その言葉に振り返るタリア達。近づいてくるラミアスがタリア達に話しかけているのだった。「やっぱり、船、戦闘艦は特に常に信頼できる状態でないと、お辛いでしょ、指揮官様。」「誰?」厳しい顔でラミアスに問うタリア。「失礼しました。モルゲンレーテ、造船課Bのマリア・ベルネスです。こちらの作業を担当させていただきます。」そう言いながらタリアに手を差し出すラミアス。一瞬躊躇し、握手をするタリア。「艦長のタリア・グラディスよ。よろしく。」微笑むラミアス。
時間が経ち、いくぶんうち解けてきた感じの2人。ラミアスのミネルバが既に歴戦の艦のように感じるという言葉に対し、タリアもまさかこのようなことになるとは思っていなかったと本音を漏らす。そして先に事は分からないと。タリアは聞き返す。
「本当はオーブも、こうやってザフト艦の修理になんか手を貸していられる場合じゃないんじゃないの。」
「まあ、そうかもしれませんけど。でも、同じですわ。やっぱり先のことはわかりませんので。私たちも今は、今思って信じたことをするしかないですから。」ラミアスは、タリアの質問に微笑みながら答える。その答えを聞き、顔をゆるませるタリア。
「後で間違えだとわかったら、そのときはそのときで泣いて怒って、そしたらまた、次を考えます。」言葉を続けるラミアス。それを聞き、「まあ、そうね」とだけ言うタリア。
ミネルバ内では上陸許可が出るのではと、盛り上がっていた。そんな様子をよそにレイは自室に入ってきた。軍服を脱ぐレイ。ベッドに寝ころんでいたシンが、妹の携帯をいじりぼぉーとしながらレイに話しかける。「上陸許可、出るのかな?」「さあね。」それだけ答え、シャワールームに入っていくレイ。

アスランは、ラクス達のいる場所に向かっていた。海岸線の人影に目を留めるアスラン。「キラ?」それはラクスとラクスを囲む子供達の姿だった。車を停め、クラクションを鳴らすアスラン。その音に気づくラクス達、そしてキラ。車を降りたアスランを取り囲む子供達。そしてその後をゆっくり追うキラ、ラクス。
「アスラン。」「お帰りなさい、大変でしたわね。」「君たちこそ。家を流されてこっちに来てると聞いて。大丈夫だったか?」キラの返事を待っていたのだが、子供達が口々に家が流されたことを話しかけてくるので、アスランは困った様子。話が出来ないとラクスは子供達を連れ、海岸に戻る。キラとアスランは2人だけに。「カガリは?」「行政府だ。仕事が山積みだろう。」ラクス達をおいて、2人は先に車で戻ることになる。
車を運転しながらアスランが尋ねる。「あの落下の真相は、もうみんな知っているんだろう?」「うん。」「連中の1人が言ったよ。」「あん?」「討たれた者達の嘆きを忘れて、何故討った者達と偽りの世界で笑うんだ。おまえらはって。」「戦ったの?」「ユニウスセブンの破砕作業に出たら、彼らがいたんだ。」マルキオがいる館に到着する。車を停めるアスラン。再び話し始める。「あのとき、俺、聞いたよな。やっぱりこのオーブで。俺たちは本当は、何と、どう戦わなきゃならなかったんだって。そしたら、おまえ言ったよな。それをみんなで一緒に探せばいいって。」ただ頷くキラ。「でも、まだ見つからない。」いらついている様子のアスラン。アスランの肩に手をやるキラ。

翌朝。一人ニュースを見ているアスランのところに現れるカガリ。昨日の行政府に連れて行かれたまま戻ってこれなかったことを詫びるカガリ。そして今日も閣議が続くことを。アスランはオーブ政府の状況をカガリに聞く。が、カガリは良い顔をしない。それですべてを察知するアスラン。アスランはプラント行きを決意する。「俺、プラントに行ってくる。」突然の言葉にびっくりするカガリ。「オーブがこんな時にすまないが、俺も一人、ここでのうのうとしているわけにはいかない。」「アスラン、けど、お前、それは。」「プラントの情勢が気になる。」アスランが何を恐れているのかを感じ取るカガリ。「デュランダル議長なら、よもや最悪の道を進んだりしないからな。だが、未だああやって父に、父の言葉に踊らされている人もいるんだ。議長と話して、俺が、俺も手伝えることがあるなら。アスラン・ザラとしてでも、アレックスとしてでも。このままプラントと地球がいがみ合うことにでもなってしまったら、俺たちは一体今まで何をしてきたのか、それすらわからなくなってしまう。」

アスランを迎えるヘリが到着。スーツケース一つで出かけるアスラン。それを見送るカガリ。突然、カガリの方を振り返るアスラン。「ユウナ・ロマとのことはわかってはいるけど。」なにやらポケットをごそごそさせるアスラン。「やっぱり面白くはないから。」そう言いながらカガリの左薬指に指輪を滑らすアスラン。「ええっ!」驚きの表情を隠せないカガリ。そっぽをむくアスラン。「うわ、あの、こういう指輪の渡し方って、ないんじゃないか。」「悪かったな。」笑い始めるカガリ。「気をつけて、連絡よこせよ。」抱き合う2人。「カガリもがんばれ。」カガリの体を離しながら言うアスラン。口づけをかわし、アスランはヘリに向かう。飛び立つヘリ。見送るカガリ。

ミネルバでは上陸許可が出ていた。街に繰り出すみんな。だが、シンは一人ミネルバに残って射撃訓練をしていた。静かに現れるレイ。シンの隣で射撃訓練を始める。「上陸しないのか?出ただろう、上陸許可。」シンは上陸を迷っているようだった。が、結局上陸する。慰霊碑の前に立ち、そして数年前、目の前で起きたあの惨事を思い出すシン。そこにキラの姿を見つける。「慰霊碑、ですか。」「うん、そうみたいだね。よくは知らないんだ。僕もここへは初めてだから。自分でちゃんと来るのは。せっかく花が咲いたのに、波をかぶったから、また枯れちゃうね。」「ごまかせないってことか。」「えっ」「いくら綺麗に咲いても人はまた吹き飛ばす。」「君?」そこに花をもったラクスが歌いながら現れる。「すみません、変なこと言って。」立ち去るシン。

アスランがシャトルで地上から離れたころ、官邸ではカガリの大声が響き渡っていた。「そんな馬鹿な、何かの間違えだ。それは。」カガリを取り巻く、ウナト宰相を始めとするオーブ要人達。「いえ、間違えではございません。先ほど大西洋連邦、並びにユーラシアを始めとする連合国が、以下の要求が受け入れられない場合は、プラントを地球人類に対する極めて悪質な敵性国家とし、これを武力をもって排除するのも辞さないと共同声明を出しました。」それを聞き、愕然とするカガリ。 
PHASE - 09 驕れる牙 月面、地球軍アルザッヘル基地。対プラント戦のため、着々と戦争準備が始まっていた。地球連合から突きつけられた「テロリストの逮捕、身柄引き渡し、賠償金、武装解除、現政権の解体、連合評議会監視員の派遣」という要求は、プラント側にとってはとても受け入れることができないもの。プラント政府内の会議では、戦争止むなしの声が高まっていた。それを制しているのが、デュランダル議長。無理難題を出し、こちらから戦争と始めさせようとする地球連合の魂胆に乗らず、あくまでも対話による解決を行うことを強調。軍の展開についても市民の動揺と地球軍の刺激を招くことになるため、避ける考えを述べる。だが、プラント市民にも未だ「血のバレンタイン」の恐怖心が根強く残っている。その恐怖心を払拭するにも最低限の軍展開は必要と考え、国防委員会に防衛策を一任。それを受け、ザフト軍空母、ゴンドワナが出撃。イザーク率いるジュール隊が合流をしていた。
そんな混乱のさなか、アスランはプラントに到着。カガリの特使としてデュランダル議長との謁見を画策するも、オーブのエイジェントからは難しいという話を聞く。

ジブリールは、早くプラントを討ちたいという意思を持っていた。合衆国大統領に攻撃時期を尋ねるジブリール。だが、プラントもあらゆる外交ルートからなんとしても協議による解決を行おうとしており、そして未だ地球各国が強調している訳ではないことが理由で、開戦に踏み切れないでいる状況が説明される。せかすジブリール。
「おやおや、前にも言ったはずです。そんなもの、プラントさえ討ってしまえばすべて治まると。奴らがいなくなった後の世界、一体誰が我々に逆らえると言うんです。赤道でも?スカンジナビア半島?・・ああ、怖いのはオーブですか。」「あの国は、まあ。」「ふんっ。あんなちっぽけな国。世界はシステムなんです。だから作り上げる者とそれを管理する者が必要。人が管理しなければ庭とて荒れる。誰だって庭には好きな木を植える、芝をはる。綺麗な花を咲かせたがるものでしょう。雑草は抜いて。ところ構わず好き放題に草をはやさせ、それを美しいと言いますか?これぞ自由だと。人は誰だってそういうものが好きなんですよ。きちんと管理された場所、もの、安全がね。今までだって、世界をそうしようと人は頑張ってきたんじゃないんですか?街を作り、道具を作り、ルールを作ってね。そして今、それをかつてないほどの壮大な規模でやれるチャンスを得たんですよ。我々は。だからさっさと奴らを討って、早く次の楽しいステップに進みましょう。我々、ロゴスのための美しい庭。新たな世界システムの構築というね。」

ついに地球軍宇宙艦隊が作戦を開始した。合衆国大統領が声明を発表。「・・未だ納得できる回答すら得られず、この未曾有のテロ行為を行った犯人グループを匿い続ける現プラント政権は、我々にとって明かな脅威であります。よって、先の警告通り、地球連邦各国は、本日午前0時をもって武力によるこれの排除を行うことを、プラント現政権に対して通告しました。」
ついに地球とプラントの戦争が始まった。前線ではモビルスーツによる戦闘が口火を切る。熾烈な戦闘が各宙域で繰り広げられていた。そんななか、地球軍の奇襲部隊が接近しつつあった。奇襲部隊のウィンダムの装備には核兵器のマークが記載されている。ザフト軍哨戒機がキャッチしたものの、前線で戦うジュール隊が間に合う距離ではなかった。軌道上よりプラントの各コロニーに向け発射される無数の核ミサイル。これに対し、ザフトは秘密兵器ニュートロンスタンピーダを投入。核ミサイルもろとも地球軍奇襲部隊のすべてを消滅させる。とりあえずの攻撃は防げたものの、ザフトはニュートロンスタンピーダを失った。

デュランダルとの会見に臨むため、部屋で待つオーブエージェントとアスラン。だが、この状況下では何時実現するのかもわからない。顔を洗うため、一時退席するアスラン。部屋に戻る時、聞き慣れた声が聞こえる。それはラクス・クラインであった。驚くアスラン。「ラクス?」と声をかける。「アスラン。」駆け寄り、アスランに抱きつくラクス。「嬉しい、来てくださいましたのね。」「君がどうして?ここに?」「ずっと待ってたのよ。私。あなたが来てくれるのを。」アスランに微笑み返すラクス。驚きを隠せないアスラン。

ジブリールも核攻撃隊が1機残らず全滅したことを聞き、驚きを隠せずにいた。やむを得ず地球軍は月基地に全軍一度撤退をしていた。「そんな、馬鹿な。」怒りが収まらないジブリール。

「では、また。でも良かったわ。本当に嬉しい、アスラン。」ラクスの無邪気に笑う顔に、未だ状況が飲み込めていないアスラン。そこに現れるデュランダル議長。「アレックス君。ああ、君とは面会の約束があったね。だいぶお待たせてしてしまっているみたいで申し訳ない。」「ああ、いえ。」「ん?どうしたね。」まだ、ラクスと会ったことに対する動揺がおさまり切れていないアスラン。デュランダル議長から顔を背けて答える。「いえ、何でもありません。」そのアスランの様子をデュランダルは見逃すはずがなかった。 
PHASE - 10 父の呪縛 プラントと地球連合の戦いが始まった頃、夜空を見上げるキラの姿があった。そのキラの姿を追って現れるラクス。そこに寝ぼけた子供がたどたどしい足取りで現れる。「あらあら。」寝かしつけようとするラクス。その瞬間、はるか上空で煌めく閃光。「あ、あれは。」ラクスの問いに答えるキラ。「あれは、核の光だ。」思い出す、高笑いするクルーゼの顔。プラントでは、そのキラといるはずのラクスがアスランの目の前に現れていた。。。
地球連合軍が行った核攻撃は、プラントに多大なる動揺を与えていた。アスランも無論例外ではない。議長室でその事実を知る。「核攻撃を?そんなばかな。」「と、言いたいところだがね。私は。だが、事実は事実だ。」アスランの問いにそう答えたデュランダルは、繰り返し伝えるニュース番組を見せる。ニュースの内容が一段落したところで声をかけるデュランダル。「君もかけたまえ、アレックス君。ひとまずは終わったことだ。落ち着いて。」悲痛な面持ちをしながら、進められるがままソファに腰掛けるアスラン。「しかし、想定していなかった訳ではないが、やはりショックなものだよ。こうまで強引に開戦され、いきなり核まで撃たれるとはね。」
核攻撃があった事実に対し、怒りを露わにするカガリ、そしてシン。
再び話し始めるデュランダル。「この状況で開戦するということ自体、常軌を逸しているというのに、その上これでは。これはもう、まともな戦争ですらない。」「はい。」頷くアスラン。「連合はいったん軍を退きはしたが、これで終わりにするとは思えんし。逆に今度はこちらが大騒ぎだ。防げたとは言え、またいきなり核を撃たれたのだからね。」その言葉を聞き、怒りに震えるアスラン。
「問題はこれからだ。」「それで、プラントは。この攻撃、宣戦布告を受けて、プラントは、今後どうしていくつもりなのでしょうか?」デュランダルに問いかけるアスラン。「ぅーん。」考え込むデュランダル。
「我々がこれに報復で応じれば、世界はまた、泥沼の戦場となりかねない。わかっているさ。無論私だってそんなことにはしたくない。だが、事態を隠しておけるはずもなく、知れば市民は皆、怒りに燃えて叫ぶだろう。許せないと。それをどうしろと言う。いま、また先の大戦のように進もうとする針をどうすれば止められるというのかね。既に我々は再び撃たれてしまったのさ、核を。」
交錯するプラント市民の声。人々は戦争しかないという声を上げている。
「しかし、でも、それでも、どうか議長。怒りと憎しみだけで、ただ打ち合ってしまったら駄目なんです。これで打ち合ってしまったら、世界はまた、あんな何も得るもののない、戦うばかりのものになってしまう。どうか、それだけは。」デュランダルに懇願するアスラン。「アレックス君。」
「俺は、俺は、アスラン・ザラです。2年前、どうしようもないまでに戦争を拡大させ、愚かとしか言えない憎悪を世界中にまき散らした、あのパトリックの息子です。父の理想が正しいと信じ、戦場を駆け、敵の命を奪い、友と殺し合い、間違えと気づいても何一つ止められず、すべてを失って、、なのに、父の言葉が、また、こんな。」震えながら、自分を追いつめるように言葉を連ねるアスラン。「アスラン。。」「もう、絶対繰り返してはいけないんだ。あんな。」「アスラン。」デュランダルの強い呼びかけに、ふと我に帰るアスラン。
立ち上がるデュランダル。「ユニウス・セブンの犯人達のことは聞いている。シンの方からね。君もまた、つらい目に遭ってしまったな。」「いや、違います。俺はむしろ知って良かった。でなければ俺はまた、何も知らないまま。。」
アスランの言葉を遮るデュランダル。「いや、そうじゃない。アスラン。君が彼らのことを気に病む必要はない。君が父親であるザラ議長のことを、どうしても否定的に考えてしまうのなら、仕方のないことなのかもしれないなぁ。だが、ザラ議長とて、初めからああいう方だった訳ではないだろう?」「いえ、それは。」「彼は確かに、少しやり方を間違えてしまったかもしれないが、だがそれもみな、元はと言えばプラントを、我々を守り、より良い世界を作ろうとしてのことだろう。想いがあっても、結果として間違ってしまう人たちがたくさんいる。またその発せられた言葉が、それを聞く人にそのまま届くとも限らない。受け取る側も自分なりに勝手に受け取るもんだからね。」「議長。」「ユニウス・セブンの犯人達は、行き場のない自分たちの思いを正当化するために、ザラ議長の言葉を利用しただけだ。」「はっ。」何か吹っ切れたような表情をするアスラン。「自分たちは間違っていない。なぜなら、ザラ議長もそういっていただろうとね。だから君まで、そんなものに振り回されてしまってはいけない。彼らは彼ら、ザラ議長はザラ議長、そして君は君だ。例え誰の息子であったとしても、そんなことを負い目に思ってはいけない。君自身にそんなものは何もないんだ。」「議長。」ゆっくり立ち上がるアスラン。
「今こうして、再び起きかねない戦渦を止めたいと、ここに来てくれたのが君だ。ならばそれだけでいい。一人で背負うのは止めなさい。」デュランダルから目を背けるアスラン。「だが、嬉しいことだよ、アスラン。こうして君が来てくれた、というのがね。」どこに視線を持って行ったら良いのか、なにやら落ち着きのない様子のアスラン。「一人一人のそういう気持ちが必ずや世界を救う。夢想家と思われるかもしれないが、私はそう信じているよ。」「は、はい。」「だからそのためにも、我々は今を踏み答えなければな。」

突如、デュランダルとアスランの後ろで流れていたニュース番組の画面が切り替わる。「みなさん、私はラクス・クラインです。」驚くアスラン。
「みなさん、どうか気持ちを静めて、私の話を聞いてください。」この放送が始まったとたん、ラクスの言葉に耳を傾け始めるプラント市民。つい先ほどまで地球連合への戦争を唱えていた者も、戦争に反対する者も、「ラクス様だわ、」と。「このたびのユニウス・セブンのこと。またそこから派生した昨日の地球連合の宣戦布告、核攻撃、実に悲しい出来事です。再び突然に核を撃たれ、驚き憤る気持ちは私もみなさんと同じです。ですが、どうか、みなさん。今はお気持ちを沈めてください。怒りに駆られ、思いを叫べば、」アスランはデュランダルの方を伺い見る。不敵な笑みを浮かべながら、アスランの方を見るデュランダル。その笑みから何かを察知したアスラン。「それは、また新たな戦いを呼ぶものとなります。最高評議会は最悪の事態を避けるべく、今懸命な努力を続けています。ですからどうかみなさん、常に平和を愛し、今また、よりよき道を模索しようとしているみなさんの代表、最高評議会のデュランダル議長をどうか信じて、今も落ち着いてください。」

歌い始めるラクス。「笑ってくれて構わんよ。」デュランダルの言葉に振り返るアスラン。「君には無論、わかるだろう。」アスランは先ほど会ったラクスの不自然な動きを思い出していた。「我ながらこざかしいことをと、情けなくなるな。だが仕方がない。彼女の力は大きいのだ。私のなどより、はるかにな。」ラクスの歌が続く。それに目を奪われたままのプラント市民。「ラクス・クラインがそういうのなら。」「ねえ。」聞こえる市民の声。確かに市民にとって、ラクス・クラインの力は絶大なようだ。
「馬鹿なことをと思うがね。だが、今私には彼女の力が必要なんだよ。また、君の力を必要としているのと同じにね。」「私の?」「一緒に来てくれるかね。」デュランダルの後に続き、部屋を出るアスラン。

エレベータで、「RESTRICTED AREA」と書かれた場所まで連れてこられるアスラン。何をされるのかと疑念の視線を送りつつも、デュランダル議長の後をついて行く。最後のゲートが開き、暗いハンガーへと入る2人。明かりがともる。そこには1機のガンダムが鎮座していた。「これは。」「ZGMF-X23S、セイバー。性能は異なるが、例のアビス、カオス、ガイアとほぼ同時期に開発された機体だよ。この機体を君に託したい、と言ったら君はどうするね。」
「どういうことですか。また私にザフトに戻れと。」
「んー、そういうことではないな。ただ言葉の通りだよ。君に託したい。」理解できないような顔をするアスラン。「まあ、手続き上の立場では、そういうことになるのかもしれないが、今度のことに対する私の思いは、先ほど、私のラクス・クラインが言っていた通りだ。だが、相手、様々な人間、組織。そんなものの思惑が複雑に絡み合う中では、願う通りにことを運ぶのも容易ではない。だから、思いを同じくする人には、共に立ってもらいたいのだ。できることなら戦争は避けたい。だが、だからと言って、銃も取らずに一方的に滅ぼされる訳にもいかない。そんな時のために君にも力のある存在でいて欲しいのだよ。私は。」
デュランダルの言うことがようやく理解できたという素振りを見せるアスラン。「議長。」
「先の戦争を体験し、父上のことで悩み、苦しんだ君なら、どんな状況になっても道を誤ることはないだろう。我らが誤った道を行こうとしたら、君もそれを正してくれ。だが、そうするには力が必要だろ。残念ながら。」議長の言葉にセイバーを見上げるアスラン。
「急な話だが、すぐに心を決めてくれとは言わんよ。だが、君にできること、君が望むこと、それは君自身が一番良く知っているはずだ。」アスランの元を離れるデュランダル。一人残されるアスラン。

ホテルに戻ると、そのロビーにはラクスの姿があった。「ああ。」アスランを見つけたラクス。走り寄ってきてアスランに抱きつくラクス。「おかえりなさい。ずっと待ってましたのよ。」「ええっ?君、あの。」「ミーヤ、ミーヤ・キャメル。でも、他の誰かが居る時はラクスと呼んでね。」こっそりウィンクをするミーヤ。「ふ。」疲れたように大きくため息をつき、その場を去ろうとするアスラン。だが、突然ミーヤに腕を掴まれる。「ねえ、ご飯まだでしょ。まだよね。一緒に食べましょ。」「えー、あの。」「アスランはラクスの婚約者でしょ。」「いや、それはもう。」どういいわけしようとも強引にミーヤに連れて行かれるアスラン。
ミーヤと食事をとることになったアスラン。「えーとアスランが好きなのはお肉?お魚?」ミーヤを見ながらラクスのことを思い出すアスラン。そこで突如ミーヤがアスランに聞いてくる。「あっ、そうだ。今日の私の演説見てくれました?」「えっ?」「どうでした?ちゃんと似てましたか?」視線をそらすアスラン。「駄目、でしたか。」急に元気をなくすミーヤ。「ああ、いや。そんなことはないけど。」「えー、本当に?」再び元気になるミーヤ。「あーよく似ていたよ。あーほとんど本物と変わらないくらいにね。」面倒くさそうに答えるアスランだったが、素直に喜ぶミーヤ。「ぃやー、嬉しい。良かったぁ。アスランにそう言ってもらえたら、私本当に。」困ったという顔をするアスラン。
食事が始まる。遠くの町並みを見つめるアスラン。「私ね、本当はずっとラクスさんのファンだったんです。」そのミーヤに驚き、視線を向けるアスラン。「彼女の歌も好きで良く歌ってて、そのころから声も似ているって言われてたんだけど、そしたらある日急に議長に呼ばれて。」「それでこんなことを。」「はい。今、君の力が必要だって。プラントの為に。だから。」アスランの脳裏に一瞬デュランダルの顔がよぎる。「君のじゃないだろ。ラクスだ。必要なのは。」「そうですけど。今は。」落ち込むミーヤ。「ううん、今だけじゃないですよね。ラクスさんは何時だって必要なんです。みんなに。強くて、綺麗で、優しくて。ミーヤは別に誰にも必要じゃないけど、だから今だけでもいいんです。私は。」なんと答えて良いのか言葉が見つからない様子のアスラン。「今いらっしゃらないラクスさんの代わりに、議長やみんなのためのお手伝いができたら、それだけで嬉しい。アスランに会えて本当に嬉しい。アスランはラクスさんのことはいろいろと知って居るんでしょ。なら教えてください。いつもどんな風なのか。どんなことが好きなのか。えーとあと苦手なものとか、得意なものとか。」ミーヤの声が遠くなっていく。アスランは次々とデュランダルやルナマリア、タリア、ユウナの自分に向けられた言葉を思い出していた。そしてシンの言葉。「あなたもまた戻るんですか、オーブへ。何でです。そこで何をしているんです?あなたは。」ワイングラスを乱暴にテーブルに置くアスラン。びっくりするミーヤ。遠くを見つめるアスラン。思い出されるセイバーの機体。「だが、君にできること、君が望むこと、それは君自身が一番良く知っているはずだ。」リフレインするデュランダルの言葉。
PHASE - 11 選びし道 ブルーコスモスのメンバーに問いつめられるジブリール。プラントとの戦争が思わしくないためである。ザフト軍カーペンタリア基地への攻撃隊も、先の核攻撃失敗の影響で未だ待機のまま。明かにジブリールが開戦前に描いていたシナリオに狂いが生じていた。が、ジブリール非難の言葉に真っ向から立ち向かうジブリール。「ふざけたことをおっやいますな。この戦争、ますます勝たねばならなくなったというのに。我らの核を一瞬にして消滅させたあの兵器。あんなものを持つ馬鹿者が宇宙にいて、一体どうして安心していられるのです。戦いは続けますよ。以前のプランに戻し、それよりもっと強化してね。今度こそ奴らをたたきのめし、その力を完全に奪い去るまで。」
 
一方、プラントでは、ある一つの重大な決断を行っていた。評議会で発言するデュランダル。「では、プラント評議最高会は、議員全員の賛同により、国防委員会より提出の案件を了承する。しかし、これはあくまでも積極的自衛権の行使だということを、決して忘れないでいただきたい。感情を暴走させ、過度に戦火を拡大させてしまったら、先の大戦の繰り返しです。今再び手に取るその銃は、今度こそすべての戦いを終わらせるものにならんことを、切に願います。」
 
オーブ行政府。カガリの怒号が上がっていた。「駄目だ、駄目だ、駄目だ。冗談ではない。なんと言われようと、今こんな同盟を締結などできるか。」そのカガリを説得しようとするウナト。「しかし、代表。」が、カガリの言葉は続く。「大西洋連邦が何をしたか、お前達だってその目で見ただろう?一方的な宣戦布告、そして核攻撃だぞ。そんな国との安全保障など。そもそも今、世界の安全を脅かしているのは、当の大西洋連邦ではないか。なのになぜ、それと手を取り合わねばならない。」紛糾する議会。
立ち上がるユウナ。「そのような子供じみた主張は止めて頂きたい。」カガリの勢いが止まる。「なぜ、と言われるのならお答えしましょう。そんな国だからですよ。代表。大西洋連邦のやり方は確かに強引でしょう。そのようなこと、失礼ながら今更代表におっしゃっていただかなくとも、我らも十分承知しております。しかし、だから、では、オーブは今後どうしていくと代表はおっしゃるのですか?この同盟をはねのけ、地球の国々とは手を取り合わず、宇宙に遠く離れたプラントを友と呼び、この星の上でまた一国、孤立しようとでも言うのですか?」「違う。」ユウナの言葉を否定するカガリ。「自国さえ平和で安全ならそれで良い。被災して苦しむ他の国々に手すら差し伸べないとおっしゃるのですか。」「違う。」「では、どうするとおっしゃるのです。」答えに詰まるカガリ。「オーブは・・オーブはずっとそうであったように、中立、独自の道を・・」「そしてまた国を焼くのですか?ウズミ様のように。」思い出す前大戦の苦い記憶。そしてカガリに向けられたシンの憎しみをこめた瞳。
それを振り払うかのように、机に手のひらをたたきつけるカガリ。その左薬指にはアスランからもらった指輪がある。「そんなことは言っていない。」
「しかし、下手をすればこの状況。再びそのようなことにもなりかねませんぞ。」ウナトが静かに言う。何も答えないカガリ。「代表。平和と安全を望む気持ちは、我らとてみな同じです。だからこそこの同盟の締結をと申し上げている。」「ウナト。」「大西洋連邦は何も、いまオーブをどうこうしようと言っているのではありません。しかし、このまま進めばどうなります。同盟で済めば、まだその方が良いと何故お考えになれませぬ。意地を張り、むやみに敵を作り、あの大国を敵に回す方がどれだけ危険か。おわかりにならぬはずはないでしょう。」「だが。」カガリの反論に構わず続けるウナト。「我々が二度としてはならぬこと。それはこの国を再び焼くことです。」そう言われ、返す言葉がないカガリ。「伝統や正義、正論などよりもどうか、今の国と国民のことをお考えください。代表。」
議会散会。カガリはうなだれて部屋を後にする。そのカガリを呼び止めるユウナ。立ち止まるカガリ。「大丈夫か?だいぶ疲れているみたいだ。」大きなため息をつくカガリ。そして歩き出す。ユウナもその後を追う。「さっきは悪かったねぇ。でもあそこで君にきちんと意見を言うのも、僕の役目だ。」「ああ、わかっている。そんなことは。私はまだまだ至らないだけだ。」その2人の様子を後ろからうかがうウナト。「ふん」と鼻で笑い、そしてその場を後にする。「こんなことでは、また市長達に笑われてしまうな。」「大丈夫だよ。みんなもわかっている。ただ、今度のこの問題が大きすぎるだけだ。君には。マッシも、何もウズミさんを悪く言いたい訳ではない。ただ、その娘である君が、また同じ事をするのかと心配しているんだ。」「わかってるよ。」「さぁ、ともかく少し休んで。」カガリを椅子に座らせるユウナ。「何か飲むかい?それとも何か食べる?」「いや、大丈夫だ。ありがとう。」カガリの前に跪き、膝に手をやるユウナ。「可哀想に。君はまだ、ほんの18の女の子だっていうのにね。」ユウナの手が、カガリの前髪を持ち上げる。「いや、大丈夫だよ。僕がついているから、ね。」甘くささやくようなユウナの口調。キスをしようと顔を近づけるユウナ。それを拒否するかのように目をつぶるカガリ。ユウナはカガリのおでこに軽く口づけをする。おでこに手をやり当惑したような顔のカガリ。その左手にはまっている指輪をユウナは見逃すはずがなかった。
 
カーペンタリアからの連絡がなく、オーブで足止めを食っているミネルバ。アーサーはタリアに既に開戦しているのであるから、ミネルバは動くべきだと進言する。だが、動くことに慎重な姿勢をとるタリア。シン達が食事をとっているところに現れ、アーサーに今しばらく動かず様子を見ることを話すタリア。「今、本艦が下手に動いたら、変な刺激になりかねないわ。火種になりたいの?あなたは。」「いえぇ。そんな。」「情勢が不安定ならなおのこと、艦の状態には万全を期すべきだわ。幸い、オーブは未だ地球軍陣営じゃないんだし。もう少し事態の推移を見てからでも遅くはないでしょう、出航は。軍本部からは何も言ってきてないんだし。」「はぁ。まだですかね。」「でしょうね。いつまでかは知らないけれど。」

その頃、地球軌道上では、ザフト軍が地球降下作戦を開始すべく、展開を急いでいた。それを指揮するザフト軍軍事ステーション。「第一派で、現在包囲されているジブラルタルとカーペンタリアから地球軍を追い払うというのは良いとしましても、その後は。」「さぁて、どうなるかな。無論、我々とて、先の大戦のような戦争を再びやりたいというのではない。国民感情を納得させられるだけのうまい落としどころを見つけ、戦闘を終結させて、後は政治上の駆け引き、ということになるのだろうが、またも核を撃ってきたナチュラルに対する憎しみは、もはや消えんだろうな。」「そうですな。」「議長のお手並み拝見ということになるか、その後は。」
「やっぱりそうだよなぁ。プラントとしては。」ニュースを聴いていたバルトフェルドが声を上げる。地球降下作戦が開始されようとしているザフト軍の動きをキャッチしてのことである。
 
ホテル滞在中のアスランの部屋。呼び鈴がなる。ドアを開けるとイザークの顔。「貴様。」いきなりアスランの胸ぐらをつかむイザーク。「一体これはどういうことだ。」「ちょ・ちょっと待てよ。」イザークに続き、ディアッカもアスランの部屋に入ってくる。イザークの手を払いのける。「何だって言うんだ、一体。」「それはこっちのセリフだ、アスラン。俺たちは今むちゃくちゃ忙しいっていうのに、評議会に呼び出されて何かと思って来てみれば、貴様の護衛・監視だと?」「え?」イザークの言葉に驚くアスラン。「何でこの俺がそんな仕事のために、前線から呼び戻されねばならん。」「護衛・監視?」「外出を希望してるんだろ。お前。」「ディアッカ。」「おひさし。けど、こんな時期だから、いっくら友好国の人間でも、勝手にプラント内をうろうろとできないんだろう?」「あ、ああ。それは聞いている。誰か同行者がつくと。でも、それが。お前?」その言葉に怒りを露わにするイザーク。「そうだ。ふん。」
部屋を出て、エレベータに乗る3人。「まあ、事情を知っている誰かが仕組んだってことだよな。」アスランに話すディアッカ。その言葉にデュランダル議長の顔を思い浮かべるアスラン。「それで、どこ行きたいんだよ。」「これで買い物とか言ったら、俺は許さんからな。」「そんなんじゃないよ。ただちょっと、ニコル達の墓に。」アスランのその言葉に足を止める2人。「あまり来られないからな。プラントには。だから行っておきたいと思っただけなんだ。」
ニコルの墓参りをするアスラン。花を置き、敬礼を送るアスラン、そして2人。「積極的自衛権の行使?やはりザフトも動くのか。」イザークから聞いた情報を確認するアスラン。「仕方なかろう。核まで撃たれて、それで何もしないという訳にはいかん。」「第一派攻撃の時も迎撃に出たけどな、俺たちは。奴ら、間違えなくあれで、プラントを壊滅させる気だったと思うぜ。」「で、貴様は?」イザークの問いに「えっ?」と聞き返すアスラン。「何をやっているんだ。こんなところで。オーブが、どう動く。」「まだ分からない。」そのアスランの言葉に「ふん」とそっぽを向くイザーク。「戻ってこい、アスラン。」イザークの言葉に動揺するアスラン。「事情はあるだろうが、俺が何とかしてやる。だから、プラントに戻ってこい。俺は。」「いや、しかし。」「俺だって、こいつだって、本当はとっくに死んだはずの身だ。だが、デュランダル議長はこう言った。『大人達の都合で始めた戦争に、若者を送って死なせ、そこで誤ったのを罪と言って今また彼らを処分してしまっては、一体、誰が未来のプラントを担うというのです。辛い経験をした彼ら達にこそ、私は平和な未来を築いてもらいたい。』だから、俺は今も軍服を着ている。それしかできることもないが、それでも何かできるだろう。プラントや、死んでいった仲間達のために。」「イザーク。」「だからお前も何かしろ。それほどの力、ただ無駄にする気か。」
 
ザフト軍の降下作戦開始の動きを見極め、ウナトは大西洋連邦との同盟締結を決意する。と同時にユウナにカガリへの説得が大丈夫かどうかを確認する。自信あり気なユウナ。その動きを察知したバルトフェルド。「タイムリミットだ。」ミネルバへの秘密通信を開始する。「ミネルバ聞こえるか?もう猶予は無い。ザフトはまもなく・・・揚陸作戦を開始するだろう。そうなるのも、もう・・ままではいまい。白に挟まれた駒は、ひっくり返って黒になる。脱出しろ。そうなる前に。聞こえるか、ミネルバ。」その通信に答えるタリア。「ミネルバ艦長、タリア・グラディスよ。あなたは?どういうことなの?この通信は。」「おー、これはこれは。声が聞けて嬉しいね。初めまして。どうもこうも言った通りだ。のんびりしていると面倒なことになるぞ。」「匿名の情報など、正規軍が信じるはずもないでしょ。あなた、誰?その目的は?」「んー、アンドリュー・バルトフェルドって奴を知ってるか?これはそいつからの伝言だ。」それを聞いて思わず吹き出すラミアス。「砂漠の虎。」思わず口に出すタリア。「ともかく警告は発した。降下作戦が始まれば、大西洋連邦との同盟の締結が押し切られるだろう。アスハ代表が頑張ってはいるがな。とどまることを選ぶのならそれもいい。後は君の判断だ。艦長。幸運を祈る。」通信が切れる。タリアは決断を迫られていた。

議会ではカガリが肩を落としていた。「そんな。」「積極的自衛権の行使、などと言ってはいますが、戦争は生き物です。放たれた火がどこまで広がってしまうかなど誰にも分かりません。我らは大西洋連邦との同盟条約を締結します。」そのユウナの言葉に顔を上げるカガリ。「再び国を焼くという悲劇を繰り返さぬためにも。」カガリには、もう何も言い返せる言葉が無かった。うなだれるカガリ。
 
タリアは決断した。「いいわ。命令無きままだけど、ミネルバは明朝出航します。全艦に通達。出れば遠からず戦闘になるわ。気を引き締めるようにね。」
翌朝、ミネルバが出航準備のさなか、カガリが訪れていた。艦内でカガリと出くわすシン。「何しに来た。」シンの言葉に顔をそむけるカガリ。「あの時オーブを攻めた地球軍が、今度は同盟か。どこまでいい加減で身勝手なんだ。あんた達は。」「いや、これは。」弁解しようとするカガリ。だが、そんなことをシンが受け入れるはずもない。「敵に回るっていうのなら、今度は俺が滅ぼしてやる。こんな国。」わざとカガリにぶつかり、その場を立ち去るシン。「シン。」カガリは呼び止めようとするが、シンはそれに答えるはずもない。その後をルナマリア、レイが後を追う。
ミネルバ発進。静かにオーブ、モルゲンレーテのドックを後にする。見送るカガリ。先ほどのタリアとの会談を思い出しながら。

代表室に戻ったカガリを慰めるユウナ。「仕方ないよカガリ。政治は理想じゃない、現実だ。君はよく頑張った。突然代表に請われて、国民は皆、君のことが大好きだ。」「ユウナ。」「だからもう、楽におなり。」カガリの左手に手を添えるユウナ。「僕がいるよ。君を支える。夫として。」その言葉に驚くカガリ。「結婚式を急ごう。君の為にも、国民の為にも。それが一番良い。」「ああ・・ユウナ、それは。」「新しく生まれ変わるんだよ。君も、オーブもね。」
 
そのころ、アスランは1本の電話をしていた。「はい、デュランダル議長に、アポイントを。」
PHASE - 12 血に染まる海 「オペレーション、スピア・オブ・トワイライト」ザフト軍の地球降下作戦が開始された。降下カプセルより続々と離脱するザク。そのザクを打ち落とすべく、スクランブルで出撃するウィンダム。壮絶な空中戦が始まった。
その頃ミネルバ出航の知らせが、オーブの戦闘指揮所にもたらされていた。何故か、その指揮所にいるユウナ。「かなりの高速艦ということだからな。領海を出るのもすぐだろう。あちらへの連絡は?」「はっ、すでに。」「こちらの配備は終わっているな。」「はい。」「ふん、さぁて、どうなることかな。」

オーブ領海をまもなく出ようとしていたミネルバ。「本艦前方20に多数の熱紋反応。」その言葉にはっとなるタリアとアーサー。「これは、地球軍艦隊です。」地球軍の待ち伏せをくらった、ミネルバ。地球軍の各艦艇のモビルスーツ格納庫のハッチが次々と開いていく。「どういうことですか、オーブの領海を出た途端に、こんな。」「本艦を待ち受けていたということか?地球軍はみな、カーペンタリアじゃなかったのかよ。」愚痴るブリッジスタッフ。そこに新たな情報が寄せられる。「後方オーブ領海にオーブ艦隊。展開中です。」ミネルバの後ろにはオーブ艦隊が並び、砲塔がミネルバをとらえていた。「砲塔旋回。本艦を狙っています。」その言葉に口を真一文字にし、苦悩の表情を浮かべるタリア。「そんな、なぜ。」アーサーの問いに答えるかのようにつぶやくタリア。「領海内に戻ることは許さないと。つまりはそういうことよ。」驚きの表情のままのアーサー。「どうやら土産か何かにされたようね。正式な条約締結はまだでしょうに。やってくれるわね。オーブも。」「艦長。」迷いを打ち消すかのように首を振るタリア。「あーん、もう。あーだこーだ言ってもしょうがない。コンディションレッド・発令。ブリッジ遮蔽。対艦・対モビルスーツ戦闘用意。」そして未だタリアの後ろで呆然としているアーサーに、活を入れるかの如く、言う。「大気圏内戦闘よ、アーサー。分かっているわね。」「は、はい。」タリアの言葉に姿勢を正すアーサー。ブリッジが沈み、遮蔽される。
突然のレッド発令にとまどうシン達。状況がわからないままも、とにかくモビルスーツへと急ぐ。「艦長、タリア・グラディスよりミネルバ全クルーへ。現在、本艦の前面には、空母4隻を含む地球軍艦隊が、そして後方には自国の領海警護と思われるオーブ軍艦隊が展開中である。地球軍は本艦出航を知り網を張っていたと思われる。また、オーブは後方のドアを閉めている。我々には前方の地球軍艦隊の突破の他に活路はない。これより開始される戦闘は、かつてない程に厳しいものになると思われるが、本艦はなんとしてもこれを突破しなければならない。このミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する。」艦長の艦内放送に、動揺する間もなく、程なく始まる戦闘の準備をするミネルバクルー。シン達はモビルスーツコクピットへ。ミネルバの各砲門がせり上がり、砲弾が装填される。「シンには発進後、あまり船から離れるなと言って。レイとルナは甲板から上空のモビルスーツを狙撃。」タリアの指示に「はい」と返事をするメイリン。「リゾルデとリスタンは左舷の巡洋艦に火力を集中。左を突破する。」

シンのコアスプレンダーが発進。程なくレイとルナマリアのザクが甲板に降り立つ。シンはフォースインパルスに換装を終えるや否や、「行けー」と地球軍モビルスーツ編隊に特攻をかけていく。フォースインパルスとウィンダム編隊の戦闘開始が口火となり、地球軍艦隊がミネルバへの砲撃を開始。ミネルバも応戦。奮闘するミネルバであるが、なにぶん数が多すぎる。「こんなことで、やられてたまるかぁー。」ウィンダムに囲まれながら奮戦するシン。
 
キラは海岸より遠く海を見つめていた。沖からも見える戦闘の光。「どうしましたか。キラ。」後ろから近寄るラクス。「誰かが泣いている。また。」「えっ?」「なんでだろう。なんでまた。」
 
「5時の方向よりミサイル接近、多数。」「回避、面舵20。迎撃。」いくらミサイルを打ち落とし、そしてモビルスーツを撃墜しても、後から後から飛来してくる。被弾激しいミネルバ。そしてルナマリアもついに泣きが入った。「ちょっと、あの数。冗談じゃないわよ。」「余計な口、きいている暇があるのか。」ルナマリアのその言葉を叱るレイ。
 
地球軍艦隊旗艦では、新型モビルアーマー、ザムザザーの投入機会を伺っていた。「なるほど、確かになかなかやる船だな。ザムザザーはどうした?あまりに獲物が弱ってからでは、効果的なデモはとれんぞ。」「はっ、準備が出来次第、発進させます。」「身びいきかもしれんがね。私はこれからの主力は、ああいった新型のモビルアーマーだと思っている。ザフトの真似をして作った蚊とんぼのようなモビルスーツよりもな。」
直ちに出撃するザムザザー。その機影は程なくミネルバのレーダーでも捉えられていた。「アンノウン接近。これは・・」「光額映像、出ます。」「なんだあれは?」「モビルアーマー?」「あんなにでかい。」「あんなのに取り付かれたら終わりだわ。アーサー、タンホイザー起動。あれと共に左前方の艦隊をなぎ払う。」タリアの指示に驚くアーサー。「えっー?」「沈みたいの?」「は、はい。いいえ。タンホイザー起動。斜線軸コントロール、移行。照準、敵モビルアーマー。」タンホイザーに灯がともる。
「敵艦、陽電子砲発射態勢確認。」「陽電子リフレクター、展開準備。」「敵艦に向け、リフレクション姿勢。」逆立ちをした格好になり、ミネルバに対して背中を向けるような姿勢となるザムザザー。なにやらバリアーのようなものが展開される。
「撃てー。」発射されるタンホイザー。だが、ザムザザーのリフレクターにより、その威力が打ち消される。健在なままの地球軍艦隊。そしてザムザザー。「タンホイザーを。そんな・・跳ね返した。」驚きを隠せないシン。
「取り舵20。機関最大。トリスタン標準。左舷敵戦艦。」タリアの指示にアーサーが意見する。「でも、艦長。どうするんです、あれ。」そのトンチンカンとも思える質問にややヒステリックがかった口調で「あなたも考えなさい。」と答えるタリア。「マイク、回避任せる。メイリン、シンは?戻れる。」すぐに冷静な口調に戻り、指示を出すタリア。「あっ、はい。」

近づくザムザザー。ミネルバへの攻撃を行うためにせり上がる砲塔。そこにシンのインパルスが舞い戻る。ビームサーベルの攻撃をかわすザムザザー。「くそー、なんなんだよ。こいつは。」旋回するインパルス。それに対してクローを展開するザムザザー。「そのひ弱なボディー、引き裂いてくれるわ。」インパルスを追い回すザムザザー。

その戦闘の様子が逐一送られてきているオーブ軍戦闘指揮所。ユウナもその情報を見つめていた。「何をしている。」そこに入ってきたカガリ。「ユウナ、これはどういうことだ。ミネルバが、戦っているのか?地球軍と。」「そうだよ。オーブの領海の外でね。」「あんな大群相手に。」「心配いらないよ、カガリ。既に領海線に護衛艦を出してある。領海の外と言っても、だいぶ近いからね。困ったもんだよ。」「領海に入れさせない気か?ミネルバを。あれでは逃げ場も何も。」「だが、それがオーブのルールだろ?それに正式に調印は未だとは言え、我々は既に大西洋連邦との同盟条約締結を決めたんだ。なら、今ここで我々がどんな姿勢をとるべきか、そのくらいのことは君にだってわかるだろ?」「しかし、あの船は。」「あれはザフトの船だ。まもなく盟友となる大西洋連邦が敵対している、ね。」
 
インパルスの攻撃をもろともしないザムザザー。「なんて火力とパワーだよ。こいつは。」そこに響くエネルギーアラーム。「インパルスのエネルギー、危険域です。」メイリンがタリアに報告する。「7時の方向にモビルスーツ、4。」ルナマリアやレイも既に限界に近づきつつあった。必死でモビルスーツを打ち落とすレイ、ルナマリア。だが、逃げるミネルバは自然とオーブの領海に近づいていた。
「ミネルバ、領海線へさらに接近。このまま行けば、数分で侵犯します。」この報告にユウナは指示を出す。「警告後威嚇射撃。領海に入れてはならん。それでも止まらないようなら、攻撃も許可する。」「ユウナ!」ユウナの言葉を制止ようとするカガリ。「国はあなたのおもちゃではない。いい加減、感傷でものを言うのは止めなさい。」指揮所の中でユウナの怒号がこだまする。
 
「以前、国を焼いた軍に味方し、懸命に地球を救おうとしてくれた船を撃て、か。こういうのを恩知らずって言うんじゃないかと思うんだがね。俺は。政治の世界にはない言葉かもしれんが。」一人ぼやくオーブ軍護衛艦隊司令官。「警告開始。砲はミネルバの艦首前方に向けろ。絶対に当てるなよ。」「はい。」「司令、それでは命令に。」「ちっ、俺は政治家じゃないんだよ。」
ミネルバへの警告が始まる。「ザフト軍艦ミネルバに告ぐ。貴艦はオーブ連合首長国の領域に接近中である。我が国は貴艦の領域への侵入を認めない。速やかに転針されたし。」この警告に驚くミネルバブリッジ。「艦長。」アーサーの問いかけ、「でも、今転針したら確実に沈むわ。進路そのまま。ぎりぎりまで逃げなさい。」
そのミネルバの様子に、司令官を伺うオーブの乗組員。静かに頷くだけの司令官。「主砲、撃てぃー。」オーブの各護衛艦より主砲がミネルバ前方へと発射される。

「オーブが、本気で。」ミネルバ前方に着弾する砲の行方を見ているシン。その時、インパルスの右足が、ザムザザーのクローに捕まった。「しまった。」言うが遅く、インパルスはザムザザーに引きずられる。その時、エネルギーも急速に低下。フェイズシフトアウトしてしまうインパルス。右足も引きちぎられ、インパルスは海へと落下する。気が遠のいていくシン。
シンの中で、オーブ時代家族と逃げたことや、カガリとの衝突、ユリウスセブンでの戦闘と走馬燈のように出来事が走り抜ける。そして最後に浮かぶ妹の顔。「こんなことで、こんなことで、俺は。」

シンの中のシードが覚醒する。

スラスターを全開にするシン。その様子を見て「まだ、落ちないかー。」とザムザザーの攻撃が再びインパルスを襲う。その攻撃を間一髪で回避するインパルス。「ミネルバ、メイリン。デュートリオンビームを。それからレッグフライヤー、ソードシルエットを射出準備。」「シン。」「早く、やれるな。」「は、はい。」メイリンはそう答えたものの、本当にやっていいのかわからず、タリアの方を見る。「指示に従って。」タリアはメイリンに言う。「はい。デュートリオンチェンバースタンバイ。測敵追尾システム、インパルスを捕捉しました。デュートリオンビーム、照射。」ミネルバよりインパルスに向け、デュートリオンビームが発射される。エネルギーがチャージされ、フェイズシフトが復活するインパルス。ビームサーベルを振りかざし、ザムザザーに一直線に向かっていく。「撃てー」ザムザザーの攻撃。シンはインパルスの盾で身を隠し、特攻をかける。そして、ザムザザーのコクピットに向け、ビームサーベルを突き刺す。爆発し、墜落するザムザザー。
「シルエットの射出。」シンの声に「はい。」と答えるメイリン。すぐにレッグフライヤーとソードシルエットが射出される。ソードへの換装をすませ、地球軍戦艦の甲板に降り立とうとするインパルス。地球軍の対空攻撃をものともせず、戦艦に降り立ち、ソードで叩き切っていくシン。そのシンのすさまじさに、ただ呆然とするミネルバブリッジ、そしてルナマリア達。

空母が沈み、戦意喪失の地球軍は撤退を開始せざるを得なかった。「あれは。」ただすさまじい攻撃をしたインパルスを指揮所で見つめていたカガリ。そこに「地球軍、撤退します。」という知らせが告げられた。

プラント。アスランはザフトの赤服を身にまとい、デュランダル議長に謁見していた。ザフトの赤服姿を見て、「わぁー」と声を上げるミーヤ。「これを」デュランダルが差し出す箱。そこにはFEITHの紋章が入っていた。「これはFEITHの。」「君を通常の指揮形態の中に組み込みたくはないし、君とて困るだろう。そのための便宜上の措置だよ。忠誠を誓うって意味の部隊、FEITHだがね。君は己の信念や真意に忠誠を誓ってくれればいい。」「議長。」「君は自分の信ずるところに従い、今に脱することがある。また必要な時には戦っていくことができる人間だろう?」「そうでありたいと思ってはいますが。」「君にならできるさ。だからその力をどうか必要な時には使ってくれたまえ。巧妙な言い方だが、ザフト・プラントの為だけではなく、皆が平和に暮らせる未来の為に。」FEITHの紋章を受け取るアスラン。「はい。」「オーブの情勢も気になるところだろうから、君はこのままミネルバに合流してくれたまえ。あの船に私は期待している。以前のアークエンジェルのような役割を果たしてくれるんじゃないかとね。君も、それに手を貸してやってくれたまえ。」

出撃準備の整うセイバー。スラスター全開。「アスラン・ザラ、セイバー、発進する。」プラントを後にするセイバー。
PHASE - 13 よみがえる翼 シンの覚醒により、何とか窮地を脱したミネルバ。当面の追撃は無いと判断したタリア。ミネルバ各所の被害状況を報告され、一息つこうという考え。アーサーに先ほどのシンの働きについて話しかける。
「でも、こうして切り抜けられたのは、間違えなくシンのおかげね。」アーサーもその話をしたかったらしく、タリアの話に乗ってくる。「ええ。信じられませんよ。空母2隻を含む敵艦6隻ですからね、6隻。そんな数、僕は聞いたこともありません。」
ミネルバに戻ったシンは、アーサーの言葉通り英雄となっていた。コクピットから降りるシンを待ちかまえるヴィーノを始めとするメカマン、そしてルナマリアやレイ。たいそうな歓迎ぶりだ。
「もう、間違えなく勲章ものですよ。」アーサーの話は続く。「でも、あれがインパルス、というかあの子の力なのね。」「えっ?」タリアの言葉が呑み込めない様子のアーサー。「なぜレイではなく、シンのあの機体が預けられたのか、ずっと、ちょっと不思議だったけど、まさかここまで分かってたってことなのかしら、デュランダル議長は。」「かもしれませんね。議長はDNA解析の専門家でもいらっしゃいますから。いやぁー、それにしてもすごかったです。あの状況を突破できるとは、正直言って自分も、噂に聞くヤキン・ドゥーエのフリーダムだって、ここまでじゃないでしょう。ふふん。」自分のことのように喜ぶアーサー。「カーペンタリアに入ったら、報告と共に叙勲の申請をしなくてはならないわね。軍本部もさぞ驚くことでしょうから。」アーサーの喜びに答えるかのようなタリア。

シンを取り巻くメカマン達は仕事に戻らされ、ようやくシンは解放され、自室に戻れる状態となった。ルナマリアが追ってくる。「けど、本当どうしちゃったわけ?なんか、急にスーパー・エース級じゃない。火事場の馬鹿力って奴?」「さぁ、なんかよく分からないよ。自分でも。オーブ艦が発砲したのを見て、頭にきて、こんなんでやられてたまるかって思ったら、急に頭んなかクリアになって。。」シンも自分がどうしてあんなことができたのかが理解できていない様子。「ふーん、ぶち切れたってこと?」「いや、そういうことじゃ・・ないよ。」「なんにせよお前が船を守った。」後ろからシン達に追いついたレイが話しかける。「生きているということは、それだけで価値がある。明日があるということだからな。」シンの左肩をポンと叩き、先にデッキを出て行くレイ。レイからお褒めの言葉をいただき、シンとルナマリアはお互いに顔を見合わせ、微笑む。

オーブ国内では、オーブが世界安全保障機構へ加盟するというニュースが流されていた。その加盟が自分の意志に反してのものだったカガリ。一人追悼碑に来て、父親であるウズハの言葉、そしてそのウズハの考えと異なるウナトやユウナの言葉を思い出す。自分の信念を貫けなかったことを悔やみ、そして自分の力不足について自責の念にかられるカガリ。そこに現れるユウナ。追悼碑に一礼するが、その態度はカガリをあざ笑うかのような態度。
官邸に戻る車中。ユウナはカガリとの結婚を同盟条約締結と時を同じくして行うことを告げる。驚き、そして何とか抵抗をしようとするカガリ。だが、国の不安定な情勢を沈めるために効果的であると言われると、何とも言い返せる言葉が無くなるカガリ。さらにカガリの左手薬指にはめられた指輪をいじりながら、アスラン達コーディネータとは生きるべき世界が違うのだと迫るユウナ。アスランとの道を選び国民にそれを発表するか、アスハの名前を持ちながらも国や責任を捨て、オーブを出てアスランと共に生きるかと。代表として生きていくのであれば、アスランも、そしてキラもオーブに置いておく訳にはいかないのだと言うユウナの言葉に、何も返す言葉を持たないカガリは、ただ窓の外を見つめるしか無かった。

そんなユウナの考えを当然察知していた人もいる。ラミアスとバルトフェルドである。テラスでコーヒーを飲みながら、ラミアスと今後を話すバルトフェルド。「君らはともかく、俺やキラやラクスは、引っ越しの準備をした方がいいかもしれんな。」「プラントへ。」「そこしか無くなっちまいそうだな。このままだと。俺たちコーディネーターの住める場所は。」しばし、沈黙の2人。その沈黙をいやがるかのようにバルトフェルドがラミアスに話しかける。「あー、いや、あー、良ければ君も一緒に。」「えっ?」バルトフェルドのその言葉はラミアスは予期していなかったようだ。驚くラミアス。「まあ、あんな宣戦布告を受けた後だ。今はまだプラントの市民感情も荒れているだろうが、デュランダル議長は割としっかりした、まともな人間らしいからな。馬鹿みたいなナチュラル排斥みたいなことはしないだろう。」考え込むラミアス。「どこかで、ただ平和で暮らせて、死んでいければ。。。一番幸せなのにね。まだ、何が欲しいっていうのかしら。私たちは。」

だが、キラ達がオーブから出て行かなければならない事態が起きる。ラクス達の住む家の海岸線に、深夜、上陸するザフト特殊部隊。目的はラクス・クラインの暗殺である。「いいか、彼女の死の痕跡は決して現場に残すな。だが、確実に仕留めるんだ。」ラクス達の家に急ぐ十数名の特殊部隊。ラクスの家を取り囲んだ頃、ハロが反応する。ハロの反応に目を覚まし、異変を感じたラミアス、バルトフェルド、そしてキラ。
バルトフェルドとラミアスは段取りを決め、ラミアスはラクス達援護のため、彼女らの部屋に、バルトフェルドは家への侵入の時間稼ぎをするため、1階へと急ぐ。バルトフェルドが1階へ向かおうとした時、キラが部屋から出てくる。銃を持ったバルトフェルドにただならぬ状況が起きていることを感じ取るキラ。「どうしたんですか?」とバルトフェルドに尋ねるキラ。「早く服を着ろ。嫌なお客さんだぞ。ラミアス艦長とともにラクス達を。」「あ、はい。」
「ラクスさん。」ラミアスの言葉に起こされるラクス。そしてそこに一緒に寝ていた子供達も起きる。そして服を着替えたキラがマルキオ達とともに「ラクス」と部屋に入ってきたとき、ガラスの割れる音がする。バルトフェルドが特殊部隊の1人を射殺した音だ。始まる銃撃戦。ラミアスの援護の下、ラクス達をシェルターへ避難させるキラ。程なく避難するラクス達の所にも特殊部隊の攻撃が始まった。ラクス達の殿をつとめ、攻撃を食い止めるラミアス。
1階を死守していたバルトフェルドは激しい銃撃に耐えきれず、部屋を移動しようと、奥に退く。そこに待っていた兵士1名。バルトフェルドの左腕に突き刺さるナイフ。その兵士を蹴り倒し、左腕の隠し銃で兵士を狙撃する。何事も無かったかのようにナイフの突き刺さった左腕をはめるバルトフェルド。兵士の肩についた無線より聞こえてくる指示。「目標は、子供と共にエリアEへ移動。武器は持っていない。護衛は女1人だ。早く仕留めろ。」かなりラクス達が追いつめられていると知るバルトフェルドは、ラクス達の所へ急ぐ。
バルトフェルドが合流した時、ちょうどマルキオがシェルターの鍵を開けたところだった。シェルターへと急ぐラクス達。キラ達の緊張感が一瞬とぎれる。その隙をつき、ラクスを狙撃しようとした銃弾が、ラクスに迫る。「ラクス!」キラがかばい、ラクスは無傷ですむ。
なんとかシェルターへ。バルトフェルドやラミアスも入り込み、ロックされたシェルターで一息をつく。座り込むラミアス。「コーディネーター共!」「ああ、それも素人じゃない。ちゃんと戦闘訓練を受けている連中だ。」「ザフト軍?ってことですか。」キラの質問にきびすを返すバルトフェルド。「コーディネーターの特殊部隊だなんて。最低。」そんなラミアスの肩をたたき、励ますバルトフェルド。「わからんがね。それが彼女を狙ってくるとはなぁ。」「でも、なんでラクスは?」「さぁな。」

シェルターに逃げ込み、どうすることも出来なくなった特殊部隊。ついにモビルスーツ、アッシュでの攻撃に切り替えた。シェルターでひたすら次の出方を待っているバルトフェルド達に、「キラ、バルトフェルド隊長、マリューさん。狙われたのは私なのですね。」とラクスが話しかけたその時、シェルターが激しく揺れる。奥へ奥へと逃げるラクス達。だが、アッシュの総攻撃で、シェルターは長く持ちそうもない。「狙われたというか、狙われているな、未だ。くそっ。」「モビルスーツ?」「おそらくな。何が何機いるかわからないが、火力のありったけで狙われたら、ここも長くは持たないぞ。」不安そうな子供達の姿を見て、バルトフェルドの焦りはさらに増す。
「ラクス、鍵は持っているな?」バルトフェルドの問いかけに顔を上げるラクス。「扉を開ける。仕方なかろう。それとも、今、みんなここでおとなしく死んでやった方がいいと思うか?」「いえ、それは。」と言いつつも鍵を渡したくない様子のラクス。ラクスの手を握っていたキラが優しく、ラクスに話しかける。「ラクス。」「キラ。」そしてラクスは扉の方を見つめる。だが、未だ開けるのをためらっている様子。
「貸して。」キラがラクスに言う。キラの方を向くラクス。
「なら、僕が開けるから。」
ラクスの前に両手を差し出すキラ。
「いえ、でも、これは。。」
「大丈夫。僕は。。大丈夫だから。ラクス。」
その言葉に泣きそうな顔で答えるラクス。「キラ。」
ラクスを抱き寄せるキラ。
「このまま君たちのことすら守れずに。。そんなことになる方がずっと辛い。」
「キラ。」2人を見守るバルトフェルド、ラミアス、子供達。
「だから、鍵を貸して。」
キラの言葉に、ハロの口が開く。現れた2本の鍵。

ついに扉は開かれた。
待ち受けるフリーダム。フリーダムにゆっくり進むキラ。それを見送るラクス。その目の前で扉が閉まる。不安でいっぱいのラクスを残し。。。
ついにシェルターの扉が破られた。さらに奥へ移動するラクス達。破壊した壁より侵攻しようとするアッシュ。そこに突如現れるフリーダム。「ん、なんだあれは。」「あれはまさか。。フリーダム?」「ええ。。。」
キラのSEEDが覚醒する。ビームサーベルを振りかざし、アッシュめがけて特攻をかけるフリーダム。だが、フリーダムの速さを捉えられるアッシュはいなかった。次々と稼働不能になるアッシュ。キラは、アッシュのコクピットを避けて攻撃をしていた。が、勝敗が決した時、すべてのアッシュは自爆。フリーダムの周りで幾重もの爆炎が上がる。
シェルターから出てきたラクス達が見たのは既に、アッシュを全機破壊したフリーダムの勇姿だった。が、その心境は複雑なものであった。 


2005. 1.16 Update

HomePage Back-IDX