機動戦士ガンダム SEED DESTINY

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PHASE - 27 〜 PHASE - 37(その3)

機動戦士ガンダム SEED DESTINYの題名及び内容概略一覧です。

本当にプラントは信頼がおけるのか?それを確かめるべく、ついにラクスが動き出す。両陣営では戦争終結に向け、新兵器を投入する準備を続けている。ますます混迷の度合いを深めるこの戦争。巻き込まれているミネルバでも様々な思惑が交錯する。アークエンジェルの行動を憂慮するアスラン、そのアスランの秘密を知って迷い始めるルナマリア、出生に何らかの鍵を持つレイ、そしてステラを気にするシン。果たしてこれらの結末は。。


PHASE - 27 届かぬ想い 宇宙空間に浮かぶシャトル。プラントに向かうラクス達がハイジャックしたシャトルである。ザフト軍による内部探索が行われたが、締め上げられたパイロット以外誰もいない。
「そうか。それでそのシャトルを奪った者達のその後の足取りは?」報告を受けるデュランダル。詮索はザフト軍、グラスゴー隊が行っているものの、不明である。「しかし、よりにもよってラクス・クラインを語ってシャトルを奪うとは。大胆なことをするものだ。」シャトルのパイロット達は声も形もそっくりだったという報告が入る。
「ともかく、早く見つけ出してくれたまえ。連合の仕業かどうかまだわからぬが、どこの誰だろうが、そんなことをする理由は一つだ。彼女の姿を使っての、プラント国内の混乱だ。そんな風に利用されては、あの優しいラクスがどれほど悲しむことか。。連中が行動を起こす前、変な騒ぎになる前に取り押さえたい。頼むぞ。」指示を出すデュランダル。
息を出し終えた後、椅子にもたれかかり、深く息をする。(だが、奴らが離れたというのは幸いか。ラクス・クライン、そしてキラ・ヤマト。)何かを考えている様子のデュランダル。

J.P.モルガン。記憶操作の終わったスティングとアウルが、バスケットを楽しんでいた。そんななか、ジブリールからの連絡を受けているネオ。
「私は過ぎたことをネチネチという男ではない。だが、そう失敗にいつまでも寛大な訳でもない。今回のエクステンデットの損失も、まあ仕方ないさ。戦闘となれば敵も必死だ。そうそう君の思った通りにはいかんだろう。それも分かっている。だが、目的は達せられなければならないのだよ。全ての命令は必要だから出ているのだ。遊びでやっている訳ではない。」
「ええ、そのことは十分に。」
「分かっているというのなら、さっさとやり遂げてくれないかね。言われた通りのことを。で、ないとこちらの計画もみな狂う。あのミネルバは、今や正義の味方のザフト軍だなどと、反連合戦力に祭り上げられ、ヒーローのようになってしまっているではないか。まったく。。コーディネータどもの船だというのに。それもこれも奴らが勝ち続けるからだろう。」
「そうですかね。」
「民衆は愚かだ。そう、先のことなど、まるで考えもせずにね。今自分達に都合の良いものばかりを歓迎する。」
「そりゃ、まあ、確かに。」
「なぜあんなにも簡単にだまされるのか。あのコーディネータどもに。。我らナチュラルに本気で手を差し伸べることなどあるはずもないだろう。どうせまたすぐに手を返される。だからあの船は困るのだよ。危険なのだ。これ以上のさばられては。今度こそ討てよ、ネオ。そのためのお前達だということを、忘れるな。」
「ええ、肝に銘じて。」ジブリールからの通信が切れる。

「指示されたものです。ご報告が遅れて申し訳ございませんでした。」ミネルバでは、ルナマリアが、タリアの指示でモニターしたアスランとアークエンジェルの人たちの会話内容等を報告していた。
「いいのよ。騒ぎばかりあって、私もとてもそんな状況じゃなかったもの。悪かったわね。スパイみたいな真似をさせて。」
「いえ、艦長もFEITHというお立場ですので、その辺りのことは理解しているつもりです。」そのことで苦笑ともとれる笑みを浮かべるタリア。それを遮るかのように言葉を続けるルナマリア。「でも、あの、少し質問をお許しいただけるでしょうか。」
「当然の思いよね。いいわよ。答えられるものには答えましょう。」
「は、ありがとうございます。アスラン・ザラが、先の戦闘終盤ではザフトを脱走し、やはり地球軍を脱走したアークエンジェルと共に両軍と戦ったというのは既に知られている話ですが。」
「ええ、そうね。本人もそのことを隠そうとはしないわ。」
「しかし、そのことも承知でデュランダル議長自らが復隊を認め、FEITHとされたことも聞いています。ですが、今回のことは、あの。。そんな彼に未だ何かの嫌疑がある、ということなのでしょうか。私たちはFEITHであることを、また議長にも特に信任されている方ということでその指示にも従っています。ですが、それがもし。」
「そういうことではないわ。ルナマリア。あなたがそう思ってしまうのも無理はないけど、今回に関しては、目的はおそらくアークエンジェルのことだけよ。彼が実にまじめで正義感あふれる良い人間だということは、私も疑ってないわ。スパイであるとか裏切るとかそういうことはないでしょう。そんな風には誰も思ってないでしょうし。でもいまのあの、アークエンジェルの方はどうかしらね。確かに前の大戦の時にはラクス・クラインと共に暴走する両軍と戦って、戦争を止めた船だけど、でも今は?オーブが連合の陣営に入ろうとしたら、突然現れて国家元首をさらい、そして、先日のあれ、でしょう。何を考えて何をしようとしているのか、全く分からない。どうしたって、今知りたいのはそれでしょう。アスランもそう言って、艦を離れたのだけれど、でも未だ彼は、あの船のクルーのことを信じているわ。オーブのことも。本当は戦いたくはないんでしょう。だから、そういうことだと思っておいてもらいたいんだけれど。いい?」
「はい。」タリアの問いかけに答えるルナマリア。「でしたら私も、あの。」
そのルナマリアの言葉を遮るタリア。「とにかく、ご苦労様。この件はこれで終了よ。いいわね。」「はい。」「モニターしていた内容も、この部屋を出たら忘れてしまって頂戴。」その言葉にハッとするルナマリア。ラクスの件をタリアに報告していないからだ。
「何、まだ何か。」ルナマリアはキラの言葉を思い出していた。(今、プラントにいる、あのラクスは何なの。そしてなんで、本物の彼女がコーディネータに殺されそうになるの。)「ルナマリア!どうしたの。」考え事をしているルナマリアを気づかせるように強い口調で呼びかけるタリア。「え、え、いえ、何でもありません。ご指示通りにいたします。すみませんでした。」
敬礼をして部屋を出るルナマリア。結局ラクスのことは言わずじまいであった。何かを決めたように頷き、小走りで去っていく。

ステラの容態が急変していた。苦しそうなステラ。酸素マスクをつけられる。たまたま入ってきたシンは、その様子を見て医師に問う。「どうしたんですか?一体。」「下がっていなさい。どうもこうも、私にだって分からんよ。薬で様々な影響を受けていて、まるで分からん体だって言ったろ。」「ええ?でも。」「一定期間内に何か特殊な措置を施さないと身体機能を維持できないようでもある。それが何なのか、なぜ急にこうなるのか、現状ではまるで分からんさ。」「そんな。」
「シン。。」と言って手を差しだそうとするステラ。「ステラ。」「怖い。し、ぬのは。」
「こういった薬の研究に関しては、我々より、ナチュラルの方がはるかに進んどるからなぁ。まったく。」

ミネルバは苦しむステラを乗せたまま、先の施設の情報を届けるために出航した。ミネルバの予定航路で網を張ろうとしているのが、ネオとオーブ艦隊。その作戦をタケミカズチで立てていた。オーブ軍自らが先陣を切らねばならぬ、オーブにとっては何とも不利な作戦。だが、ユウナの言葉に嫌でも従わざるを得ないトダカ一佐であった。
ネオは釘を刺す。「今度は、あの奇妙な船は現れないと思いますが、万が一そのようなことになっても、大丈夫ですね。あれは敵だと、あの代表と名乗る人物も偽物だとおっしゃいましたな。ユウナ様は。」
歯ぎしりをするユウナ。「そ、そうだ。あんなものまで担ぎ出し、我が軍を混乱させようとする船など、我らにとっても敵でしかない。そうだな、トダカ一佐。だから貴様も撃った。」「はい。」とだけ答えるトダカ一佐。
「では、そういうことで。」というネオの言葉で作戦会議は終了する。

そのアークエンジェルへ、フリーダムが帰還した。ミリアリアを連れて。歓迎するマードック軍曹。アークエンジェルのブリッジでは、オーブ軍が展開をしているという情報を受けていた。再びミネルバを迎撃するということは容易に想像できる状況。そこに現れるミリアリア。歓迎するブリッジスタッフ。そこに緊急通信。慣れた手つきで通信内容を読み上げるミリアリア。その内容は、ミネルバがマルマラ海を発進し、南下しているというものだった。オーブ軍とミネルバが再びぶつかるのが近いということで、緊張感が走るブリッジ。
「これで決まりね。オーブ軍はクレタで、もう一度ミネルバとぶつかるわ。」

地球連合・オーブ軍はミネルバを捕捉。戦闘準備に入る。各艦。スティングとアウルも出撃しようとモビルスーツデッキに急ぐ。アウルは何か変な気分に襲われていた。「ん?」振り返るアウル。「どうした?」スティングが尋ねる。「あ、いや、なんかここ。」デッキに並ぶモビルスーツ。ここに確かもう1機あったのではと考えるアウルだった。「なーんか大事なこと、忘れている気がするんだよな。」コクピットにつき、アウルがスティングに疑問をぶつけた。「なーんだよ、大事なことって。」「それが分かんねぇって言ってるの。」

ミネルバは迫り来るオーブ軍を迎え撃つため、インパルスとセイバーの発進を行おうとする。だがその寸前にオーブ艦より放たれた
圧式弾によりダメージを受ける。さらに増えるオーブ艦。タリアは、J.P.モルガンがまだ何処かに潜んでいるはずと索敵を強化させる。
(弔い合戦、にもならんがな。ステラ。だが、今日こそは、あの船を討つ。)ネオの強い悲願を受け、スティングとアウルが発進する。

アークエンジェルでは、カガリが悩んでいた。(あそこで君が出て、素直に撤退するとでも思ったか。君がしなければいけなかったのは、そんなことじゃないだろう。あんなことはもう止めて、オーブへ戻れ。いいな。)アスランの言葉を思い出し、何も出来ない自分に苛立つカガリ。
「行きましょう。」キラのその言葉に驚くブリッジ一同。「ラクスも言ってただろう。まず決める。」(そしてやり通す。それが何かを成す時の唯一の方法ですわ。)「キラ。」「だから君は行かなくちゃ。そうだろう?」
発進準備するアークエンジェル。通信席に座るカガリをどかせようとするミリアリア。「あなたには他にやることがあるでしょう。ここには私が座る。」「ミリアリア。」「あなたがそこに座ってくれるのは心強いけど、でもいいの?せっかく。」ラミアスの言葉に応えるミリアリア。「ええ、世界もみんなも好きだから。写真をとりたいと思ったんだけど、今はそれが全部危ないんだもの。だから守るの。私も。」

アビスガンダムとインパルスの衝突が始まる。そしてミネルバを襲うムラサメ。そんな時、アークエンジェルは海面より飛び立った。出撃するストライクルージュ、そしてフリーダム。 
PHASE - 28 残る命散る命 オーブ艦軍の総攻撃を受けるミネルバ。地球連合にも挟まれ、退がることもできず、ただ突破しか道がない辛い状況のミネルバ。
シンは、自分が戦っているアビスガンダムのパイロットが、あのステラと同じ境遇であることを思い、複雑な心境を抱きつつも戦いを続けていた。また、オーブ軍のムラサメ、そしてスティングのカオス相手に戦うアスランも、先日のカガリとシンの言葉を思い出し、未だオーブへの思いを吹っ切れずにいる状況。その時に思い出すのは、ハイネの「割り切れよ。で、ないと死ぬぞ。」という言葉。だが、自分の心の中では未だ踏ん切りがつかずにいた。「くそっ」と言いながら、応戦を続けるアスラン。

ミネルバへのオーブ軍ムラサメの集中攻撃が続く、レイのザクが故障し、そしてミネルバのダメージも増していく。再度襲いかかるムラサメの編隊。ついにその中の1機が至近距離からブリッジに向けてビームライフルの照準をつける。凍り付くミネルバブリッジ。

その時、どこからともなく現れた一筋の閃光が、そのムラサメのビームライフルを破壊する。キラのフリーダムである。すれ違いざまにムラサメを次々と破壊していくフリーダム。そして、カガリのストライクルージュが前面に出てくる。
「オーブ軍、直ちに戦闘を停止して軍を退け。オーブはこんな戦いをしてはいけない。これでは何も守れはしない。地球軍のいいなりになるな。オーブの理念を思い出せ。それ無くしてなんのための軍か。」
それを聞き、怒りを露わにするシン。「なんであんたは。。。そんな綺麗事を。」インパルスをカガリ機に向けるシン。「いつまでも!」ブラストインパルスより、ストライクルージュに向け、無数のマイクロミサイルが発射される。そのミサイルを全て打ち落とすフリーダム。一直線にインパルスに向け、突き進む。
「キラ!」そのフリーダムを止めようと、アスランのセイバーが後を追う。
「お前も、ふざけるな!」シンの雄叫び。シンの中のSEEDが覚醒する。フリーダムの一撃をかわすインパルス。キラはその動きにぞっとする。繰り出されるインパルスよりのビームサーベルの攻撃。それをかわして上空へ退避するフリーダム。そこにアスランのセイバーが攻撃を仕掛けてくる。「やめろキラ!」「アスラン」ビームサーベルを使った白兵戦へと陥る2機。「こんなことは止めろと、オーブに戻れと言ったはずだ。」アスランのセイバーと交戦状態に陥ったフリーダムが降りてこないことに、呆気にとられるシン。

「何をぼんやりしている!ユウナ・ロマ。先の言葉を忘れたか。2艦とも叩き落とすんだ。」ネオよりの通信が、タケミカズチのブリッジ内に響き渡る。萎縮するユウナ。「トダカ一佐。」「我らに、、指揮権はない。」ユウナが吠える。「わかってる。ミネルバを!だからミネルバを。あれさえ落とせばいいんだから、俺たちは。」苦渋の顔となるトダカ一佐。

続くフリーダムとセイバーの交戦。「退がれキラ!お前の力は、ただ戦場を混乱させるだけだ。」「アスラン。」そこにスティングのカオスが割り込んでくる。「はは、もらったぜ!てめえら。」さっといなくなる2機。カオスが振り返った瞬間、悠然と構えるフリーダムの姿。「うわぁ。」スティングの悲鳴と同時に、両腕、スラスターを叩ききられたカオスは、海へと墜落していった。逃げ出すカオス。

ミネルバにはアークエンジェルが近づいていた。「艦長。」タリアはアークエンジェルを当然味方とは思っていない。「こちらに敵対する確たる意思はなくとも、本艦は前回あの船の介入によって甚大なる被害を被った。敵艦と認識して対応。」ブリッジの返事。

キラは、未だ戦場から退かず。「止めろキラ!」インパルスをかばうようにセイバーで、フリーダムの行く手を遮るアスラン。シンが、そちらに気を取られた瞬間、アウルのアビスが襲いかかる。「どこ見てんだよ、こら!」海上へジャンプしたアビスは、インパルスのブラストシルエットを破壊する。爆発に機体が揺さぶられるインパルス。「うわぁー」アビスに向かって一直線に伸びるビームジャベリン。「何!」インパルスのビームジャベリンは、アビスのコクピットを貫いた。海中に沈むアビス。そして爆発する。
J.P.モルガンでは、アウルのシグナルがロストした。「アウル!」叫ぶネオ。

「ミネルバ、フォースシルエットを!」シンの要求にすぐさま射出されるフォースシルエット。そしてデュートリオンビームでエネルギーの回復を果たしたインパルスは、地球連合軍のモビルスーツ編隊へと突っ込んでいく。

「オーブ全軍はミネルバを攻撃せよ。」その命令を受け、やむを得ずミネルバへ襲いかかろうとするムラサメ。「止めろ!」そのムラサメの前に立ちはだかるストライクルージュ。「あの船を討つ理由がオーブの何処にある。討ってはならない。自身の敵ではないものを。オーブは討ってはならない。」分かっていながらも従えないその迷いを打ち消すように、回線を開くムラサメパイロット、馬場一尉。「そこをどけ。これは命令なのだ。今の我が国の指導者、ユウナ・ロマ・セイランの。ならばそれが国の意思。なれば、我らオーブの軍人はそれに従うのが務め。」「お前!」「その道、いかに違おうとも難くとも、我らそれだけは、守らねばならん。お分かりか!」
しばし言葉を失うカガリ。「駄目だ。」「お退がりください。国を出た折りより、我らここが死に場所と、とうに覚悟は出来ております。」「それは。」「退がらぬというのなら、力をもって排除させていただく。」
ストライクルージュをつかみ、アークエンジェルの方へ放り投げる馬場。「我らの涙と意思、とくとご覧あれ。」そう言ってミネルバへ特攻をかけるムラサメ。馬場に続く、残りのムラサメ。
「お前達。」カガリの言葉は、戦場にかき消される。
ムラサメの攻撃で大破するルナマリアのザク。ことごとくムラサメを打ち落とすインパルス。だが、馬場一尉のムラサメだけが落とせない。「機関最大、取り舵。」「でぃやぁー。」タリアの指示もむなしく、馬場はミネルバの主砲に突っ込み、爆発の中に散っていく。ミネルバより上がる爆炎。

「あと一息だ、落とすぞ。」ネオのかけ声。
「そうだよ。それでいいんだよ、僕らは。ミネルバさえ落とせば。」その言葉に続くかのように、そして自分に言い聞かせるようなユウナの言葉。それを聞き、歯ぎしりをしているトダカ。

「アスラーン。」続くフリーダムとセイバーの交戦。「仕掛けてきているのは地球軍だ。じゃあお前達はミネルバに沈めと言うのか?」「どうして君は?」「だから戻れと言った。討ちたくないと言いながら、なんだ、お前は。」

インパルスは、船を叩き切るためにソードシルエットに換装していた。
そのころトダカ一佐も覚悟を決めていた。「よし、本艦も前に出る。機関最大。」「い、いや、だけど。」ユウナの問いに力強く答えるトダカ。「ミネルバを落とすのでしょう?ならば行かねば。」

次々とインパルスによって切られていくオーブ艦。「止めろー」カガリは、居ても立ってもいられなくなり、そこにストライクルージュを向かわせていた。
「カガリ!」気づいたキラは、ストライクルージュを追おうとする。「キラ!」当然、その後を追おうとするアスラン。
「分かるけど。君の言う事も分かるけど、でも、カガリは今、泣いているんだ。」
「うう。」
「こんなことになるのが嫌で、今泣いているんだぞ。なぜ君はそれが分からない。なのに、この戦闘も、この犠牲も仕方がないことだって、全てオーブとカガリのせいだって、そう言って君は討つのか?今カガリが守ろうとしているものを。」
「な、キラ。。」
「ならば僕は、君を討つ!」
覚醒するキラのSEED。セイバーに一直線に向かうフリーダム。迎え撃とうとしたアスラン。だが、既にセイバーの右腕は無くなっていた。閃光が舞うフリーダムのビームサーベル。
セイバーは機体をずたずたに裂かれ、海へと落下していった。

「アスランさん!」メイリンの悲鳴のような声が、ミネルバのブリッジに響き渡る。「セイバーが。。」
そのときに別のスタッフより連絡が入る。「オーブ軍、空母接近してきます。12時の方向。距離2000。ミサイル来ます。」「回避、迎撃。ええい、空母が前面に出て、何を。」
ミネルバと撃ち合いになるタケミカズチ。

「止めろ!止めるんだ、タケミカズチ。」タケミカズチに向かうカガリのストライクルージュ。

ミネルバの攻撃により、船体が傾き始めたタケミカズチ。
「お前、お前、何をやっているんだ!トダカ。これでは。」トダカの胸ぐらをつかみ、激怒するユウナ。「ユウナ様はどうぞ脱出を。総員、退艦。」退艦命令に従うブリッジの乗組員。
「タケミカズチ、止めろ。」タケミカズチに近づこうとするカガリ。だが、インパルスからの攻撃で近づけない。そこに1機のムラサメがカガリの盾になるようにやってくる。「カガリ様、どうか、お下がり、、うわぁ。」カガリの代わりに攻撃を受け、爆発するムラサメ。
「ミネルバを落とせとのご命令は、最後まで私が守ります。艦及び将兵を失った責任も全て私が!これで、オーブの勇猛も、世界中にとどろくことでありましょう。」トダカの気迫にたじろぐユウナ。ユウナをブリッジ出口に叩きつけるトダカ。「総司令官殿をお送りしろ。貴様らも総員退艦。これは命令だ。ユウナ・ロマではない。国を守るために。」「私は残らせていただきます。」副官、アマギが歩み寄ってくる。「駄目だ。」拒否するトダカ。「聞きません!」「駄目だ!これまでの責めは私が負う。貴様はこの後だ。」「いいえ。」「既にない命と思うのなら、思いを同じくする者を集めて、アークエンジェルへ行け。」その言葉に自分の言葉を失う副官。トダカに胸ぐらを掴まれて、起こされる副官。「それがいつかきっと、道を開く。」「トダカ一佐。。。」「頼む、私と、今日無念に散った者達の為にも。行け!」

一人残るトダカ。そのブリッジめがけ、ゆっくりと近寄ってくるソードインパルス。ブリッジを叩き切るシン。皮肉にもそれが救った者と救われた者の最初で最後の再会だった。
沈むタケミカズチ。そのタケミカズチを送るため、敬礼をするネオ、ボート上のアマギを始めとするオーブ兵士。

涙が止まらぬカガリ。
PHASE - 29 FATES ラクス・クラインらしき人物の乗ったシャトルが乗り捨てられ、グラスゴー隊に探索の任を出した後、一人チェス盤を見つめるデュランダル議長。向かいの席にふと浮かぶ、「ラウ・ル・クルーゼ」の幻影。
「彼らは、いつ、どこで、なぜ出会ってしまったのか。私は知らない。」

【回想】(キラとラクスが初めて出会うシーン。ラクスの乗ったシャトル、シルバーウィンドウが漂流し、そしてキラがアークエンジェルにそのシャトルを回収してきた時の話である。ラクスは、ザフト軍との戦いにおいて人質として使われ、そのことをアスランより詰問され、さらにフレイの父親が乗る軍艦を守りきれなかった責任を感じたキラ。ラクスの優しさに触れ、ついにラクスをザフト軍に還す決意をした。キラの手で直接アスランの元に送られるラクス。だが、キラとの出会いは、この後ラクスとアスランの間に狂いを生じさせることとなる。

「それでも魂が引き合う。定められた者達。定められた物事。」デュランダルの脳裏に浮かぶ若かりし頃のタリアの姿。「全てをそう言ってしまうなら、では我らが、あがきながらも生きるその意味は?」
「全てのものは生まれ、やがて死んでいく。ただそれだけの事だ。ふふ。。」デュランダル議長の問いに答えるかのように話し始めるクルーゼの幻影。
「だから何を望もうが、願おうが、無意味だと。」そのクルーゼの答えに抗う、若きデュランダルの幻影。
「いーやいや、そうではない。ただそれが我らの愛しきこの世界、そして人という生き物だということさ。どれだけ、どう生きようと。。誰もが知っていることだが、忘れていること、だが私だけは忘れない。決してそれは忘れない。こんな私の生に価値があるとしたら、知った時から片時も、それを忘れた事がないということだけだろうがね。ふっふっふっ。。」
消えるクルーゼの幻影。
「だが、君とて望んで生きたのだ。まるで何かに抗うかのように。求めるかのように。」クルーゼがかつて飲んでいたカプセルの詰まったケースを握りしめながら、思うデュランダル。浮かぶクルーゼ、そしてレイを連れたネオの姿。ロドニアのラボらしき場所でのネオとレイ。
立ち上がるデュランダル。「願いは叶わぬものと知ったとき、我らはどうすればいい?それが定めと知ったとき。」

【回想】まだ婚約者の頃、ラクスに花束を渡すアスラン。そして自分の意のままに操ろうとキラに強引に口づけをするフレイ。
モルゲンレーテ。トリィを通じて、何度目かの金網越しの再会を果たすキラとアスラン。
そして、この後、アスランはニコルを、キラはトールを失い、そして二人は死闘を繰り広げる。

「そんなことは私は知らない。私は私のことしか知りはしない。」現れる若きネオ(?)の幻影。その横に寄り添うように現れる幼きレイ。跪き、レイの頭をなでるネオ。「迷路の中を行くようなものさ。」喜ぶレイ。ピアノをひこうとピアノの前に座る。「道は常にいくつも前にあり、我らは選び、ただ辿る。」ピアノを弾き始めるレイ。「君たちはその先に願ったものがあると信じて、そして私は、やはり無いのだとまた知るがね。」

【回想】ずっと昔のデュランダルとタリア。遊園地のメリーゴーランド前。
「仕方がないの、もう決めてしまったの。私は子供が欲しいの。だからプラントのルールに従うわ。だからもう、あなたとは一緒に居られない。」別れを切り出すタリア。「そうか。」うなだれながら、その言葉に答えるデュランダル。

「誰が決めたというのだろう。何を。」チェスの駒を握りしめながら、考えるデュランダル。

【回想】アスランとの死闘の後、マルキヨに助けられ、プラントのラクスの元に身を寄せるキラ。あのアスランとの戦いから立ち直ったキラは、再び地球へ戻る決心をする。そんなキラにラクスはフリーダムを託す。「想いだけでも、力だけでも駄目なのです。だから。」

【回想】再びデュランダルとタリア。握手を求めるデュランダル。驚くタリア。だが、デュランダルの手を握り返す。別れる2人。去り行くタリアを見送るデュランダル。タリアの行く先に現れる結婚相手と思われる男性。

「仕方が無かった。では、それは本当に選んだことか?」

暗い部屋の片隅で泣いているレイ。その部屋に入り、泣いているレイを慰めるネオ。
「選んだのは本当に自分か?」

【回想】今やザフト軍に追われる身となったラクスとアスランの劇場での再会。フリーダムを渡したのがラクス、そして死んだと思っていたキラが生きていたという事実を知り、ショックを受けるアスラン。

「選び得なかった道の先にこそ、本当に望んだものがあったのではないか?」チェスの駒を見つめるデュランダル。
「そうして考えている間に時は無くなるぞ。」現れるクルーゼの幻影。「選ばなかった道など無かったも同じ。もしもあのとき、もしもあのとき。」

【回想】アスラン、ラクスの想いに触れ、地球軍と戦うキラ達に合流。オーブ消滅、キラやカガリと共に宇宙へ。この時、両親を亡くすシン。
そして父親の真意を確かめに一時プラントに戻り、そして父親との確執が生まれるアスラン。

「いくら振り返ってみても、もう戻れはしない。何も変えることなどできない。」

【回想】ラクス、ついに行動。エターナルが発進する。そのエターナルを助けるために舞い降りるフリーダム。キラとラクス再会。ラクスとは二度と婚約していた頃には戻れないことを十分に思い知っているアスランは、その2人の再会を離れた場所で見守っていた。

「我らは常に、見えぬ未来へと進むしかないのだ。」
クルーゼの隣に現れる幼きレイの幻影。

【回想】キラとフラガ、クルーゼとの戦い。そして証されるクルーゼ出生の秘密、キラ出生の秘密。

「今ではないいつか、ここではないどこか。」

【回想】クルーゼの乗るプロビデンスとフラガのストライクの一騎打ち。

「きっとそこにはある、すばらしいもの。」

【回想】ついにアスランの手で破壊されるジェネシス。そしてクルーゼを討つキラ。
ヤキンデューエの戦いは終わる。

「それを求めて永劫に、血の道をさまようのだろう?君たちは。不幸なことだな。」
クルーゼの言葉にのぞき込むかのようにクルーゼの顔を見る幼きレイの幻影。
「救いはないと。」若き頃のデュランダルがクルーゼに問う。
「救いとは何だ。望むものが全て、願ったことが全て叶うことか?こんなはずでは無かったと、だから時よ戻れと祈りが届くことか?ならば次は間違えんと確かに言えるのか、君は。誰が決めたというのだ、何で。」

決意のデュランダル。「ならば私が変える。全てを。戻れぬというのなら、始めから正しい道を。アデニン、グアニン、シトシン、チミン。己の出来ること。己のすべきこと。それは自身が一番よく知っているのだから。」
デュランダルの口元がにやけるようにゆるむ。チェス盤に横たわるポーン。 
PHASE - 30 刹那の夢 「メインエンジンに深刻な損傷はありません。ですが、火器と船体にはかなりのダメージを負いました。」入り江に身を隠すミネルバ艦内で、アーサーの報告を聞くタリア。先のクレタでの戦闘により、ミネルバ搭載のモビルスーツ各機も深刻なダメージを受けていた。
「フリーダムだって?やったの。」「さすがのFEITHもあれには勝てないか。。」モビルスーツデッキ内で、かろうじて原型をとどめるに過ぎないセイバーの機体を前に話す、ヨウランとヴィーノ。
「モビルスーツも、セイバー、ウォーリアが大破、ファントムが中破と、厳しい状況です。」アーサーの報告が続く。「ジブラルタルまでもうあとわずかだというのに、またここで修理と補給待ちというのは辛いけど、仕方ないわね。」タリアの愚痴。「はあ。」「毎度毎度、後味の悪い戦闘だわ。敗退した訳でもないのに、対空対船、警戒は厳に。後お願いね。」と指示を残し、ブリッジより出て行くタリア。

海底に身を潜めるアークエンジェルには、アマギを始めとするオーブ軍兵士と、アストレイ、ムラサメがいた。
「ここまでの責めは自分が負う。既に無い命と思うなら、アークエンジェルへ行けと。今日、無念に散った者達の為にもと。。。それがトダカ一佐の最期の言葉でした。」アマギのその言葉に、絶句するカガリ。「幾度もご命令に背いて戦い、艦と多くの兵の命を失いましたことは、誠にお詫びのしようもございません。」カガリに深く礼をするアマギ。それに続くオーブ軍兵士。「ですがどうか、トダカ一佐と、我らの苦渋もどうか、お分かりくださいますのなら、この後は我らも、アークエンジェルと共に、どうか。。」
その言葉に涙あふれるカガリ。「アマギ一尉。そんな、私の方こそすまぬ。すまない。」アマギの肩を掴み、涙を流し始めるカガリ。「カガリ様。」
「私が愚かだったばかりに、非力だったばかりに、オーブの大事な、心ある者達を。。。」
「カガリ様。」
「私は、私は。。」泣き崩れるカガリ。
「いえ、カガリ様、いえ。」みな顔をゆがめるオーブ軍兵士。
カガリに近寄るキラ。「泣かないでカガリ。」そしてオーブ軍兵士の方を眺めるキラ。「今、僕たちに分かっているのは、このままじゃ駄目だっていうことだけです。でも、何をどうしたらいいのかは、分からない。たぶん、ZAFTを討っても駄目だし、地球軍を討っても駄目だ。そんなことはもう、散々やってきたんですから。だから、憎しみが止まらない。戦いが終わらない。僕たちも戦い続けるから、本当は駄目なのかもしれない。僕たちは本当はたぶんみんな、きっと、プラントも地球も、幸せに暮らせる世界が欲しいだけなんです。だからあの、みなさんもそうだって言うんでしたら、あの。。」
「無論です。キラ様。」キラの言葉に答えるアマギ。「仇を討つためとか、ただ戦いたいとか、そのような想いで我らはここに来たのではありません。我らはオーブの理念を信奉したからこそ、軍に身を置いたオーブの軍人です。ならば、その真実のオーブの為にこそ戦いたい。難しいことは承知しております。だからこそ、我らもカガリ様と、この船と共にと。」
「アマギ。。」勇気づけられたような顔のカガリ。
「分かりました。失礼なことを言ってすみません。よろしくお願いします。」アマギ、そしてオーブ兵士へのキラの言葉。「いえ、こちらこそ。」一斉に敬礼するオーブ兵士。それにとまどうキラ。その様子がおかしくて、苦笑するラミアス。

容態が良くならないステラのベットの脇で、ステラからもらった破片を見つめるシン。そのときステラがうなされているような声を上げる。「ステラ。」ステラをのぞき込むシン。「どうしたの、ステラ?大丈夫?」
体を小刻みに震わせながら、目を開けるステラ。「シン。。」苦しそうなステラ。何かしてあげられる事がないかと周りを見渡すシン。ステラが自分の持っている小瓶に目を向けていることに気づく。「これ。」ビンの中の破片を振って動かすシン。微笑むステラ。「君がくれたやつ。覚えてるの?」
頷くステラ。だが、突然苦しみだす。「こ、わ、い。死ぬの。守る。」目に涙をためるステラ。現れた看護婦に突き飛ばされるシン。応急措置が施される中、ステラはシンの方を見ている、何もできず、呆然としたままのシン。安定剤で再び眠りにつくステラ。

モビルスーツデッキで、大破したセイバーの機体を見つめるルナマリア。そんな頃、メイリンはヨウランやヴィーノとおしゃべり。「じゃあ結局、またシンがやったのか?敵艦。」「敵艦隊。もうほとんど。なんかすごいよ、シン、このごろ。『ミネルバ、ソードシルエット』とか、がんがん怒鳴ってくるの。完璧エースって感じ?いっつもつんけんしてて怖いけどさ、戦闘中はもう、もっとすごいって感じ。」
その時、そこに現れるルナマリア。あまりにやられたセイバーを見て、アスランのことが気になっている様子。ヴィーノから今何をしているかは知らないが、全然無事であることを知らされるルナマリア。そこに今度はシンがやってくる。同じようにシンにもアスランのことを聞くルナマリア。「派手にやられてたからね、フリーダムに。部屋でドーンと落ち込んでるんじゃないの?あんな強くないよね、あの人。なーんであれでFEITHなんだか。昔は強かったって奴?」そう言い残し、缶コーヒーを飲みながら去っていくシン。

「そう、やっぱりどうにもならない。」「ええ、もう時間の問題です。」通路で立ち話をしているタリアと医師。どうもステラのことらしい。その話をしている場に出くわしてしまうシン。「生きたままで引き渡せれば、それに越したことは無いのですが、無理ならばこれ以上の延命措置はかえって良くないのではと。解剖しても正確なデータが採りにくくなるだけですからね。」
「そういうサンプルなら、研究所で採ったものがいくらでもあるでしょ?評議会が欲しがっているのは、やはり生きたエクステンデッドなのよ。」
隠れたまま話を聞いていたシン。その言葉を聞き、ギクっとなる。
「措置は今まで通り続けてちょうだい。やっぱり、出来れば生きたまま引き渡したいわ。」「分かりました。できるだけやってはみますので。」「お願い。」
立ち去ろうとするタリア。思い出したように振り返って、医師に聞く。「ああ、シンは?まだ来てたりするの?」「ええ、ちょくちょく。なんであんなのに想い入れるんだか分かりませんけどね。」「そう。」

ミネルバのデッキ。沈み行く夕陽を見ながら、アスランは考えていた。この戦闘の意義を。キラの言葉を思い出すアスラン。(分かるけど。君の言う事も分かるけど、でも、カガリは今、泣いているんだ。こんなことになるのが嫌で、今泣いているんだぞ。なぜ君はそれが分からない。なのに、この戦闘も、この犠牲も仕方がないことだって、全てオーブとカガリのせいだって、そう言って君は討つのか?今カガリが守ろうとしているものを。)
悔しそうな顔をするアスラン。その時、シンが通りかかる。シンは気づかれないようにさっさとその場を去ろうとするが、アスランに呼び止められる。「シン。」
「何ですか?」
「あっ。。いや。」
「部屋じゃなくて、こんなとこで落ち込んでたんですか?のんきなもんですね。ルナが心配してましたよ。どうしてるかって。自分もやられて怪我しているくせに。」
「シン。」
「そうやって偉そうな顔をしたって、何もできなきゃ同じです。」
「何だと?」
「悪いのは全部地球軍なんだ。あんただって、それと戦うためにZAFT軍に戻ってきたんでしょ。」
ハッとした顔になるアスラン。
「だったらもっと、しっかりしてくださいよ。」そう言って立ち去っていくシン。図星のアスランは、シンに言う事は何もできなかった。

夜、一人端末を動かしていたシン。見ていたのはガイアのデータ。寝ていたレイがそれに気づく。「いや何も」と素知らぬ顔をするシン。
そして病室の看護婦を気絶させ、ステアに話しかける。「ステラ、帰ろう。俺は約束は守るさ。ステアを守る。」ベットをそのまま引きずり、病室の外に出るシン。
途中護衛している兵士に見つかる。「貴様、何をしている。」エレベータを待っているところで、銃を突きつけられるシン。そこに現れたレイ。兵士を次々殴り倒していく。レイの周りに倒れている、兵士達数名。そして、シンの方を向く。「返すのか?」「ああ。このままじゃ死んでしまう。その後も実験動物みたいに。俺はそんなの。」エレベータに入り込み、ドアを閉めようとするシン。
閉まりかかったドアを手で開くレイ。「お前は、戻ってくるんだな。」「当たり前だ。」「なら急げ、ゲートは俺が開けてやる。どんな命でも、生きられるのなら、生きたいだろう。」そう言い、ドアから手を放すレイ。エレベータのドアが閉まる。
コアスプレンダーのコクピットにステラを抱きかかえて、発進準備をする。そのころ、医務室からステラがいなくなったことがわかり、艦内に警報が流れる。
レイの操作でゲートが開き、発進するコアスプレンダー。インパルスに換装を終え、ガイアの識別コードに変更して、地球軍の基地に向けて飛び立つシン。その頃、手引きをしたレイは、兵士に艦長室へ連行されていた。タリアはレイを一人残し、その他の人を下がらせた。
「追撃などしなくても、シンは戻ってきます。」「どういうこと?レイ。これもあの人からの指示かしら。」

一方地球軍基地では、ガイアの識別コードで迫ってくるものに、ネオを始め、みなが首をかしげていた。「総員、第2戦闘配備、と言っても出られるのは俺のウィンダムだけか。悪い、応答してみろ。」
ようやく答えてくれた地球軍。シンは呼出コールに答える。「ネオへ。ステラが待っている。ポイントS228へ一人で迎えに来てくれ。繰り返す。ネオへ。ステラが待っている。ポイントS228へ一人で迎えに来てくれ。」

「今回のことは私の一存です。」タリアの問いに答えるレイ。「通常の処分をお願い致します。シンは、彼女を還しに行っただけです。必ず戻ります。」
アスランは艦長室の外で待っていた。そこにルナマリアが声をかける。「アスラン。」

「本当にお一人で行かれるんですか?」ネオの乗ったウィンダムの発進ゲートが開く。「カオスもまだ使えぬ以上、仕方がないさ。罠だとしても、何かしてみなきゃ何も分からん。後を頼むぞ。」発進するネオのウィンダム。
ポイントS228でネオを待つシン。「待っててステラ。もう少しだから。きっとネオが来てくれるから。」息絶え絶えのステラが頷く。
インパルスのモニターに、向かってくるネオのウィンダムをキャッチしたことを知らせるアラートが表示される。ネオも上空からの望遠でインパルスを捉える。「あれは。」
ウィンダムをインパルスの脇に下ろし、コクピットから出てくるネオ。「来たぞ。ネオ・ロアノークだ。約束通り一人だぞ。」インパルスのコクピットが空き、ステラを抱きかかえたシンが降りてくる。「死なせたくないから還すんだ。だから絶対に約束してくれ。決して戦争とか、モビルスーツとかそんな死ぬこととは絶対に遠い、優しくてあったかい世界へ彼女を帰すって。」
呆気にとられているネオ。近づき、「約束、する。」とシンに告げる。
ステラを還したくなさそうなシン。ステラをもう一度見つめる。が、歩み寄り、ネオにステラを渡す。
「ステラ。」呼びかけるネオ。目を瞑っていたステラが気づく。「ああ、ネオ。」
「ありがとうと、言っておこう。」
「別にそんなのはどうでもいい。でも、さっき言ったことは。」
「わかってるよ。じゃあ。」去っていこうとするネオ。
「待て。」ネオを止めるシン。シンはステラのくれたかけらの入ったビンをネオの前にかざす。「ステラがくれたんだ。ステラ、これが好きで、だから。」
「シン。」ステラがシンの方を向く。
ステラの前にビンをかざすシン。「忘れないで、ステラ。これ、忘れないで。」ビンを握らせるシン。弱々しく微笑むステラ。
涙をこらえ、走り去っていくシン。

ネオとステラを残し、飛び去っていくインパルス。

「シン。。」見えぬシンに別れの言葉を贈るかのように、つぶやくステラ。 
PHASE - 31 明けない夜 ステラをネオの元に戻し、アークエンジェルへ帰投したシン。インパルスを降りたシンを待っていたのは、武装した兵士達だった。
「シン・アスカ、軍法第34条G4、他の違反により君を逮捕する。」みんなの前で手錠をかけられ、艦長室に連行されていくシン。艦長室前でシンを待っていたアスランとルナマリアであったが、シンに声をかけられる訳でもなく、またシンも一瞬目配せをしたものの、特に声をかけることなく、艦長室に入っていった。
待ちかまえていたタリア。「覚悟は出来ている、とでも言いたげな顔ね。レイは信じていたけれど、よく戻ってきたわ。でも戻ればどうなるかは無論分かっていたでしょう。勝手な捕虜の解放。クルーへの暴行。モビルスーツの無許可発進。敵軍との接触。こんな馬鹿げた軍規違反、聞いた事もないわ。なぜこんなことをしたの?あの娘が可哀想だった。でも、あれは・・」
「死にそうでした。」タリアの言葉を遮るように言葉を発するシン。「艦長もそれはご存じだったと思いますが?いくら連合のエクステンデッドだからって、ステラだって人間です。それをあんな風に、解剖した時にデータが採りにくくなるとか、あんなのとか、あの娘が死ぬってこと、誰も気にもしない。地球軍だってひどいけど、艦長達だって同じです、それじゃあ。」
「だからって、あなたのやったことは認められる訳ではないわ。事実彼女は連合のエクステンデッドで、私たちは彼女をジブラルタルへ連れて行くようにと司令部から命令を受けていたのよ。個人の勝手な思惑でそれに背くことは許されません。この件は司令部に報告せざるを得ないわ。処分は追って通達します。それまでの間、シン・アスカにもレイ・ザ・バレル同様、営倉入りを命じます。」
艦長室から出て、アスラン、ルナマリアが心配そうに見守る中、営倉へと連れられていくシン。その時、艦長室から何かを叩くような音がする。タリアが苛立ちのあまり、机の上を拳で叩いた音だった。この怒りをどうして良いか分からないという感じのタリア。

レイの隣の牢屋に入れられるシン。
「ごめん。」レイに話しかけるシン。
「何がだ。」
「ああ、いや、だって。」
「お前に詫びて貰う理由などない。俺は俺で勝手にやったことだ。無事に還せたのか?」
「うん。」
「なら、良かったな。」
「はっ。ありがとう。」
そのときに営倉入り口の扉が開く音。入ってきたのはアスランだった。シンが監禁されている牢屋の前に来るアスラン。
「シン。」呼びかけるアスラン。
「何ですか。」
「すまなかったと思って。彼女のこと、君がそんなに思い詰めたとは思わなくて。」
「ああ、別にそんなに思い詰めてたって訳じゃありませんけど。ただ嫌だと思っただけですよ。ステラだって被害者なのに、なのにみんな、そのことを忘れて、ただ連合のエクステンデッドだって、死んでもしょうがないみたいに。。」
「だが、それも。。事実、ではある。」
「ああ?」
「彼女が連合のパイロットであり、彼女に討たれたザフト兵がたくさんいるというのも事実だ。君はそれを。」
「それは!」一瞬言葉に詰まるシン。「でもステラは望んでああなった訳じゃない。分かってて軍に入った俺たちとは違います。」
「ならば尚のこと、彼女は還すべきじゃなかったのかもしれない。自分の意思で戦場を去る事もできないのなら。下手をすればまた。」
「じゃあ、あのまま死なせれば良かったっていうんですか。」アスランの言葉に食ってかかるシン。
「そうじゃない。だがこれでは何の解決にも。」
「あんなに苦しんで、怖がっていたステラを。それにあの人は約束してくれた。ステラをちゃんと、戦争とは遠い、優しい世界に還すって。」
「だから自分のやったことは間違えていないとでも言う気か?君は。」
「俺だって!」
そこにレイが割り込む。「シン、もう止めろ。アスランももういいでしょう。今そんな話をしても何もならない。終わったことは終わったことで先のことは分からない。どちらも無意味です。ただ祈って明日を待つだけなら、俺たちは皆。。。」

ロシアの平原、地球連合軍地上空母ボナパルト。その近くにネオとスティング、瀕死のステラを乗せたカーゴが着陸しようとしていた。ボナパルトに入るや否や不平を漏らすスティング。「けっ、またえらく辺鄙な所へ連れて来てくれちゃって。だいたいなんだよこりゃ。何だってこんな死にぞこないみたいのまでわざわざ。」タンカに運ばれたステラの方を向きながら、愚痴をいうスティング。
「いいんだ。君らは知らないことが多すぎるんだ。」そうスティングをいなし、先に進むネオ。「今更、それも知らなくていいことさ。」

「まあ、何にでも見込み違いということはある。」少し前のネオとジブリールの会話。ジブリールがネオに向かっていった言葉。「つまりはミネルバは君の手には余るというそういうことだ。ではどうしたものかと考えたのだが、幸いデストロイが完成してね。君にはそちらを任せることにした。君達がミネルバを討ってくれていれば、こんな作戦は必要無かったのだが。仕方がない。腐った部分は早く取り除かないと、どんどん広がるからなぁ。あれを使ってユーラシア西側を早く静かにさせてくれたまえ。今度こそ、これなら出来るだろ?ネオ。」

アークエンジェルはドックに入るために浮上していた。吹雪の中をスカンジナビア王国のフィヨルドのドックに向かうアークエンジェル。キラはただ外を見つめていた。
カガリと先のクレタの海戦で生き残り、アークエンジェルに来たアマギ達は、食堂で話をしていた。
「しかし、スカンジナビア王国に匿われてらしたとは。」
「国王陛下とごく身近な方々しか知らぬことだがな。だが、本当にありがたいことだと思っている。お父様のことを今でも惜しんでくださって。」
「地球軍の攻撃を受けた折も、真っ先に救援くださいましたな。あの国は。」
「私はまだ、そういったものに守られているだけだ。あなた方の事にしても。だが、ならば今はそれに甘えさせてもらい、何時の日かきっと、その恩を返す。まだ間に合うというのなら、お父様のように常に諦めぬ良き為政者となることで。」
「カガリ様。」口々にカガリの名を呼ぶ兵士達。「オーブ国内にはセイランのやり方に反対し、カガリ様が戻られることを心待ちにしている者も多くおります。」「自分には政治向きのことは分かりませんが、この戦争、どう見ても連合側に非があるように思えてなりません。」「となれば、今やその一陣営たるオーブがこのままでは。。」「そうです、セイランは馬鹿だ。」
「分かった、分かっているから少し待ってくれ。私も、なるべく早くオーブに戻りたいと思っている。あなた方や、クレタで死んでいった者達の為にも、だから今少し、今少し待って欲しい。そして時が来たらその時は私に力を、オーブの為に、頼む。」そう言ってみんなに頭を下げるカガリ。
士気上がるオーブの人たち。

「お邪魔してもいい?」外を眺めるキラに声をかけるラミアス。「すみません、こんなところでさぼっていて。」
「いいわよ。あなた一人で本当によく頑張っているもの。また。」
「えっ?」ラミアスの言葉の意味が分からなかった様子のキラ。
「大丈夫?」
しばし無言のキラ。「なんか、なんでこんなことになっちゃったのかなって思って。なんでまたアスランと戦うようなことに。僕たちが間違えてるんですか?本当にアスランの言うとおり、議長はいい人で、ラクスが狙われたことも何もかも間違えで、僕たちのやっていることの方がなんか馬鹿げた、間違ったことだとしたら。。。」
「キラ君。でも、大切な誰かを守ろうとすることは、決して馬鹿げたことでも、間違ったことでも無いと思うわ。」
「え?」
「世界のことは確かに分からないけど、でもね、大切な人がいるから世界も愛せるんじゃないかって私は思うの。」
「マリューさん。」
「きっとみんなそうなのよ。だから頑張るの。戦うんでしょ。ただ、ちょっとやり方が、というか思うことが違っちゃうこともあるわ。その誰かがいてこその世界なのに。アスラン君もきっと守りたいと思った気持ちは一緒のはずよ。だから余計難しいんだと思うけど、いつかきっと、また手を取り合える日が来るわ。あなた達は。だから諦めないで。あなたはあなたで頑張って。」
「はい。」
「ね。」とキラの頭を軽く叩くラミアス。

ロシアのボナパルトでは、デストロイの発進準備が整っていた。
「君の新しい機体だよ。」デストロイを前にステラに話しかけるネオ。
「ステラの?新しい?」
「ああ、これでステラも戦わないとな。でないと怖いものが来て、私たちを殺す。」
「ころす?ステラも?」ステラの問いかけに頷くネオ。「ネオも?」
「そうだ。」
「いや!そんなの、死ぬのは嫌。」
「なら、やらないとな。ステラならできるだろ。怖いものはみーんな無くしてしまわなくちゃ。」
「こわいもの?なくす。」顔が変わるステラ。

そのころ司令部から艦長に暗号電文が届いていた。艦長室に向かうタリアとアーサー。「どうなるんでしょうか、シンは。」タリアに質問するアーサー。「分からないわね。普通に考えれば銃殺だけど。シンのこれまでの功績を考慮してくれれば、これだけは。」
艦長室の自分のデスクについたタリアは、コンソールを叩き始める。「防げなかった私たちも、責任は問われるわよ。」
そしてディスプレイに映ったその内容に驚く。「えっ?」

ボナパルトからゆっくり浮上するデストロイ。その護衛のためネオのウィンダムとスティングのカオスが発進準備をする。「けど、なんで俺にはあれくれねぇんだよ。」ネオに不満を言うスティング。「あんな訳のわかんねぇ病み上がりよい、俺の方がよっぽど。。」「適性なんだ。ステラの方が効率がいいと。データ上でな。」機体を離陸させるネオ。「ちっ」舌打ちをして発進するスティング。

「出ろ。」牢屋より出されるシン。
「拘束中のエクステンデッドが逃亡の末、死亡したことは遺憾であるが、貴艦のこれまでの功績と現在の戦況を鑑み、本件については不問に付す。」この内容に衝撃を隠しきれないアーサー。「ええ?一体これはどういうことですか?」
「失礼します。」牢屋より出されたシンが艦長室に連行されてくる。入り口で3名の兵士に囲まれて立つシン。

デストロイと、ザフト軍のバクゥ、ガズウートとの戦闘が始まる。レセップス級の陸上戦艦からの砲撃をリフレクターで防ぎ、その圧倒的な火力でバクゥ、ガズウートをなぎ払っていくデストロイ。あっという間に街の一つが壊滅した。
その威力に歯ぎしりをするスティング。

ミネルバ内を堂々と歩くシン。不問とされたシンの話は既に皆の知ることとなっていた。シンをみてひそひそと話をするクルー達。休憩室の戻ってきたシンは、早速ヴィーノの出迎えを受ける。「シン、よかったよな、お前。」そこにはアスランの姿もあった。アスランを見つけるや否や、冷たい態度で話を始めるシン。
「ご心配をおかけしました。もう大丈夫です。色々と有り難うございました。」挑戦的な口調のシン。「いいや。」とだけ答えるアスラン。

デストロイは次の都市に向かっていた。立ち向かうザフトの防衛軍。だが、全くもって歯が立たない。逃げ惑う人々もろとも火に包まれる都市全体。

キラと共に戻ってきたラミアスに、ターミナルからの緊急通信が伝えられた。「艦長、ターミナルからエマージェンシーです。」

そして同じような知らせがミネルバにも届いていた。「司令部より緊急通達です。ユーラシア中央より地球軍が侵攻。既に3都市が壊滅。ザフト全軍は非常態勢を取れとのこと。」

アークエンジェルでは、燃えさかる炎の中に立つデストロイの姿を捉えた映像が映し出されていた。

シンはアスランに大口を叩いていた。「司令部にも、俺の事を分かってくれる人がいるみたいです。あなたの言う正しさが、全てじゃないってことですよ。」

画像を見て居ても立っても居られなくなるキラ。「行きます、マリューさん。」「わかったわ。」フリーダムへ向かうキラ。

「では。」嘲りをこめた敬礼をしてアスランの前から去るシン。そして、それに従い、「失礼します」と敬礼し、去っていくレイ。

破壊されたバクゥの頭を踏みつけているデストロイ。それを操作しているステラがつぶやく。
「やっつけなきゃ。怖いものは。全部。」
PHASE - 32 ステラ ベルリン市内で繰り広げられる連合軍とザフト軍の戦闘。だが、デストロイを投入した連合軍の侵攻は、ザフト軍の攻撃力をはるかに凌駕していた。焦土と化すベルリン。その映像を見ながら高笑いをするジブリール。
「どうです?圧倒的じゃないですかデストロイは。」
「確かにな。全て焦土と化して何も残らんが。」
「何処まで焼き払うつもりなんだ。これで。」
「そこにザフトがいる限り、何処までもですよ。変になれ合う連中にはもう一度はっきりと教えてあげませんとね。我らナチュラルとコーディネータは違うのだということを。それを裏切るような真似をすれば地獄に堕ちるのだということをね。。。」

デストロイに対して、雲を引き裂き、届く一条のビーム光線。「何?」ステラが顔を上げたその先には、フリーダムがいた。そしてその後から現れるアークエンジェル。
「フリーダム?ちぇ、あいつら。」フリーダムの攻撃を牽制するため、ウィンダムを向けるネオ。
デストロイに取り付こうとしたキラ。だが、その大きさに攻撃をしあぐねていた。「なんて大きさだ。こんな!」
巧みにデストロイからの攻撃をかわしつつ、攻撃をしかけるフリーダム。その攻撃は全て陽電子リフレクターで防御されてしまう。
「何だ!お前は。」いらつきながら、フリーダムへの攻撃を強めるステラ。
フリーダムを攻撃しつつ、デストロイとフリーダムの間に割り込むネオ。「気をつけろ、ステラ!そいつはフリーダムだ。手強いぞ。」
ネオの言葉に、フリーダムの姿をモニターで確認するステラ。「何であろうと、私は、」
変形をしていくデストロイ。デストロイはモビルスーツ形態へと変形し、フリーダムとアークエンジェルの前に悠然と立ちはだかった。
「これは?」「モビルスーツ?」そのデストロイの姿に驚愕の声を上げるラミアス達。

モビルスーツに変形し、その攻撃力が増した感に見えるデストロイ。
「くそー、どうしてこんな事を。」破壊される街を見て、デストロイに立ち向かっていくフリーダム。だが、それを防ごうとするネオ、スティングに阻まれ、なかなかデストロイまでたどり着く事ができない。
「援護して、ゴッドフリート照準。」フリーダムの姿を見て、アークエンジェルで援護するラミアス。ゴッドフリートの攻撃にひかざるを得ないネオとスティング。だが、それを守るように出てきたデストロイの陽電子リフレクターが、ゴッドフリートのビームを全て跳ね返す。
「私も出る。これではキラが。」この様子を見たカガリが、ラミアスに言う。そこに割り込んでくるモニターのアマギ。「カガリ様、我らも出撃を。」「アマギ一尉。」「この戦い、オーブの為のものではありませんが、これをただ見ていることなど出来ません。」
「よし、行くぞ!」立ち上がるカガリ。「いいの?」カガリを呼び止めるラミアス。「これを放っておけるか。」そう言って、アークエンジェルのブリッジを後にするカガリ。

このデストロイ出現は、プラント本国でも大事になっていた。騒然とするザフト軍、軍事ステーション。
「どういうことです、何の勧告もないままこのような。」紛糾する最高評議会。「無差別に街ごと焼き払うとは、正気かあちらは。」「都市駐留軍は、そのほとんどが壊滅状態です。議長、ここは一時撤退を。」
「だが、退がってどうする?退がれば解決するのかね?ミネルバは、今どこにいる。」顔の前で手を組みながら、尋ねるデュランダル。
「艦隊司令部の命を受け、現在ベルリンに向かっておりますが、しかし、現状あの船も戦力に乏しく、行ったところで。。」
「かもしれんが、だが、やらねばならんのだ。」立ち上がる議長。「誰かが止めねば奴らはますます図に乗って、都市を焼き続けるだろう。そんなことは決して許されるものではない。」

アークエンジェルからは、カガリのストライクルージュと、ムラサメ3機が発進する。
「モビルスーツの性能で全てが決まる訳じゃねぇ。これは俺が。」デストロイを攻撃中のフリーダムに取り付いてくるスティングのカオス。「くそー」とスティングに邪魔をされるキラ。そこに現れるムラサメ。「キラ様、ここは我らが。」そしてカガリ。「大丈夫だ、キラ。任せろ。」フリーダムの横にストライクルージュがやってくる。「分かった、頼む。」
キラは、カガリ達にカオスを任せ、再びデストロイの元へとフリーダムを向ける。

ようやく到着したミネルバ。前線司令部への呼びかけを続けるものの応答なし。そして、レーダーの熱紋反応で、フリーダムが戦っていることを知る。「フリーダム、およびカオス、ウィンダム、オーブ軍ムラサメ、ストライクルージュそしてアークエンジェルです。」
「そんな、何であの船が。」疑問を口に出すアーサー。「さすが正義の味方の代弁士ね。助けを求める声あらばってところかしら。」皮肉を込めていうタリア。「艦長?」アーサーの問いかけを無視するタリア。「コンディションレッド発令。対モビルスーツ戦闘用意。」

「コンディションレッド発令、パイロットはモビルスーツにて待機してください。」そのメイリンのアナウンスで、モビルスーツデッキに向かおうとするシン。そのシンを呼び止めようとするアスランとルナマリア。そこにタリアからの連絡が入った。
「シン」
「なんでしょうか?」
「情勢は思ったより混乱してるわ。既に前線の遊軍とは連絡が取れず、敵軍とは今、フリーダムとアークエンジェルが戦っているわ。」驚くシン。そして同じようにタリアの言葉を聞いていたルナマリアやアスランも驚く。「キラ」とつぶやくアスラン。
「そんな?何で奴らが。」
「思惑は分からないけど、敵を間違えないで。戦力が苦しいのは承知しているけど、本艦はなんとしてもあれを止めなければなりません。司令部はあなたに期待してるわ。お願いね。」
通信が切れる。やや振り返るように後ろにいるアスランへ視線を向けるシン。気づくアスラン。だが、何を言う事もなく、モビルスーツデッキへと向かうシン。「シン!」アスランの呼びかけも無視したまま。

デストロイからの攻撃で、ついにSEEDを覚醒させるキラ。「やらせはせん。」フリーダムを攻撃してくるネオのウィンダム。「あのウィンダム、何で?」と疑問を持つキラ。
なかなかフリーダムを落とすことが出来ないステラ。ネオの出撃前の言葉を思い出す。「ステラもこれでまた戦わないとな。でないと怖い物が来て、私たちを殺す。」「ステラなら出来るとも。怖い物はみーんな無くしてしまわなくちゃ。」

ついに戦場にインパルスが現れる。さらにミネルバも到着。緊迫するアークエンジェル艦内。
「共闘できればとも思うけど難しいわね。今となっては。」アークエンジェルに対して、もはや敵という感情しか抱けないタリア。
ビームサーベルを構えたインパルス。一直線にデストロイへ。攻撃をかわし、至近距離に達したインパルスは、コクピット付近を斬りつける。コクピット手前のモニタが破壊され、煙に巻かれるステラ。
「何なんだよ、この化け物は。」一度、デストロイから離れたものの、致命傷を負わせられなかったと感じたシンは、再度デストロイへの攻撃をしようと旋回する。
「うぉー。」ステラの感情高ぶる。デストロイから発する無数のビーム。これらが次々と建物を焼き、さらに街は焦土と化していく。
「どうしてこんなことを?」炎の中に立つデストロイを見ながら、つぶやくシン。「何で、そんなに殺したいんだ!」デストロイに向けて機体を加速させるシン。
そこにネオのウィンダムが現れる。「やめろ坊主!」インパルスに機体を激突させるネオ。「くそぉ、何を!」「あれに乗っているのは、ステラだぞ。」その言葉に驚くシン。先ほど自分が切った、デストロイのコクピット付近を望遠する。そこには、こちらを睨み付けているステラの姿があった。呆然とするシン。
「ネオ!」ステラはデストロイをネオのいる方へと動かし始めた。そこに攻撃を加えるフリーダム。フリーダムから放たれたミサイルは、先ほどインパルスが叩き切ったコクピット付近に着弾する。機体が傾くデストロイ。
「何をやっている!的になりたいのか?」キラからの言葉に、ハッとなるシン。シンはどうしていいのかわからない。そのおかしなシンの動きに心配するミネルバ、そしてアスラン達。

(で、ないと私たちを殺す。)ネオのその言葉におびえるステラ。泣きじゃくる。「死ぬのは嫌。怖い。」
ネオはフリーダムを何とか落としてしまおうと必死。キラはこのウィンダムを何とかしなければ、デストロイへの攻撃を続けることができない。決心するキラ。「マリューさん、こちらを頼みます。」意味が分からないラミアス。そう言った瞬間、ネオのウィンダムは両手、両翼が叩き切られていた。
「何?」ネオがそう言った時には、墜落。機体は爆発し、投げ出されたネオの体は地面に横たわっていた。
「ネオー!」叫ぶステラ。
墜落現場に近づくアークエンジェル。マスクが脱げ、横たわるネオの姿を、アークエンジェルのモニタが捉える。その姿に驚くラミアス。

「シン、どうしたの?何やってるの。シン!」タリアからの呼びかけに反応しないシン。シンは自分がどうすべきなのかを未だ分からずにいた。
ステラはネオを失った悲しみから狂乱状態に陥っていた。(で、ないと、私たちは・・)ネオのあの言葉だけが頭の中で繰り返される。
スティングもムラサメの攻撃で散っていった。

「いや、駄目、いやぁー。」周りをビームで焼き尽くしていくステラ。「止めるんだステラ!止めるんだ!」叫ぶシン。
「くそー、もう止めろ!」ビームサーベルを構え、突進していくフリーダム。だが、陽電子リフレクターに阻まれる。そこにシンのインパルスが襲いかかる。
「止めろー。」フリーダムに向け、ビームサーベルで斬りつけるシン。「何にも知らないくせに、あれは、あれは。」
そしてさらに呼びかけを続けるシン。「ステラ、ステラ。俺だ。シンだよ。」
「あー、いやぁー。死ぬのは駄目。いやぁー、怖い。」近づくインパルスに攻撃をするデストロイ。だが、既に照準など合わせていない。当たるはずも無かった。
「大丈夫だ、ステラ。」
デストロイの手が、インパルスに向けられた。
「君は死なない。」
シンのその言葉に、泣きじゃくっていたステラが、ハッとなった。
「君は俺が、俺が守るから。」

海辺でシンに助けられたことを思い出すステラ。
「ああ、シン。」
インパルスに向けられていたデストロイの手が下がる。

ステラの魂が嬉しそうにシンの元に向かっていく。魂レベルでの交流をするシンとステラ。いい気分に浸っているステラ。
その時、コクピットで小爆発。そこでハッとなるステラ。割れた部分から外を見ると、インパルスの後ろに近づきつつあるフリーダムの姿があった。今やネオを落としたフリーダムは、ステラにとって恐怖の対象でしかない。リフレインするネオの言葉(で、ないと、私たちはみな・・・ステラなら・・・私たちを殺す)。
その恐怖心は再びステラを狂乱状態へと陥らせた。

フリーダムに向け、再び動き始めるデストロイ。デストロイの顔と胸にあるビーム発射口に光が集まり始める。
「止めるんだ。ステラ。」叫ぶシン。
「止めるんだ、もう。」ビームサーベルを構えながら、フリーダムを突進させるキラ。

「ステラーぁ」シンが叫び、そしてステラが「うぉー」と雄叫びを上げ、デストロイがビームを発射しようとしたその瞬間、フリーダムのビームサーベルが、デストロイの胸に突き刺さる。さらにもう一本のビームサーベルを突き刺すフリーダム。そして上空へと上がっていく。
突き刺されたビームサーベルの部分から爆発するデストロイ。顔からビームを発射しながらも、その機体は仰向けに倒れていく。真上に飛んでいく、まるで断末魔の叫びのようなビームも、やがて消えていく。


戦いは終わった。
横たわるネオの側に近寄るラミアス。未だ自分の目を信じられない。それは、あのフラガとそっくりの顔だったからだ。
そして、機能を停止したデストロイからステラを運び出したシン。
「ステラ、ステラ、どうしてこんな。」
気づくステラ。「シ・・ン・・。会いに・・きた。」
シンに向けて差し伸べる手。握るシン。ステラの頬を流れる涙。
「シン・・・ステラ・・・まもる・・・シン、すき・・。」
目を瞑るステラ。
「ステラ!」
ぐったりとなるステラの体。

だぶる、妹、マユを失った時の状況。

「うわぁー。」シンの悲しみの叫びが響き渡る。
PHASE - 33 示される世界 雪降る湖畔、ステラを抱くシンの乗るインパルス、ゆっくりと湖の中に入っていく。ステラとのことを思い出し、ステラを抱きしめ、泣くシン。
「大丈夫だよ、ステラ。」
インパルスの手のひらにステラを抱きかかえたまま現れるシン。
「もうなにも、怖いことなんかない。苦しいこともない。だから。。」
ステラの体を湖面に置こうとするシン。
「もうなにも、君を怖がらせるものはないから。誰も君をいじめに来たりしないから。」
手を放すシン。ゆっくりと湖の中に沈んでいくステラ。
「だから、安心して、静かに、ここで、お休み。。」
誰に抱いてもらいたいように両手を広げ、湖の奥へ沈んでいくステラ。
「守るって言ったのに。俺、守るって言ったのに。俺・・・・・」インパルスの手の上で、泣き続けるシン。
泣くのを止め、そして上げたシンの顔は、何かに復讐を誓ったような、恐ろしい形相であった。

惨い状況のベルリン。そこに駐機しているミネルバ。ブリッジから外を見つめ、つぶやくタリア。「しかしひどいものだわ。無茶苦茶よ、地球軍は。」「そうですね。」タリアに答えるアーサー。「ディオキアにいらしたとき、議長も、我々は何をやっているのかとおっしゃってたこと、本当ね。」「正直、こんな戦闘ばかりを繰り返して、どうなるのかという思いはありますね。先の大戦の轍は踏むまい、ナチュラルとはあくまでも融和をとする議長のお考えは良いですが、でも、討つべきものはさっさと討ってしまった方が良いのではないでしょうか。で、ないと何時になっても終わらないと思います。この戦争。」「ふっ、かもしれないわね。」

ミネルバに戻っていたシン。コンソールを叩きながらフリーダムに関するデータを整理していた。その後ろでシンのやる事を見ているレイ。そこにアスランがやってくる。シンの部屋に入るアスラン。
「何をやっているんだ。」アスランの問いかけに答えないシン。「シン、アスランだ。」レイに言われ、「ああ」とだけ空返事をするシン。アスランもシンが操作している端末をのぞき込む。
「フリーダム?」そう言った時、苛ついている様子のシンがつぶやく。「くそっ、何でこんな。」
「カメラが向いてからの反応が恐ろしく速いな。スラスターの操作も見事だ。思い通りに機体を振り回している。」レイが言う。
「フリーダムのパワーはインパルスより上なんだ。それをここまで操るなんて。」考え込むシン。
何かに気づくアスラン。「シン、レイも何をやってるんだ。」シンの肩に手を置こうとするアスラン。それを振り払うシン。アスランの方を向くシンとレイ。
「何をって、ご覧の通りフリーダムとの戦闘シミュレーションですよ。一体なんです?」
「何故そんなことをしているんだ。」
「強いからです。俺の知る限り、今モビルスーツで一番強いのは、こいつです。あのデストロイさえ倒したんだ。なら、それを相手に訓練するのはいいことだと思いますが、何かあったとき、あれを討てる奴がZAFTにいなきゃ、困るでしょ。まるっきり訳のわからない奴なんだから。」
「シン!」シンを鷲づかみにしようとするアスラン。
立ち上がり反抗するシン。「何ですか!」
続くにらみ合い。レイが割って入る。「アスラン、シンも控えろ。アスラン、シンの言っていることは間違っていないと思います。フリーダムは強い。そしてどんな思惑があるかは知りませんが、我が軍ではないのです。シンの言うようなことは想定されます。いくらあなたがかつて共に戦ったものだとしても。」
「だが、キラは敵じゃない。」
「はぁー。」アスランの答えに思わず声を上げるシン。レイも反論する。「何故ですか。」言葉に窮するアスラン。
「ダーダネルスでは本艦を撃ち、ハイネもあれのせいで討たれたのです。あなただって、あれに落とされたのでしょう?戦闘の判断は上のすることですが、あれは敵ではないとは言い切れません。ならば私たちは、それに備えておくべきだと思います。」
反論しようにもレイの言う事があまりにも正しすぎて、反論できないアスラン。
「よろしければアスランにも、その経験からアドバイスをいただければと思いますが。」たたみ掛けるレイ。
「いいよ、レイ。」再びコンソールに向かうシン。「負けの経験なんか、参考にならない。」
「何?」シンにかみつこうとするアスラン。それを制するレイ。「すみませんでした。シンには私から言っておきますから。」
感情を抑えつけたまま、シンの部屋を出て行くアスラン。
コンソールを叩き続けていた手が止まるシン。「フリーダム。。」「ん」シンの言葉を聞き返すレイ。「俺が倒す。」

アークエンジェルでは、救出したネオが眠り続けたままであった。ベッドの横で見守り続けるラミアス、そしてマードック。キラもそこにやってくる。「まだ眠ってるんですか?」「ええ、手当の時も一度目を開けて、自分は連合軍第81独立機動軍所属ネオ・ロアノーク大佐だと名乗ったそうだけど。でも、検査で出たフィジカルデータは、この船にあったデータベースと100%一致したわ。この人は、ムウ・ラ・フラガよ。今は、肉体的には。」
訳の分からないマードックはキラに尋ねる。「だから、どういうことだよ。少佐なんだろ?これは。」
「ええ、それは間違えないんですが。」
その時、ネオが目を開き、話し始める。「やれやれ、いつ少佐になったんだ。俺は。」
驚く一同。ラミアスも自分が座っていた丸椅子をひっくり返して立ち上がる。
「大佐だと言ったろうがちゃんと。捕虜だからって勝手に降格するなよ。」
その声はムウそのもの。涙ぐむラミアス。どうにか感情を抑えつけているようだが。。その事態が飲み込めないネオ。困った様子。「何だよ。一目惚れでもした?美人さん。」
ラミアスは自分の感情が抑えつけられなくなり、涙を流しながら、走って部屋を出て行った。
「ムウさん!」ネオを怒鳴り飛ばすキラ。
「何だよムウって。」そのネオの言葉にどう返して良いか分からないキラ。
部屋の外に出て話し始めるキラとマードック。「記憶がねえのか?」「無いって言うか違っているみたいですね。確かにそうじゃなきゃ地球軍にいるはずなんかないでしょうけど。」「んー。」「でも、あれはムウさんなんです。だから、僕は。」「ああ、けど記憶がねぇんじゃ、かえって酷かもしんねえぜ。艦長がよ。」

既にレストアの方が早いと思いつつも、何とか修理を試みようとするメカマン達が作業を続けるモビルスーツデッキ。アスランはそこで、インパルスの機体を見つめながら、先ほどのシンの言葉を思い出していた。
そこに声をかけてくるルナマリア。「アスラン、どうしたんですか。こんなところで。」
「あっ、いや。」
「シン、またお咎めなしですね。」
「ええ。」
「まあこのあいだの件でも不問だったんだから、そんなもんと言えばそんなもんなんでしょうけど。なんかねぇ。あんまりスーパーエースだから何やってもOKみたいになると不満が出ますよね。」
「君は不満そうだな。だから俺に艦長に掛け合えと、何とかしろと言いたいのか。なら・・」
「違いますよ。」アスランの言葉を打ち消すルナマリア。「私は、アスランにもっと頑張って貰いたいだけです。」「え?」「もっと力を見せてくださいよ。そうすればシンだって、もう少しおとなしく、言う事聞くとも思うんですよね。」
「ルナマリア。」
「アスランは優しすぎますよ。そういうところも好きですけど。損ですよ。」
「損?」
「ええ、せっかく権限も力もお持ちなんだから、もっと自分の思ったとおりにやればいいのにって。」
「権限。。力。。」つぶやくアスラン。
「ええ、そうでしょう。」そう答えるルナマリア。だが、アスランが何かを強く決心したかのとうな表情を見て、不安になる。

「みなさん、私はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルです。我らプラントと地球の方々との戦争状態が解決しておらんのだが、突然このようなメッセージをお送りすることをお許しください。」突然、デュランダル議長が緊急メッセージを、あらゆるメディアを通じて、地球へ流し始めた。そのメッセージに目を向ける地球の人々。「ですが、お願いです。どうか聞いていただきたいのです。私は今こそ皆さんに知って頂きたい。」
艦長の指示のもと、ミネルバ艦内にもそのメッセージが流され始める。今までの出来事を整理し、没頭していたアスラン。「どうしたの?」というルナマリアの呼びかけに我に返り、「あっ、すまない。」と答えるアスラン。そこにデュランダル議長の声が聞こえてきた。
「こうして未だ戦火が収まらぬ時に」
「何これ?」「議長の緊急メッセージだと。」そのメカマンの言葉に放送が聞こえるところへと移動するアスラン、ルナマリア。
「・・戦争状態に陥ってしまった本当の訳を各国の政策に基づく情報の有無により、未だご存じない方もいらっしゃるでしょう。」写されるデストロイの映像。「これは過日、ユーラシア地方から西側地域の都市へ向け、連合の新型巨大兵器が侵攻したときの様子です。この巨大破壊兵器は、何の勧告も無しに突如砲撃を始め、逃げる間もない住民ごと、焼き払い、なおも侵攻しました。」

この放送に焦るジブリール。「放送を遮断するんだ。速くしろ。」

「我々はすぐさまこれの阻止と防衛戦を行いましたが、残念ながら多くの犠牲を出す結果となりました。侵攻したのは地球軍、されたのは地球の都市です。何故こんなことになったのか。連合側の目的は、ZAFTの支配からの地域の解放ということですが、これが解放なのでしょうか。こうして住民を都市ごと焼き払うことが。確かに我々の軍は、連合のやり方に異を唱え、その同盟国であるユーラシアからの分離、独立を果たそうとする人々を人道的な立場からも支援して来ました。こんな得るものもないただ戦うばかりの日々に終わりを告げ、自分達の平和な暮らしを取り戻したいと、戦場になど行かず、ただ愛する者達と共にありたいと、そう願う人々を我々は支援しました。なのに和平を望む我々の手をはねのけ、我々と手を取り合い、憎しみで打ち合う世界よりも会話による平和への道を選ぼうとしたユーラシア西側の人々を連合は裏切りとして、有無を言わさず焼き払ったのです。子供まで。」

「止めろ!何をやっている、止めさせるんだ。あれを。」指示するジブリール。
「急に、だ。どういうことだね、これは。」「これは君の責任問題だな。」「何をしようと言うのかね。デュランダルは。」ロゴスの委員に詰られるジブリール。

デストロイとの戦いの映像が映し出されるのを見ていて気づくアスラン。「フリーダムが、いない?」
シンはあのときのことを思い出し、拳を強く握りしめる。

「何故ですか。何故こんなことをするのです。平和など許されず、戦わねばならないと、誰が、何故言うのです。何故我々は手を取り合ってはいけないのですか。」
そこに現れるミーア。「この度の戦争は確かに私どもコーディネータの一部の者達が起こした、大きな惨劇から始まりました。それを止め得なかったことを、それによって生まれてしまったあまたの悲劇を、私どもも忘れはしません。被災された方々の悲しみ、苦しみは今もなお、深く果てないことでしょう。それはまた、新たなる戦いへの引き金をひいてしまったのも、仕方のないことだったのかもしれません。ですが、このままではいけません。ただ撃ち合うばかりの世界では安らぎは無いのです。果てしなく続く憎しみの連鎖も苦しさも、私たちはもう十分に知ったはずではありませんか?どうか目を覆う涙をぬぐったら、前を見てください。その悲しみを叫んだら、今度は相手の言葉を聞いてください。そうして私達は、優しさと光のあふれる世界へ還ろうではありませんか。それが私たち全ての人が、真の願いでもあるはずです。」
聞いていた人々から自然と起こる拍手。ミーアの言葉の後、デュランダルが言葉を続ける。
「なのに、どうあってもそれを邪魔しようとする者がいるのです。それもいにしえの昔から。自分達の利益のために戦えと、戦えと、戦わない者は臆病だ。従わない者は裏切りだ、そう叫んで、常に我らに武器を持たせ、敵を作り上げて、討てと指し示してきた者達、平和な世界にだけはさせまいとする者達、このユーラシア西側の惨劇も、彼らの仕業であることは明かです。

「ジブリール!」「止めさせろ、今すぐあれを止めさせるんだ!何故出来ない。」ジブリールの叫びもむなしく、メッセージは続く。

「間違った危険な存在とコーディネータを忌み嫌うあのブルーコスモスも、彼らの作り上げたものに過ぎないことを皆さんはご存じでしょうか?その背後にいる彼ら。そうして常に敵を作り上げ、常に世界に戦争をもたらそうとする軍需産業複合体、死の商人、ロゴス。」
画面はロゴスの所属するメンバーの画像とその名前が映し出されている。そこには当然、ジブリールの写真も入っていた。
「彼らこそが平和を望む私たち全ての真の敵です。私が心から願うのは、もう二度と戦争など起きない世界です。よってそれを阻害せんとする者。世界の真の敵。ロゴスこそを滅ぼさんと戦う事を私はここに宣言します。」

アークエンジェルでこのメッセージを聞いていたカガリ。「こ、これは大変なことになる。艦長、キラ。」

「デュランダル!デュランダル!」議長の名を叫びながら、意気揚がる群衆達。
PHASE - 34 悪夢 議長の演説については、プラント評議会でも知っている者は居なかった。デュランダルの独断で行われたものである。そして発表されたロゴスの中には、セイラン家にも深く関わりがある家の名前が挙げられていた。そのことを気にするカガリ。

「お騒がせして大変申し訳ない。だが、私の思いは先の放送で申し上げたとおりです。開戦時防衛戦の折申し上げた言葉を、今一度繰り返したい。再び手に取るその銃が、今度こそ全ての戦いを終わらせるためのものとならんことを。」評議会にて、先ほどの演説の説明をするデュランダル。「我々はもういい加減、こんな彼らの戦争システムから抜け出すべきなのです。我々の本当の敵は連合でもナチュラルでもない、ロゴスこそ討たねばまた繰り返しです。」
「しかし、そうは言っても、そうたやすくは。。」
「未だに和平への道すら見えぬ今、我々のとる道はもはやこれしかないではありませんか。でなければこの戦争すらいつになっても終わらない。」

アークエンジェル。カガリの言葉より判断したキラ。「戻りましょう、マリューさん。オーブへ。今までとは違う何かが、大きく動こうとしている。そんな感じがします。」

プラント評議会。「議長に賛同致します。おっしゃる通り、今度こそこの戦う歴史に、終止符を打ちましょう。」この言葉を皮切りに、評議会のメンバーが次々と賛同の言葉を言い、起立する。全員が立った評議会。「ありがとう。」と礼を述べるデュランダル。

飛び立つアークエンジェル。この姿をZAFTの探索機がキャッチしていた。「レイバックス006より入電。セクション3、ポイント1836にアンノウン、アークエンジェルです。」「やはり動いたか。司令部へ報告。それとデータベースを直しておけ。あれはもはやアンノウンでは無い。エネミーだ。」
この情報を受け、司令部よりミネルバへ、ある命令が下る。「ミネルバはこれより発動されるエンジェルダウン作戦を支援せよ。」命令内容を読み上げるアーサー。「えっ?」アーサーの言葉に驚くタリア。

バクゥの攻撃を受けるアークエンジェル。キラはフリーダムで防戦に出るが、何しろ数が多すぎる。集中的に攻撃を受け続けるアークエンジェル。「どういうことなの?これは。」疑問を投げかけるラミアス。
「まずいですよ。奴らのいいように追い込まれている。」戦闘ブリッジよりマリューに言うアマギ。
「わかっている。でも何故ZAFTが急に、こんな。」
「どうやら完全に包囲されているようです。」
「右舷後方より再びバクゥ、8」「さらに10時方向よりバビ、9」「ミサイル来ます。」
「回避!」
「艦長、無意味な戦闘は避けるというこの船の理念は理解しておりますが、これでは沈みます。」アマギの言葉に緊張感漂うブリッジ内。「直撃の許可を。認められないとおっしゃるのなら、せめて我らのムラサメ隊を。」
「わかるけど、キラ君にも言われたでしょ。そうして撃たせるのが目的かもしれないと。ムラサメは1機も欠かさず、オーブへ連れて帰るからと。何とか、海に出られれば。。頑張って、みんな。」

バビ隊が全機被弾で帰投するとの連絡を受けた、ZAFT軍レセップスクラス戦艦。「さすが音に聞こえたフリーダムとアークエンジェルだな。モビルスーツ隊に熱くなるなと言ってやれ。これではミネルバが来るまでもたんぞ。」「追い込みなどという悠長なことをやっているから、こちらが追い込まれるのです。ミネルバを待たずとも全軍でかかれば。」「ふん、貴様は知らんのだろう?アラスカもヤキンデューエも。」「はあ?」「功を焦って逃がしたら、それこそ取り返しがつかんぞ。今後のこともある。ケツはしっかりミネルバとインパルスにもってもらえ。命令通り、我が軍のエースにな。」
支援に向かっているミネルバ艦内。シンはフリーダムとの戦いを控え、冷静になっていた。冷静ではないのはアスラン、艦長室でタリアへ進言をしていた。「議長がおっしゃったのはロゴスを討つということです。なのになぜアークエンジェルを討つ事になるのですか。こんな命令は絶対におかしい。もう一度司令部に。」
その言葉に立ち上がるタリア。「そんなことはもうやったわ。でも返答は同じよ。その目的も示さぬまま、ただ戦局を混乱させ、戦火を拡大させるアークエンジェルとフリーダム。今後の情勢を鑑み、放置できぬこの脅威を取り除く。これは本国の決定なの。」
「しかし。」
「もうどうにも出来ないわ。既に作戦は始まっているのよ。」
返す言葉のないアスラン。
「あなたももういい加減とらわれるのをおよしなさい、アスラン。かつての戦友と戦いたくないのは分かるけど、でも、時が経てば状況も、人の心も変わるわ。あなただって変わったでしょ。ちゃんと今を見て。」
そのときタリアの元に連絡が入る。「艦長、エーワックスからの信号を受信しました。まもなく作戦域です。」
「わかったわ。」艦長室を出て行くタリア。その後を追うアスラン。「艦長。」立ち止まり、振り返るタリア。「見たくないと言うのなら部屋にでもいなさい。でも、あの船相手ではこちらも死にもの狂いよ。」そうとだけ言い、ブリッジに向かうタリア。

コンディション・レッド発令。インパルスの元へ向かうシン。「シン、大丈夫だ。お前なら討てる。」シンにそう告げるレイ。「サンキュウ」不気味な笑みを浮かべ、答えるシン。出てこうとしたシンに、たった今艦長室から戻ってきたアスランが呼び止める。「シン!」
だが、シンは無視して、エレベータのドアを閉める。
「アスラン。。。」そのアスランの姿を見てつぶやくルナマリア。

「ジャミング弾発射。インパルス発進。」ジャミング弾を発射するミネルバ。炸裂するジャミング弾にアークエンジェルのセンサーは役に立たなくなっていた。「取り舵10、降下。」指示を出すラミアス。
インパルスを発射したミネルバが、アークエンジェルへの攻撃を開始する。山肌を滑り降りるように移動するアークエンジェルに降り注ぐ砲弾。そしてキラのフリーダムに襲いかかるシンのインパルス。
弾幕を抜け、雪煙から現れたのはミネルバだった。「ミネルバ!」叫ぶラミアス。
「アークエンジェル捕捉、距離2000、リゾルデ、撃てぃ。」アーサーの指示で発射されるリゾルデ。アーノルドの奇跡的な操艦でそれを回避するミネルバ。船体を傾斜させたまま、ミネルバとすれ違う。「そんな、なぜあの船が。」ミネルバの攻撃が納得できないラミアス。

「あれをかわすとは。」ZAFT戦艦内では士官が驚きの声をあげていた。「さぁて主役のご登場だ。グラディスの手並み、とくと拝見させてもらおうか。」
アークエンジェルからの攻撃に動揺するアーサー。「大丈夫よ。下手に動かなければ当たらないわ。やはり当てようとはしないのね。」タリアのその言葉に驚くアーサー。「メイリン、国際救難チャンネルを開いて。」その指示でチャンネルを開くメイリン。レシーバーを取るタリア。「ZAFT軍艦ミネルバ艦長、タリア・グラディスです。アークエンジェル、聞こえますか?」
「艦長、ミネルバから。」ミリアリアがタリアの姿をモニタに映し出す。「本艦は現在、司令部から貴艦の撃沈命令を受けて行動しています。ですが、現時点で貴艦が搭載機をも含めた全ての戦闘を停止し、投降をするならば、本艦も攻撃を停止します。」

「何だと?命令は撃破だぞ。グラディスの奴、何を?」タリアの行動に激怒するZAFT将校。

「警告は1度です。以後の申し入れには応じられません。乗員の生命の安全は保証します。貴艦の懸命な判断を、望みます。」切れる通信。「さすが、あのミネルバの艦長ね。やっぱり敵にはしたくないわ。」「しかし、ここでZAFTに投降などしたら、カガリ様のお身は。」アマギの言葉に立ち上がるカガリ。「アマギ!」
その時、キラから通信が入る。「海へ、カガリをオーブに。それを第一に。」
「ミリアリアさん、向こうと同じチャンネルを開いて。」「はい。」回線を開くミリアリア。レシーバーをとるラミアス。
「アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。貴艦の申し入れに感謝します。有り難う。」マリューの姿を見て、「あれは。」と言うアーサー。かつてモルゲンレーテで、ミネルバの修理をしてくれたのがラミアスだったことを思い出したからだ。(やっぱり。)と心の中で思うタリア。
「ですが、残念ながらそれを受け容れることは出来ません。本艦にはまだ仕事があります。連合かプラントか今また2色になろうとしている世界に、本艦はただ邪魔な色なのかもしれません。ですが、だからこそ今ここで消える訳にはいかないのです。願わくば脱出を許されんことを。」そこで切れる通信。

「グラディスの馬鹿め、何を不抜けたことを。」怒りのZAFT将校。「モビルスーツ隊の攻撃を再開させろ。なめられたぞ。決して脱出など許すな。」再びアークエンジェルへの攻撃を始めるバビ、バクゥ。それを見て、アークエンジェルの元へ戻ろうとするキラ。だが、立ちはだかるシン。「逃げるな!」
「ミラード隊長、何を勝手に。」「討たねば逃げられるわ。そう言ったではないか、奴らは。」タリアはその言葉に返すだけの正当な理由がない。動き出すZAFT戦艦。「いかにFEITHといえども、こうまでしいた布陣。無駄にしてそれで済むか。ミネルバがやらぬというのなら、我らがやる。」

アークエンジェルに戻りたいキラ。だが、シンのインパルスはそうはさせてくれない。「いっつもそうやって、やれると思うなぁ!」シンのSEEDが覚醒する。フリーダムの攻撃をことごとくかわすシンのインパルス。
(フリーダムは確かに動きが速い。射撃も正確だ。だが、あの機体は絶対にコクピットを狙わない。撃ってくるのは決まって武装かメインカメラだ。そこにインパルスの勝機がある。)レイの言葉に従って、フリーダム対策を行ったシン。明らかにシンの方が優勢である。接近戦。フリーダムのビームサーベルがインパルスの左腕とメインカメラを叩き切る。
「メイリン、チェストフライヤ、フォースシルエット!」
機体を捨て、インパルスの機体をフリーダムに特攻させるシン。そしてコアスプレンダーで、その機体を撃ち、自爆させる。爆発で、山肌に叩きつけられるフリーダム。その間にシンは再びインパルスへの換装を済ませる。再び襲いかかるインパルス。
「逃がさないと言ったろぉ。」
ビームサーベルを振る、シンのインパルス。
「あんたがステラを殺した。止めようとしたのに。」
ついに被弾するフリーダム。

アークエンジェルは、被弾しながらも海岸線まであと少しのところまで来ていた。「これでは持ちません!ムラサメを。」「振り切って!」

フリーダムを未だに追い続けるインパルス。「あんたは俺が討つんだ。今日、ここで。」シンの気迫に押され続けるキラ。「こんな、これは。」
「メイリン、ソードシルエット。」射出されるソードシルエット。

「まもなく海岸線です。逃げられます、艦長。」アーサーの言葉に指示するタリア。「ターンホイザー起動。目標、アークエンジェル。」

海に出るアークエンジェル。「非常隔壁閉鎖。潜行用意。」
キラを気にするカガリ。「キラ!キラは。」「キラ様なら大丈夫です。」
そのアマギの言葉を聞いていないカガリ。「ルージュを出せ、私がいく。」
「駄目よ。」強く止めるラミアス。
アークエンジェル着水。そのまま潜行を始める。

ソードシルエットより、ソードを投げつけるシン。そのソードで、機体をすっ飛ばされるフリーダム。

「急げ!潜られたら終わりだ。」アーサーのその言葉を聞きながら、複雑な表情をするタリア。「撃てぇー」光を放つターンホイザー。

海面すれすれで姿勢を制御できないフリーダム。そこにインパルスのソードが襲ってくる。「あー」フリーダムの機体を貫くソード。フリーダムは大爆発を起こす。その爆発はミネルバをも揺り動かす。
既に原型をとどめていないながらも何とか残ったインパルス。「ははは、やった、ステラ、やった、これで、ははは。」つぶやくシン。

アスランはショックを隠せない。モニターに映し出されたフリーダムの残骸を見て、雄叫びを上げるアスラン。
「キラーッ!」
PHASE - 35 混沌の先に 「逃がさないと言ったろぉ。」シンの雄叫び。「あんたがステラを殺した!」思い出されるデストロイ破壊の瞬間。
「止めようとしたのに。」フリーダムに斬りかかるインパルスのビームサーベル。機体を後方にのけぞらせて、その太刀をかわすキラ。そして、フリーダムをインパルスに向かわせた瞬間、シンはインパルスの上下を分離させる。牽制が空振りに終わったキラ。
その瞬間、フリーダムの背中で爆発音。シンはフリーダムのスラスターの片方を破壊していた。
追いつめられたフリーダム。その時、アークエンジェルに向け発射されるターンホイザー。アークエンジェルが潜った地点に着弾する。それに一瞬、気を取られたキラ。そこにシンのインパルスが突っ込んでくる。
「うぉー。」
シールドを構え、その攻撃を防ごうとするキラ。だが、インパルスのソードは、そのシールドを破り、フリーダムの腹を貫通していた。大爆発をおこすフリーダム。
その様子をミネルバから見ていたルナマリア。「シン。」とつぶやく。レイはシンがフリーダムを仕留めた瞬間を横目で眺めていた。アスランは声を出せないほどのショックを受けていた。
爆炎の中からインパルスの姿が現れる。「ははは、やった、ステラ、やった、これで、ははは。」涙を流しながら、奇妙な笑みを浮かべ、つぶやくシン。
アスランは、映し出されたモニターに向かって叫ぶ。「キラーッ!」

アークエンジェルは、ターンホイザー着弾の直前に海に潜っていたとはいえ、決して受けた被害は軽微ではなかった。ラミアスは第一エンジンを切り離して、爆破させることを命令する。それにより、アークエンジェルが撃沈したと思わせようとする考えだ。
そして切り離されたエンジンの脇には、頭部と胸の部分だけかろうじて残ったフリーダムの残骸があった。その中で気を失っているキラ。その手は、爆発の瞬間に原子炉をスクラムさせたコンソールスイッチに乗せられたままであった。「キラ!キラ!」そのフリーダムの残骸を求め、ストライクルージュで急ぐカガリ。そして、カガリがフリーダムの残骸に手を触れた瞬間、切り離されたアークエンジェルのエンジンが大爆発を起こす。
上がる水しぶき。シン、そしてミネルバのブリッジにいるタリアなどは思わず息をのむ。ミネルバへ帰投するシン。アスランは未だアークエンジェルが落とされたという事実を呑み込めない状況。「アークエンジェル。。。キラ。。。そんな馬鹿な!」

アークエンジェルが撃沈できたかどうか、ソナーでの確認に必死のZAFT軍。だが、海中はまだ爆発の混乱収まらず、とてもソナーが有効に働かない状況。あまりにも浮遊物が少ないため、アークエンジェルは撃沈できなかったと判断、探索範囲を広げるZAFT軍。
アークエンジェルに帰投したシンはメカマン達の拍手に迎えられていた。その中に降りるシン。「本当にすごいよシン!」と言いながら駆け寄ってくるヴィーノ。「本当にやったのか?あのフリーダムを?」という声に、「ええ、まあ」と答えるシン。そこに「シン!」というルナマリアの声が聞こえる。そちらの方向を向くシン。
「すごかった、あんな戦い方。びっくりしちゃったわよ。」ルナマリアの感嘆の言葉に「そう?」とあっさり答えるシン。その態度に顔を曇らせるルナマリア。そのルナマリアを押しのけるようにして前に出てくるレイ。「よくやったな、シン。」右手を差し出すレイ。「見事だった。」その右手を握り返すシン。「有り難う。レイのおかげだ。」「やり遂げたのはお前だ。」
そんな取り巻きを遠くから見つめるアスラン。それに気づくシン。アスランの方向に歩き始める。顔をそらし、立ち去ろうとするアスラン。そのアスランに声をかけるシン。
「仇はとりましたよ。あなたのもね。」
その言葉にシンの胸ぐらを掴み、殴ろうと拳を握るアスラン。「何するんですか!」止めに入ろうとするヴィーノ、ルナマリア。
「キラは、お前を殺そうとはしていなかった。いつだってあいつは、そんなことを。。。それをお前は、何が仇だ!」
「何、訳の分かんないこと言ってんです。止めてくださいよ。」
「あいつを討てたのがそんなに嬉しいか?得意か?何故あいつが?」
「嬉しかったら悪いんですか。」そのシンの言葉にますますカッとなるアスラン。「強敵をやっと倒せて、喜んじゃいけないんですか。じゃあどうしろっていうんです。泣いて悲しめっていうんですか、祈れっていうんですか、それとも俺が討たれりゃ良かったとでもいいたいんですか?あんたは!」
「シン!」ついにシンを殴り飛ばすアスラン。「このぉ」シンもアスランに殴りかかろうとする、がみんなによって止められる2人の殴り合い。
「止めてください、アスラン。」レイの言葉で冷静さを取り戻すアスラン。「アスラン、シンのとった態度に問題があることは認めますが、いかに上官と言えど、今の叱責は理不尽と私も思います。アークエンジェルとフリーダムを討てと言うのは、本国からの命令です。シンはそれを見事に果たした。賞賛されても、叱責される事ではありません。」
「うるさい!」レイの言葉に再び感情高ぶるアスラン。「あいつに、討たれなきゃならない訳などない。」
「はぁ?」とんちんかんな答えに疑問の声を上げるシン。
「キラもアークエンジェルも敵じゃないんだ。」
アスランのその言葉に反論するシン。「何言ってるんですか。あれは。」そのシンの言葉を遮り、意見するレイ。「敵です。あちらの思惑は知りませんが、本国がそうと定めたなら、敵です。」
「レイ!」
「我々はZAFTですから。何が敵であるか、そうでないかなど、陣営によって違います。人によっても違う。相対的なものです。ご存じでしょう?そこに絶対はない。我々はZAFTであり、議長と最高評議会に従うものなのですから。それが定めた敵は敵です。」
「お前!」
「あなたの言っていることは、個人的な感傷だ。正直困ります。」敬礼して、シンを引きずるかのようにその場から去っていくレイ。アスランも怒りを何とか抑えながら、自分を押さえつけているルナマリアの手を振り払い、その場から去っていく。

ZAFT軍は集結を急いでいた。ジブラルタ基地に集結しつつある周辺のZAFT地球軍。ただ、議長の「ロゴスを討て」という言葉にはZAFT内も混乱を来していた。その混乱に腹を立てるイザークが、宇宙、ZAFT軍軍事ステーションにいた。将校達の言葉にカッとなるイザーク。「笑い事ではないわ。実際大変なことだぞ、これは。ただ連合と戦うよりはるかに。」そのカッとなるイザークに困ったという様子のディアッカ。「イザーク」とたしなめるが、イザークの口は止まらない。「少しは自分でも考えろ。その頭はただの飾りか!ふん!」
そう言って歩き始めるイザーク。それを茶化すディアッカ。「お前の頭は今に爆発するぜ。」「うるさい!」
そんなZAFT内の混乱をよそに、ロゴスと呼ばれる人々に対するテロ行為が地球で勃発していた。次々と暴徒に襲われるロゴスのメンバー。
「私だって、名をあげた方々に軍を送るような馬鹿な真似はしません。ロゴスを討つという事はそういう事ではない。ただ、彼らの作るこのゆがんだ戦争のシステムは、今度こそもう、本当に終わりにしたい。」
このデュランダルの言葉を受け、ますます過激化するロゴスに対する暴乱。
「コーディネータは間違った危険な存在と、分かり合えぬ化け物と、何故あなた方は思うのです。そもそも何時、誰がそう言いだしたのです。私から見れば、こんなことを平然と出来るロゴスの方がよほど化け物だ。それもこれも、ただ我々と戦い続けるためにやっている。己の身に危険が迫れば、人は皆戦います。それは本能です。だから彼らは討つ。そして討ち返させる。私たちの歴史はそんな悲しい繰り返しだ。戦争が終われば兵器は要らない。今あるものを壊さなければ新しいものは作れない。畑を吹き飛ばさなければ、飢えて苦しむ人々に食料を買わせることはできない。平和な世界では儲からない、牛耳れないからと彼らは常に、我々を戦わせようとするのです。こんなことはもう本当に終わりにしましょう。我々は殺し合いたい訳ではない。こんな大量の兵器などを持たずとも、人は生きていけます。戦い続けなくとも生きていけるはずです。歩み寄り、話し合い、今度こそ彼らの作った戦う世界から共に抜け出そうではありませんか。」
ロゴスを襲う暴徒の勢いはますます強まっていった。ジブリールに助けを請うロゴスのメンバー。だが、その通信モニタも一つ、また一つと途絶していく。そして暴徒はついにジブリールの屋敷にも入り込んだ。
「そんな、こんな馬鹿なことが!くそっ」走り出すジブリール。「デュランダルめ。。」その後のジブリールの消息は不明となる。

アークエンジェル。点滴を受け、横になっていたキラが、何とか起きあがろうとしていた。食事を持って、キラのベットに近づいてくるカガリとミリアリア。「大丈夫かよ、おい。」カガリがキラの体を支える。「ごめん。はぁ。」自分の情けなさになのかため息をつくキラ。
その様子を食事を取りながらちらちら見ているネオ。
「でも、良かった。傷もそうひどくは無いって先生言ってたぞ。」「でも、フリーダムを。。。あれを落とされちゃったら、僕は。」落ち込むキラ。「何言ってんだよ、キラ。今はそんなこといいから。」
そこに口を出してくるネオ。「インパルスにやられたって。」一斉にネオの方を振り向くキラ達。「へへ、ざまあみろ。ふん。まっすぐで勝ち気そうな小僧だぜ。インパルスのパイロットは。」そこにラミアスが入ってくる。「どんどん腕を上げてる。」
「会った事、あるんですか。」キラがネオに尋ねる。「ああ。。。一度な。しかしこの船は何をやってんだ?この間、俺たちと戦ったくせに、今度はZAFTが。。」下から見下ろすラミアスに気づくネオ。「敵かよ。」うつむくネオ。
「そうね。」そうとだけネオに言い、キラのベットの脇に座るラミアス。「大丈夫なの?キラ君。」「あ、はい。もう。」「良かったわ。アークエンジェルもだいぶひどい状態だけど、見つからないようにうまくルートを選べば、なんとかオーブまで辿りつけるでしょう。」「はい。」視線をネオの方に向けるラミアス。それに気づくカガリ。「ほら、お前も食べろ。」と急にキラにお節介を焼き始める。
「オーブの船なのか?やっぱりこいつは。」ネオが質問する。
「うーん、どうなのかしらね。」はぐらかすラミアス。
「じゃあ、そこでどうするんだ。俺は。」その質問には誰も答えない。
しばしの沈黙の後、ネオが口を開く。「ムウ・ラ・フラガというのはあんたの何なんだ?」しばらく何も答えないラミアス。そして、その質問に言葉を選び、答える。「戦友よ。かけがえのない。でも、もういないわ。」その言葉を聞き、黙ってしまうネオ。

プラントでは、デュランダル議長が地球へ降りるため、シャトルにまさに乗り込もうとしている所だった。「ああ、分かった、それでいい。今後もそうした申し入れは、基本的にはどんどん受けてくれたまえ。」
「でも、何もこんな時に。議長がご自身で地球に降りられなくても。指示はここからでも十分お出しになれますわ。」
「そういう問題ではないのだ。旗だけ振って、後は後ろに隠れているような奴には、人は誰もついて来ないだろう?ジブリール氏の行方もまだ分からんのだ。しかし、すごいものだね。人々の力は。恐ろしくもあるよ。こちらが手をつかねているうちに、こんなことになってしまうとは。」
「ええ、でも議長のお言葉に皆、奮起しているのですわ。本当に戦争のない世界に出来るのならと。」
「できるさ。皆がそう望むのなら。では、後を頼むよ。」シャトルに乗り込むデュランダル。

シャトル内でコンソールを眺めるデュランダル。(ミラード隊からの報告。アークエンジェルの撃沈は未だ確認できぬが、フリーダムの撃破は間違え無し。これでチェックメイトか?いや、油断はできんな。白のクィーンは強敵だ。)「クラーゼクに連絡を取っておいてくれ。例のシャトル強奪犯の件はどうなっているのかと。」指示を出すデュランダル。

デュランダル議長が向かうジブラルタルに、ミネルバはまさに入港しようとしていた。集結しつつある艦を見て感嘆の声をあげるアーサー。だがタリアは浮かない顔をしていた。「剣を取らせるには、なによりその大儀が重要である。誰だったか忘れたけど、指揮官講習の教官が言ってた言葉よ。まっ、当たり前のことね。」何のことだか分からず、ただ「はあ」とだけ答えるアーサー。「討つべき敵と、その理由が納得できなきゃ誰も戦えないもの。今私たちにははっきりとそれが示された。ありがたいことかしら?軍人としては。」「はい。」と間の抜けた返事をするアーサー。
入港シーケンスに入ったというアナウンスを聞き、「ジブラルタルへ入って、次はどうするのかな。俺たち。」とレイに話しかけるシン。
「さあな、だが、先日の議長のお言葉に沿った形での作戦が展開されることは確かだ。」
そこにルナマリアが入ってくる。「ロゴスを討つなんて、議長ご自身だって難しいとおっしゃってたのに。」
「でも、どうしてもやらねばと思われたのだろう。あの悲惨な状況を見られて。シンは気が乗らないか?対ロゴスは。」
うつむいていたシンは、弁解するようにレイに話し始める。「いや、そんなことは。議長の言葉聞いて、俺すごく感動したよ。難しいって言ってたのに、議長やるんだ、諦めないんだって。それが本当に戦争を終わらせるなら、唯一の方法だから。だったら俺だって、どんな敵とでも戦ってやるさ。」

入港早々、基地司令部から、シンとアスランに出頭命令が出された。シンとアスランを呼んだのはデュランダルである。「さてと、これが最後のカードとなるか否か。」
デュランダルとミーアの前に現れるシンとアスラン。
「お久しぶりです、議長。」敬礼し、挨拶をするアスラン。
「先日のメッセージ、感動しました。」と述べるシン。
デュランダルは右手を差し伸べ、握手を要求する。握手を返すシン。「いやぁ有り難う。私も君たちの活躍は聞いているよ。色々あったがよく頑張ってくれた。」「有り難うございます。」
デュランダルはアスランに手を差し伸べる。デュランダルを見つめたままのアスラン。だが、デュランダルの「なぜ」と問いかけるような顔にとりあえず握手を返すアスラン。そこにミーアが抱きついてくる。「アスラン、お元気ですか?会いたかったですわ。」「お久しぶりです。ラクス。」よそよそしく返事をするアスラン。
「さて、もう知っていることと思うが、事態を見かねて、ついに私はとんでもないことを始めてしまってね。」
「いえ、とんでもないなんて、そんな。」デュランダルの言葉を歓迎するかのような口調でまくし立てるシン。
「また話したいことも色々あるが、まずは見てくれたまえ。もう先ほどから目もそちらにばかり行ってしまっているだろう?」
光りが当てられ、議長やシン達のいるブリッジを挟み、現れる2体のモビルスーツ。
「ZGMF-X42Sディスティニー、ZGMF-X666Sレジェント。どちらも従来のものをはるかに上回る性能を持った、最新鋭の機体だ。詳細は後ほど見て貰うが、おそらくはこれが、これからの戦いの主役になるだろう。」
「議長、それは。」とデュランダルに真意を尋ねようとするアスラン。だが、それを無視して話し続けるデュランダル。
「君たちの、新しい機体だよ。」
「えー、俺の、新しい。」喜ぶシン。それに頷くデュランダル。
それに引き替え、デュランダルへの不信感が募る一方のアスラン。一歩退き、デュランダルを見つめ続けというより、睨み続ける。
PHASE - 36 アスラン脱走 「デスティニーは、火力、機動力、防御力、信頼性、その全ての点においてインパルスを凌ぐ最強のモビルスーツだ。一方のレジェンドは、量子インターフェイスの改良により、誰にでも操作できるようになった新世代のドラグーンシステムを搭載する、実に野心的な機体でね、どちらも工廠が不休で作り上げた自信作だよ。どうかな?気に入ったかね?」デュランダル議長の言葉に素直に喜ぶシン。だが、デュランダルに疑問を抱くアスランは、顔を背けたまま。
「デスティニーには、特に君を想定した調整がしてある。」シンに向かって話を続けるデュランダル。
「え?俺をですか。」
「最新のインパルスの戦闘データを参考にしてね。」
「はあ。」
「君の操作の癖、特にスピードは、どうやら通常をはるかに超えて来始めているようだね。」
「ええ?」
「いやぁ、すごいものだな、君の力は。このところますます。」
「あ、いえ。そんな。」
「インパルスでは機体の限界に苛つくことも多かったと思うが、これならそんなことはない。私が保証するよ。」
「はい。有り難うございます。」デュランダルにぴょこりとお辞儀をするシン。

「君の機体はこの、レジェンドということになるが、どうかね、アスラン。ドラグーンシステム。私は君なら十分に使いこなせると思うが。」今度はアスランに話しかけ始めるデュランダル。だが、アスランは返事をしない。その態度に疑問を持つシン、そしてミーア。
「ん?どうしたね、アスラン。」問いかけるデュランダル。
「それは、これからロゴスと戦って行くために、ということですか。」デュランダルに質問するアスラン。「戦争をなくすためにロゴスと戦うと、議長はおっしゃいました。」
「ああ、戦いを終わらせるために戦うというのも、矛盾した困った話だが。。だが仕方ないだろう。彼らは言葉を聞かないのだから。それでは戦うしかなくなる。」
「でも、何故彼らを。」
「ん?」
「アークエンジェルとフリーダムを討てと命じられたのですか。」
「あんた、まだ!」シンが口を挟む。
「アスラン。」アスランの名前を発するデュランダル。
「あの船は確かに不用意に戦況を混乱させたかも知れません。でもその意志は私たちと同じでした。戦争を終わらせたいと。こんなことはもう嫌だと。デストロイに立ち向かって行ったのだって、彼らの方が先だ。なのに何故、話し合う機会すらないまま、あんな命令を。」興奮し、一歩前に出ながらまくし立てるアスラン。
「アスラン。では、私も聞くが、ならばなぜ彼らは私たちの所へ来なかったのだ。想いが同じというのなら彼らがこちらへ来てくれても良かったはずだ。私の声は届いていただろう。なのに何故彼らは来ようともせず戦ったのだ。機会がなかった訳ではあるまい。グラディス艦長も、戦闘前には投降を呼びかけたと聞いている。」
「それは、」とアスランは言いかけ、ミーアの方を強い視線で見た。その視線を感じ、ギョッとして一歩退くミーア。
「ふふ、ラクスだってこうして共に戦おうとしてくれているのに。」
「議長!」デュランダルの言葉に我慢し切れなくなった様子のアスラン。
「ア、アスラン。」デュランダルとアスランの間に入ってくるシン。
「君の憤りは分かる。何故こんなことに、何故世界は願ったように動かないのかと。実に腹立たしい想いだ。だが言ってみれば、それが今のこの世界、ということだ。今のこの世界では、我らは誰もが本当の自分を知らず、その力も役割も知らず、ただ時々に翻弄されて生きている。」
「議長!」デュランダルのうわべだけの言葉に納得がいかず、噛みつくアスラン。
「アークエンジェル。いや、君の友人のキラ・ヤマト君に限って言っても、そうだな、私は実に彼は不幸だったと気の毒に思っているよ。」
「不幸?」
「あれだけの資質、力だ。彼は本来戦士なんだ。モビルスーツで戦わせたら、当代彼にかなう者はないという程の腕の。なのに誰一人、彼自身それを知らず、知らぬが故にそう育たず、そう生きず、ただ時代に翻弄されて生きてしまった。あれほどの力、正しく使えばどれだけのことが出来たか分からないというのにね。ラクスと離れ、何を思ったのかは知らないが、オーブの国家元首をさらい、ただ戦闘になると現れて、好き勝手に敵を討つ。」肩を震わすアスラン。そんなアスランを伺うミーア。デュランダルの言葉は続く。「そんなことのどこに意味があるというのだね。」
「しかし、キラは。」何とか言い返そうとするアスラン。
「以前強すぎる力は争いを呼ぶと言ったのは、さらわれた当のオーブの姫だ。ZAFT軍最高責任者として私はあんな訳の分からない強大な力をただ野放しにしておくことはできない。だから討てと命じたのだ。これは仕方のないことだろう。本当に不幸だった、彼は。彼がもっと早く自分を知っていたら、君たちのようにその力と役割を知り、それを活かせる場所で生きられたら。彼自身も悩み苦しむことなく、その力は称えられて、幸福に生きられただろうに。」
「こうふく。」デュランダルの言葉を繰り返すシン。
「ん?」デュランダルが聞き返したことに慌てるシン。「でありますか?」
「そうだよ。人は自分を知り、精一杯できることをして役立ち、満ち足りて生きることが一番の幸せだろう?」
「ああ、はい。」デュランダルの言葉に返事をするシン。
「この戦争が終わったら、私は是非ともそんな世界を創り上げたいと思っているんだよ。誰もがみな、幸福に生きられる世界になれば。もう二度と戦争など起きはしないだろう。夢のような話だがね。だが必ずや実現してみせる。だからその日のためにも、君たちにも今を頑張ってもらいたいのだ。」
「はい。」素直に返事をするシン。だがアスランはうつむいたまま。ミーアはそんなアスランが気になって仕方のない様子。

ジブラルタ基地には、デュランダルの言葉を受け、合流してくる連合の艦隊の姿もあった。そんな船を見ながら、タリアに話しかけるアーサー。「しかし、すごいものですね。こんなに連合側の軍が参集してくるとは。」
「ええ、でもなんかこう、落ち着かないわね。」
「そうですね。もうあれは敵とすり込まれている感じで、確かに。」近くにいた士官が答える。
「ほんと、これで一斉に裏切られたら、ジブラルタルはおしまいですね。は、は、は。」調子の良いアーサー。みんなから冷たい視線を浴びる。
「もう、馬鹿なこと言わないのアーサー。そうでなくとも作戦前でみんなピリピリしてるのに。」
「すみません。」
「でも、これでヘブンズベースを討ち、逃げ込んだロゴスを討っても、問題はその後ね。本当にこれでロゴスを滅ぼすことができるのかしら。。」

レイはデュランダルの元を訪れていた。「ミネルバ所属、レイ・ザ・バレル、出頭しました。」
「レイ、元気だったかね。大丈夫か、体の方は。」
「はい。」
「ロドニアのラボでは辛い目に遭ってしまったな。いや、私も迂闊だった。」
「いえ、ギルのせいではありません。大丈夫です。私も、自分があんな風になるとは思ってもいませんでしたので。驚きましたが。」
そのレイとデュランダルの会話を蔭でこっそりと聞くミーア。
「何か飲み物は?また色々と細かい話も聞かせてもらいたいものだが。」
「はい、有り難うございます。」
そこでミーアは一枚の写真に目を留める。それは以前、アスランがキラ達と会った時の様子が撮影されたものだった。あのルナマリアが撮影した。。。それに場面が写されていたことに驚きを隠せない様子のミーア。

アスランは基地の自室で、キラの言葉、そして先ほどのデュランダルの言葉を思い出していた。そこにドアをノックし、アスランを呼ぶ声。それはミーアだった。
「ああ、やっぱりいた。駄目よ、こんなことしてちゃ。」電灯をつけ、アスランに駆け寄ってくるミーア。「あなたさっきも格納庫で議長にちゃんとお返事しなかったし、こんなことしてたら本当に疑われちゃう。」
「はあ?」ミーアの言葉が理解できないアスラン。
「あのシンって子、もうずっと新型機の所にいるのよ。あなたも早く。」アスランの手を引くミーア。
そのミーアの手をふりほどくアスラン。「疑うって、何を。」
「あなたは駄目だって。」
「ああ?」
ミーアは先ほどの写真を取り出し、アスランに渡す。「ほら、これ。」
「ああ!」その写真を見て驚くアスラン。
「議長、あのレイって子と話してて、それで・・・」

デュランダルがレイに言う。「そう。やはり駄目かなアスランは。」
レイがデュランダルに答える。「思われた以上に、彼のアークエンジェルとフリーダムに対する思いは強かったようです。」
「彼もまた戦士でしかないのにな。余計なことを考えすぎるんだ。それがせっかくの力を殺してしまっている。キラ・ヤマトのせいかな。彼と出会ってしまったのが不幸ということだ。アスランもまた。」
「かもしれません。」
「だが、彼はもういない。ならば・・」
「いえ、生きています。」レイの方を向くデュランダル。「彼が殺さない限り、胸の中では。」
「ああ、それは厄介だね。罪状はある。後は任せていいか?」
「はい。」

と、デュランダルとレイの会話を報告するミーア。「ね。だからまずいの。やばいの。」
悔しさで写真を丸めるアスラン。その手を握るミーア。「早くそんなことありません、ってとこ見せないと、このままじゃ議長、あなたを。」
と言った瞬間、アスランのドアにノックする音が聞こえる。「ミネルバ所属、特務隊アスラン・ザラ。保安部の者です。ちょっとお話をお聞きしたいことがあるのですが。」
「さすが、議長は頭がいいな。」ミーアがアスランの顔色を伺う。「俺のこともよく分かって。」
「アスラン・ザラ、開けてください。」なおも聞こえる保安部の者の声。
「確かに俺は、彼の言うとおりの戦う人形になんかはなれない。いくら彼の言うことが正しく聞こえても。」驚くミーア。

アスランの部屋から聞こえるガラスの割れる音。それを合図になだれ込む保安部の兵士達。そこには、ガラスの割れた窓とその脇で呆然と立っているミーアの姿しかなかった。窓から外に出て、逃げたアスランの姿を追おうとする兵士。そこにアスランが襲いかかる。次々と倒される兵士。そして、アスランは窓の外から、ミーアに向けて手を差し出す。「早く!」ミーアはアスランと共に部屋の外に出る。
階段を下りる2人。だが、ミーアは途中で立ち止まる。「アスラン!」振り返り、ミーアの方を見るアスラン。「アスラン、どうして?」
「議長は自分の認めた役割を果たす者にしか用はない。」
「ええ?」
「彼に都合の良いラクス、そしてモビルスーツパイロットとしての俺、だが、君だって、ずっとそんなことをしていられる訳ないだろう。そうなれば、いずれ君だって殺される。だから一緒に。」
「ええ?」瞬時に思い出すラクスとして過ごした日々。そしてアスランの手を払いのける。「わ、私はラクスよ。」
「ミーア!」
「違う!私はラクス、ラクスなの。ラクスがいい。」
「君。。」
「役割だっていいじゃない。ちゃんと、ちゃんとやれば。そうやって生きたっていいじゃない。だから、アスランも、ね。大丈夫よ。」アスランを説得しようとするミーア。そこにアスランを追う足音が聞こえてくる。
「ミーア!」再びアスランに手を差し出すアスラン。今度は握ろうとしないミーア。どうして自分の言うことが分からないんだという素振りを見せ、走り去っていくアスラン。ミーアはそこに座り込み、ただ泣いていた。

アスランの脱走に、宿舎内は物々しい雰囲気になっていた。何が起きているのかを知りたくて、自室でコンソールを必死に叩くメイリン。そこに入ってくる、アスラン。「ああ。」と声を上げるメイリン。「アスランさ・」と言おうとしたメイリンの口を塞ぐアスラン。
「ごめん。外に出たいだけなんだ。頼む。静かにしてくれ。」アスランの言葉に頷くメイリン。塞いだ口から手をどけるアスラン。
「追われているの、あなた。でもどうして?」
「そんなことは後でレイにでも聞いてくれ。」
「ええ?」
そこにメイリンの部屋のドアをノックする音。「保安部だ。室内を点検したい。ドアを開けろ。」
「俺が出たら声を上げろ。銃で脅されていたと言え。」
「ええ。」しばらくとまどっていた感じのメイリン。そして覚悟を決めたような顔になる。「こっち。」アスランの手を引っ張るメイリン。
「おい、いないのか?」という保安部に「はい。」と答えるメイリン。そしてバスルームのシャワーを全開にする。
「馬鹿、無理だ。」というアスランの言葉に「大丈夫です。」と答えるメイリン。軍服を脱ぎ始め、下着だけになり、シャワーのお湯を自分にかぶせる。
保安部の兵士がドアをぶち破ろうとした瞬間、バスタオルを巻いたメイリンが現れる。そこにたまたま来たルナマリアが話しかける。「ちょっとメイリン、嫌だ。なんて格好よ、あなた。」「ああ、お姉ちゃん。だってシャワー浴びてたら、ドンドンドア叩くんだもん。」その言葉にルナマリアは近くの兵士を睨み付ける。
銃を構え、バスルームに身を隠すアスラン。「いいからさっさと服を着なさい、みっともない。一体なあに?これは何の騒ぎなの。」というルナマリアの声が遠く聞こえ、ドアの閉まる音がした。部屋に入ってきたメイリン。気が抜けて、そこに座り込んでしまう。
バスルームから出てくるアスラン。メイリンにバスローブを掛ける。「有り難う。でも何故?」メイリンに問うアスラン。
「分からない。」とだけ答え泣き始めるメイリン。
「でも、助かった。すまない。」そうとだけ言って出て行こうとするアスラン。そのアスランの足を掴むメイリンの手。びっくりするアスラン。
「か、格納庫。ちょっと待って。」コンソールを叩き始めるメイリン。「基地のホストに侵入して、どこかで警報を出せれば。」鳴り響く警報。港に向かう兵士達。
「車回します。見えたら、出てください。」メイリンは車を取りに外へ出る。

「なあに?何事なの。」タリアがそうブリッジで言っている時、デュランダルからの連絡が入る。「タリア。」
「はい。」
「子細はまだ分からんが、アスランが突然、こちらの保安要員を打ち倒して逃走した。」
「ええ?」
「ミネルバに行くことは無いと思うが、一応知らせておく。事によったら、レイやシンを借りるかもしれん。」
「逃走って、何故です?」
「だから、まだ分からんと言ったろぉ。また後で連絡するよ。」

その頃、アスランはメイリンの運転する車に身を潜め、格納庫へと向かっていた。交差点を猛スピードで右折するメイリンの車。その交差点にはレイが乗る兵士運搬車が止まっていた。メイリンが運転している、その車が気にかかるレイ。
格納庫に到着する車。そこにはグフイグナイテッドが立っている。
「追っ手はほとんどが港です。今なら。行ってください。」メイリンの言葉に疑問を投げかけるアスラン。「でも、君。」
「殺されるくらいなら、行った方がいいです。」
そこに現れるレイ。いきなりアスランに向かって発砲する。それに気づき、メイリンを抱いて物陰へとジャンプするアスラン。
「やっぱり逃げんですか?また。」銃を撃ち、物陰に隠れたアスランに言うレイ。
「レイ!」
「俺は許しませんよ。ギルを裏切るなんてこと。」銃を乱射するレイ。
「止めろレイ。メイリンが。」レイは撃つのを止めない。反撃に出るアスラン。さっと身を隠すレイ。そしてまたもアスランを撃とうと姿を現したところに、正確にレイの銃を狙ったアスランの弾が、レイの銃を跳ねとばす。レイは、一時退く。

しゃがむメイリンを見つめるアスラン。そしてメイリンに手を差し出す。手を取るメイリン。グフのコクピットに向かう2人。そこにレイの銃が再び襲いかかる。だが、一足早くグフのコクピットに入った2人に、もうレイの銃弾は届かない。レイはすぐにシンのいるデスティニーとレジェンドがあるデッキへと向かう。
グフを起動させるアスラン。「ごめん。でもこのままじゃ君は。」アスランの言葉に何度も頷くメイリン。
フックからはずれるグフ。動き出すグフを後ろに、走りながらシンに連絡を入れるレイ。
「シン、デスティニーとレジェンドの発進準備をさせろ。」
「え?なんで。」
「逃走犯にモビルスーツを奪取された。追撃に出る。」
「えー?」
基地を飛び立つグフ。基地内に鳴り響く警報。

「で、でもどうする。」アスランに尋ねるメイリン。
「アークエンジェルを探す。」
「えっ?だってあの船は。」
「沈んじゃいない。きっとキラも。」

デスティニーとレジェンドが発進準備完了となる所に、レイが戻ってくる。レジェンドのコクピットにつき、レジェンドを起動させるレイ。「議長。」デュランダルに話しかけるレイ。
「ああ、分かっている。頼むよ。レイ。」
そこにシンからの連絡が入る。「レイ。」
「いいか。」
「ああ。けどなんでまたスパイになんか。」
「油断するなよ。追うのはアスラン・ザラだ。」
レイの意外な言葉に驚くシン。「ええ?アスランって、そんな。何で。」

雷鳴轟く雨の中、飛行を続けるグフ。 
PHASE - 37 雷鳴の闇 一足先にデッキから起動し、外へ向かうレイのレジェンド。
「アスランて。。」シンは今までアスランとの間に起きた出来事、いざこざを思い出していた。「何でなんだよ。レイ!」そう言いつつもデッキから動き始めるデスティニー。
「訳など知らない。だが、保安部に追われ、それを打ち倒して逃走したのは事実だ。」レイの言葉がまだ信じられないシン。
「行くぞ。本当に逃げられる。」そう言い、レジェンドを発進させるレイ。
覚悟を決めたシン。スラスターの出力を全開にし、空へと飛び立つデスティニー。

警報鳴り響くジブラルタル基地。混乱の中、ルナマリア達もミネルバに戻るべきかどうか迷っている。混乱しているのはデュランダルのいる司令部も同じ。直ちに追っ手を出そうと指示する士官に対し、苛立ち気味のデュランダルが言う。
「それはもう、シンとレイに命じた。それより今、これ以上騒ぎを大きくしないようにしてくれないか。」その言葉をドアの影で震えながら聞いているミーア。「妙なデマが飛ぶと、参集してくれた各国の軍にも影響する。それは今非常に好ましくない。」
そこにある兵士が報告しに部屋へ入ってくる。「隊長。ホストに侵入した端末を特定できたのですが、ミネルバクルー、メイリン・ホークの部屋のものでした。」
「ミネルバ?それで彼女は。」
「いえ、それが。。」
そのメイリンとアスランを乗せて逃走を続けるグフは、早くもデスティニーとレジェントに捕捉されていた。
「レイ。」レイにデュランダルから通信が入る。「君がアスランを追っているとき、メイリン・ホークの姿を見なかったか?」
「メイリン・ホークはアスランと一緒です。今。」そのレイの言葉に驚くシン。
「アスランと?」そうデュランダルが返事をしたとき、タリアが部屋に入り、敬礼をする。「それは人質と言うことか?」その言葉に驚きの表情を浮かべるタリア。
「いえ、そうではないと思います。彼はメイリンをかばい、私の銃を撃ち落として、グフのコクピットに上がろうとした時には、手を差し伸べ、彼女は躊躇せずにその手を取りまして。。映像記録があると思います。」
デュランダルの机に両手をつくタリア。「メイリンが?」
「では彼女は人質として連れ去られたのではない、と」タリアの行動を無視して、レイに話しかけるデュランダル。
「はい。そうではありません。」
グフの上を捉えるデスティニーとレジェンド。「アスラン、あいつ。」メイリンを連れ去ったアスランに怒りを覚えるシン。
「彼女は情報のエキスパートです。こうなった経緯は分かりませんが、このまま逃がせば、どれほどの機密が漏れるか分かりません。」
「メイリンも、なんで?」シンの怒りはますます増大していっている様子。
「脱走は絶対に阻止すべきものと考えます。撃墜の許可を。」
そのレイの言葉に、思わず「レイ!」と問いかけるシン。
すぐにタリアも通信に割り込んでくる。「レイ、ちょっと待ちなさい。」
だが、そんなタリアにお構いなくレイと話をするデュランダル。「そうか。分かった。君の判断を信じよう。撃墜を許可する。」
「議長!」だが、デュランダルの視線は冷たいものだった。一瞥しただけで、すぐにレイとの通信モニタに視線を戻すデュランダル。「有り難うございます。」というレイの返事が、そのモニターから聞こえてくる。

「レイ!」
「聞こえたな、シン。では、そういうことだ。」
「でも。。。そんな。。。」
躊躇しているシン。だが、そんなシンを構うことなく、グフに対して迎撃フォーマーションを取るレイ。「右から追い込む。前へ回り込め。」
「く、レイ!」なおもメイリンの乗る機体を撃墜することに抵抗を示すシン。だが、レイの考えは変わらない。
「こんなことで、議長とそれに賛同する人の想いが、無駄になったらどうする。」
その言葉にハッとなるシン。
「今ここでの裏切りなど、許せるはずもない。覚悟を決めろシン。俺たちで防ぐんだ。」
覚悟を決め、デスティニーを加速させるシン。そしてレイはついにグフに対し、上空からビーム攻撃を開始する。
「くそー、レイか。」巧みにグフを操作して、ビームをかわすアスラン。そこに低空からシンのビーム攻撃が開始される。
「シン!」「くそっ、なんでこんなことになるんだよ。なんであんたは。」
反撃するアスラン。それをビームシールドで防ぐシン。
「シン、止めろ。踊らされている、お前も。」アスランの言葉が理解できないシン。
「そんな手は通じない。見苦しいですよ、アスラン。」割り込んでくるレイ。
「レイ!」
「逃げんなよ!降伏しろ!裏切るな!基地へ戻れ。」シンの攻撃が続く。
「シン!」
反転し、ヒートロッドを振るグフ。デスティニーのビームライフルは、その餌食となり爆発する。
「止めろ!俺はこのまま殺されるつもりはない。聞け、シン。議長やレイの言うことは確かに正しく心地よく聞こえるかもしれない。」
そこにレジェンドの攻撃が割り込んでくる。「アスラン!」
「だが、彼らの言葉は、やがて世界の全てを殺す。俺はそれを。」
「シン、聞くな!」ビームサーベルを振りかざし、グフに特攻してくるレジェンド。それを迎え撃つべく、ヒートサーベルを構えるアスラン。白兵戦になる2機。
「アスランはすでに少し錯乱している。」
「ふざけるな!」
「惑わされるな、シン。」
混乱しているシン。
「シン、どうしても討つというなら、メイリンだけでも下ろさせろ。彼女は。」
「彼女は既にあなたと同罪だ。その存在に意味はない。」そのレイの言葉に驚くメイリン。
「敵なんだ、彼は、彼らは。議長を裏切り、我らを裏切り、その想いを踏みにじろうとする、それを許すのか。お前は言ったろ。そのためならどんな敵とでも戦うと。」
「シン!」

交互に聞こえるレイとアスランの声。シンは悩む。どうしたら良いのか。
(議長の言葉を聞いて、俺、すごく感動したよ。難しいって言ってたのに議長やるんだな。諦めないんだな。だったら俺だって、どんな敵とでも、戦ってやるさ。)
(この戦争が終わったら、私は是非ともそんな世界を創り上げたいと思っているんだよ。誰もが皆、幸福に生きられる世界になれば。もう二度と戦争など起きはしないだろう。その日のためにも、君たちにも今を頑張ってもらいたいんだ。)
自分の言葉と、議長の言葉が頭の中で交錯するシン。
「くそっーー。」
SEED覚醒。ソードを構えるシン。
「シン!」叫ぶアスラン。

(何でこんなことを。また戦争が−−はい、マユです。ごめんなさい、今マユは、−−シン。シン。−−よってそれを阻害せんとする世界の真の敵。)自分の言葉、マユの言葉、ステラの言葉、そして議長の演説。それらが頭の中で交錯するシン。
「あんたが悪いんだ。あんたが、あんたが裏切るから。」
デスティニー急加速。
「シン!」グフとレジェンドが繰り広げる白兵戦に割ってはいるデスティニー。グフのヒートロッドを焼き切るデスティニー。覚醒したシンの操るデスティニーに、グフではかなうはずもない。両腕を叩き落とされるグフ。

「俺は、俺はもう絶対に!」
シンの怒りのソードは、グフの腹を貫通。グフは腹にそのソードが突き刺さったまま、海へと落ちていき、そして大爆発をした。
そして、自分がやったことに自責の念を感じているシン。そこにレイからの無線が入る。
「シン、よくやった。」レイから顔を背けるシン。「俺たちの任務は終わった。」
「にんむ?」
「ああ。」
「あすらん、、めいりん、、」
「裏切った彼らを、敵を討ったんだ。俺たちは。やるべきことをやったんだ。さあ戻るぞ。」
シンの頬を伝う涙。それにレイは気づかなかったようだ。
去っていく2機。
それを確認し、1隻のタグボートが、グフが墜落した辺りへと接近していた。

「報告。グフ撃墜です。デスティニー、レジェンド、帰投。」デュランダルを中心に、アスランがグフを奪取した状況を確認していた一同は、その声のする方向を一斉に見た。
「そうか、有り難う。」返事するデュランダル。怒りを露わにして、議長に食ってかかろうとするタリア。が、今回の騒動を簡単に文書にまとめるよう指示するデュランダル。そしてルナマリアを呼び出すよう指示し、そしてミネルバのメイリンの部屋の調査の許可をタリアに求める。
「ええ、どうぞ。」素っ気なく返事するタリア。「でもその前に、少しお話させていただきたいですわ。」
「そう睨まなくても。。ちゃんとそうするつもりだよ。タリア。どの道こちらも君にも話を聞かねばならんし。アスランは私が復隊させ、FEITHとまでした者だ。それがこんなことになって。ショックなのは私も同じさ。君にも迷惑をかけてしまったなぁ。本当に済まない。後で必ず時間は作るから、君も少し落ち着いてくれ。」
そう言い、別用のため、その部屋を離れるデュランダル。

デスティニーとレジェンドが帰投。だが、シンは未だ後悔がぬぐい切れていないようだ。
「シン、どうした。」声をかけるレイ。「あっ、いや。」レイの言葉で我に戻り、レジェンドを追うかのようにデスティニーを前進させるシン。
「メイリンが、メイリンが何で?そんなはずはありません。」取り調べを受けるルナマリアはそのように主張していた。「あの子がそんな、アスランと。。そんなの、何かの間違えです。絶対そんな、馬鹿なことを。」涙を流しながら力説するルナマリア。

翌朝、デュランダルの元に出頭するシンとレイ。「おはようございます。」2人そろって、議長へ敬礼し、挨拶をする。
「おはよう。昨日は済まなかったね。いきなり大変な仕事を頼んで。」
「いえ。」議長の言葉に答えるレイ。
「だが、良くやってくれた。有り難う。」
「討ったのはシンです。」
「そうか。」
デュランダルの視線に、未だ疑問を感じているシンはどう面したら良いか分からない。
「大丈夫か?」
「大丈夫、です。でも、アスランとメイリン、なんでそんなことを。」
「まだコクピットも見つからず、何も分かってはいないが、こちらのラグナロクのデータには侵入された跡があったようだ。」
「ラグナロク?」
「ヘブンズベース攻撃作戦のコードネームだよ。たいそうな名前だがね。ただ、その中にはデスティニーとレジェンドのデータもある。侵入はそう容易ではないはずだが、情報に精通している者がいれば、あるいは。。。」
「メイリンですね。」
レイの言葉に黙って頷く議長。
「彼はラクスを連れ出そうともした。だが、ラクスは拒否し、それでこちらにも事態が知れたのだが、一体彼は何故、どこへ行こうとしていたのかな。アークエンジェルとフリーダムを討てと命じたことを、だいぶ怒ってはいたようだが。だが、それも。」
「後ろ盾を失い、焦ったのでは。」
「分からんね。ならばなおのこと、何処へ?」
「ラグナロクの情報なら、欲しがる所は一つです。」
レイの言葉に反応するシン。「・・・ロゴス?」
「開戦の折、それだけはどうしても避けてくれと言って、来てくれた彼だからこそ、私は信じて軍に戻した。それが何故?ロゴスを討って戦争を止めようというのが気に入らない。」
「議長。」シンの言葉を止めるかのようにレイが発言する。「心中はお察ししますが、もう思い悩まれたって意味のないことです。我々がいます。議長。」
「レイ。。」
「困難でも、究極の道を選ばれた議長を皆支持しています。」
「レイ。」
シンも頷く。
「次の命令をお待ちしています。」敬礼をするレイ。それにつられ、シンも敬礼をする。
「有り難う。」そう答えるデュランダル。

ミネルバには、デスティニーとレジェンドが到着していた。ルナマリアも取り調べが済み、ミネルバへ戻されることとなる。ヴィーノはメイリンがいなくなったことが寂しくて仕方のない様子。
そしてタリアも艦長室に戻っていた。労をねぎらうアーサー。「お疲れ様でした、艦長。」
「艦内はどう?司令部からの発表、もうみんな聞いたわね。」
「はい。皆、その・・ショックを受け、動揺しております。」
「そうよね。」
「艦長。」
「悪いけど、もう少し頼める?これではシートに座れない。」
「はっ、はい。」
「すぐに行くから。」
「はっ。」敬礼してブリッジに戻るアーサー。

ミネルバ艦内を歩くシンとレイ。正面からルナマリアがやってくるのに気づく。かける言葉が見つからないシン。だが、拳を握りしめ、ルナマリアに近づく。そしてルナマリアとすれ違いざま、小声で「ごめん」と謝る。
その言葉を聞き、振り返るルナマリア。シンの背中を叩くようにして寄りかかり、泣きじゃくるルナマリア。シンは、泣きやまないルナマリアを抱きしめる。
レイはそんな2人を見て、そのまま立ち去って行った。

ZAFT軍のヘブンズベース攻略戦が開始された。「やらねばなぁ。そのために、我々は集ったのだから。」
議長はミネルバに乗り込み、そこから指揮を執る。
「まずは通告を送ってくれ。」議長の言葉が理解できないかのように聞き返す周りの人々。「基地内にいる、ロード・ジブリール氏他、ロゴスと名を挙げた方々の引き渡しを要求すると。」「はい。」その指示に従う兵士達。「話し合えればなぁ。それに越したことはないだろう。本当は。」

その頃、1機の輸送機が水面より飛び立って行った。中にはベットで眠り続けるアスランとメイリンを乗せ。グフが墜落した現場からいち早く、アスランとメイリンを救出し、そして手当をしたのは紛れもない、オーブのキサカ一佐であった。
アークエンジェルも密かにモルゲンレーテの秘密ドックに帰ってきていた。帰ってきたアークエンジェルを見つめるエリカ・シモンズ。
アマギの指示の元、さっそくアークエンジェルへの補給が開始される。その時、ミリアリアよりラミアス達に報告が上がる。
「ジブラルタルよりヘブンズベースに向けての通告です。我らZAFT及び地球連合軍は、ヘブンズベースに対し、以下を要求する。
一、先に公表したロゴス構成メンバーの即時引き渡し
二、全軍の武装解除、基地施設の放棄」
「これは。。。」とラミアスが声を上げた時、キラがラミアスに言う。「マリューさん、ラクスと話したい。連絡が取れますか?」
「えっ?」
「本当に急がないと、」
その頃、ラクスも同じことを感じていた。「間に合わなくなりますわ。」
「いや、しかしもう。」ラクスの言葉に答えるバルトフェルド。
「ヘブンズベースが落ちたら、次はおそらくオーブです。そうなったらもう、誰も彼を止められなくなります。」

シンは自室に戻り、ベットに横になっていた。マユの携帯を見ながら、自分の決意を確かめるシン。(戦争を無くす。今度こそ、本当に。)


2005. 7. 3 Update

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