機動戦士ガンダム SEED DESTINY

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PHASE - 14 〜 PHASE - 26(その2)

機動戦士ガンダム SEED DESTINYの題名及び内容概略一覧です。

デュランダルより託されたセイバーを持ち、ミネルバへ合流したアスラン。そしてオーブでの居場所が危うくなり、拉致したカガリとともにオーブを後にするアークエンジェル。この起きてしまった戦争を止めるべく、前大戦の活躍者達が動き出した。
果たしてこの世界の混乱を収拾できるのか?


PHASE - 14 明日への出航 キラのおかげで何とか危機を脱出したラクス達であった。自分達を襲ってきたモビルスーツ、アッシュに見覚えがあるバルトフェルド。「アッシュ?」ラミアスの問いにバルトフェルドが答える。「ああ、レードでしか知らんがね。だが、あれは最近ロールアウトしたばかりの機種だ。まだ正規軍にしかないはずだが。」「それが、ラクスさんを?と、いうことは。」ラクスは自分のせいで、キラ達を巻き添いにしてしまったことに対して、申し訳なさそうな顔をしている。「なんだかよくわからんが、プラントへお引っ越しっていうのも止めといた方が良さそうだ、ってことだな。」バルトフェルドが意見をまとめる。「でも、なぜ私が?」未だ疑問が解決できない様子のラクス。その問いによい答えを返せるのは、その場には誰もいなかった。
「まぁまぁ。」そこに現れるマーナ。「これを。」キラに渡す1通の手紙。「カガリお嬢様から、キラ様にと。」「えっ?」事態がよく飲み込めない様子のキラ。「お嬢様は、もう自分でこちらにお出かけになることすら叶わなくなりましたので。マーナがこっそり預かって参りました。」「何?どうかされたのカガリさん?」「お怪我でもされたのですか?」矢継ぎ早に質問を浴びせるラミアス、ラクス。「いいえ、お元気でおいらっしゃいますよ。ただ、もう結婚式のために、セイラン家にお入りになりまして。。」言うのが辛そうなマーナ。そしてその言葉に驚くみんな。「ええ?」「お式まではあちらのお宅にお預かり、そのままどうなることか、このマーナにも分からない状態なのでございます。ええ、そりゃぁもう、ユウナ様とのことは、ご幼少の頃から決まっていたようなものですから、マーナだって、カガリ様さえおよろしければ、それは心からお喜び申し上げることですよ。でも、この度のセイランのやりようと言ったら、それもこれも何かと言うとご両親様がいらっしゃらないのに、こちらでとばかりでとばかりで。」興奮したマーナは、バルトフェルドににじり寄る。困った様子のバルトフェルド。キラはカガリからの手紙を開けてみる。

「キラ、すまない。ちゃんと一度、自分で行って、話をしようと思っていたのだがな。ちょっと動けなくなってしまった。オーブが世界安全保障条約機構に加盟することは、もう無論知っているだろう。そして今、私はユウナ・ロマとの結婚式を控えて、セイラン家にいる。ちょっと急な話だが、今は情勢が情勢だから仕方がない。今、国にはしっかりした、みなが安心できる指導者と体制が確かに必要なのだ。この先、世界とその中で、オーブがどう動いていくことになるかはまだ分からないが、例えどんなに非力でも、私はオーブの代表として、すべきことをせねばならない。私は、ユウナ・ロマと結婚する。同封した指輪はアスランがくれたものだが、もう持っていることはできないし、取り上げられるのは嫌だ。でも、私には今、ちょっと捨てることもできそうも無くて。。本当にすまないんだが、あいつが帰ってきたら、お前から返してやってくれないか。ちゃんと話もせずにこんなこと、本当は、嫌なんだけどな。頼む。みなが平和に、幸福に暮らせるような国にするために、私も頑張るから。」

そこで顔を上げるキラ。「キラ。」ラクスが優しく声をかける。キラは、最後にアスランと会った時の、アスランの苦悩の顔を思い出していた。

結婚式当日。ウェディングドレスを身にまとったカガリ、セイラン家の自室で腰掛け、一人、アスランと出会った時のことを思い出していた。そして、キラのストライクを破壊し、落ち込んでいた頃のアスランとのことも。落ち込むカガリ。そこに時間だということを知らせる声が聞こえる。一方、街中では、元アークエンジェルのメンバーが集まりつつあった。

ユウナ達が待ちかまえるエントランスに、カガリが現れる。「うーん、綺麗にできたね、カガリ。素敵だよ。で、ちょっと髪が残念だな。今度は伸ばすといいよ。その方が僕は好きだ。」髪に手をやるユウナ。その手を振り払うかのように頭を振るカガリ。
カガリは式場に向かう車に、ユウナとともに乗り込む。「何か飲むかい?緊張してるの?さっきから全然、口もきかないね。」「いや、大丈夫だ。心配するな。」ユウナの問いにほとんど聞こえないようなか細い声で答えるカガリ。「ふん。いいえ大丈夫ですわ。ご心配なく、だろ。しっかりしろ。」厳しいユウナ。ウィスキーを取り出し、グラスにそそぐ。それを飲みながら、ふさぎ込むカガリに言う。「ほら、マスコミも山ほどいる。もっとにこやかな顔をして。」だが、カガリはますます落ち込んでいくようだ。

「でも、本当にそれでいいのかしら?」エレベーターで下っていくキラとラミアス。ラミアスはキラに問う。「ええ。ってか、もうそうするしかないし。」「はぁ。」ラミアスが大きくため息をついた時、エレベーターが目的の階に到着。ドアが開く。「本当は何が正しいのかなんて、僕たちも、まだ全然分からないけれど、でも、諦めちゃったら、駄目でしょう。」その眼前にあるアークエンジェル。なかではバルトフェルドの指示の元、着々と発進準備が進められていた。「分かっているのに、黙っているのは駄目でしょう。その結果が何を生んだか、僕たちはよく知っている。だから、いかなくっちゃ。またあんなことにならないために。」思い出される前大戦の悲劇。「ええ。」キラの言葉にしっかりと、優しい表情で頷くラミアス。

式場に向かうカガリ達の車。愛想よく手を振るユウナだが、カガリはふさぎこんだまま。肘鉄で合図をするユウナ。「ほら、カガリ。」「えっ?」手を振り始めるカガリ。だが、思い出すのは前大戦の父の言葉。国を焼いたときの厳しい選択。そしてシンの言葉。自然に頬を伝う涙。
式場に到着。車から降りる2人。「嬉し泣きだろうね?当然。その涙は。」ユウナのその言葉に、きつい表情をするカガリ。

アークエンジェルでは着々とチェックが進んでいた。チェックリストを読み上げているバルトフェルドに、キャプテンシートの横に立つラミアスが声をかける。「あのぅ、バルトフェルド隊長?」「ううん?」振り向くバルトフェルド。「やっぱり、こちらの席にお座りになりません?」キャプテンシートの方に手をやりながら、頼み込む様子のラミアス。「いやいや、もとより人手不足のこの船だ。情報によっては僕は出ちゃうしね。」アークエンジェルのモビルスーツデッキで整備されるムラサメ。「そこはやっぱり、あなたの席でしょう。ラミアス艦長。」ブリッジにいるスタッフからの笑い声。それに促され、ラミアスはキャプテンシートに座る。
キラは、母との別れの挨拶を交わしていた。「ごめんね、母さん。また。」「いいのよ。でも一つだけ忘れないで。あなたのうちはここよ。私はいつでもここにいて、そしてあなたを愛しているわ。」「母さん。」「だから、必ず帰ってきて。」「うん。」
アークエンジェル、ついにドックを出る。「水路離脱後、上昇角30、機関最大。」ラミアスの指示が飛ぶ。

そのころ、ユウナとカガリは、神父の前に向かって、階段をゆっくり上がっていた。

アークエンジェル、海面へ。「離水、アークエンジェル、発進。」スラスターに灯がともる。飛び立つアークエンジェル。それと同時にキラは、フリーダムのチェックをする。「まあ、お前さんのことだがら心配はしてねぇけどよ。気をつけてな。」軍曹の声に、「はい。」と答えるキラ。
アークエンジェルの姿は、オーブの軍事レーダーが捉えていた。

神父が式の開始を宣言する。祭壇で式が始まる。

「フリーダム発進。よろしいですわ。」ラクスの声。「フリーダム発進。行きます。」出撃するフリーダム。
「アンノウン接近中、アンノウン接近中、スクランブル。」オーブの軍港にアナウンスがこだまする。スクランブルで出撃するムラサメ。「アンノウンって、これはアークエンジェルだよな。」「ああ、それにフリーダムだ。」オーブの上空を飛行するフリーダム。目的地は、ユウナとカガリが式を挙げている、その会場である。

式は厳かに進行している。「今、改めて問う。互いに誓いし心に偽りは無いか?」ユウナの方を見る神父。「はい。」と答えるユウナ。沈黙を続けるカガリ。
そこに軍本部からの報告の声が遠くで聞こえる。「避難を。」にわかにあわただしくなる会場内。フリーダムに向かって攻撃を始めるアストレイ。だが、フリーダムは確実に、そのビームライフルだけを破壊していく。祭壇の上空でホバーリングするフリーダム。
「キラ。」そのフリーダムを見て、叫ぶカガリ。ユウナはそのカガリの後ろに隠れるような格好。祝いの白い鳩が逃げ出していく。
カガリ達のいる祭壇の前にゆっくりと降りてくるフリーダム。ユウナが逃げ出し、一人だけになったカガリをすくい上げる。「何をする、キラ。」その様子を見て、苦笑するキラ。そのまま飛び立つフリーダム。
取り乱すユウナ。「撃て、早く撃て。カガリが。」「しかし下手に撃てばカガリ様に当たります。」その言葉にジタンだを踏むしかないユウナ。
飛ぶ鳩を従え、ともにアークエンジェルへ向かうフリーダム。「降ろせ、キラ。こら。」フリーダムの手ではカガリが暴れている。そのとき、フリーダムのレーダーは、飛来するムラサメを探知していた。「カガリ、ちょっとゴメン。」カガリをコクピットに収容するキラ。「ああ、すごいね、このドレス。」「お前!」「ちょっと黙ってて、つかまっててよ。」
「こちらはオーブ軍本部だ。フリーダム、直ちに着陸せよ。フリーダム、直ちに着陸せよ。」無線で通告するムラサメ。「ごめんね。」キラは、フリーダムのビームサーベルをかざす。羽を叩ききるキラ。墜落するムラサメ。
「4時の方向にモビルスーツ、フリーダムです。」「本部より入電。フリーダムは式場よりカガリ様を拉致。対応は慎重を要する。」その報告にオーブ守備隊隊長、トダカを始め、ブリッジにいるスタッフは驚く。何故カガリをフリーダムが拉致したのか、状況を把握出来ていない様子。
「アークエンジェル?」モニタに映るその船の名前を言うカガリ。だが、その船はオーブ国境守備隊の艦艇に取り囲まれていた。「包囲して押さえ込み。カガリ様の救出を第一に考えよ、とのことです。」その守備隊の前で、フリーダムはアークエンジェルに着艦する。フリーダムを収容したアークエンジェルは潜行を開始する。
「トダカ一佐。アークエンジェル潜行します。これでは逃げられます。攻撃を。」「対応は慎重を要するんだろ。」そうとだけ答えた隊長。沈みゆくアークエンジェルに敬礼する。「逃げられただと?ええぃ、一体どういうことだ?護衛艦軍は何をしている。」ユウナの怒号ももはや無駄。。

「頼むぞアークエンジェル。カガリ様とこの世界の末を。」トダカの願いに送られながら、アークエンジェルは海の奥底へと消えて行った。
PHASE - 15 戦場への帰還 「オーブコントロール、こちらは貴国へ接近中のザフト軍モビルスーツ。入港中のザフト艦、ミネルバとの合流のため、入国を希望する。許可されたし。」セイバーに乗ったアスランは、オーブ領空にさしかかろうとしていたため、オーブへの入国許可を問う。だが、オーブ軍基地ではムラサメ2機がスクランブルでアスランのセイバーめがけ、発進していた。
「オーブコントロール。聞こえるか?オーブコントロール。」呼びかけを続けるアスラン。そこに警告メッセージ。レーダーはムラサメ2機が接近していることを示していた。「ロックされた?」アスランがそう言うや否やムラサメからの発砲。「オーブコントロール、これはどういうことだ?こちらに貴国攻撃の意思はない。なぜ撃ってくる。」アスランがそう問い続けるも、ムラサメからはホーミングミサイルが発射。ミサイルがセイバーを追い回す。「オーブコントロール!」
「寝ぼけたことを言うな。オーブが世界安全保障条約機構に加盟した今、プラントは敵性国家だ。」ムラサメパイロットからの通信で、ハッとした顔になるアスラン。「我が軍はまだザフトと交戦状態では無いが、入国など認められるはずが無い。」
「大西洋連邦との同盟に同意した?そんな?カガリは省会を抑えられなかったのか。」アスランはすぐさま無線の相手を変える。「行政府。こちら視認番号2500474C、アスハ家のアレックス・ディノだ。代表へつないでくれ。」ムラサメの追撃をかわしながらも、呼びかけを続けるアスラン。「こちらは行政府だ。要望には応じられない。」「緊急を要することだ。頼む。」「残念だが、不可能だ。」一方的に通信回線を閉じられてしまう。「何?」事態がよく飲み込めないアスラン。
「どういう作戦のつもりかは知らないが、すでに居もしないミネルバをダシにするなど、間抜けすぎるぞ。オーブ軍をなめるな。」その言葉に驚くアスラン。「ミネルバが、、いない?」アスランはセイバーをモビルスーツ形態に変形。ムラサメも応戦すべくモビルスーツ形態へと変形。が、アスランの方が一歩早かった。アスランは正確にムラサメのビームライフルを破壊する。そして、反転し、オーブを後にした。「カガリ。。くっそぉ。」

「一体どういうことなんだ。こんな馬鹿な真似をして。」海底に身を隠すアークエンジェルのブリッジにて、カガリが一人どなっていた。「あなた方まで何故?」ラミアスとバルトフェルドの方を向き、続けるカガリ。「結婚式から国家元首をさらうなど、国際手配の犯罪者だぞ。正気の沙汰か。こんなことをしてくれと誰が頼んだ。」「カガリさん。。。」口火を切ったのはラクス。後に気まずそうにバルトフェルドが続く。「いや、まあ。。ね。そりゃわかっちゃいるんだけど。」キラがその後を続ける。「でも、仕方ないじゃない。こんな状況の時にカガリにまで馬鹿なことをされたらもう、世界中が本当にどうしようもなくなっちゃうから。」そのキラの言葉に反論するカガリ。「馬鹿なこと?」「キラ!」ラクスが仲裁に入ろうとする。「大丈夫だよ、ラクス。」ラクスに声をかけるキラ。
「何が、何が馬鹿なことだというんだ。私はオーブの代表だぞ。私だって、色々悩んで、考えて。。。それで。。」「それで決めた大西洋連邦との同盟やセイランさんとの結婚が本当にオーブの為になると、カガリは本気で思っているの?」
キラのその言葉に痛いところをつかれたというとまどいの顔を見せるカガリ。だが、言い返さない訳にはいかない。「あ、当たり前だ。それでなきゃ誰が結婚なんかするか。もうしょうがないんだ。ユウナやウナトや市長達の言うとおり、オーブは再び国を焼くわけになんかいかない。そのためには、今はこれしか道はないじゃないか。」自分の本当の気持ちを隠すかのように一気にまくしたてるカガリ。
「でも、そうして焼かれなければ、他の国はいいの?」とキラはカガリに問う。
「えっ?」カガリの困った様子。
「もしもいつか、オーブがプラントや、他の国を焼くことになっても、それはいいの?」「いや、それは。でも。」「ウズミさんの言ったことは。」「でも。」「カガリが大変なことはわかっているよ。今まで何も助けてあげられなくてごめん。でも、今ならまだ間に合うと思ったから。僕たちにも、まだ色々なことはわからない。でも、まだ、今なら間に合うと思ったから。」キラはポケットから、カガリより預かったアスランの指輪を、カガリに手渡す。その指輪を見つめるカガリ。「みんな同じだよ。選ぶ道を間違えたら、行きたいところへは行けないよ。」指輪を両手で握りしめ、今にも泣きそうなカガリ。「だから、カガリも一緒に行こう。」「キラ。。。」指輪を握りしめ、泣きながら何度も頷くカガリ。そして泣き崩れる。カガリの背中をさすってあげるキラ。「僕たちは今度こそ、正しい答えを見つけなきゃならないんだ。きっと。逃げないでね。」

さて、オーブを後にし、大西洋連邦との死闘より脱したミネルバは、無事ザフト軍のカーペンタリア基地に到着していた。まもなくミネルバの修理も完了。何時出るかもわからぬ出撃命令を待ちつつも、カーペンタリアでの日々を過ごすミネルバスタッフ。シンはモビルスーツの整備工場で、整備されているモビルスーツを見ていた。その時、上空を飛ぶ機体が1機。それがミネルバのいるドックの方へと降りていった。気になったシンは、すぐさまその機体が降りていった方へと走っていく。
その機体はアスランのセイバーであった。ミネルバへのモビルスーツデッキへと着艦する。早くもみんなが集まって、その機体を見守っている。近くのメカマンへ早速質問を投げかけるルナマリア。「何なのこの新型?一体だれ。」セイバーより降りてくるパイロット。ヘルメットを取ったその顔は、見覚えのある顔だった。「あ、」メイリンが驚きの声を上げ、その後をルナマリアが続ける。「アスランさん。」「認識番号285002、特務隊FEITH所属アスラン・ザラ、乗艦許可を。」そうアスランが言った時、駆けつけたシンがやってくる。「ねえ、さっきの。」とヴィーノに話しかけた瞬間、立っているアスランに気づく。「あ、あんた。」アスランに歩み寄ってくるシン。「なんだよ、これは。一体どういうことだ。」「もう。」ルナマリアに止められるシン。「口の利き方に気をつけなさい。彼はFEITHよ。」一斉にアスランに敬礼を送る。「はぁ、なんであんたが。」なおも敬礼をしようとしないシン。「シン!」促すルナマリア。敬礼を返すアスラン。シンは、自分が飲み物を手にし、ファーストフードのポリ袋を下げ、そしてカラーをだらしなくしている自分の姿に気づく。飲み物とポリ袋をメイリンに押しつけ、カラーを正し、敬礼を返すシン。その姿に苦笑するアスラン。
「艦長は艦橋ですか。」アスランの問いにメカマンの一人が答える。「ああ、はい。だと思います。」「私がご案内しま・」とメイリンが言ったそばから、ルナマリアが割り込んでくる。「確認して、ご案内します。」「ああ、ありがとう。」ルナマリアの案内でブリッジに向かうアスラン。「ザフトに戻ったんですか。」シンが呼び止める。「そういうことになるね。」振り返り答えるアスラン。「なんでです。」シンの問い。だが、シンのさらなる質問には答えないという様子で、足早にブリッジに向かう。

ブリッジに向かうエレベータに乗り込むアスランとルナマリア。「でも、なんで急に復隊されたんですか。」突然のルナマリアの問いに驚き気味のアスラン。「えっ」「なーんて、とっても聞いてみたいんですけど。いいですか。」「復隊したというか。。ちょっとプラントに行って、議長にお会いして、」「ええ?」議長という言葉が出てきたことが不思議そうなルナマリア。
「それより、ミネルバは何時オーブを出たんだ?俺、何も知らなくて。」
「オ、オーブへ行かれたんですか?」
「ああ。」
「大丈夫でした?あの国、今はもう。」
「スクランブルかけられたよ。」
「なんだかシンが怒るのもちょっと分かる気がします。めちゃくちゃですよあの国。オーブ出る時、私たちがどんな目に遭ったと思います?」そのルナマリアの言葉に今まで、目を伏せて聞いていたアスランの顔が上がる。「地球軍の艦隊に待ち伏せされて、本当死ぬとこだったわ。シンが頑張ってくれなきゃ間違えなく沈んでました。ミネルバ。」
「けど、カガリがそんな。」
「私も、前はちょっとあごがれてたりしたんですけどね、カガリ・ユラ・アスハ。でも、なんかがっかり。大西洋連邦とは同盟結んじゃうし。へんな奴とは結婚しちゃうし。」
その最後の言葉にトランクを落とすアスラン。「け、結婚?」
身を乗り出したアスランに、退き気味のルナマリア。「え、ええ。ちょっと前に、そうニュースで。」
肩をがっくし落とし、放心状態のアスラン。エレベータのドアが開いたのも気づかない様子。
「あ、あのぉ。」ルナマリアの声で我に帰ったアスラン、とにかくエレベータから出るが、その様子はまだ動揺が続いているとしか思えない。ルナマリアは付け足しの言葉を言う。
「でも、式の前だか後だかにさらわれちゃって。今は行方不明。。。」
アスランの鋭い視線。たじろぐルナマリア。
「とかって話も聞きました。よく分からないんですけど。すみません。」丁寧にお辞儀をするルナマリア。出てくるルナマリアの言葉が、自分の想像できないことばかりで、どう対処したらよいか分からない様子のアスラン。

艦長室。アスランがデュランダルより託された文書に目を通すタリア。脇にはアーサーが控えている。アスランは立って待っている。
「はぁ。」軽くため息をつくタリア。そして自分に送られたFEITHの紋章を見る。「あなたをFEITHに戻し、最新鋭の機体を与えてこの船に寄こし、私までFEITHに?一体何を考えているのかしらね。議長は。それにあなたも。」意地悪そうな笑みを浮かべながらアスランを見るタリア。「申し訳ありません。」「別に謝ることじゃないけど、それで、この命令内容は、あなた、知ってる?」「い、いえ。自分は聞かされておりません。」「そう。なかなか面白い内容よ。」その言葉に興味を示すアーサー。
「ミネルバは出撃可能になり次第、ジブラルタルへ向かい、現在スエズ攻略を行っている駐留軍を支援せよ。」「スエズの駐留軍支援ですか?我々が?」タリアの言葉に動揺を見せるアーサー。「ユーラシア西側の紛争もあって、今一番ごたごたしているところよ。確かにスエズの地球軍拠点は、ジブラルタルにとっては問題だけど、何も私たちがここから行かされるようなものでもないと思うわね。」「ですよね。」タリアの言葉に同意を示すアーサー。「ミネルバは地上艦じゃないですし。一体なんで。」
「ユーラシア西側の紛争と言うのは?」アスランが問いかける。その言葉にアスランの方へ視線を向けるタリア。「すみません。まだ色々とわかってはいません。」わびを入れるアスラン。「常に大西洋連邦に同調し、というかいいなりにされているユーラシアから、一部の地域が分離独立を叫んでもめだしたのよ。つい最近のことよ。知らなくても無理ないわ。」説明するタリア。アーサーが続ける。「開戦のころから、ですよね。」「ええ。」「確かにずっと火種はありましたが。」「開戦で一気に火がついたのね。徴兵されたり、制限されたり、そんなことはもうゴメンだ。というのが抵抗している地域の住民の言い分よ。それを地球軍側は力で制圧しようとし、かなりひどいことになっているみたいね。そこへ行けということでしょ。つまり。我々の戦いはあくまでも積極的自衛権の行使であり、プラントに領土的野心はない。そう言っている以上、下手に介入はできないでしょうけど、行かなくてはならないのはそういう場所よ。しかも、FEITHである私たち2人が。覚えておいてね。」

話は終わり、艦長室を後にしようとするアスラン。「あ、あのう。」アスランは思い切ったようにタリアに尋ねる。「ん?」「オーブのこと、艦長は何かご存じでしょうか。」「えっ?」意外そうな顔をするタリア。「自分は何も知らなかったものですから。」「ああ、今大騒ぎですものね。代表がさらわれたとかで。オーブ政府は隠したがっているみたいだけど。代表をさらったのは、フリーダムとアークエンジェルという話よ。」その言葉に驚き、顔を上げるアスラン。「キラ。。」「何がどうなっているのかしら。こっちが聞きたいくらいだけど。」そのタリアの言葉に「ありがとうございます。」と深々とお辞儀をし、艦長室を退出していくアスラン。

タリアがFEITHになったということは、早くも艦内の噂となっていた。FEITHのことを何も知らないヴィーノに、説明をしてあげるヨウラン。決してFEITHは組織に対して与えられるのではなく、個人に与えられるトップエリートの称号だということを。トップエリートという言葉が印象づけられた様子のメイリン。
アスランはセイバーの様子を見に、モビルスーツデッキにやってきていた。セイバーを見ていたルナマリアに声もかけず、そのままコクピットに乗り込もうとする。「無視しないでくださいよ。」コクピットに上がろうとするリフトにルナマリアが乗り込んでくる。呆気にとられるアスラン。「いや、そういうつもりはなかったんだけど、なんか色々あったんでぼぉっとしていただけだよ。」計器チェックを始めるアスラン。「そんなにショックだったんですか?アスハ代表の結婚。」図星のルナマリア。「いや、まあ、あれは。」言葉を取り繕うアスラン。「でも、思いっきり政略結婚ですものね。しょうがないというか。私だったら、そんなの絶対やだけど。」迷惑そうなアスラン。「ねえ、君何?何か用?」ニコニコし始めるルナマリア。「ああ、私ルナマリアです。ルナマリア・ホーク。ザク・ウォーリアのパイロットです。」「ああ、うん。」「この機体は、最新鋭ですよね。」計器をのぞき込むルナマリア。「変形機構を持っているって聞きましたけど。」「ううん。ああ。」「うわぁーやっぱりザクとは全然違う。インパルス、っていうかカオスとかと同じ?」「触ってみたいか。」というアスランの言葉に「いいんですか?」と喜びを隠せない様子のルナマリア。「ああ、どうぞ。でも動かすなよ。」パイロットシートから出るアスラン。「わかってますよ。」とパイロットシートに座るルナマリア。「ああ、モードセレクターのパネルがちがうんだ。新しいプラグインですね。」「ああ。」といいながら、下を見るアスラン。どうもシンがその様子を見ていたようだ。どこかへ行ってしまうシン。

ミネルバへの正式な命令が、カーペンタリアの司令部にも届いたようだ。明朝の出撃を受け、準備にあわただしくなるミネルバ。そんなミネルバの様子をうかがっている地球軍の船があった。地球軍艦隊、旗艦、J.P.ジョーンズ。その甲板にはぼぉっと海を見つめるステラの姿があった。そのステラに話しかける乗組員達。「こんなところで何してるの?」「うみ。」「ん?」「みてるの。すき。だから。」呑み込めない様子の乗組員。そこに現れるアウル。ステラを連れ出そうとする乗組員の後ろに回り、銃を突きつける。「止めときなよ。俺ら、第81独立機動軍でさ、ぼぉっとしてるけどさ。そいつも切れるとまじ怖いよ。」逃げ出す乗組員。「まだ、ここ居るの?」ステラに声をかけるアウル。視線をアウルの方に向ける。「お呼びかかったぜ。ネオから。」その言葉に嬉しそうに立ち上がるステラ。アウルの後に続く。「ってことは、また戦争だね。まっ、それが俺ら仕事だし。」「うん。」「今度は何機落とせるかなぁ。」「うん。」

ミネルバ、カーペンタリアを発進。アスランは待機室にいた。モビルスーツデッキの方を見ながら、自分を言い聞かせるように強く思うアスラン。(キラが一緒なら大丈夫だ。どのみちオーブには戻れないんだし。)その様子をシンは寝ころんで、雑誌を読みながら伺っていた。
ミネルバが発進したのを捉えたJ.P.ジョーンズのレーダー。「ようやく会えたな。見つけたぜ、子猫ちゃん。」その光点を見ながら言うネオ。
PHASE - 16 インド洋の死闘 ネオはインド洋前線基地に保有するウィンダム約30機全機の出撃要請をしていた。ミネルバ撃破を目的として。当然基地司令は馬鹿なことを言うなと一蹴する。
「ふざけているのはどっちだ。相手はボズゴロフ級とミネルバだぞ。それでも落とせるかどうか怪しいっていうのに。この間のオーブ沖海戦のデータ、あんた見てないのか?」基地司令との通信を続けるネオ。
「そういうことを言っているのではない。我々はここに、対カーペンタリア前線基地を造るために派遣された部隊だ。その任務もままならないまま、貴下にモビルスーツなど。」ネオに対して拒否を続ける基地司令。
「その基地も何も、すべてザフトを討つためだろう?寝ぼけたことを言ってないで、とっとと全機出せ。そこの防衛には、ガイアを置いておいてやる。」「いや、しかし、、」「命令だ、急げよ。」強引に通信を切るネオ。振り向き、カオス、ガイア、アビスの状況を尋ねるネオ。配備完了の報告を聞き、J.P.ジョーンズを動かさないことを命じて、ブリッジを出て行く。
モビルスーツデッキでは、一人戦闘に参加できないステラが、みんなをうらやましがっていた。「しょうがねえじゃん。ガイア空飛べねえし、泳げねえし。」と言ったのはアウル。その言葉に落ち込むステラ。スティングはステラを慰める。「海でも見ながらいい子で待ってな。好きなんだろ?」「うん。」そこに現れるネオ。「俺もステラと出られないのは残念だがね。」「あ、ネオ。」ネオの方に笑顔で寄っていくステラ。「だが、仕方がない。何もないとは思うが、後を頼むな。」ステラの顔をなでるネオ。本当に残念そうな表情を見せるステラ。「うん。」
カオス、アビス、出撃。そしてインド洋前線基地からはウィンダムが発進した。ネオもフルバーニアを施した特殊装備のネオで出撃する。「これでケリが着けば、恩の字だがね。」思い出す、レイとの戦い。ネオのウィンダムは先ほど出撃した、ウィンダムの編隊の後を追って飛び立って行った。

インド洋を航行するミネルバ。程なくミネルバのレーダーは、多数のウィンダムの機影を捕らえた。艦内に響くメイリンの「コンディションレッド発令」のアナウンス。「熱紋照合、ウィンダムです。数30。」「30?」その数字を聞き、思わず聞き返すタリア。驚いたのはその後の報告である。「うち1機はカオスです。」「あの部隊だって言うの。一体どこから?付近に母艦は?」「確認できません。」アーサーがそのことを聞き、「またミラージュコロイドか?」と言う。「海で?あり得ないでしょ。」即座に否定するタリア。黙るアーサー。
「あれこれ言っている暇はないわ。ブリッジ遮蔽。対モビルスーツ戦闘用意。ニイラボンゴとの回線、固定。」
そこにアスランからの通信が入る。「グランディス艦長、地球軍ですか?」「ええ。どうやらまた待ち伏せされたようだわ。毎度毎度、人気者は辛いわね。」
厳しい顔をするアスラン。続けるタリア。「既に回避は不可能よ。本艦は戦闘に入ります。あなたは?」
その言葉が意外だったように顔を上げるアスラン。
「私にはあなたへの命令権はないわ。」「私も出ます。」「いいの?」「確かに指揮下にはないかもしれませんが、今は私もこの艦の搭乗員です。私も残念ながら、この戦闘は不可避と考えます。」
その言葉を聞き、笑顔になるタリア。「なら、発進後のモビルスーツの指揮をお任せしたいわ。いい?」「わかりました。」
空中戦が可能な、インパルスとセイバーのみ発進。ザクのレイとルナマリアは待機ということになった。発進カタパルトに向かう2機。突如、シンにアスランからの通信が入る。「シン・アスカ。」「はい。」「発進後の指揮は、俺がとることになった。」「ええ?」「いいな。」「はい。」渋々承知するシン。

セイバーを捉える、スティングとネオ。「何だ?あの機体は。」モニターの「UNKNOWN」の表示を見ながらつぶやくスティング。「カーペンタリアか?ザフトはすごいねぇ。」キーボードを操作しながら、つぶやくネオ。「ふん、あんなもの。」カオスを急加速させるスティング。「おいおい、スティング。まあ、いいか。」一度は止めるネオであったが、すぐに諦める。「俺は馴染みのあっちをやらせてもらう。」
シンのインパルスはウィンダムとの空中戦を始めていた。一方アスランは、カオスガンダムにまとわりつかれていた。「見せてみろ力を、この新顔!」カオスからの攻撃が始まる。
「こんな奴らにやられるか。」息巻くシン。撃破されていくウィンダム。「ふーん、なるほどね。」ネオはそうつぶやき、インパルスに近づく。ネオの機体を落とそうとするシン。だが、巧みにその攻撃をかわしていくネオのウィンダム。「くそ、なんだこいつ。速い。」ネオの機体を撃ち落とそうと躍起になり始めるシン。ネオはウィンダムをうまく使って、インパルスを追い込む。何機ものインパルスにねらい打ちをされ、手を焼くシン。
「シン、出過ぎだぞ。何をやってる。」ウィンダムの集中砲火を浴びているインパルスを見て、シンの行動をたしなめるアスラン。だが、自分は未だカオスの攻撃を振り切れずにいた。「へ、文句言うだけなら、誰だって。」強がるシン。

タリアは、敵がどこから来たのかが気になって仕方が無かった。だが、ニイラボンゴでもどこからウィンダムの編隊が飛んできているのか、未だつかめない状態であった。そのミネルバとニイラボンゴの元に、海中を行くアビスが迫っていた。アビスの姿を捉えるニイラボンゴ。タリアはレイとルナマリアに水中戦の準備を命令する。ニイラボンゴでは迎撃のためのグーンを発進させていた。だが、アウルはグーンを敵になぞ思ってはいない。「は、は、は、ごめんね。強くてさ!」あっという間にグーン2機が叩き切られる。爆発で上がる水しぶき。
「ミネルバ、今のは?」呼びかけるアスラン。「アビスです。ニイラボンゴのグーンと交戦中。」メイリンからの情報に驚くアスラン。「でも、1機よ。レイとルナで対応します。それより敵の拠点は。そちらで何か見える?」「いえ。こちらでも何も。しかし、」アスランが気になっているのはシンであった。
そのシンは、ネオを追い、はるかに先行していた。いつしか、連邦軍のインド洋前線基地付近まで到達していたシン。そのネオ達の戦いを見て、ステラが、ガイアを走らせていた。「ネオ。」
次々とウィンダムを落としていくシン。「く、思った以上に腕を上げているな。さぁて、どうするか。」インパルスを落とす一手が見つからないネオ。低空を飛行する。それを追うシン。そこにステラのガイアが襲いかかる。もつれて落下するインパルス。
「シン!」落下したインパルスを攻撃しようとしているネオのウィンダムに、銃撃を浴びせるアスラン。「ちぃ、あいつもやるな。」インパルスを仕留め損ない、悔しがるネオ。
ガイアとインパルスはようやく立ち上がっていた。対峙する2機。「いつも、いつも。」インパルスに襲いかかるガイア。ビームサーベルで応戦するインパルス。「シン、下がれ!乗せられてるぞ。」アスランはそのインパルスの姿を見て、シンへの通信を続ける。だが、その命令を無視するシン。ガイアとの白兵戦を続ける。2機がすぐ側まで接近した前線基地では、対空砲を含む迎撃準備に大忙しであった。土木作業をしていた現地の人たちも、監視の兵士達が戦闘のためその場を離れたのを見て、逃げだし始めていた。
インパルスへの対空砲による攻撃が始まる。「今度は何だよ。」怒鳴るシン。そしてそれが前線基地からの攻撃であることに気づく。「基地?こんなところに。建設中か。」そして基地のフェンスから外に出て行く人たちの姿を見つける。「まさか、ここの民間人。」その人たちに対して、容赦のない連邦軍兵士の発砲。その銃弾に倒れていく現地の人たち。その姿にショックを受けるシン。

ネオはスティングと2人がかりでセイバーを追い込もうとしていたが、こちらも簡単に落とせそうな相手では無い。最後のウィンダムがアスランの手で落とされ、つぶやくネオ。「そろそろ限界か。ステージが悪かったかな。」そして指示を出す。「ジョーンズ撤退するぞ。合流準備。」ウィンダムを反転させるネオ。「アウル、スティング、ステラ。終了だ。離脱しろ。」
その命令に一番刃向かったのは、優勢に立っていたアウルである。「なんで?」「借りた連中が全滅だ。拠点予定地まで入られているしな。」「えー、何やってんだよ、ボケ。」「言うなよ。お前だって、大物は何も落とせてないだろ。」その言葉にカチンと来るアウル。「く、なら、やってやるさ。」レイとルナマリアのザクに背を向けるアビス。ニイラボンゴに急速接近、ミサイルを発射する。命中するミサイル。傾きかけたニイラボンゴを追い抜くアビス。「けっ!」さらにビーム斉射。ニイラボンゴは爆発し、沈んでいった。「はははは。」撤収していくアビス。

「ニイラボンゴが。。くそ。」自分を撃ってくる戦車に対し、その怒りをぶつけるシン。基地が持つ攻撃設備を破壊し、さらに基地内の設備を次々と破壊しつくすインパルス。「シン。」インパルスに通信をするアスラン。だが止める気配はない。「何をやってるんだ。止めろ。もう彼らに戦闘力は無い。」
シンは、基地内で働かされている民間人とその家族を遮るフェンスを取り除く。フェンスが取り払われ、方々で再会を喜んで抱き合う現地人とその家族。その姿を見て微笑むシン。

ミネルバ、モビルスーツデッキ。張り手の音に驚く周囲の人々。シンに張り手をしたのはアスランだった。「殴りたいのなら別に構いはしませんけどね。けど、俺は間違えたことはしてませんよ。あそこの人たちだって、あれで助かったんだ。」そう言い終わったシンを再び殴るアスラン。
「戦争はヒーローごっこじゃない。自分だけで勝手な判断をするな。力を持つ者なら、その力を自覚しろ。」
その場を立ち去っていくアスラン。
PHASE - 17 戦士の条件 スカンジナビア王国近くで、海底にその身を隠すアークエンジェル。報道されているニュースをチェックし続けるラミアスとバルトフェルド。
「毎日、毎日、気の滅入るようなニュースばかりだな。」コーヒーを一すすりして、ラミアスに話しかけるバルトフェルド。「なんかこう、もっと気分の明るくなるニュースはないのかね。」「水族館で白イルカが赤ちゃんを産んだとか、そういう話?」「いや、そこまでは言わんよ。」
割り込んでくるカガリ。「しかし、何か変な感じだな。プラントとの戦闘の方はどうなっているんだ。入ってくるのは連合の混乱のニュースばかりじゃないか。」
「プラントはプラントで、ずっとこんな調子ですしね。」ラクスが分割されている一つのモニタを拡大させた。それは、ラクス(ミーア・キャンベル)のコンサート画像だった。しばし、注視するアークエンジェルのクルー達。「皆さんも元気で楽しそうですわ。」皮肉とも取れるようなラクスの言葉。
「これも、いいのか?このままにしておいて。」カガリがラクスに問いかける。
「そりゃ、なんとかできるものならしたいけどね。」ラクスの代わりに答えるバルトフェルド。「だが、下手に動けばこちらの居所が知れるだけだ。そいつは、現状、あまりうまくないだろう?匿ってくれているスカンジナビア王国に対しても。」
バルトフェルドの言葉に対し、キラが答える。「ええ、それは。」
「ただ、こうしていつまでも潜ってばかりはいられないだろう。オーブのことだって、私は。。」カガリが主張する。
「でも、今はまだ動けない。まだ、何もわからないんだ。」カガリの言葉に、苦悩しているキラの言葉。
「そうね、ユニウスセブンの落下は、確かに地球に強烈な被害を与えたけど、その後のプラントの姿勢は真摯だったわ。難癖のように開戦した連合国の謀り。」ラミアスの言葉に、「ああ。」と同意するカガリ。「ブルーコスモスだろう?」とバルトフェルドが言葉を付け足す。
続けるラミアス。「まあね。でも、デュランダル議長はあの信じられない第一波攻撃の後も、馬鹿な応酬をせず、市民から議会からみーんな、なだめて、最小限の防衛戦を行っただけ。どう見ても、悪い人じゃないわ。そこだけ聞けば。」
ラミアスの言葉を受け、唯一会ったことのあるカガリが自分の印象を話す。「実際、良い指導者だと思う、デュランダル議長は。と、いうか、思っていた。ラクスの暗殺とこの件を知るまでは。アスランだってそう思ったからこそ、プラントへ行くと言い出したんだし。」
「じゃあ誰がラクスを殺そうとした。そしてこれじゃあ、僕には信じられない。そのデュランダルって人は。」ミーアのコンサート画像を見つめながら言うキラ。「キラ。」ラクスの言葉。「みんなをだましている。」続けるキラ。「それが政治と言えば、政治なのかもしれんがね。」バルトフェルドの言葉。「知らないはずはないでしょうしね。これ。」バルトフェルドの言葉にラミアスが続ける。
「何を考えているのかな、議長は。」カガリはますますデュランダル議長への不信感をつのらせているようだった。
「なんだか、ユーラシア西側の状況をみていると、どうしてもザフトに味方して、地球軍を討ちたくなっちゃうけど。」ラミアスの率直な気持ちである。「お前はまだ反対なんだろ?それは。」バルトフェルドはキラにそう尋ねる。「ええ。」
「アスランが戻れば、プラントのことも、もう少し何かわかるんだと思うのだが。一体何やっているのかな?あいつ。」カガリのアスランなら知っているという想い、それはキラも同じようであった。キラもまた、アスランに会いたいと思っていた。

そのアスランを乗せたミネルバはマハムール基地に接近、入港準備に入っていた。ラクスのことで盛り上がっているヨウランとヴィーノをたしなめながら、セイバーの整備ログを確認するアスラン。同じように整備ログを確認するシンを見て、微笑むものの、2人の間にできた溝が埋まるには、今少し時間がかかる様子。
マハムール基地への入港が完了し、アスランは放送によりブリッジへ呼び出される。そのアスランの様子を遠くからにらんでいるシン。「にらんでばっかいないで、言いたいことがあるなら言えば。ガキっぽすぎるよ。そんな。」ルナマリアに言われるシン。シンはふくれっ面になる。
タリア、アーサー、アスランはマハムール基地司令へ挨拶するため、上陸する。マハムール基地司令との挨拶をかわすタリア達。自己紹介するアスランの名前を聞き、一瞬ざわめく基地関係者。そのざわめきを断ち切るような司令の案内で、施設内へと進む3人。
タリア達がいなくなったミネルバ艦内、ルナマリアは、シンやレイと共に、先ほどの話を続けていた。「そりゃ、シンの気持ちもわかんなくはないよ。いきなり出戻ってきて、FEITHだ、上官だって言われたって、そりゃあね。おまけに2度も叩かれて。」ルナマリアをにらむシン。「でも、FEITHはFEITHだもの。仕方ないじゃない。その力がないわけじゃないし。」「わかってるよ。もう、うるさいなルナは。」「なにがわかってるのよ。それで。」「いいからもう黙れよ。ルナには関係ないだろう。」一人行ってしまうシン。「もう。」むくれるルナマリア。

司令室では、いかにスエズ攻略を行えば良いか、この話が続けられていた。前大戦のような軌道上からの大降下作戦を展開すれば、簡単にスエズ攻略は果たせるものの、領土的野心がないと標榜している以上、議会はうんと言ってくれない。地球軍がそれだけでおとなしくしていてくれれば良いものの、このマハムール基地を抜け、ジブラルタル基地までを一気に叩きたいと考えている。西ユーラシアに起きている暴動にも対処し、さらにスエズへのラインを確保するため、連合軍はガルナハンに強引に基地を造り、にらみをきかせているという訳だ。ここを侵攻するためには、ある峡谷を通過せねばならないが、そこには強力な陽電子砲と、陽電子リフレクターを装備したモビルアーマーを配置しており、ザフト軍の突破をことごとくはねのけているという訳だ。
「だが、ミネルバの戦力が加われば、あるいは。」司令の言葉に、答えるタリア。「なるほどね。そこを突破しない限り、私たちもすんなりジブラルタルへ行けはしないと。そういうことね。」「まあ、そういうことです。」「私たちにそんな道づくりをさせようだなんて、一体どこの狸が考えた作戦かしらねぇ。」暗にデュランダルを皮肉るタリア。「んん?」基地司令にはタリアの言葉が解せなかったらしい。「まあ、いいわ。こっちもそれが仕事と言えば仕事なんだし。」「では、作戦の日時等はまた後ほどのご相談としましょう。こちらも準備がありますし。。我々もミネルバと共に今度こそ道を開きたいですよ。」

夕刻。一人ミネルバの外で景色を眺めるシン。そこにアスランが現れる。微笑むアスランだが、シンはそっぽを向く。
「どうしたんだ?一人で、こんなところで。」
「別にどうも。あなたこそいいんですか?色々忙しいんでしょ、FEITHは。こんなところでさぼっていてよろしいんでありますか?」
「本当につっかかるような言い方しかできない奴だなぁ、君は。そんなに気に入らないか。俺が戻ったことも、君を殴ったことも。」
「別にどうってことありませんけどね。でも、殴られてうれしい奴なんかいませんよ。当たり前でしょ。だいたい、こないだオーブでアスハの護衛なんかやっていた人が、いきなり戻ってきて、FEITHだ、上官だなんて。。それではいそうですかなんて従えるものか。やってること、めちゃくちゃじゃないですか、あなたは。」
にらみ合う二人。。
「それは、そうだろうな。認めるよ。確かに君から見れば、俺のやっていることなんかはめちゃくちゃだろう。だからだと言いたいのか。だから俺の言うことなど聞けない、気にくわないと、そういうことか?」
「あ、いや。」
「自分だけは正しくて、自分が気に入らない、認められないものは、みな間違えだとでも言う気か?君は。」
「そんなことは。」
「なら、あのインド洋での戦闘のことは?」
「うっ。」
「今でもまだ、あれはまだ間違えじゃなかったと思っているのか?」
思い出すオーブオノゴロ島での出来事。「はい。」力強く答えるシン。
「はぁ。」ため息をつくアスラン。「オーブのオノゴロで家族を亡くしたと言ったな、君は。」
「殺されたって言ったんです。アスハに。」
「ああ、そう思っていたければそれでもいいさ。だが、だから君は考えたっていう訳か。あの時力があったなら。力を手に入れさえすればと。」
ハッとした顔をするシン。「な、なんでそんなことを言うんです。」
「自分の非力さに泣いたことのある者は、誰でもそう思うさ。たぶん。」遠くを見つめるアスラン。「けど、その力を手にしたそのときから、今度は自分が誰かを泣かせる者となる。それだけは忘れるなよ。」
ハッとした顔のままアスランの言葉を聞くシン。
「俺たちはやがて、またすぐ戦場に出る。そのときにそれを忘れて、勝手な理屈と正義で、ただ闇雲に力をふるえば、それはただの破壊者だ。そうじゃないんだろ?君は。俺たちは軍としての任務で出るんだ。喧嘩にいくわけじゃない。」
「そんなことは、わかってます。」
「なら、いいさ。それを忘れさえしなければ、君は確かに優秀なパイロットだ。」
そう言い残し、ミネルバ艦内に戻ろうとするアスラン。振り返り、言い残した言葉を告げる。「で、なきゃ、ただの馬鹿だな。」そして再び、ミネルバ艦内へと足を進める。
一人残されたシン。その胸中は。。。
PHASE - 18 ローエングリンを討て! ガルナハン連邦軍基地およびローエングリン砲台制圧のために出撃したラドル隊。その中にミネルバもいた。ミネルバは現地連絡員、つまりレジスタンスを収容するため、後部ハッチを開放する。そのハッチに乗り込んでくるバギー1台。
ミネルバのブリーフィングルームに集められるパイロット達。そこに先ほどバギーでミネルバに乗り込んできたと共に入ってくるアーサー、そしてアスラン。「では、これよりラドル隊と合同で行う、ガルナハン、ローエングリンゲート突破作戦の詳細を説明する。」アーサーの言葉とともに作戦の詳細に関する説明が始められた。
今までの経緯の説明を行うアスラン。ガルナハンの連邦軍駐屯地を制圧するには、渓谷を通らねばならないこと。そしてその渓谷を通るものは、すべて地球連合軍の設置したローエングリン砲台の射程圏内に入ってしまうため、ローエングリン砲台を破壊しない限り、ガルナハンへの侵攻は難しいこと。そして超長距離攻撃を行おうとすると陽電子リフレクターにより、その攻撃が防御されてしまうということが、アスランの説明した概要である。
「そこで今回の作戦だが。。」とアスランが説明しようとしたところ、シンが割り込んでくる。「そのモビルアーマーをぶっ飛ばして、砲台をぶっ壊し、ガルナハンに入ればいいんでしょ?」その言葉を聞き、大きなため息をつくルナマリア。
「それはそうだが、俺たちは今どうしたらそれができるかを話しているんだぞ。シン。」アスランのその言葉に、ややふてくされた表情で答えるシン。「やれますよ。やる気になれば。」「じゃあやってくれるか?俺たちは後方で待っていればいいんだな。突破できたら知らせてもらおうか。」微笑みながら言うアスラン。その言葉に焦るシン。「えっ!、あー、いえ、それは。。。」隣で笑いをこらえきれないルナマリアがくすくす笑う。
「という馬鹿な話はおいといて、ミス、コニール。」自分たちが置かれている境遇を理解しないで勝手な発言をしているシンを腹立たしい表情で見つめていた少女は、突然自分の名前を呼ばれ、驚き、「はい。」とアスランの方を見つめた。「彼がそのパイロットだ。データを渡してやってくれ。」アスランの言葉に不快な表情を浮かべるコニール。「ええ?こいつが?」「そうだ。」納得できないという表情でシンを見つめるコニール。シンはその表情に対して、「何だよ。」と言う。
「この作戦が成功するかどうかは、そのパイロットにかかってるんだろ。大丈夫なのか?こんな奴で。」アスランの方を見ながら尋ねるコニール。その言葉に立ち上がるシン。「なに?」「ミス、コニール。」「隊長はあんたなんだろ?じゃああんたがやった方がいいんじゃないのか?失敗したら街のみんなだって、今度こそマジ終わりなんだから。」アスランに食ってかかるかのような言葉のコニール。シンはその言葉が面白くない。「なんだとこいつ。」「シン!ミス、コニールもやめろ。」そんな時、素っ頓狂な声を上げるアーサー。「あー、なるほどアスランか。」注目を集めるアーサー。アーサーは考え込むような表情でなおも言い続ける。「いや、それは考えてなかったなぁ。あっ、でも、」「副長まで止めてください。シン、座れ。」アスランはアーサーの言葉を制止、シンを座らせる。「ふんっ」とそっぽを向くコニール。
「彼ならやれますよ。大丈夫です。だからデータを。」コニールの方を向き、優しく説得するアスラン。しょうがないというようにデータディスクを取り出すコニール。アスランの方に差し出す。ディスクを受け取るアスラン。だが、コニールはそのディスクをなかなか放そうとしない。ようやく、何かを吹っ切るかのように放すコニール。アスランを「キッ」と睨み付けたが、そのままうつむく。コニールの肩をポンと一叩きし、ディスクをシンの前に差し出す。
「シン。」腕を組んだまま動こうとしないシン。「シン!」「そいつの言うとおり、あんたがやればいいだろう。失敗したらマジ終わりとか言って、自分の方がうまくやれるって、あんただって本当はどうせそう思ってんだろ。」その言葉にシンを叱りとばすアスラン。「シン、甘ったれたことを言うな。生憎俺はお前の心情とやらに配慮して、無理と思える作戦でもやらせてやろうと思うほど馬鹿じゃない。無理だと思えば始めから自分でやるさ。だがな、お前ならできると思った。だからこの作戦をとったんだ。それを、あれだけでかい口を叩いておきながら、今度は尻込みか?」アスランを睨み付けるシン。立ち上がって、差し出されたディスクを奪い取る。
そこにメイリンのアナウンスが入る。「まもなくポイントB、作戦開始地点です。各課員はスタンバイしてください。トレイン副長はブリッジへ。」「おっと。」足早にブリーフィングルームから出て行くアーサー。パイロット達も席を立ち始める。なおもシンをにらみ続けるコニール。「何だよ。まだ何か言い足りないのか?」つっかかるシン。今にも泣き出しそうな表情で話し始めるコニール。「前にザフトが砲台を攻めた後、街は大変だったんだ。それと同時に、街でも抵抗運動が起きたから。地球軍に逆らった人たちはめちゃくちゃひどい目に遭わされた。殺された人だってたくさんいる。今度だって失敗すればどんなことになるか分からない。だから、絶対やっつけて欲しいんだ。あの砲台、今度こそ。だから、頼んだぞ。」興奮のあまり泣き始めるコニール。アスランはそっと肩を抱き、コニールをブリーフィングルームから連れ出していく。シンはコニールの思いに何かを感じ取った。コニールのディスクを見つめ続ける。
コニールと共にエレベータに乗ろうとしていたアスランに話しかけるルナマリア。「さすがですね。」「えっ。」「シンって、扱いにくいでしょ。私たち、アカデミーからずっと一緒ですけど、いっつもあんな調子で、あの子教官や上官とぶつかってばっかり。なのにちゃんとのせて、言うこと聴かせて。」「そんなんじゃないよ。扱うとか。」「え?」「へたくそなんだろ。色々と。悪い奴じゃない。」「あっ、はぁ。」「俺もあんまりうまい方じゃないけどね。人付き合いとか。」エレベーターのドアが閉まる。
アスランの言葉が今ひとつ理解できなかった様子のルナマリア。「私、予防線張られた?」隣にいたレイに聞く。「さあ?」とだけ返すレイ。

ポイントB到達。各艦は対モビルスーツ戦闘の準備に入る。ミネルバよりシンのコアスプレンダーが発進する。続くチェストフライヤー、レッグフライヤー。一方の地球連合軍、ローエングリンゲートでも、ラドル隊の存在をキャッチ。ダガーと陽電子リフレクターを装備するモビルアーマー、ゲルズゲイが発進する。
シンはコアスプレンダー、チェストフライヤー、レッグフライヤーの形態のまま、コニールが持ってきた情報にある、秘密の坑道を目指していた。「あ、あれだ。」坑道の入り口を見つけ、入り込むシン。入った瞬間、シンは悲鳴を上げる。「ええっ、何だよ、こりゃ。真っ暗?くそっ。マジ、データだけが頼りかよ。」暗い坑道をひたすら飛び続けるシン。(モビルスーツなら無理でも、インパルスなら抜けられる。データ通りに飛べばいい。)そのアスランの言葉を思い出し、呪いの言葉をはく。「そんな問題じゃないだろう。これは。」狭い坑道で、コアスプレンダーの羽を接触させながら、操作に必死のシン。(俺たちが正面で敵砲台をひきつけ、モビルアーマーを引き離すから、お前はこの坑道を抜けてきて、直接この砲台を攻撃するんだ。)またも坑道側面に接触するコアスプレンダー。立て直すシン。「何がお前にならできると思っただ、あの野郎!自分でやりたくなかっただけじゃないのか?」(お前が遅すぎればこちらは追い込まれる。早すぎても駄目だ。引き離し切れないと、いいな。)「やってやるさ。畜生!」シンの絶叫が続く。

地上では、迫るダガーの編隊に対して、各艦からモビルスーツが発進していた。ミネルバはモビルアーマーを誘い出すため上昇し、モビルスーツ隊に向かってタンホイザーを発射。モビルアーマー、ゲルズゲイがモビルスーツ隊の前に出て、陽電子リフレクターを展開。ミネルバのターンホイザーは、もろくもリフレクターにその威力をかき消される。
「ふん、自分達も陽電子砲を持って、上空と地上から揺さぶろうという腹づもりか。まあ、狙いは悪くない。だが、貴様には盾がない。ローエングリン照準。目標、上空、敵戦艦。」ローエングリンゲートの司令の命令により、ザフト軍モビルスーツ隊に向いていたローエングリンの照準は、ミネルバに向けられた。急速降下、地上に腹を擦りながら、ローエングリンをかわすミネルバ。「ええい、パワーの再チャージ急げ。ゲルズゲイを戻せ。ダガー隊は何をしているか。」この命令により、後方に下がっていくゲルズゲイ。「くっ。」下がるゲルズゲイを見て思わず飛び出すアスランのセイバー。「あいつが下がる、ルナマリア。」レイも飛び出そうとするが、上空からのダガー隊の攻撃でなかなか出て行けない。

データが、坑道の終着点を示した。「ゴール?ここか。距離は500。行けよ!」ミサイルを発射するシン。爆風で吹き飛ぶ坑道の出口。そのすぐ脇に戻りつつあるゲルズゲイがいた。「うぉー。」坑道より飛び出してくる、コアスプレンダー、チェストフライヤー、レッグフライヤー。すぐさまインパルスに換装する。攻撃がインパルスに集中する。ゲルズゲイも同じようにインパルスへの攻撃を開始するが、上空よりアスランのセイバーが襲いかかる。両腕を叩き落とされるゲルズゲイ。
ローエングリン砲台は、地下への収納を開始していた。焦るシン。だが、モビルスーツの攻撃でなかなか近寄れない。「くそー。」周囲の砲台、モビルスーツを破壊しながら、ローエングリン砲台に近づくインパルス。ようやく、ローエングリン砲台までたどり着いたその時、砲台を収納するハッチがまさに閉まろうとしていた。「くー。」近くにいたダガーをアサルトナイフで斬りながら、焦るシン。シンはその斬りつけたダガーを、閉まりかけているハッチの上に投げ出し、バルカンでその機体を打ち抜く。落ちていくダガーの機体はローエングリン砲台の上で爆発。次々と誘爆していく基地施設。ついにローエングリン砲台より大きな爆炎が上がる。

それを契機に、ガルナハンの街では地球連合軍に対する暴動が始まっていた。ガルナハンより撤退する地球連合軍。
ガルナハン近くにはミネルバが着陸、インパルスがその街中に降り立った。コクピットより降りてくるシン。そのシンの元に駆け寄るガルナハンの街の人たち。近くにアスランのセイバーも降り立つ。シンの様子を微笑みながら見つめるアスラン。その一方で、射殺されていく連合軍兵士の様子を見つめる。「ご苦労だったわね、アスラン。後はラドル隊に任せていいわ。帰投してちょうだい。」タリアからの連絡が入り、「はい。」と答えるアスラン。コクピットを出て、シンの元へと向かう。
「どうしたんですか?どこかやられたんですか。あなたともあろう人が。」シンは近寄ってきたアスランに尋ねる。
「うーん、いや。」
「作戦、成功でしたね。」
考え込むアスラン。喜ぶ人達の様子を見回す。少し間が開き答えるアスラン。「ああ、大成功だな。よくやったシン。君の力だ。」
その言葉に喜ぶシン。「いえ、そんなことないですよ。あっ、でもあれ、ひどいですよ。もうマジ死ぬかと思いました。」
「ああ。」浮かない表情のアスランだったが、シンには喜びを浮かべて答える。
続くシンの話。「あんなに何も見えないって、言ってなかったじゃないですか。」
「そうか、ちゃんといったぞ。データだけが頼りだって。」
「いやぁ、それはどうですけどね。」
「でも、お前はやりきったろ。出来たじゃないか。それも俺は言ったぞ。」
「それも、そうですけど。」
「戻るぞ。俺たちの任務は終わりだ。」人をかき分け、セイバーの方へと歩き始めるアスラン。
もう少し英雄気取りでいたかった様子のシンだったが、渋々、インパルスに戻る。コクピットへ戻る最中、街の喜ぶ人たちを見ながら、微笑みを絶やさないシン。一方、セイバーのコクピットに戻ったアスランは、またも浮かない表情に戻っていた。
PHASE - 19 見えない真実 ガルナハン解放をしたミネルバは黒海沿岸の都市の一つ、ディオキアのザフト軍基地に入港しようとしていた。入港後、基地司令への挨拶のため、上陸するタリアとアーサー。だが、妙に騒々しい。何かを待ち望んでいる群衆。上空よりピンク色のザクが、オレンジ色のグフイグナイテッド、そしてディンに支えられながら降下してくる。
「みなさーん、ラクス・クラインでーす。」
群衆が待っていたのは、ラクス(ミーア・キャンベル)だったのだ。ミーアはザクの手に乗り、群衆に手を振りながら降りてくる。そしてその後ろからは、デュランダル議長を乗せたヘリが続く。ミーアの姿を見て色めきだつヴィーノ達。一方、それを見たアスランは、「あり得ない」という顔をしながら、驚きを隠せない表情を浮かべていた。「ミーア・・・」
ミーアの慰問コンサートが始まる。コンサートのさなか、グフを着地させ、コクピットから降りてくるハイネ・ヴェステンフルス。すぐに近くに降り立ったデュランダルの側へと走り寄る。ヘリより出てくるデュランダル。

ミネルバより出てきたヴィーノ達は、すぐさまラクスを見るために人混みの中へ。シンは、そのヴィーノ達の姿を見ながら、何がいいんだかというような表情を浮かべる。そしてその後ろには、遠くからミーアを眺める、アスラン、ルナマリア、メイリンの姿。以前、ヴィーノとヨウランが「ラクスの感じが変わった」と言っていたのを思い出すアスラン。そこにルナマリアが言葉をかける。「ご存じなかったんですか?おいでになること。」「あ、ああ。うん、まあ。」「まあ、ちゃんと連絡を取り合っている状況じゃなかったですものね。きっとお二人とも。」「いや、まあ。」その様子を面白くなさそうに見ているメイリン。その時、後ろから誰かがぶつかる。これをチャンスとばかりにアスランに抱きつくメイリン。「す、すみません。誰かにぶつかられて。」「そこは危ないな。向こうへ行こう。」メイリンをかばうように人の流れがない方へ移動するアスラン。今度は、置いてきぼりを食ったルナマリアがやや不満そうな顔。すぐさま2人の後を追う。そこにシンが声をかけてくる。「いいんですか?見なくて。」「あ、ああ。」とぼけた返事をするアスラン。
ぼぉーとラクスのコンサートを眺めるタリア。近くには奇妙な格好をしながらリズムに体を合わせるアーサーの姿があった。ふと遠くにデュランダルの姿を見つけるタリア。デュランダルもタリアの視線に気づいた様子。合図を送るデュランダル。「ああ、本当にこれは運がいい。」そうアーサーがタリアに話しかけたとき、タリアは「まったく」と捨てぜりふをはき、不機嫌そうにその場を後にする。

ラクスのコンサートが終わる。みんなに言葉をかけるラクス。「やっぱりなんか、変わられましたよね、ラクスさん。」メイリンのその言葉にアスランは「いや、まあ、それは、ちょっと。」としか答えようのないアスラン。
そしてそのコンサートを外からうかがっていたスティング、ステラ、アウル。その3人もオープンカーに乗り込み、基地を後にする。「やれやれだな。」スティングの言葉にアウルが答える。「ほーんと。なんか楽しそうじゃん。ザフトは。」話を変えるアウル。「で、結局俺らって、まだあの船を追うの?」「そうだろうな。まっ、妙はその気だな。俺たちにとって重要なのは、この戦争の行く末とかじゃない。要はやれるかやられるかだけだからな。」「まあね。」「なのにここんとこずっと黒星だろ。あの船に関しては。」「負けてはいないぜ。」「勝てなきゃ負けなんだよ。俺たちは、やれなきゃな。わかってんだろ。」そのスティングの言葉にネオの顔を思い浮かべるアウル。急に表情が暗くなる。「あ、ああ。」海を見て喜びの声をあげるステラ。「ファントムペインに、負けは許されねえ。」つぶやくスティング。

「まったく呆れたものですわね。こんなところにおいでとは。」やや街外れの屋敷。バルコニーで外を眺めているデュランダルに、タリアのきつい言葉が浴びせかけられる。「は、は、は。驚いたろ。」「ええ、驚きましたとも。」敬礼を送るタリアとレイ。「が、今に始まったことじゃありませんけど。」2人の方に近寄り、レイに話しかけるデュランダル。「元気そうだね。活躍は聞いている。嬉しいよ。」その言葉に少年のような喜びの表情を浮かべるレイ。「ギル・・」「こうしてゆっくり会えるのも久しぶりだな。」デュランダルの抱きつくレイ。
アスラン、シン、ルナマリアが屋敷に車で到着した頃、デュランダル達は、テーブルで話をしていた。「でも何ですの?大西洋連邦に何か動きでも?で、なければあなたがわざわざおいでになったりはしないでしょ。」タリアがそう言った時、「失礼します」というハイネの言葉が割り込んでくる。ハイネに案内された、アスラン、ルナマリア、シンが並んで立っていた。「いやぁ、久しぶりだね、アスラン。」敬礼するアスランに手を差し伸べ、握手を求めるデュランダル。敬礼をやめ、握手するアスラン。「はい。議長。」「ああ、それから・・」ルナマリア達に視線を移すデュランダル。「ルナマリア・ホークであります。」「シ、シン・アスカです。」「君のことはよく覚えているよ。」以前のカガリとの一件のことを言っているのだと感じ、うつむくシン。「このところは大活躍だそうじゃないか。」手を差し伸べるデュランダル。「叙勲の申請も来ていたね。結果は早晩手元に届くよ。」その言葉に喜びの表情を浮かべるシン。「ありがとうございます。」差し伸べられた手を握るシン。

テーブルにつき、なおも話が続く。「例のローエングリンゲートでもすばらしい活躍だったそうだね。君は。」「いや、そんな。」照れるシン。「アーモリーワンでの発進が初陣だったというのに。たいしたものだ。」「あれは、ザラ隊長の作戦がすごかったんです。俺、いえ自分はただそれに従っただけで。」「この街が解放されたのも君たちがあそこを落としてくれたおかげだよ。いやあ、本当によくやってくれた。」そのねぎらいの言葉に深々と頭を下げ、「ありがとうございます。」とお礼を述べるルナマリア。

「ともかく今は、世界中が実に複雑な状態でね。」「宇宙の方は、今、どうなってますの?月の地球軍などは。」デュランダルに尋ねるタリア。「相変わらずだよ。時折小規模な戦闘があるが、まあ、それだけだ。そして地上は地上で、何がどうなっているのか、さっぱりわからん。この辺りの都市のように、連合に抵抗し、我々に助けを求めてくる地域もあるし。。一体何をやっているのかね。我々は。」「停戦、終戦に向けての動きはありませんの?」「残念ながらね。連合は何一つ譲歩しようとしない。戦争なぞしていたくはないが、それではこちらとしても、どうにもできんさ。いや、軍人の君たちにする話ではないかもしれんがね。戦いを終わらせる、戦いのない道を選ぶことは、戦うと決めるよりはるかに難しいものさ。やはり。」その言葉にシンが口を切る。「でも。」「うん?」ギルバートがシンの方を向く。みなの視線を浴び「あ、すみません。」と黙ろうとするシン。「いや、構わんよ。思うことがあったら、遠慮なく言ってくれたまえ。実際、前線で戦う君たちの意見は貴重だよ。私もそれを聞きたくて君たちに来てもらったようなものだし。さあ。」
その言葉にシンは話し始める。「確かに戦わないようにすることは大切だと思います。でも、敵の脅威がある時は仕方ありません。戦うべき時には戦わないと。何一つ、自分たちすら守れません。」その言葉にシンの強い力を感じ取るルナマリア、そしてタリア。「普通に、平和に暮らしている人たちは守られるべきです。」
「しかし、そうやって殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで最後は本当に平和になるのか、と。以前言われたことがあります。私はそのとき、答えることができませんでした。そして今もまだ、その答えを見つけられないまま、また戦場にいます。」シンの言葉にアスランが自分の言葉を挟む。「そう。問題はそこだ。」デュランダルはアスランの言葉にそう答え、立ち上がる。
テラスより街を眺めながら言葉を続ける。「なぜ我々はこうまで戦い続けるのか。なぜ戦争はこうまで無くならないのか。戦争は嫌だと、いつの時代も人は叫び続けているのにね。君は何故だと思う、シン。」突然デュランダルに振られたシン。少し間をおき、話し始める。「それはやっぱり、いつの時代も身勝手で、馬鹿な連中がいて、ブルーコスモスや大西洋連邦みたいに。違いますか?」「いや、まあ、そうだね。それもある。誰かの持ち物が欲しい。自分たちと違う。憎い。怖い。間違っている。そんな理由で戦い続けているのも確かだ。人は。だが、もっとどうしようもない、救いようのない一面もあるのだよ。戦争には。」顔を見合わせるシン達。「たとえばあの機体、ZGMF-X2000 グフイグナイテッド。つい先頃、軍事工廠からロールアウトしたばかりの機体だが、今は戦争中だからね。こうして新しい機体が次々と造られる。戦場ではミサイルが打たれ、モビルスーツが討たれ、様々な物が破壊されていく。故に工場では次々と新しい機体を造り、ミサイルを造り、戦場へ送る。両軍ともね。生産ラインは要求に追われ、追いつかない程だ。」「議長。」アスランが言葉を挟むが、デュランダルは話を進める。「その1機、1体の価格を考えてみてくれたまえ。これをただ産業としてとらえるものなら、これほど回転が良く、また利益の上がるものは他にはないだろう。」
驚くアスラン達。「議長、そんなお話。」タリアも思わず言葉を挟もうとする。「ああ、でもそれは。」シンもデュランダルに言葉を挟む。
「そう。戦争である以上、それは当たり前。仕方のないことだ。しかし人というものは、それで儲かると考えると、逆も考えるものさ。これも仕方のないことでね。」
「逆、ですか?」シンの言葉に頷くデュランダル。
「戦争が終われば兵器は要らない。それでは儲からない。だが、戦争になれば、自分達は儲かるんだ。ならば戦争は、そんな彼らにとって、是非ともやって欲しいものとなるのではないのかね。」
「そんな!」驚きの表情を露わにするシン。
「あれは敵だ。危険だ。戦おう。撃たれた、許せない、戦おう。人類の歴史には、ずっとそう人々が叫び、常に産業として戦争を考え、造ってきた者がいるのだよ。自分達の利益のためにね。今度のこの戦争の裏にも、間違えなく、彼らロゴスがいるだろう。彼らこそが、あのブルーコスモスの母体でもあるのだからねぇ。」
「そんな。」愕然とするシン。「ロゴス。。」つぶやくアスラン。
「だから、難しいのはそこなんだ。彼らに踊らされている限り、プラントと地球はこれからも戦い続けていくだろう。できることなら、それを何とかしたいのだがね。私も。」遠くを見るデュランダル。「だが、それより何より本当に、難しいのだよ。」

デュランダルとの話が終わり、屋敷内の廊下を歩く一行。デュランダルのはからいで、パイロット達はこの屋敷に泊まっていくことができるようになった。アスランは「そうさせていただけ。シンもルナマリアも。艦には俺が。」とミネルバに残るつもりで言う。が、その言葉を遮るレイ。「艦には私が戻ります。隊長もどうぞこちらで。」「「いや、それは。」「報償を受け取るべきミネルバは隊長とシンです。そしてルナマリアは女性ですので、私の言っていることは順当です。」
そのとき、「アスラン!」とアスランを呼ぶ女性の声。正面からラクスが走り寄ってきた。「これはラクス・クライン、お疲れ様でした。」デュランダルが声をかける。「ありがとうございます。」と軽く挨拶するデュランダル。そしてアスランに抱きつく。「ホテルにおいでと聞いて、急いで戻って参りましたのよ。」「な、ミーア。」ついついミーアと言ってしまいそうな自分をごまかしつつ、どう振る舞えばよいのか混乱している様子のアスラン。「今日のステージは?見てくださいました?」「ええ?まあ。」「本当に?どうでしたでしょうか。」「ん、ああ、ええ、まあ。」嫉妬している様子のルナマリア。不機嫌な表情になる。
「彼らにも今日はここに泊まって、ゆっくりするよう言ったところです。どうぞ久しぶりにお二人でお食事でもなさってください。」デュランダルが言葉をかける。「うわー本当ですの。それは嬉しいですわ。アスラン。では早速席を。」度を過ぎたミーアの喜びよう。「ああ、その前に、ちょっといいかな、アスラン。」デュランダルの言葉に驚くアスランとミーア。

夜の公園。ベンチでアスランを待つミーア。デュランダルはアスランと話したかったのはアークエンジェルのことだった。「実はアークエンジェルのことなんだがね。君も聞いてはいるだろう?」「はい。」「あの船がオーブを出たその後、どこへ行ったのか。もしかしたら、君なら知っているのではないかと思ってね。」「いえ、ずっと気にはかかっているのですが、私の方でも何も。私の方こそ、それを議長にお聞きしてみたいと思っていたところです。」「そうか、いや。アークエンジェルとフリーダムがオーブを出たというのなら、彼女も、本物のラクスクラインももしや一緒じゃないかと思ってね。」「はい。それは間違いないと思います。キラが、あっ、いえ。あの船が出るのに、ラクスを置いていくはずがありません。こんな情勢の時だ。本当に彼女がプラントに戻ってくれればと、私もずっと探しているのだがね。こんなことばかり繰り返す我々に、彼女はもう、呆れてしまったのだろうか。」考え込む様子のデュランダル。「あっ、いや。すまなかった。今後、もしあの船から君に連絡が入るようなことがあったら、そのときは私にも知らせてはくれないか。」「はい。わかりました。あの、議長の方もお願いいたします。」「ん?」「行方が分かりましたら、その時は私にも連絡を。」「ああ、分かった。そうしよう。」去っていくデュランダル。ベンチで待っていたミーアがアスランの元に走ってくる。
その様子をそっと窓から伺っていたシン。。。 
PHASE - 20 PAST C.E.70.2.14、シンが12歳の時、ユニウスセブンに核ミサイルを撃ったことから、地球連合、プラント間の戦争が始まる。だが、中立国、オーブ連合首長国に住むシンには、まだ遠い世界の出来事であった。だが、戦争は徐々にオーブをも巻き込んでいく。C.E.71.3.23にオーブ近海で起きた、アークエンジェルとアスラン隊の戦闘は、オーブでもニュースとして大きく取り上げられた。
C.E.71.5.5、プラントが発動した、オペレーション スピットブレイクにより、その戦争は激しさを増していた。オペレーション スピットブレイクの攻撃目標とされた、地球連合軍最高司令本部、JOSH-Aはサイクロップスを発動させることで、ザフト地球攻撃軍を巻き込み消滅、ザフトはその借りを返すために、C.E.71.5.25、地球軍パナマ基地をマスドライバーもろとも、グングニールで破壊する。
地球連合は、プラントへの総攻撃をかけるため、地球内の勢力統一を急ぐ。地球連合がもっとも欲しがっているマスドライバーを持つ、オーブ連合首長国を地球連合の傘下とすることも、その一つだ。C.E..71.5.29、地球連合 首脳会議で、アズラエルの言葉により、オーブ解放作戦が決定、C.E.71.6.15、ついにその作戦が開始された。
シン、そしてその家族は避難を急いでいた。が、その避難の最中に家族を失ってしまうシン。収容された船の片隅で、ただ妹、マユの携帯電話を握りしめ、ただ呆然と座り込んでいる。ただ悲しくて泣くシン。そこにトダカ一佐が声をかける。「君だけでも助かって良かった。きっとご家族はそう思っていらっしゃるよ。」その言葉に泣き崩れるシン。そして、オーブは消滅した。。。
C.E.71.9.23、ボアズ攻略戦。地球連合は手に入れたニュートロンジャマーキャンセラーのデータを使って、核攻撃を行う。破壊されるボアズ。この核攻撃は、ザフト軍にジェネシス使用の躊躇をなくすのに十分な理由となった。C.E.71.9.26 ヤキンドゥーエ第二次攻防戦、地球連合とプラントの総力戦を経て、ついに戦争は停戦に至った。

停戦後、シンはトダカ一佐のはからいで一人、プラント行きのシャトルに乗る。シンは、オーブには戻りたいという気持ちは無かったからだ。CE.72.3.10、ユニウス条約が調印されたが、シンは軍に入隊する。力が無かったのが悔しかった、一瞬のうちに家族が吹き飛ばされてしまったことも、何故だか理解できなかったからだ。オーブは「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない」という自国の理念は守り通したが、結局シンの家族は守ってくれなかったからだ。

C.E.73.10.2 アーモリーワンでのカオス、ガイア、アビスの強奪事件が発生する。そしてユニウスセブン落下事件、ブレイク ザ・ワールドが起き、そして地球、プラント間の戦争が再び始まった。その戦場にいるシンは誓う、「ならば、今度は自分が戦って、みんなの大事なものを守ってみせる」と。
PHASE - 21 さまよう眸 朝、デュランダル議長を乗せたヘリの音で目が覚めるアスラン。気づくと、隣に誰かが寝ている。それはネグリジェ姿のミーアだった。驚くアスラン。そこにルナマリアの声。「おはようございます、隊長。お目覚めでいらっしゃいますか?よろしければバイキングをご一緒にと思いまして。」「あ、あっ、ああ。」慌ててドアを開けようとするアスラン。起きて何事かとアスランを見ているミーアを眺めつつ、自分の姿も、とても外に出られるような格好ではないことに気づき、慌てて軍服のズボンをはく。そのアスランの姿を見て、不機嫌になるミーア。アスランの制止も聞かず、ルナマリアがもう一度ノックをしようとしていた、まさにその瞬間、ドアを開ける。出てきたミーアの姿に今度はルナマリアがぎょっとする。「ありがとう。でもどうぞお先にいらしてくださいな。アスランも後から私と参りますわ。」バタンと閉まるドア。ルナマリアは精気を抜かれたように、よろめきながらアスランの部屋を後にする。戻ってきたミーアに対して、当然怒りを露わにするアスラン。「一体、どういうつもりだ。」「えっ、だってあの娘。」「あの子じゃない。一体どうして?何時?なんでこの部屋に。」「お部屋に行くって約束してたのに、寝ちゃったみたいってフロントに言って。」「はぁ?」「そしたら本当に寝ちゃってるし。」「はあ。」大きくため息をつくアスラン。「だから、何でこんなことをするんだ。君は!」「えっ?だって久しぶりに婚約者に会ったら、普通は。」「ラクスはそんなことはしない。」うつむくアスラン。驚き、アスランの顔をのぞき込むように伺うミーア。「え?しないの?なんで?」頭を抱えるアスラン。

ホテルのラウンジに現れるシンとルナマリア。シンに愚痴をこぼすルナマリア。どうも今朝のアスランとの一件で不機嫌なようだ。その2人に声をかけてきたハイネ。「お前達、昨日のミネルバのひよっ子だろう?もう一人のFEITHの奴はどうした?」姿勢を正し、敬礼するルナマリア。「失礼致しました。おはようございます。」シンもそれにつられ敬礼する。「隊長はまだお部屋だと。。」と言った瞬間、遠くからミーアの声が聞こえてくる。アスランとその腕に絡みつきしゃべり続けるミーアが現れる。「なるほどね。わかったわかった。サンキュー。」とルナマリアに返事するハイネ。そして、ミーアに対して、敬礼をする。「おはようございます、ラクス様。」その声にハイネの方を見るミーア。敬礼するアスラン。その前を割り込むようにハイネの方に歩いていくミーア。「あーら、おはようございます。」「昨日はお疲れ様でした。基地の兵士達もたいそう喜んでおりましたね。これでまた、士気もあがることでしょう。」「ハイネ様も楽しんでいただけましたか?」「はい、それはもう。」そして、視線をアスランへと変える。「昨日はごたごたしていて、まともに挨拶が出来なかったな。特務隊、ハイネ・ヴェステンフルスだ。」と言いながらアスランに手を差し出すハイネ。「よろしくな、アスラン。」握手をするアスラン。「こちらこそ、アスラン・ザラです。」「知っているよ。有名人。復隊したって聞いたのは最近だけどな。前はクルーゼ隊にいたんだろ?」「は、はい。」「俺は大戦の時はホーキンス隊でね、ヤキン・ドゥーエではすれ違った、かな。」しばし沈黙する一同。ミーアは打ち合わせがあるということで、呼ばれ、「では、アスラン。また後ほど。」と言い残し、その場を後にする。
「仲いいんだな、結構。」ハイネに言われ、返答に困るアスラン。「ええ、いや、そんなことは。」「いーじゃないの、仲いいってことは、いいことよ。うん。」そう言いながら、椅子に座るハイネ。「はい。」「で、この3人と昨日の金髪の全部で4人か。ミネルバのパイロットは。」「あ、はい。」「インパルス、ザクウォーリア、セイバー、そしてあいつがブレイズザクファントムか。」何を意味しているのか分からない様子のアスラン達。「で、お前FEITHだろ?艦長も。」「はぁ。」「人数は少ないが、戦力としては十分だよな。やっぱ、なんで俺にそんな船に行けと言うかね、議長は。」その言葉に鋭く反応するルナマリア、シン。「ミネルバに乗られるんですか?」アスランの問いかけ。「まあ、そういうことだ。休暇明けから配属さ。船の方には後から着任の挨拶に行くが、なんか面倒臭そうだよな。FEITHが3人っていうのは。」「ええ、まあ。」「まあいいさ。現場はとにかく走るだけさ。立場が違う者には見えてるものが違うってね。とにかくよろしくな。議長期待のミネルバだ。何とか応えてみせようぜ。」「は、よろしくお願いします。」敬礼するアスラン。つられてルナマリアとシンも敬礼する。

ミーアは、早々にこの地を離れることとなった。「では、アスラン。」「はい、どうぞ、お気をつけて。」敬礼するアスラン。ミーアはアスランの肩に手をやる。「キスくらいはするでしょう?普通。」アスランにキスをしようとするミーア。「いい加減にしろ。」ミーアを強引にヘリの方に向かせ、ヘリの中に押し込もうとするアスラン。その様子を眺めているシンと明らかに不機嫌そうなルナマリア。ミーアを乗せたヘリは飛び立って行った。「さあ、どうしようかな、今日これから。」ホテルの中に入っていくルナマリア。「どうって?」後を追いかけるシン。「街に出たい気もするけど、一人じゃつまんないしね。」そう言いながらエレベータを待つルナマリア。「レイにも悪いから、船に戻ろうかな。」「シンと行けばいいじゃないか。」という後方からのアスランの声。その声にムッとしながら、エレベータへ乗り込む。そのエレベータに後から乗ってくるアスラン。「せっかくの休暇だ。のんびりとしてくればいい。船には俺が戻るから、気にしなくていいぞ。あ、でも。」アスランの言葉を遮るルナマリア「そっか、隊長はもういいですよね。ラクス様ともう十分ゆっくりされて。」その言葉に絶句するアスラン。「そうですよ。どうせならラクス様の護衛について差し上げれば良かったのに。」「ルナマリア!」「隊長はFEITHですもの。そうされたって問題はないでしょ。」怒ってエレベータから出て行くルナマリア。「ちょっと待て。ルナマリア。」後を追うアスラン。後から来たシンを先に行かせ、弁解をするアスラン。「女でも叩きます?」その言葉にはぁと大きくため息をつくアスラン。「今朝のことは、俺にも落ち度があることだから言い訳はしたくないが、君は誤解しているし、それによってそういう態度をとられるのも困る。」「ごかい?誤解も何もないと思いますけど。分かりました。以後気をつけます。ラクス様がいらしている時は。」「いや、だから。」「大丈夫です。お二人のことは私だってちゃんと理解しているつもりですから。」敬礼をして去っていくルナマリア。「はあ」大きく落ち込むアスラン。

ミネルバ、艦長室。タリアは一人、配属の決まったハイネのプロフィールを眺めていた。「ただの補充兵、じゃないわよね。まったく何を考えているのかしら?あの人。」

シンは一人、バイクで海岸線を走っていた。バイクを止め、海の景色を眺めているシン。そこに少女(ステラ)の歌声が聞こえる。その姿に微笑ましさを感じているシン。再び海へと視線を戻した時、「きゃあ」という叫び声と遅れて、海に何かが落ちたような音が聞こえる。「お、おいまさか。」先ほど少女がいた崖の方に走っていくシン。そして崖から海をのぞき込むとおぼれている少女の姿が。「うそだろう?落ちた?え?泳げないのかよ。」
覚悟を決め、飛び込むシン。おぼれるステラを海上に引き上げたはいいが、暴れるステラはなかなか静まってくれない。「くそぉ、落ち着け。」シンは強引にステラを仰向けにした。浮くステラの体。沈まないと分かったステラはようやく落ち着きを取り戻す。

ようやく崖下にたどり着き、海よりはい上がってきた2人。「死ぬ気か?この馬鹿!」ステラに怒鳴るシン。だが、NGワードを聞いてしまったステラは錯乱状態へと陥る。「泳げもしないのに、あんなとこ。なにボォとして。」とまで言い、ステラの様子がおかしいことに気づくシン。ステラは何かにおびえ、逃げ出すかのように再び海へと戻っていく。「死ぬのはいや、怖い。」シンは、ステラが過去ひどい目に遭ったのだと直感する。ステラを抱き寄せる。「ああ、分かった。大丈夫だ。君は死なない。」その言葉に何かを感じ取った様子のステラ。「大丈夫だ。俺がちゃんと、ちゃんと守るから。」だんだんと落ち着きを取り戻すステラ。そして安堵したからなのか泣き始める。「ごめんな、俺が悪かったよ。ほんと、ゴメン。もう大丈夫だから。ね!」

夕暮れ間近。ステラを海より引き上げたシンは、ステラを慰めるように言う。「大丈夫、もう大丈夫だから。君のことはちゃんと、俺がちゃんと守るから。」ようやく泣きやんだステラ。「まもる?」シンに問いかけるステラ。「うん、だからもう大丈夫だから。君は死なないよ、絶対に。」シンの手を自分の頬に当て、「まもる」と言うステラ。「うん、守る。」安心感に包まれたような顔のステラ。
「大丈夫?寒くない?」そう言いながらステラの体を拭いてあげるシン。そしてくるぶしある傷口を見つける。「岩で切っちゃったのかな。痛い。」シンは拭くのに使っていたタオルを強く絞り、傷口を手当した。
「でも、どうすればいいんだ?この娘泳げないし。後で何言われるかわからないけど。まあいいか。」そう言いながら、救難信号を発信するシン。
洞窟で暖をとるのと、濡れた服を乾かすために火をたき、救助を待つシン。「君はこの街の子?名前は?分かる?」「なまえ、ステラ。まち、しらない。」「じゃあ、いつもは誰と一緒にいるの?お父さん?お母さん?」「いっしょはネオ、スティング、アウル。おとうさん、おかあさん、しらない。」「そうか。きっと君は怖い目にあったんだね。」ステラはその言葉に振り向く。「怖い目?」「ああ、ごめん。今は大丈夫だよ。僕が、いや、うーん、俺がちゃんとここにいて守るから。」「ステラを守る。死なない。」「うん、大丈夫。死なないよ。」安心したような態度のステラ。「ああ、俺、シン。シン・アスカって言うの。分かる?」「シン?」「そう、シン。覚えられる?」「シン。」そう言うと、立ち上がり、何かを干してある自分の服から取り出してくる。シンの方に向かってくるステラ。裸同然のステラの姿に目のやり場を無くし、咄嗟に目をつぶるシン。「はい。」何かを差し出すステラ。「くれるの。」何かのかけらみたいだ。「ありがとう。」喜んで受け取るシン。微笑むステラ。

「休暇中にエマージェンシーとは、本当やる時は派手にやってくれる奴だな。君は。」船に乗ったアスランが、シンの姿を発見するや否や、そのように言う。船からのライトがまぶしく、目を覆いながら洞窟より出てくるシン。「隊長。」「なんでこんなところで遭難するんだ。」「別に遭難したわけじゃないですよ。ただちょっと。」洞窟から飛び出て、シンの後ろに身を隠すかのようにすり寄るステラ。
船に救出されたシンとステラ。「この娘が崖から海へ落ちちゃって、助けてここに上がったのはいいけど、動けなくなっちゃって。」「ディオキアの街の子か?」「いえ?それがちょっとはっきりしなくて。」「ええ?」「たぶん戦争で親とか亡くして、だいぶ怖い目に遭ったんじゃないかと。」「そうか、名前は。」「ステラです。」「家は?分かるのか?」「いえ、それが。。。」「名前しか分からないだなんて。基地に連れて行ってそこで身元を調べてもらうしかないなぁ。」その時、ステラを探すスティングやアウルの声が聞こえる。その声にはっと反応するステラ。
ステラをジープに乗せ、スティング達の元に急ぐアスランとシン。スティング達の車がこちらの方向に向かって来た。「あれだ。」「止めろ。」クラクションを鳴らしながら、ジープを停める兵士。「スティング」スティング達の車ぬ向かって叫ぶステラ。スティングはその声に反応して車を停める。「ステラ。」「ってあれ、ザフトのジープじゃんか。」
ジープに車を近づけるスティング。「ステラ!」「スティング。」スティングの後ろから、アウルがこっそり言う。「おいおい、赤服だぜ。」「しっ。」駆け寄ってくるステラ。スティングに抱きつく。「どうしたんだ、お前。一体。」「海に落ちたんです。俺、丁度、側にいて。」スティングに近寄ってきたシンが説明をする。「はは、でも良かった。この人のこと、色々とわからなくて、どうしようかと思ってたんです。」「そうですか。それはすみませんでした。ありがとうございます。」アスランはアウルの顔を見つめていた。つい今し方までアスラン達の方をにらんでいたのに、あさっての方向に視線を向けているアウル。アスランは、この3人を以前、アーモリーワンで見ていることを思い出していた。
「では。」「ザフトの方々には本当に色々とお世話になって。」ステラはジープに乗り込んだシンの元へ寄って来た。「シン、いっちゃうの?」「あ、ああ、ごめんね。」がっかりしている様子のステラ。「ほら、でもお兄さん達来たろ。だからもう、大丈夫だよ。あ、えーと、また会えるから。ね。」その様子を見て、アスランが声をかける。「いくぞ、シン。いいか。」「あ、はい。」走り出すジープ。「ごめんね、ステラ。でもきっと、ほんと、また会えるから。」ステラに声をかけるシン。そして見えなくなるジープ。ステラはジープの走り去った方角を見つめていた。「シン。ステラ守るって。」スティング達に促されて車に乗るステラ。走り出す車。
シンは振り返り、後ろを見つめていた。ステラのことを気にかける様子で。
PHASE - 22 蒼天の剣 地球連合は次の手を打つことが出来ず、手詰まりの状態になっていた。ジブリールと合衆国大統領の会談では、ジブリールがこの状態に業を煮やしていた。
「一体どうなっているのです。」
「それは君だって知っているだろう。プランの準備がまだ完全に整っていなかった所へもってきてあの被害。それでも君の言うとおり強引に開戦してみれば、こちらの攻撃はすべてかわされ、あっという間に手詰まりだ。これではあちこちで民衆が跳ねっ返り、ごり押しで結んだ同盟が、ほころび始めるのも無理はないさ。」
大統領の弁解に怒りを露わにするジブリール。「私はそんな話が聞きたいのではない。」つまる合衆国大統領。「私はそんな現状に対して、あなた方がどんな手を打ってらっしゃるのかを聞いているのです。コーディネータを倒せ、滅ぼせ、やっつけろと、あれだけ盛り上げて差し上げたのに、その火を消してしまうおつもりですか。」椅子の肘掛けに、グラスをたたきつけるように置くジブリール。
「ジブリール。。」「弱い者はどうせ最後には力の強い方につくんです。勝つ者が正義なんです。ユーラシア西側のような現状をいつまでも許しておくから、あちこちで跳ねっ返りが出るんです。」立ち上がり、力説するジブリール。
「だが、我らとて手一杯なのだ。だいたい君のファントムペインだって、大した成果を上げられていないじゃないか。」反論する大統領。
「ですから!。。そうだ、オーブですよ。」「えっ?」「あの国は今は我々の陣営だ。そして、その戦力はなかなかの物のはず。黒海には彼らに行ってもらえばいいんです。同盟国の責務として、ザフトを追っ払い。。もはやあの国にノーは言えません。この間も面白いもの(アークエンジェル)が飛び出して、またこちらを驚かせてくれたりもしましたからねぇ。」

このジブリールの案はすぐにオーブに伝達された。当然ながら議会で黒海への派兵が可決され、ユウナが総司令官として戦場に赴くことになった。

J.P.ジョーンズ艦内。ステラが、シンの結んでくれたハンカチを抱きしめ騒いでいた。「これは駄目、あっちへ行って、触らないで。」「あー分かった分かった、もう触らないから。」「ごめん、ごめん。取ったりはしないよ。」騒ぐステラをなだめすかす医師達。
「どうした?」ネオが現れる。「ああ、いえ、寝かせる前に足の傷を看ておこうと思って、あのハンカチを取った途端、怒り出しまして。」ネオに耳打ちする医師。
「なんだ、ゴメンよステラ。大丈夫、誰も取りはしないよ。」頭をなでながら、ステラを落ち着かせるネオ。「本当に?」「ああ。ステラの大事な物を誰が取ったりするものか。だから安心してお休み。」ステラは納得し、ハンカチを抱えたままカプセルで眠りにつく。
「我ながら、なかなか悪いおじさんになった気がするよ。何が、大事な物を取ったりはしないだか。。」ネオの愚痴にフォローする医師。「毎度毎度お見事ですよ。」「記憶っていうのはあった方が幸せなのか、ない方が幸せなのか時々考えてしまうなぁ。あれだけ騒ぐってことは、よっぽど何かあったってことだろう?」「そうですねぇ。ちょっと強く印象付けられている様ですが、まっ、何とか消えるでしょう。」別の医師が話を続ける。「彼らには記憶はない方が幸せだと思いますよ。指示された敵をただ倒すだけの戦闘マシンに、余計な感情は邪魔なだけです。効率も悪くなる。」
その言葉にネオが答える。「ああ、分かっている。何を知っても、思っても、どうせ何にもならん。あの子達には。」そう言ってその場から立ち去ろうとするネオ。そこに注意するかのように声をかける医師。「情を移されると辛いですよ。」「街になんか出しちまったからなぁ。色々なんだろうが、メンテナンスは入念に頼むな。」「はい。」「あれほど死ぬのを怖がるあの娘が死なずに済むには、敵を倒し続けていくしかないんだ。」

ディオキアのザフト軍基地入港中のミネルバには、ハイネが正式配属となっていた。デッキに居座ったグフの整備マニュアルが、ヴィーノ達に配られる。うんざりした様子のヴィーノとヨウラン。
艦内では、アスランの案内でハイネが方々を回っていた。レイ、そしてシン、ルナマリアのいる休憩室に入ってくるハイネとアスラン。「しかし、さすがに最新鋭だな、ミネルバは。なあ、ナスカ級とは大違いだぜ。」アスランの方を見ながら話すハイネ。「ええ、まあ、そうですね。」相づちを打つアスラン。「ヴェステンフルス隊長は今まではナスカ級に?」尋ねるルナマリア。「ハイネでいいよ。そんな堅苦しい。ザフトのパイロットはそれが基本だろ?君はルナマリアだったね。」「ああ、はい。」「俺は今まで軍本部だよ。こないだの開戦時の防衛戦にも出たぜ。」
シンはこれからのチームが心配になったらしい。アスランに尋ねる。「隊長、あのぉ俺たちは、」「ヴェステンフルス隊長の方が専任だ。シン。」それを聞いていたハイネ。「ハ・イ・ネ」その言葉に黙ってしまうシンとアスラン。「あっ、でも何?お前隊長って呼ばれてるの?」そのハイネの質問に答えにくそうなアスラン。「ああ、まあいえ。はい。」「戦闘指揮を執られますので、我々がそう。」レイが口を挟む。「えっ!」驚くハイネ。「まあ、いやでもさぁ。そうやって壁作って、仲間はずれにするのは、あんまり良くないんじゃないの?俺たちザフトのモビルスーツパイロットは、戦場へ出ればみんな同じだろ?FEITHだろうが、赤服だろうが、緑だろうが、命令通りにわぁわぁ言われなきゃ戦えない地球軍のアホどもとは違うんだろ。」「はい。」とハイネの言葉に答えるアスラン。「だから、みんな同じでいいんだよ。あっ、それとも何?出戻りだからっていじめてんのか?」そのハイネの言葉に一斉に否定するみんな。「なら、隊長なんて呼ぶなよ。お前もお前だなアスラン。何で名前で呼べって言わないの?」「すみません。」「まあ、今日からこのメンバーが仲間ってことだ。息合わせてバッチリいこうぜ!」
どうしてよいか分からない様子のシンに、後ろからアスランがこそっと言う。「俺もああいう風にやれたらいいんだけどね。」「ん?」「ちょっとなかなか。」「隊長。。」「アスランだ。シン。」「ああ。」そこにハイネの怒号が。「おーい、何やってんだアスラン。お前が案内してるんだろうが。」「あっ、はい。すみません。」ハイネの元に走り寄るアスラン。

喜望峰経由で黒海に進路を取るオーブ軍旗艦、タケミカズチ。ブリッジでは、トダカ一佐とアマギが、どうしても今回の出撃に違和感を持っていることをこっそりと話している。「しかし、このようなことは口にしてはいけないのでありましょうが、今回の派兵、自分にはやはり疑問です。他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない。それがオーブの理念であり、我らオーブ軍の理念でもあったはずです。なのに。。」「ああ、分かっている。だがこれも国を守るためと言えばためだ。本当はいかなることがあろうともオーブの理念は守られて欲しいと、我々はアークエンジェルとカガリ様に願いをかけたのになぁ。間に合わぬのなら、せめてどこかでこの戦いをカガリ様が見ていてくださることを祈ろう。」「はい。」
一方、地球連合軍、スエズ基地。合流すべく近づくオーブ軍について話すネオ。「うん、オーブ派遣軍ねぇ。」「空母1、護衛艦6、明日の夕刻にはこちらに入る予定だそうですが。」「んー、それを使って黒海を取り戻せか。色々大変だなぁ、俺たちも。やること多くて。」「ええ。」「まっ、ええ、分かった。確かにあの辺りは押さえてとかなきゃならないところだからな。」
その頃、スティング達が目覚めていた。目覚めたステラは、自分が抱えていたハンカチに疑問を抱く。「何?これ。」ステラは、興味なさそうにハンカチをカプセルの中に捨て、カプセルを出て行った。

オーブ軍の接近はザフト軍にキャッチされていた。ミネルバでもタリア、アーサー、ハイネ、アスランが、この件でブリーフィングをしていた。「ジブラルタルを狙うつもりか、こちらへ来るかはまだ分からないわ。でも、この時期の増援なら巻き返しというのが常道でしょう。スエズへの陸路は立て直したいでしょうし、司令部も同意見よ。もう本当にせめぎ合いね。まっ、いつもの事だけど。」
タリアの言葉にハイネが質問する。「その増援以外のスエズの戦力は?つまりはどれくらいの規模になるんです?奴らの部隊は。」
「数はともかく、あれがいるのよ。インド洋にいた地球軍空母。」「ええ?」驚くアスラン。そしてアーサーが言う。「あ、あの例の強奪機体を使っている?」「そう、だからちょっと面倒なの。おそらく彼らも来るわ。」
アスランにそっと確認するハイネ。「強奪機体って、アーモリーワンのか。」「はい。そうです。」
「ともかく、本艦は出撃よ。最前衛、マルマラ海の入り口、ダーダネルス海峡へ向かい、守備につきます。発進は0600。」「はい。」「はっ。」とタリアの指示に返事するアスランとアーサー。
「あなたも、よろしい?」ハイネに尋ねるタリア。「ええ、それはもう。」
散会し、出て行こうとするアスランに声をかけるタリア。「それと、アスラン。」「はい。」「今度の地球軍の増援部隊として来たのは、オーブ軍ということなの。」驚くアスラン。「何とも言い難いけど、今はあの国も、あちらの一国ですものね。」「オーブが。。そんな。。」「でも、この黒海への地球軍侵攻阻止は、周辺のザフト全軍に下った命令よ。避けられないわ。避けようもないしね。今はあれも地球軍なの。いいわね。大丈夫?」「は、はい。」

発進するミネルバ。ステラからもらったかけらを大事にビンに入れたシン。ルナマリアから今回の増援がオーブだということを聞き、怒りを露わにする。そして増援がオーブだと言うことで迷いを捨てきれないアスラン。一人海を見つめていた。「オーブにいたのか。大戦の後ずっと。」ハイネの言葉に振り返るアスラン。「いい国らしいよな。あそこは。」「ええ。そうですね。」「この辺も綺麗だけどな。」「はい。」「戦いたくないか、オーブとは。」「はい。」「じゃあ、お前。どことなら戦いたい?」「ええ?」アスランを見つめるハイネ。「いや、どことならって、そんなことは。」「ああ、やっぱり。俺も。」とぼけた口調で言うハイネ。そして再び真剣な顔に戻る。「そういうことだろう。割り切れよ。今は戦争で、俺たちは軍人なんだからさ。でないと、死ぬぞ。」覚悟を決めたかのようなアスラン。「はい。」

ユウナはまんまとネオの口車に乗ってしまい、オーブ軍が先陣を任されることとなった。ユウナのネオに対する名調子に、あきれ顔のトダカ一佐達。「では、先陣はオーブの方々に。左右どちらかに誘っていただき、こちらはその側面からということで。」「ああ、そうですね、それが美しい。」「海峡を抜ければすぐに、対敵すると思いますが、よろしくお願いしますよ。」「ええ、お任せください。我が軍の力、とくとご覧にいれましょう。」

一方、まもなくダーダネルス海峡のミネルバ。コンディションレッドが発令し、モビルスーツデッキへ向かおうとするシンとアスラン。シンはいかにも不機嫌そう。声をかけるアスラン。「おい、シン。どうしたんだ。」「別にどうもしませんよ。オーブっていったって、今はもう地球軍なんでしょ。」
エレベータに乗り込む2人。アスランがぼそっと言う。「カガリが、彼女がいればこんなことにだけはならなかったかもしれないけどな。」「何言ってんですか、あんな奴。」「まだ、色々と出来ないことは多いけど、気持ちだけはまっすぐな奴だよ。カガリは。」「そんなの意味ありません。国の責任者が気持ちだけだなんて、アスハはみんなそうだ。」「君は本当はオーブが好きだったんじゃないのか?だから頭に来るんだろ?今のオーブ、オノゴロで君の家族を守れなかったオーブが。。」そのアスランの言葉に強く反発するシン。「違いますよ、そんなの。」

オーブ軍、タケミカズチから次々と飛び立つムラサメ、M1-アストレイ。その様子を見て、J.P.ジョーンズの艦長は、ネオに話しかける。「元気ですなぁ、オーブは。あれだけの遠征をしてきたというのに。」「必死になっても、まだ守ろうとするものがあるのさ。強いよね、そういう奴らは。善戦してくれることを祈ろう。本当にこれで今度こそ、あれを落とせればいいんだが。」
ミネルバに接近するオーブ軍モビルスーツ。その数20。タリアはセイバーとインパルスに出撃命令を下す。ミネルバを飛び立つ2機。ついにオーブ軍との戦いが始まった。
(君は本当はオーブが好きだったんじゃないのか?)さっきのアスランの言葉を思い出すシン。「えーい。」それを振り払うかのようにアストレイを叩き切っていくインパルス。
離水したミネルバに一斉砲撃を浴びせるオーブ軍。「取り舵30。ターンホイザーの射線軸を取る。」その命令にタリアの方を見るアーサー。「海峡を塞がない位置に来たらなぎ払う。まだ後ろにあの空母がいるはずよ。」「あっ、はい。」発射準備に取りかかるアーサー。
「何をしている。敵のモビルスーツはたったの2機だ。どんどん追い込め。モビルスーツ隊、全機発進。」ユウナの命令に制止を促すトダカ。「いや、それは。」「1機ずつ取り囲んで落とすんだよ。そうすれば、いくらあれだって落ちる。これは命令だぞ。」従わざるを得ないトダカ。次々とタケミカズチから飛び立つムラサメ。「くそー。」次々出てくるモビルスーツに手を焼くアスラン。

「ターンホイザー、軸線よろし。」「よし、起動、照準、敵護衛官群。」ミネルバのターンホイザーに火が入る。それに気づくオーブ。「敵艦、陽電子砲発射態勢。」「退避。面舵20。」トダカの命令がブリッジに響き渡る。
ターンホイザーの出力最大。「撃てー」とアーサーが命令したその時、ミネルバのターンホイザーを貫く閃光。爆発を起こすターンホイザー。「何だ?どこから。」シンの言葉に応えるかのように、上空から舞い降りるモビルスーツ。「何だ?」シンは何がなんだか分からない様子。
「フリーダム?キラ?」その機体を見たアスランの驚き。フリーダムのコクピットには、何者をも許さないという表情をしたキラが座っていた。
PHASE - 23 戦火の蔭 ターンホイザーを失ったミネルバは海へ不時着した。そのミネルバを見て怒りに震えるシン。
フリーダムの後ろより近づくのはアークエンジェル。そのアークエンジェルから飛び立つ1機の機体。それはカガリの乗るストライクルージュだった。「私はオーブ首長国連邦代表、カガリ・ユラ・アスハ。」その言葉を聞き、驚くオーブ軍の兵士達、ミネルバ乗組員、ユウナ、そしてアスラン。「オーブ軍、直ちに戦闘を停止せよ。軍を退け。」

話は少し前にさかのぼる。
アークエンジェルにもオーブ軍のスエズ派兵のニュースが届いた。「オーブが、スエズに軍を派遣?」聞いたニュースの内容に呆然とするカガリ。「そんな、ウナトは、市長会は一体何を。」「だが、仕方なかろう。」バルトフェルドが口を開く。「同盟を結ぶということは、そういうことだ。」「そして、それを認めちゃったのはカガリでしょ。」キラが口を挟む。「こうなるとは、思ってなかった?」やや冷たい態度のキラ。「わ、私は。。」悲しそうなカガリ。
「そう言わないの。私たちだってあのとき、強引にカガリさんを連れてきちゃって、彼女がオーブにいたら、こんなことにだけはならなかったかもしれないのよ。」とキラ達をなだめるラミアス。「いえ、同じことだったと思いますよ。」頑として主張を変えないキラ。「あの時のカガリは、これが止められたとは思えない。」言い返す言葉を失うカガリ。
「でも、今はきっと、違いますでしょ。」ラクスが話の中に入ってくる。「今のカガリさんなら、あのとき見えなくなっていたものが、お見えになってらっしゃると思いますわ。」「ラクス。」カガリに微笑みかけるラクス。
「だが、どうする?これを。オーブがその力を持って連合についたとなると、また色々と変わるだろうな。バランスが。」バルトフェルドが今後の動きについての話し合いへと話題を振る。「ええ、そうね。」答えるラミアス。「それが、今後。」とバルトフェルドが続けようとした瞬間、「キラ、発進してくれ。」と何か決心したカガリが口を開く。「カガリ。」驚くキラ、そしてブリッジのみんな。「今更馬鹿げた感傷かもしれないが、この戦闘、できることなら私は止めたい。オーブは、こんな戦いに参加してはいけない。が、オーブだけではない。本当はもうどこも、誰も、こうして戦うばかりの世界にいてはいけないんだ。だから頼む、キラ。そうして少しずつでも間違えてしまった道を、今からでも戻らねば。オーブも。」

オーブ軍の前に立ちはだかる、カガリのストライクルージュ。
「現在、訳あって国元を離れてはいるが、このウズミ・ナラ・アスハの子、カガリ・ユラ・アスハがオーブ連合首長国代表首長であることに変わりはない。その名において命じる。オーブ軍はその理念にぞぐわぬこの戦闘を直ちに停止し、軍を退け。」
この状況に苦虫をかんだような顔をするユウナ。そこにネオからの通信が入る。「ユウナ・ロマ・セイラン、これはどういうことだ。」慌てて答えるユウナ。「ああ、ああ、いや。これは。」「あれは何です?本当に貴国の代表ですか?」「うっ。」言葉に詰まるユウナ。「ならば、それがなぜ今頃。あんなものに乗って現れて、軍を退けというんですかね。これは今すぐきっちりお答えいただかないと、お国もとをも含めて、色々と面倒なことになりそうですが?」
「これは、いや、だからあれは。。」ついに切れるユウナ。「えぇい。あんなもの、私は知らない。」タケミカズチのブリッジにいたトダカ一佐以下、みなが驚愕する。そして、その言葉にニヤリとするネオ。その時、スティング達に出撃命令が下る。灯がともるカオス、ガイア、アビスの各ガンダム。通信を終えたユウナに詰め寄る、ブリッジのトダカ一佐達。「ユウナ様、何をおっしゃいますか?」「あれはストライクルージュ。あの紋章もカガリ様のものですよ。」「な、だからと言って、なんでカガリが乗っているってことになる?そんなの分からないじゃないか。」「いやしかし、あのお声は。」「に、偽物だ、あんなの。僕には分かる。僕には分かる。本当なんだぞ、僕は。」「ユウナ様!」「で、でなければ操られてるんだ。本当の、ちゃんとした僕のカガリなら、こんな、馬鹿げた、僕に恥をかかせるようなことを、する、はずがないだろう?」「ユウナ様」「何をしている。早く討て、馬鹿者。あの疫病神の船を討つんだよ。合戦用意。」もう錯乱状態のユウナであった。「あなたという方は。。」諫めようにも言葉のないトダカ。「でなきゃ、こっちが地球軍に討たれる。国も。僕はオーブのためにここまで来たんだぞ。それを今更、『はい、止めます』で済むか。」

この状況を、はやるアーサーを押さえながら伺うタリア。「まったく、何がどうなっているのやら。まさか、このままオーブが退くなんてこと。」と悩んでいる時、ハイネより連絡が入る。「艦長、動きがあったらこっちも出ますよ。いいですね。」「ええ、お願い。」と笑みを浮かべながら答えるタリア。

「ミサイル照準、アンノウンモビルスーツ。」トダカ、苦渋の命令。「トダカ一佐。」「我らを惑わす、賊軍を討つ。」「早く討て!」ユウナの罵声が飛ぶ。(頼むぞ、フリーダム)トダカはキラにカガリを託した。「撃てぃー。」
オーブ全艦からミサイルが発射される。冷静に全てのミサイルを打ち落とすフリーダム。安堵した様子のトダカ。だが、カガリの心境は穏やかではない。「オーブ軍、何をする。私は。」
その時、地球連合軍空母からは、カオス、アビスを始めモビルスーツが出撃を始めた。「よぉし。奇妙な乱入で混乱したが、幸い状況はこちらに有利だ。手負いのミネルバ、今日こそ沈めるぞ。」ネオの檄が飛ぶ。

「アーサー。迎撃。メイリン、モビルスーツ全機発進させて。」迫り来るモビルスーツに対して、命令を与えるタリア。ミネルバに襲いかかる、カオスとウィンダム。ルナとレイのザクが、ミネルバデッキに立ち、それらを迎え撃つ。
タケミカズチのブリッジでは、またしてもユウナの怒号が飛ぶ。「何やってるの、うちもさっさと攻撃させて。モビルスーツ隊。ほら。」「あ、いえ。しかし。」慌てるトダカ。「ミネルバを討つんだよ。また言われちゃうじゃないか。うちは地球軍なんだよ。それからあの船、アークエンジェルも。」「なんですと。」「あれがそもそも、我が国混乱の最大の原因でしょ。いつもいつもいつも。。だから一緒に片づけて。あの仮面男に、ちょっとはいいところ見せなきゃまずいでしょ。」

再びミネルバへの攻撃を始めるオーブ軍。「オーブ軍、私の声が聞こえないのか、言葉がわからないのか。オーブ軍、戦闘を止めろ。」カガリの言葉がただむなしく流れるだけだった。ストライクルージュを攻撃しようとしたムラサメを撃破しつつ、キラがカガリに呼びかける。「カガリ、もう駄目だ。残念だが、もうどうしょうもないみたいだ。」「キラ。」「下がって。後はできるだけやってみるから。」
ストライクルージュを残し、フリーダムを前進させるキラ。
ミネルバ、そしてアークエンジェルに襲いかかるオーブ軍。キラはSEEDを覚醒させ、オーブ軍モビルスーツを出来うる限り破壊せずに打ち落としてゆく。「バルトフェルドさん、カガリとアークエンジェルをお願いします。」そう言い残し、アークエンジェルを後にするキラ。「了解。」と言い席を立つバルトフェルド。「でも、俺、キラほどの腕はないからねぇ。こちらもフォローを頼みますよ、ラミアス艦長。」とラミアスに言いながらブリッジを後にする。「ムラサメ発進後、本艦はミネルバに向かいます。オーブと地球軍を牽制して。」指示を出すラミアス。
攻撃してくるオーブ軍のモビルスーツを撃てないカガリ。何者かによって打ち落とされるアストレイ。それはバルトフェルドだった。「撃てないのなら去れ、カガリ。ここでお前が落ちたら、それこそオーブはどうなる。」

「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない。我らオーブがこれを理念とし、様々に移り変わっていく長い時間の中でもそれをかたくなに守り抜いてきたのは、それこそ、我々が国という集団を形成して暮らしていくに当たり、もっとも基本的で大切なことと考えるからです。今、この状況下にあっても、私はそれを正しいと考えます。地球軍の軍門に下れば、確かに今、武力による侵攻は避けられるかもしれません。しかし、それは何より大切なオーブの精神への、いや、人としての精神への侵略を許すことになるでしょう。今陣営を定めねば討つという地球。しかし、我々はやはりそれに従うことは出来ません。今従ってしまえば、やがて来る何時の日か、我々はただ、彼らの示す者を敵として、命じられるままにそれと戦う国となるでしょう。侵略を許さず、これはオーブの理念です。我々はこれを守るべく、最後までその努力を続けます。しかし、残念ながら危機はすぐそこに迫っています。皆さん。」ウズミの演説を思い出しながら、泣き崩れるカガリ。

ミネルバに接近するアークエンジェル。ミネルバに襲いかかるモビルスーツを牽制しつつさらに近寄ってくる。「始めはこちらの艦首砲を撃っておきながらどういうことなの?まさか本当に戦闘を止めたいだけなのか。そういう馬鹿な話じゃないでしょうね。」
戦場を駆け抜けるフリーダム。アスランはキラと連絡を取りたいが、無線がつながらない。シンのインパルスのビームライフルも破壊され、そしてアビスガンダムのスラスターも破壊された。
そして対峙しているハイネとステラのところにも割り込んでくる。ガイアを小破させ、そしてハイネのグフの腕を叩き切るフリーダム。そしてフリーダムは、アスランの乗るセイバーにその体を向けていた。激怒するステラ。「私を、私をよくも」フリーダムめがけ、突進していくステラ。気が付かないキラ。そこにハイネのグフがふらっと割り込んでくる。「邪魔だぁ。」スラスターを全開にするステラ。ハイネのグフは真っ二つに叩ききられ、爆発した。ガイアは、フリーダムの蹴飛ばされ、墜落していく。ステラを回収するスティング。

戦場に打ち上げられる撤退信号。それを見届け撤退するキラ。そしてアークエンジェル。アスランはたった今、目の前で散っていったハイネへの悲しみから、キラ、アークエンジェルへ複雑な感情を抱かずにはいられなかった。 
PHASE - 24 すれ違う視線 ミネルバはマルマラ海、ポートタルキウスに入港する。発射寸前に破壊されたターンホイザーが、船体へ与えたダメージは大きく、修理にはかなりの時間がかかる様子。先の戦闘で並べられた遺体を見ながら、タリアは出来るだけ早く修理して欲しいとしか言える言葉を持っていなかった。
車に運び込まれるハイネの遺品。遠ざかるその車を見送るアスラン、シン、ルナマリア、レイ。ミネルバへの帰り道、シンが怒りを露わにする。「あいつらのせいか。あいつらが変な乱入、してこなきゃ、ハイネだって。。」そしてアスランの方を向き、さらに怒りの言葉を続ける。「だいたいなんだよ、あいつら。戦闘を止めろとか?あれが本当にアークエンジェルとフリーダム?本当に何やってんだよオーブは。馬鹿なんじゃないの?」吐き捨てるようなセリフを残し、一人行ってしまうシン。「シン。」心配そうにルナマリアが、そしてレイが後を追う。一人残されたアスラン。アスランにとっても、今回のアークエンジェル、キラの行動は納得のできるものでは無かった。「くっそー。」ブリッジの欄干を叩き、その怒りをどこにぶつけることもできず、ただ悔しさの残るアスラン。

「えっ?あの船の行方を?」アスランの申し出に驚くタリアであった。「はい。艦長もご存じのことと思いますが、私は先の大戦時、ヤキン・ドゥーエでは、あの船、アークエンジェルと共にザフトと戦いました。おそらくあのモビルスーツ、フリーダムのパイロットは、あのアークエンジェルのクルーも、そしてあそこで名乗りを上げたオーブの代表も、私にとってみなよく知る人間です。だからこそ、なおさらこの事態が理解できません。と言うか納得できません。」
「それは確かに、私もそうは思うけど。。」
「彼らの目的は地球軍に与したオーブ軍の戦闘停止、撤退でした。しかし、ならばあんなやり方でなくても、こんな犠牲を出さなくても手段はあったように思えます。彼らは何かを知らないのかもしれません。間違えているのかもしれません。無論、司令部や本国も動くでしょうが、そうであるなら彼らと話し、解決の道を探すのは、私の仕事です。」
「それは、ザフトのFEITHとしての判断、ということかしら。」
「はい。」
アスランの方を見て、そして仕方のないという態度をしながらアスランに告げるタリア。「なら、私に止める権限は無いわね。確かに無駄な戦い、無駄な犠牲だったと思うわ。私も。あのまま地球軍と戦っていたら、どうなっていたかはわからないけど。。。いいわ。わかりました。あなたの離艦、了承します。でも、一人でいいの?」
「はい、大丈夫です。」力強く敬礼をするアスラン。「ありがとうございます。」
ミネルバを離れるセイバー。「何?どうしたの?」ルナマリアが、デッキに駆け込んでくる。そこにいたシンとヴィーノは、さて?という顔。

アスランはアークエンジェルが消えたと思われる地点まで、車を走らせていた。その時、歩道に立っている女性が、見慣れた顔であることに気づく。道路を横切り、階段を下りていこうとする女性に声をかける。「ミリアリア!ミリアリア・ハウ。」ミリアリアが気づき、アスランの方に顔を向ける。サングラスをとり、顔を見せるアスラン。「アスラン、、ザラ?」
「そう、それで開戦からこっち、オーブに戻らず、ザフトに戻っちゃったというわけ?」海辺のカフェで向かいあって話をするアスランとミリアリア。「ああ、簡単に言うと、そういうことだ。」うつむくアスラン。もっとそれには複雑な状況があると訴えたそうな態度であるが。「向こうではディアッカにも会ったが。」「ええ?」嫌な顔をするミリアリア。
それを察知して話を変えるアスラン。「それはともかく、アークエンジェルだ。あの船がオーブを出たことは知っていたが、一体なんでまたこんなところで。あの介入のおかげで、、この、、だいぶ。。」言葉を濁すアスラン。
「混乱した。」ミリアリアのその言葉に驚くアスラン。「知っているわよ。全部見てたもの、私も。」鞄から写真を取り出すミリアリア。その写真を見るアスラン。「でも、アークエンジェルを捜して、どうするつもり?」「話したいんだ。会って話したい。キラと、カガリとも。」「今はまた、ザフトのあなたが?」「それは。」
「いいわ。手がないわけじゃない。あなた個人にならつないであげる。私も長いことだいぶオーブには戻ってないから、詳しいことはわからないけど、誰だってこんなこと、本当は嫌なはずだものね。きっとキラだって。」

アークエンジェル。食事中のバルトフェルドに話しかけるラミアス。「でも、どうしたらいいのかしらね。これから。」
アークエンジェル内の風呂に同じタイミングで入っているキラ、そしてカガリ。カガリはなにやら考え事をしているようだ。そこにラクスが入ってくる。
「ま、先日の戦闘では、こちらの意思は示せたってところかな。」先ほどのラミアスの問いに答えるバルトフェルド。「だが、これでまたザフトの目も、こちらに向くことになるだろうし、厳しいな。色々と。」「そうよね。」ラミアスはそうとだけ答える。
カガリにお湯をかけ、悪ふざけを始めるラクス。「何をするんだラクス。やめろよ。」「だって、とてもお暗い顔をなさってるんですもの。どうされましたか。」「これで良かったのかな、って思って。」「まず決める。」「え?」「そしてやり通す。それが何かを成す時の唯一の方法ですわ。きっと。」「ラクス。」「ね。」カガリの方に優しい顔を向けるラクス。「ん、ありがとう。」風呂を出るカガリ。アスランから貰った指輪を大事そうにはめる。

雨の中にたたずむミネルバ。「探索任務?でありますか」シンの声が聞こえる。「そうだ、これも司令部からの正式な命令なんだぞ。」なだめすかすように言うアーサー。「地域住民からの情報なんだが、この奥地に連合の息のかかった、なにやら不明な研究施設のようなものがあるそうだ。今は静かだそうだが、以前は車両や航空機、モビルスーツなども出入りしていたかなりの規模の施設ということだ。君たちには明朝、ここの調査に行ってもらいたい。」「そんな仕事に俺たちを?でありますか。」「シン、いい加減にしろ。」諭すレイ。「そんな仕事とか言うなぁ?もし武装勢力が立てこもってでもいたら、どうする。そういう任務なんだ。しっかりと頼むぞ。」「了解しました」と敬礼を返すレイ。渋々習って敬礼するシン。

ホテルでミリアリアからの連絡を待つアスラン。それを監視するルナマリア。
「ダーダネルスで天使を見ました。また会いたい。赤のナイトが姫を捜しています。どうか連絡を。ミリアリア。」この電文をアークエンジェルは受信していた。「ミリアリアさん?」ラミアスの問い。「赤のナイト?」ラクスの問い。そしてカガリは気づく。「アスラン。」「ターミナルから回されてきたものなんでしょ。」ラミアスの問い。「ダーダネルスで天使を見たって、じゃあミリアリアさんもあそこに。」「彼女、今はフリーの報道カメラマンですからね。来ていたとしても不思議はありません。」
「アスランが、アスランが戻ってきて居るんだ、キラ。」キラの方を向くカガリ。だが、キラは難しい顔をしていた。「プラントからということか。さぁて、どうする、キラ。」バルトフェルドがキラに尋ねる。注目を集めるキラ。「え?」カガリは事態が良く分かってないらしい。「誰かに仕掛けられたとしちゃ、なかなか洒落た電文だがな。」バルトフェルドが疑問を解くかのように説明する。「でも、ミリアリアさんの存在なんて。」「確か、彼女自身は知っているはずですがね。この船への連絡方法を。」「あっ。」ようやくカガリは、みなが何を気にしていたのかに気づく。
「会いましょう。」キラの口が開く。「アスランが戻ったのなら、プラントのことも色々と分かるでしょう。」「んー。」相づちをするバルトフェルド。「でも、アークエンジェルは動かないでください。僕が一人で行きます。」「え?」と不安そうな声を上げるラクス。「大丈夫。心配しないで。」「私は一緒に行くぞ。」割り込んでくるカガリ「え?」今度はキラがカガリに聞き返す。「いや、あの、でも。」何も理由が見つからず、困ってそうなカガリ。「いいよ。じゃあ、僕とカガリで。」嬉しそうなカガリ。

アスランが動く、その後を追うルナマリア。
同じ頃、シン達も探索任務のため、出撃していた。

海辺。キラとカガリが崖をよじ登って現れる。「キラ!」走り寄ってくるミリアリア。「ミリアリア。」「うわー、もう、本当に信じられなかったわよ。フリーダムを見た時は。花嫁をさらって、オーブを飛び出したっていうのは聞いてたけど。」うつむくカガリ。「いやー、その話はあの。。。それよりアスランは?」「あっ、ゴメン。用心して通信には書けなかったんだけど、彼、ザフトに戻ってるわよ。」その言葉に驚くキラとカガリ。「ザフトに?」「アスランが。」
そこに飛んでくるセイバー。「あの機体。」戦場で見覚えのあるセイバーを思い出すキラ。コクピットから降りてくるアスラン。「キラ、カガリ。」「アスラン。」
「どういうことだ、アスラン。お前。」にじり寄るカガリ。「ずっと、ずっと心配していたんだぞ。あんなことになっちゃって。連絡も取れなかったけど。でもなんで、なんでまたザフトになんか戻ったりしたんだ。」
その会話をこっそり盗聴しているルナマリア。
「その方が良いと思ったからだ、あの時は。自分の為にも、オーブの為にも。」「そんな、何がオーブの。」とカガリが言おうとした瞬間、「カガリ。」と止めるキラ。「あの、キラ。」
キラが前に歩み出る。見つめる2人。「あれは君の機体?」セイバーを見上げるキラ。「ああ。」「じゃあ、こないだの戦闘。」「ああ、俺もいた。今はミネルバに乗っているからな。」驚く2人。「お前を見て話そうとした。でも通じなくて、、だが、なぜあんなことをした。あんな、馬鹿なことを。おかげで戦場は混乱し、お前のせいでいらぬ犠牲も出た。」
「馬鹿なこと?」カガリが反論する。「あれは、あのときザフトが戦おうとしていたのはオーブ軍だったんだぞ。私たちはそれを。」「あそこで君が出て、素直にオーブ軍が撤退するとでも思ったか」「ああ。」たじろぐカガリ。「君がしなければいけなかったのは、そんなことじゃないだろう。戦場に出てあんなことを言う前に、オーブを同盟になんか参加させるべきじゃ無かったんだ。」「そ、それは。」アスランは、カガリの指にある自分のあげた指輪を見て、言葉を失った。
「でも、それで、今君がザフト軍だっていうなら、これからどうするの。僕たちを捜していたのは、何故?」「キラ、それは。」「止めさせたいと思ったからだ。もうあんなことは。ユニウスセブンのことは分かってはいるが、その後の混乱はどう見たって連合が悪い。それでもプラントはこんな馬鹿なことは、1日でも早く終わらせようと頑張っているんだぞ。なのにお前達は、ただ状況を混乱させているだけじゃないか。」
「本当にそう?」「ええ?」「プラントは本当にそう思ってるの?あのデュランダル議長って人、戦争を早く終わらせて、平和な世界にしたいって。」「お前だって議長のしていることは見ているだろう。言葉だって聞いたろ。議長は本当に。」
「じゃあ、あのラクス・クラインは?今、プラントにいる、あのラクスは何なの?」「あ・あれは。」「そして何で、本物の彼女がコーディネータに殺されそうになるの?」「え?」キラの言葉に驚くアスラン。

探索すべき目的地に着いたシンとシン。2人で探索を開始する。さびれ、既に荒廃している施設には、人の気配はしなかった。用心しながら施設内に足を踏み入れていく2人。

「殺されそうにって、なんだそれは。」「オーブで、僕らはコーディネータの特殊部隊とモビルスーツに襲撃された。狙いはラクスだった。だから僕はまた、フリーダムに乗ったんだ。」「そんな。」「彼女もみんなも、もう誰も死なせたくなかったから。」盗聴しているルナマリアにとっては衝撃の事実以外の何物でも無かった。ただ呆気にとられている表情。「彼女は誰に、何で狙われなければならないんだ。それがはっきりしないうちは、僕らはプラントが信じられない。」「キラ。」

あの一室に入り込む2人。明かりをつけるシン。「なんだ、ここは。」レイは突然、何かにおびえるようにかがみこんでしまう。「どうしたんだレイ。」うめくレイ。そこには人体実験を行っていたかのようなカプセルがいくつも並んでいた。。。
PHASE - 25 罪の在処 ミーアが現れた時の経緯を思い出すアスラン。そしてしばし考え込む。ミーアの言葉、デュランダルの言葉。。。
「それは、ラクスが狙われたというのなら、それは確かに、本当にとんでもないことだ。だが、だからって議長が信じられない、プラントも信じられないっていうのはちょっと早計過ぎるんじゃないのか?キラ。」「アスラン。。」
「プラントにだって色々な思いの人間がいる。ユニウスセブンの犯人達のように。その襲撃のことだって、議長のご存じないごく一部の人間が、勝手にやったことかもしれないじゃないか。」
その言葉に驚くキラ。「アスラン?。。。」
「そんなことくらい、わからないお前じゃないだろう。」
「それはそうだけど。」
「ともかくその件は俺も船に戻ったら調べてみるから。だからお前達は今はオーブに戻れ。」
「えっ?じゃあお前。」アスランが自分達の考えと明らかに違っていることを悩むカガリ。
「戦闘を止めたい。オーブを戦わせたくないというのなら、まず連合との条約から何とかしろ。戦場に出てからじゃ遅いんだ。」
「それは。。わかってはいるけど。じゃあ、お前は戻らないのか?アークエンジェルにも、オーブにも。」
言葉が見つからないアスラン。そのカガリの切実な願いに答えたい様子ではあるが。しばし、悩み。。「オーブは、今まで通りの国であってくれさえすれば、行く道は同じはずだ。」
「アスラン!」
「俺は復隊したんだ。」
そのアスランの言葉に、自分たちの所に戻ってきてくれるかもという考えを完全にたたれ、ただ驚くカガリ。
「今更戻れない。」
「そんな。。」
カガリの指にはめられた指輪を見て、それ以上言葉を続けるのが辛そうなアスラン。カガリの肩にそっと手を添えるキラ。
「でも、それじゃあ、君はこれからもザフトで、またずっと連合と戦っていくっていうの?」
「。。。終わるまでは、仕方がない。」
「じゃあ、この間みたいに、オーブとも?」
「俺だってできれば討ちたくはない。でも、あれじゃあ戦うしかないじゃないか。」驚くキラ、カガリ。「連合が今、ここで何をしているか、お前達だって知っているだろう。それは止めさせなくちゃならないんだ。だから、条約を早く何とかして、オーブを下がらせろと言っている。」
「でも、アスラン。。それもわかってはいるけど、それでも僕たちは、オーブを討たせたくはないんだ。」
「キラ!」
「オーブだけじゃない。戦って、討たれて失ったものは、もう二度と戻らないから。」
その言葉に、先の戦闘で失ったミネルバの乗組員、そしてハイネのことを思いだし、カッとなるアスラン。「自分だけ分かったような、綺麗ごとを言うな!お前の手だって、既に何人もの命を奪ってるんだぞ。」
「うん、知ってる。」キラが素直に自分の非を認めたことに驚くアスラン。「だからもう、本当に嫌なんだ。こんなことは。」「キラ。。」
「討ちたくない、討たせないで。。。」

盗聴を続けていたルナマリア。そこに無線連絡を知らせるアラームが鳴る。それはミネルバの発進を告げるものだった。レイが例の施設内で倒れ、運び出したシンであったが、レイの調子が未だ思わしくなく、ミネルバに状況を報告。事態を重く見たタリアが、ミネルバを発進させたという訳だ。

「ならばなおのことだ。あんなことはもう止めて、オーブへ戻れ。いいな。」そして、身を翻し、セイバーの方へ向かって歩き始めるアスラン。止めようとするカガリ。「アスラン。」立ち止まり、顔だけカガリの方に向けるアスラン。伝えたいが言葉にならない想い。うつむき、「理解はできても、納得ができないこともある。俺にだって。」とだけ言う。
飛び立つセイバー。セイバーのコクピットから、キラ達を見つめるアスラン。そして、その場所から離れていく。

例の施設では、特殊装備をしたザフトの兵士達が、中の探索を開始しようとしていた。医務室で色々と体のチェックをされるシン。そのことに不満を漏らしつつも、自分も得体の知れないところにいて、ウィルス感染やガスなどにやられているかもしれないという医師の言葉に逆らう訳にはいかない。
シンは、ベットに横たわり、昔のことを思い出していた。あれと似たような施設。その中で話す2人。一人は若きデュランダル。そして自分の手を引いているもう一人はネオ?その施設内の雰囲気におびえる自分に、微笑みかけるデュランダル。
起きあがり、ベットから出てくるレイ。「レイ?」言葉をかけるシン。「すみませんでした。もう大丈夫です。ありがとうございました。」そそくさと準備をして医務室から出て行こうとするレイに、何か不思議な感じを受けるシン。

施設内の起爆装置を全て撤去し、特に生物兵器のようなものも探知されなかったことを聞き、レイの異常が何だったのかと疑問を漏らすアーサー。そこにアスランのセイバーが戻ってきた。「港に戻ったら、発進したと聞いて。どうしたんです?何かあったんですか?」そのアスランの言葉に、顔を曇らせるタリア、アーサー。ただならぬことではなさそうな雰囲気。

連合軍基地。J.P.モルガン艦内では、カオス、ガイア、アビスの修理、整備が行われていた。スエズに戻らずここで全てを直せという命令に愚痴をこぼす整備スタッフ。それをなだめるネオ。そのネオに付き添うようにいるステラ。「ロアノーク大佐。」一人の兵士が伝言を持ってきたようだ。「どうした?」「ロドニアのラボのことなんですが。」「ん?」その兵士に近寄るネオ。ステラは置き去りにされる。ひそひそ話をする2人。
「アクシデントで処分に失敗したようで。さらに悪いことにザフトが。。」「おいおい。」「報告を受けてスエズも慌てているようですが。とりあえずお耳に。」
その会話を耳にしてしまったステラ。

その施設では、タリア、アーサー、アスラン、シンが調査を続けていた。惨殺されている研究所のスタッフ達。そしてカプセル内で死んでいる子供の姿に声を上げるアーサー。「こ、これは。一体?なんなんですか?ここは。」懐中電灯に照らされた、その子供の姿に言葉をなくす一同。「内反、ってことでしょうね。自爆しようとして。」「でも、なんでこんな子供が。」すでに死体となっている子供の顔を優しくなでようとするアスラン。だが、いたたまれなくなり、その手を引っ込める。シンは怒りに何も言葉が出てこないようだ。

再び連合軍、J.P.モルガン艦内。艦内をスティング、アウル、ステラが歩いていた。「ロドニアのラボ。」突然ステラが言った言葉にあとの2人が立ち止まる。「って、何?」「ロドニアのラボってそれはお前、」スティングが言うと、「俺たちが前いたとこじゃん。」と言うアウル。「何だ、いきなり。」と言い、曲がる2人。「悪いことにザフトがって、ネオが。」そのステラの言葉に反応するスティングとアウル。

タリアは施設内のコンピュータで、データベースにアクセスしていた。「ん?」何かを見つけた様子のタリア。「64年7月、11廃棄処分、3入手。8月、7廃棄処分、5入手。」「何ですか、それは?」そのアーサーの言葉で、タリアの元に集まるシン、アスラン。「披検体の、つまり子供の、入出記録ってところかしらね。」「えー?」またも言葉を上げるアーサー。
「連合のエクステンデント。あなただって聞いているでしょ。」アスランは思い出した。前大戦のオルガ、クロト、シャニのことを。「遺伝子操作を忌み嫌う連合、ブルーコスモスが、薬やその他の様々な手段を使って作り上げている生きた兵器。戦うためだけの人間。ここはその実験、製造施設ってことね。私たちコーディネータに対抗できるように、薬や何かで肉体を改造、強化され、ひたすら戦闘訓練だけを施されて、適応できない、またはついて行けない者は、容赦なく淘汰されていく。ここはそういう場所なんだわ。」

ステラの言葉に取り乱しているアウル。「ちょっと落ち着け。落ち着けって、アウル。」となだめるスティングを振り払おうとするアウル。「何でだよ。何で落ち着いていられるんだよ。ラボには、母さんが。」その瞬間、アウルの様子が変わる。「か、かあさんが。。らぼ。」頭を抱え、うずくまってしまうアウル。「母さんが。死にたくないんだぁ。」絶叫するアウル。
「死んじゃう?」アウルの言葉に反応したステラ。錯乱するアウルを何とかしようとしているスティングの脇をすり抜け、歩き出すステラ。「死んじゃう?死んじゃうは駄目。怖い。まもる。」消えたはずの記憶から、シンとのことを思い出すステラ。
「守る。」何かを決めたかのように走り出すステラ。整備中のガイアに乗り込み、システムを起動させるステラ。
「ハッチ開けて!開けないとぶっ飛ばす。」フェイズシフトがオンにされるガイア。ハッチを壊し、勝手に出撃するガイア。「ロドニア、ラボ、母さん、守る」

「・・取れるだけのデータは取って。後から専門のチームも来るでしょうから。これだけの施設、連合がこのまま放置しておくとは考えにくいわ。バート、周辺警戒も厳に。」指示を出すタリア。運び出される遺体に、アーサーは気持ち悪くなりっぱなし。アスランはため息をつくばかり。「本当にもう、信じられませんよ。」怒りの収まらないシン。「コーディネータは自然に逆らった、間違えた存在と言っておきながら、自分達はこれですか。」「シン。」「遺伝子いじるのは間違えてて、これはありなんですか?いいんですか。一体なんなんです。ブルーコスモスっていうのは。」「確かにな。」そうとだけしか返す言葉のないアスラン。
ラボに一直線に向かうステラのガイア。ミネルバがその機体をキャッチ。すぐにラボ近くにいるステラに連絡が入った。「艦長、モビルスーツ1、接近中。ガイアです。」その言葉にアスランとシンは、すぐ自分の機体に向かって駆け出して行く。「1機?後続は?」「現時点ではありません。」「どういうつもり?施設を守るのよ。いいわね、アスラン、シン。」
発進するインパルスとセイバー。

「気をつけろ、シン。施設の破壊が目的なら、特殊な装備を持っているかもしれない。」セイバーとの戦いを始めるインパルス。「爆散させずに倒すんだ。」「えっー。」アスランの命令にとまどうシン。ガイアにその機体をはじき飛ばされる。「爆散させるなって言ったって。」「シン、下から回り込めるか?」「やってます。」ガイアを上空から狙うセイバー。上から押さえつけれたガイアは、うまく動けない。ついにインパルスのビームサーベルはガイアのコクピットを捉えた。コクピットの前面を破損するガイア。
「きゃあー。」機体を叩きつけられ、動きの止まるガイア。裂け目よりコクピットに横たわるパイロットの姿を発見するシン。「あっ?」その映像を確認するアスラン。「あ?女?」さらに画像をズームしてみるシン。その顔に見覚えがある、シン。
「あの娘。。。。ステラ。」
PHASE - 26 約束 「ステラ、何で君が。。」傷つき、気を失っているステラを抱きかかえながら、ステラに話しかけるシン。程なく、アスランのセイバーも近くに着陸した。そのときステラが何か言葉を発する。
「死ぬの、だめ。。。こわい。。。まもる。。」
あの海での出来事を思い出したシン。ステラを抱いたまま、インパルスに乗り込み、発進させる。
「どうしたのアスラン?シンは。」タリアからの連絡。アスランはシンを追うべく、セイバーの発進準備を急ぎながら、その質問に答える。「分かりません。ですが、負傷したと思われる敵のパイロットを連れて、ミネルバへ。」そのアスランの言葉に驚くタリアとアーサー。「何ですって?」
インパルスの突然の帰投にあわただしくなるミネルバモビルスーツデッキ。「何だよシン、一体?」ステラを抱いて降りてくるシンに、ヴィーノ達が声をかける。「うるさい!どけ!」一直線に医務室に向かうシン。タリアは、レイにガイアの回収を指示し、ミネルバへ急ぐ。
「死ぬの。。だめ。」うわごとを繰り返すステラ。「大丈夫。もう大丈夫だから。君のことはちゃんと、俺がちゃんと守るって。」医務室にたどり着き、叫ぶシン。「先生!この子。早く。」「一体なんだね?」「その軍服、連合の兵士じゃないの?」先生と看護婦の疑問を押し切って、ステラをベットに寝かせるシン。「でも、怪我をしているんです。だから。」「だが、敵兵の治療など、艦長の許可なしでできるか。私は何の連絡も受けていないぞ。」「そんなもんはすぐ取れ!だから早く。死んじゃったらどうするんだよ。」
その言葉に反応するステラ。突然起きあがる。「死ぬのは、駄目!」突如、シンに飛びかかるステラ。
物音のする医務室。兵士を連れ、医務室に向かっていたタリアは、兵士達に合図をする。医務室のドアが開いたと同時に、銃を構える兵士達。そしてアスランも駆け寄ってくる。医務室では、ステラが看護婦の首を絞めていた。シンはそれをやめさせようとステラを看護婦から引きはがす。その様子を見て、構えた銃を下ろさせるタリア。
「ごめん、ステラ。悪かった。もう大丈夫だから。落ち着いて。」「いやぁー。」と悲鳴を上げ、力尽きるステラ。

「敵兵の艦内への搬送など、誰が許可しました。」艦長室で、タリアから叱責を受けるシン。「あなたのやったことは、軍法第4条第2項に違反、11条6項に抵触、とてつもなく馬鹿げた、重大な軍規違反なのよ。これで艦内に甚大な被害が出ていたら、どうするつもりだったの?」「申し訳ありません。」「知っている子だということだけど、ステラ?一体、何時、どこで。」
「ディオキアの海で、溺れそうになったのを助けて、なんかよく分かんない子で、俺、いや自分はそのときは彼女も戦争の被害に遭った子だと。。」
「でもあれはガイアのパイロットだわ。それに乗ってたのだから、分かるでしょ。」ハッとなるシン。
「そして、もしかしたら。。」そこまで言いかけた時、タリアのデスクにあるインターフォンからコールの音が鳴り響く。
「何?」「艦長、ちょっとおいでいただけませんか。」「わかったわ。」
艦長室の外で待っていたアスラン。艦長室のドアが開き、タリアとシンが出てくる。動こうとするアスラン。だが、タリアが制止の合図をし、そのまま2人が行くのを見送るしかなかった。その後ろに現れるルナマリア。だが、さっと身を隠す。先ほどアスランの重大な秘密を知ってしまい、顔を合わせられなかったのである。

医務室では、ステラは革バンドで拘束されていた。「何でこんなことを?怪我人なんですよ、彼女。そりゃさっきは興奮して。」その姿を見て叫ぶシン。「そういう問題じゃない。どうやらこの娘はあの連合のエクステンデットのようなんでね。」驚くシン。そしてそれを予期していたタリアの返事。「やっぱり。」
「今は薬で眠らせてありますが、それもどこまで効くか、正直分かりません。治療前に簡単な検査をしただけでも、実に驚くような結果ばかり出ましてね。まず、様々な体内物質の数値が、とにかく異常です。また本来なら、人が体内に持たないような物質も、多数検出されています。」
「人為的に。。ということね。薬?」
「おそらくは。詳しいことはもっと専門の機関で調べてみないことには分かりませんが、ちらっと見た感じでは、あの研究所のデータにも似たようなものがありましたね。」
「そう。」
「戦闘での外傷もかなりのものがありますが、ともかくそんな状況ですので、これでは治療と言っても、何がどう作用するのかよく分かりませんし、何より。」
そのとき、意識が戻るステラ。シンが近寄る。「ステラ。」シンの顔を見るステラ。そして厳しい顔になる。「なんだ、お前は。」その言葉に驚くシン。「ここは。」急に暴れ出すステラ。「ステラ、大丈夫だよ。落ち着いて、僕がいるから。落ち着いて。分かるだろ。僕だ、シンだよ。」暴れるステラを抱き、なだめるように言うシン。動きが止まるステラ。思い出してくれたと安心した様子のシン。だが、ステラから出た言葉は、「知らない。あんたなんか知らない。」というもの。ショックを受けるシン。そして再び暴れ出す。
「彼女は脳波にも奇妙なパターンが見られるんだ。意識や記憶や、そんなものも操作されている可能性がある。無駄だよ。止めなさい。」そういいながら、ステラの足に鎮静剤を打つ医者。ステラは再び眠りにつく。
「記憶をって。。。そんな、まさか。。。」ショックを受けるシン。

J.P.モルガン。「ロドニアのラボの件はともかくとしましても、ステラ・ルーシェに関しましては、もはや損失と認定するようにとのことです。」報告を受けるネオ。「うかつだったよ。俺は。」「いえ、大佐は実によく彼らを使いこなし、その功績はジブリール氏も、」「ああ、もういい、そんな話は。損失。。。か。」ステラのことを思い出すネオ。「まっ、そういう言葉になるんだろうがね。軍では。」「はぁ。」「まっ、いいよ。もう分かった。」そのネオの言葉を聞き、下がる士官。
「すまんが、2人からステラの記憶を。」指示するネオ。「ええ?消すんですか?それはちょっと、大仕事になりますよ。」「分かってるが、頼む。」「分かりました。すぐに始めます。」

ミネルバ、ポート・タルキウスに向けて発進した。ミネルバでは、アスラン、そしてルナマリアがそれぞれの思いを巡らせていた。
ステラが眠るベットのところに現れるシン。ステラから貰った何かのかけらを入れたビンを握りしめて。「何も覚えていないなんて。」しゃがみ、そして頬を優しくなでるシン。「君が、ガイアに乗っていただなんて。あんな所にいた子だなんて。」
目が覚めるステラ。「あ、シン。」ステラの顔を不思議そうに見るシン。「シン。」「ステラ。」「会いに来た、シン。」笑顔になるシン。「うん、うん。俺、分かる?」うなずくステラ。

海中のアークエンジェル。海底を見つめるキラ。そこにラクスが現れる。「キラ、ここでしたか。」キラの横に来るラクス。「綺麗ですわね。地球って不思議。」「そうだね。」
「アスランは?」
「うん、何が本当か、彼の言うことも分かるから。またよく分からなくて。」
「そうですわね。」
「プラントが本当に、アスランの言うとおりなら、僕たちは。。」キラの言葉に、キラの顔を見つめるラクス。「オーブにも問題はあるけど、じゃあ僕たちはどうするのが一番いいのか。」
「分かりませんわね。」勝手なことをいいながら、動き回るハロ。「ですから私、見て参りますわ。プラントの様子を。」
そのラクスの言葉に驚くキラ。「道を探すにも、手がかりは必要ですわ。」
「そりゃ駄目だ。君はプラントには。」
「大丈夫です、キラ。」キラの目を見つめるラクス。「私も、もう大丈夫ですから。」
「ラクス。。。」
「行くべき時なのです。行かせてくださいな、ね、キラ。」
ぼぉーとニュースを見ていたバルトフェルド。ラクス(ミーア)の慰問コンサートがいよいよ明日で終わるということを知り、何かを思いついたような顔になる。

ディオキア、ザフト軍基地。ラクス(ミーア)に化けたラクスと、その付き人に化けたバルトフェルドが到着する。「みなさーん、お疲れ様です。」ミーアのような振る舞い方をしながら、基地に潜り込むラクス。「早速で悪いんやけどな、時間がないんや。ケツカッチンやさかい、シャトルの準備はよーしてんか?」一気にまくし立てるバルトフェルド。「あ、はい。しかし定刻より少々早いご到着なので、その。。。」「急いでいるから早う来たんや。そやからそっちも急いでぇな。」「あ、はい直ちに。」
まんまとラクス搭乗のシャトルの出発を早めることに成功したラクスとバルトフェルド。その待ち時間、ラクスは、いくつものサインをこなす。その姿にただ唖然とするバルトフェルド。

一方、ミーアが基地に到着。だが、出迎えが誰もいない。「なんや、誰も出迎えに来てへんのかいな。」「うん、もう。私が来たっていうのに。」怒りながら出てくるミーア。
ラクスの元には、シャトル発進準備の知らせが来る。
ミーアは怒りながら、基地の中を移動する。「なーになーに?もう、どうして誰も。」先ほどラクスのサインを貰った兵士達が、そのミーアの姿を見て驚く。「ええ?ラクス様?どうしてこちらに?」
シャトルでは、バルトフェルド達がコクピットの占拠に成功していた。
ミーア達は管制室に急ぐ。「どういうこと?もう。」管制室に入り、どなる付き人。「あかん、あれ、ほんまもんや。」「あーん?」ミーアの表情にしまったという表情をし、すぐに言い直す。「あ、ちゃうちゃう、ばっちもんや。名をかたるにせもんやがな。」
シャトルにすぐに停止命令が出る。だが、既にコクピットを占拠したバルトフェルド達は、当然そんな命令は無視。「すまんなぁ。ちょっと遅かった。さぁて、では、本当に行きますよ。」ラクスに声をかけるバルトフェルド。「はい。」答えるラクス。

シャトルを追うためにバビがスクランブルし、ガズウートがシャトル迎撃のために発進する。バビの攻撃をかわすシャトル。だが、ガズウートとバビから発射されたミサイルにロックオンされてしまう。鳴り響くロックオンの警告音。「くそー、上がれ!」だが、振り切れそうにないミサイル。万事休す。
その時、フリーダムが現れる。迎撃されるミサイル。シャトルは無事。バビ隊に襲いかかるフリーダム。バビ隊の攻撃能力を全て奪い、そして当面の間の基地機能を奪う程度の破壊をし、飛び去るフリーダム。そのままシャトルと併走する。

「ラクス」「キラ」「ご苦労さん。大胆な歌姫の発想には毎度驚かされるがな。だがこれでOKかな?」キラの労をねぎらうバルトフェルド。
「やっぱり心配だ。ラクス、僕も一緒に。」
「いえ、それはいけません、キラ。あなたはアークエンジェルに居てくださらなければ、マリューさんやカガリさんはどうなります。」
「でも。」
「私なら大丈夫ですわ。必ず帰って来ます。あなたのもとへ。だから。」
「ここまで来てわがまま言うな。俺がちゃんと守る。お前の代わりに、命がけでな。」
「バルトフェルドさん。」
「信じて任せろ。」
ラクスを写すモニタ画像に乱れが生じるようになる。そのモニタのラクスが話しかける。「キラ。」
「。。分かりました。お願いします。本当に気をつけて。ラクス、絶対。。」そこで、キラを映し出すモニタの画像が乱れ、通信が途切れてしまう。シャトルから離れていくフリーダム。「キラ。」やはり不安そうなラクス。

飛び立っていくシャトルを見つめるキラ。


2005. 4.24 Update

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