題名・内容 |
PHASE - 38 〜 PHASE - 50(その4)
機動戦士ガンダム SEED DESTINYの題名及び内容概略一覧です。
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PHASE - 38 | 新しき旗 | 「要求への回答期限まで、あと5時間。」 「やはり無理か。戦わずに済めば、それが一番良いのだがね。」 ZAFT軍は、ヘブンズベースに匿われたロゴスの引き渡し要求の回答を待っていた。だが、未だ何の音沙汰も無い。出撃準備を続ける、デスティニー、レジェンド、インパルス。 一方のヘブンズベースでは、ZAFTを打ち倒すべく、その準備が着々と進められていた。その司令室で話をするジブリール、他のロゴス達。 「ふん、通告して回答を待つ、か。デュランダルはさぞや今、気分の良いことでしょうよ。」 「だが本当に、これで守りきれるのか?ジブリール。」 「守る?はん、何をおっしゃってるんですか。我々は攻めるのですよ。まずは今日ここから。我々を討てば戦争は終わり平和な世界になる。はっ、そんな言葉に易々とだまされる程の愚かです。確かに民衆は。だからこそ我々が、なんとしても奴を討たなければならない。本当に取り返しのつかないことになる前に。この世界が、奴とコーディネータどものものになる前にです。」 「ふっー。確かにのう。我々を討ったとて、ただ奴らがとって代わるだけじゃ。」 「正義の味方や、神のような人間など居るはずもないということを我々は知っていますがね。」 「準備が出来次第始めます。議長殿が調子に乗っていられるのも、もうここまでだ。格好をつけてのこのこと前線にまで出てきたことを奴にたっぷりと後悔させてやりましょう。あの世でね。」 ミネルバでは、シン達が待機室に戻っていた。外を眺めるシン。そこにルナマリアが声をかけてくる。「インパルス。やっぱりすごいね。扱えるかな?あたしに。シンみたいに。」 「ルナ。」 「でもあいつらが。ロゴスが狂わせたんでしょう。アスランも、メイリンも。そんな子じゃなかった。メイリンも。アスランもきっと。あの大戦の後、オーブになんかいかなかったら。」 泣くのをこらえながら話すルナマリア。シンが気遣う。「ルナ。」 なおも話し続けるルナマリア。「ずるいのよ、アスランって。みんな、裏切られたわ。私も馬鹿よ。でも、負けないから。」シンの頭をなで始めるルナマリア。「だから、シンも。ねっ。」 そのルナマリアの言葉に、同じく泣くのをこらえていたシンの感情が爆発する。「ルナ、ルナ。」ルナマリアを抱きしめるシン。びっくりするルナマリアであったが、シンの体に手を回す。そしてキスをする2人。 「ごめん。」 「ううん。」 何事も無かったかのように離れる2人。シンは落ちたヘルメットを拾い上げ、ルナマリアに言う。「大丈夫だ。インパルスは絶対、俺が守るから。」 「シン。」 「全軍、配備完了しました。」ヘブンズベースでの戦闘準備が完了したとの知らせがジブリールに届く。 「では、始めましょう。」そう答えるジブリール。 「だが、本当に?」 「先手必勝と言うでしょう。どうせ戦うんです。向こうは追い込んだつもりかもしれないが、実際そうではないのだから。」 それを聞き、連合軍の指揮官が命令を下す。「全軍攻撃開始。」 連合軍のZAFTに対する総攻撃が開始された。 「敵軍ミサイル発射」その報告に、デュランダルが反応する。「なんだと?」 続々と迫ってくる連合軍のモビルスーツ、モビルアーマー軍。「そんな、未だ何の回答も。」とブリッジで叫ぶタリア。 そしてスティングが乗った機体を含む、5機のデストロイも姿が現す。 アークエンジェルでは、眠っていたアスランが目を覚ました。気が付くキラ。「アスラン。」アスランに呼びかけるキラ。「アスラン。」 焦点がキラに合うアスラン。「キラ。」起きあがろうとするアスラン。だが、体が言うことを効かない。キラに寝かされるアスラン。「駄目だよ。動かないで。」 「お前、死んだ・・」 「大丈夫だよ、アスラン。君、ちゃんと生きてるって。」 意味がキラに伝わらなかったことなのか、それともキラが生きていると知った喜びからなのか、微笑むアスラン。 「あ、あれは。」デストロイを見て声を上げるタリア。「同型機、5機確認。」その報告に声を上げるアーサー。「えー?あれが5機。」 デストロイの攻撃で次々沈む船。その状況に声を上げるデュランダル。「何ということだ、ジブリール。」 「議長、これでは。」 「ああ、やむを得ん。我らも直ちに戦闘を開始する。」 デュランダルの言葉に、タリアも命令を下す。「コンディションレッド。総対戦用意!」 そして地球軌道上からは、ZAFTの降下部隊が、ヘブンズベースめがけ、落下を開始した。 「ふ、はっはっはっ。最高だぜ!」デストロイを操るスティングは、次々とモビルスーツ、艦艇を沈めていく。やや連合軍優勢で進む戦況。 「糾弾も良い、理想も良い。だが、勝たねば意味がない。古(いにしえ)から、全ては勝者のものと決まっているのですからね。」 そして直上に現れた、ZAFTの降下ポッドに対し、対空掃射砲ニーベルングで、そのポッドを一掃する地球連合軍。 「降下部隊消滅」その知らせに沈黙するミネルバブリッジ。「何というものを。ロゴスめ。」 そこにシンからの連絡が入った。「艦長、行きます。早く発進を。」「シン。」「こんなこともう許しておけません。」「でも。」そうタリアが言いかけた時、デュランダルが言う。「頼む。」しばし、デュランダルの方を見るタリア。そして「デスティニー、レジェンド、インパルス、発進。」と命令する。 発進する、デスティニー、レジェンド、インパルス。「行くぞ!」シンのかけ声に、答えるレイ、ルナマリア。ヘブンズベースめがけ、加速をしていく3機。 「くそー、こいつら。もう好きになんかさせるか。」この3機が現れたことにより、徐々に変わり始める戦況。 「俺は、どう?」苦しそうにキラに尋ねるアスラン。 「キサカさんが連れてきた。本当、びっくりしたよ。カガリなんかもう、泣きっぱなしで。さっきまでずっと付いていた。」 「メイリン、彼女は。」 「大丈夫、無事だよ。君がかばったんだろ?今は眠っているけど、彼女の方が元気だよ。」安心した様子のアスラン。 カガリが現れる。「アスラン!」アスランの元に駆け寄るカガリ。 戦況が変わり始めたとは言え、未だデストロイの攻撃は続いていた。「お前達は、お前達も。」攻撃を仕掛けようとしたデスティニーに対し、スティングのデストロイが立ちはだかる。 「畜生!」覚醒するSEED。ソードを構えるデスティニー。「こんなことをする、こんなことをする奴らなら、」攻撃をかわし切り込んでいくデスティニー。「許すもんか!」デストロイの腕を切り落とすシン。苦悩の顔を浮かべるスティング。「お前達なんかがいるから、世界は。」デストロイの顔を破壊するデスティニー。 「シン。」デスティニーの動きを見て、呆気にとられるタリア。「すごい、これはまたすごいですよ、シン。艦長。」タリアの方を向くアーサー。その言葉に頷くタリア。「彼らも頑張ってくれている。この間に陣容を立て直すのだ。」デュランダルの檄が飛ぶ。 レイのレジェンドとルナマリアのインパルスが道を作る。そこに切り込んでいくZAFTのモビルスーツ隊。 「でも、どうしてこんなことを。」アスランの側で泣き始めるカガリ。 「あ・・い・・たかった。」アスランの途切れ途切れの言葉に耳を傾けるカガリとキラ。「カガリ・・キラも・・・・だから、ちから・・」苦しそうなアスラン。「アスラン!」呼びかけるカガリ。「議長・・それを知って・・・うう。」 「第2防衛ライン、破られました。」「敵モビルスーツ、湾内に侵攻。」 「ええい。何だあの3機は。デストロイを回せ。攻撃を集中しろ。」次々と上がってくる不利な報告に苛立つジブリール。 「2号機、撃墜されました。」その言葉に反応するロゴス一同。「何?」 デストロイを叩き切るデスティニー。そしてルナマリアに指示を出す。「ルナマリア、ソードに換装するんだ。エクスカリバーを、レイにも。」「分かった。」すぐさまソードへの換装をするルナマリア。 「でも、彼は・・」なおも話し続けるアスラン。 「アスランもういい。今はしゃべらないで。」アスランを制止するキラ。「いいね。少し眠って。僕たちはまた話せる。いつでも。」 換装を終え、ソードをレイに渡すルナマリア。共同してデストロイを潰す、レイとルナマリア。 「やるな、ルナマリア。大したものじゃないか。」レイが話しかける。 「忘れてた?私も赤なのよ。」 「3号機、大破。」その報告を契機に、こっそりと司令部から出て行くジブリール。 そしてシンのソードが、スティングの操るデストロイの腹に突き刺さる。ついにやられるスティング。爆発するデストロイ。 「1号機、撃墜。」その言葉にロゴスのメンバーがジブリールに話しかけようとする。 「ジブリール、これでは。」そこでジブリールがいないことに気づくロゴスのメンバー。 ジブリールは、潜水艦に乗り込み、基地をまさに脱出しようとしていたところだった。「どういうことなのだ。これは。ええい。」 「イワノ隊より入電です。司令部に白旗を視認。敵軍、さらなる戦闘の意志、無き模様。」 「確認してくれ。」デュランダルの指示が飛ぶ。 「完全に停戦するまで、警戒は怠るなよ。」 最後のデストロイが、デスティニー、レジェンド、インパルスの波状攻撃で倒された。 アークエンジェルブリッジ。アスランが落ち着き、キラはブリッジに戻っていた。 「キラ君、アスランは?」 「また眠った。でも、もう大丈夫だよ。」 「そう、良かったわね。」 「うん、戦闘の方は?」 「まだ、分からないけど、どうやら連合の負けのようね。」 「そうですか。」 「僕たちは何をやってるんだろう?世界は。。。」 戦い終わったミネルバブリッジ。満足そうなデュランダルの顔。 |
PHASE - 39 | 天空のキラ | L4・コロニー メンデル。以前遺伝子研究所のあったこのコロニー内で調査を進めるダコスタ。何かデュランダルについて手がかりを見つけたいが為に。。処分されて何も残っていない中、1冊のノートが浮遊していることに気が付くダコスタ。それを回収し、コロニーを後にする。だが、その離れていくシャトルを監視する1体の偵察型ジンの姿があった。 「ラクス。」 「はい。」バルトフェルドの問いかけにコンソールを叩きながら答えるラクス。 「以前、ヘブンズベースが落ちたら、次はオーブだと言っていたな。」 「はい。はっ、落ちたのですか?」 「思ったより早かったがな。」 バルトフェルドの言葉で、ブリッジに向かうラクス。エターナルのブリッジでは、燃え上がるヘブンズベースの画像が大写しになっていた。キャプテンシートの脇に立つラクス。 「だが、どうして次がオーブなんだ?デュランダルが討つとぶち挙げているのは、ロゴスだろ?」 「オーブは強い国ですから。その力は理念。」バルトフェルドの脇にまで降りてくるラクス。「でもそれは、デュランダル議長のやろうとしていることの前には、ただの障害でしかないだろうと思うので。」 「なんだ、奴のやろうとしていることとは。」 「まだはっきりと分かったことではありませんが、でも少しずつ見えてきたように思えます。議長は地球、プラントを一つにまとめた、新しい世界秩序を創ろうとしているのではないでしょうか。」 「へぇー。」 「もしかしたら、今のこの争乱も全て、そのための土台作りでしかないのかもしれません。」 驚き、ラクスを見つめるバルトフェルド。 ヘブンズベースの制圧が終わったZAFT。その処理で忙しく動き回るZAFT軍兵士。 「え?ジブリールがいない?」ミネルバでは、レイからその事を聞かされ、驚くシン。 「い、いないって。そんな。」同じようにレイに質問するルナマリア。 「基地が降伏する前に、一人だけこっそりと逃げたらしい。他のロゴスのメンバーは全て見捨てて。」 「しかし、本当に困ったお人だ。」タリアに話をしながら、エレベータに乗り込むデュランダル。「これ以上何をしようと言うのかね。ともかく彼を捕まえないことには話にならない。パナマかビクトリアか?また面倒な所へ逃げ込まれていないといいがね。」 当のジブリールは、面倒な所、オーブ首長国に逃げ込んだ様子である。ジブリールが乗るジェット機の到着を待つ、ウナトとユウナ。 「やはりそう簡単には終わらないな。」レイの言葉に過敏に反応するシン。 「そんなことないさ。今度見つけたら、絶対俺が踏みつぶしてやる。」持っていた缶コーヒーの缶を握りつぶすシン。 モルゲンレーテ内ドックでの修理が進むアークエンジェル。その様子を眺めながら歩くキラ。そんな時、マードックと話すラミアスの声が聞こえてくる。 「そちらを優先させて欲しいの。」「分かりました。じゃあそれでやりまさぁ。」「悪いけどお願いね。」去っていくマードック。一人になったラミアスに話しかけるキラ。 「マリューさん。」 「あら。」 「どうですか、修理の方は。」 「だいぶひどくやられたから、さすがに時間かかりそうだけど、でもみんな頑張ってくれているわ。」 「そうですか。」そう答えつつも、うつむき、気分が優れないという様子のキラ。それに気づくラミアス。 「どうしたの?」 「えっ?」 「疲れてる?うーうん。焦っているのかな?」 「あ、いえ、そんなことは。」 「いーでしょう。みんな同じだもの。ヘブンズベースのニュースからこっちは特にね。」 「怖いのかもしれません。なんだか、アスランまであんなことになって。。なんだか分からないことだらけなんで、今の僕には何の力もなくて。これじゃあ、何も守れない。」 「もうすぐ、ラクスさんも戻るわ。そうすればきっと、ね。だからそれまで頑張って。」 「はい。」 ヘブンズベース陥落のニュースにため息をつくアスラン。ネオは、そのニュースに見入っていた。そこに入ってくるカガリ。 「起きていたか。大丈夫か?」 そのカガリの言葉に横たわったまま、「ああ。」と返事するアスラン。「死にたいような気分だな。残念ながら大丈夫みたいだ。」 アスランの言葉が気になる様子のネオ。 「止めろよ、そういうこと言うの。誰も嬉しくないから。」 カガリの言葉に「ゴメン。」と素直に謝るアスラン。「メイリンは?」カガリにメイリンの様子を尋ねるアスラン。 「今ちょっと熱出してる。でも大丈夫だよ。ミリアリアが少し話、聞いたって。」 「そうか。」 「ミネルバに乗ってた娘だよな。管制の。」 「ああ。助けてくれたんだ。殺されるくらいなら行けって。ほとんど話したこともないのに。俺が甘えて、巻き込んで。」 「お前のこと、好きなんだろ。きっと。大丈夫だよ。彼女のことは心配するな。ちゃんと私が面倒を見るから。」カガリは本題を切り出す。「それで、あのぉ。。。私のことは、許してくれるか?」 「それは俺の方だろ、謝るのは。クレタでキラに言われたこと、俺は。」 「私は結婚しようとした。お前に何も言わずに。」アスランはカガリを見る。カガリの左薬指には、アスランが贈った指輪がはめられていた。 「守りたかったんだろ?オーブを。」その言葉にハッとした顔をするカガリ。「俺は、焦ったのかな。嫌だったんだ。何もできない自分が。カガリが国という重い責任を負って毎日死にものぐるいなのに、俺は何も出来ないどころか、ユニウスセブンがあんな。。何かしたかった。止めたかったんだ、本当は。戦争になるのを。」 「アスラン。。」 その会話を聞いていたネロも、何かを思ったような顔をする。 「わかってるよ、それは。でも、難しいな。」 「カガリ。」 「みんなそうしたくって、そう言っているのに。なんでそうならないんだろう。やっぱりロゴスのせいなのか?しょうがないのかな、もう本当に。」 「いや、そんなはずはない。絶対に。」 ダコスタが帰投する。 「いや、もう参りましたよ。コロニーはもう空気も抜けちゃってて、荒れ放題だったのに、遺伝子研究所は何故かデータから何から綺麗に処分されちゃってまして。こんなものしか。」 先ほど回収したノートをラクスとバルトフェルドに差し出すダコスタ。「でもここにですね、当時の同僚か何かのものだと思うんですが。」ノートを開き、指さしたところには、赤字で「DESTINY PLAN」と書かれていた。 「デュランダルの言うデスティニープランは、一見今の時代有益に思える。だが我々は忘れてはならない。人は世界の為に生きるのではない。人が生きる場所、それが世界だと言うことを。」そのメモ書きを読み上げるバルトフェルド。 「これは。」何かを感じ取ったかのような顔をするラクス。 「デスティニープラン?」ラクスの方を向き、繰り返すバルトフェルド。 その時、ブリッジに鳴り響く警報。カメラの一つに、偵察型ジンの姿が映る。ジンの放ったビームで、機能が停止するカメラ。 「ってい、つけられたかダコスタ。」バルトフェルドの言葉にギクっとした顔になるダコスタ。「すぐに追う、俺のガイアを。」と言い、飛び出そうとするバルトフェルドを制止するラクス。 「もう間に合いません。追尾してきたというのなら母艦もそう遠くにはないはずです。」 「ええい。」悔しそうなバルトフェルドの声。 「メンデルを見張られていたのかもしれません。私が迂闊でした。」 「いえ、そんな。」とラクスの言葉を打ち消そうとするダコスタ。そのダコスタを羽交い締めにするバルトフェルド。「ああ、迂闊なのはこいつだ。」「だが、どうする。ここのファクトリーの機体だって、まだ最終調整は終わっていない。攻め込まれたら守り切れん。」 「船を出しましょう、バルトフェルド隊長。今すぐに。」 ラクスの申し出に驚くバルトフェルドとダコスタ。 「もう同じ事です。ならば攻め込まれる前に出て、少しでも有利な状況に。」 「だが、今のこいつにはナスカ級1隻とかってやれる戦力はないぞ。どうあがいたって勝ち目は。」 「勝ちたい訳ではありません。守りたいのです。あれほど、力を貸してくださったこのファクトリーの方々を、そしてこれを。」ノートを抱きしめるラクス。「私達がでれば、ZAFTはそれを追うでしょう。ファクトリーはその間に対応の時間を稼げます。我々は最悪の場合、降下軌道に逃げて、あの2機と資料をアークエンジェルへ向けて射出します。」 「ようし、分かった。エターナル発進準備。ターミナルに通達。ファクトリーには俺が話す。回線を回せ。」そう言って、コンソールを激しく動かし始めるバルトフェルド。 出航が決まりにわかにあわただしくなるエターナルブリッジ。ファクトリーではサイレントモードへの移行準備が進められていた。 「偽装排除。」エターナルを隠す岩がはねのけられ、その姿が現れる。 「エターナル、発進します。」ラクスの言葉で急加速するエターナル。 「キラ君、すぐにブリッジへ。エターナルが発進するとターミナルから連絡よ。ZAFTに発見されたと。」アークエンジェル内に響き渡るラミアスの声。すぐにブリッジへ向かうキラ。「ラクス。」 アスランもその連絡を聞き、動かない体を動かし、起きようとする。「エターナル。。まさか。」 エターナルをキャッチしたZAFT軍、ナスカ級。「うー、速い。しかしエターナルとはどこまでふざけた奴らなんですかね。」「戦後のどさくさで行方不明になっていた船にこんなところでお目にかかるとはな。カーナフォンとホルストの位置は?」「は、現在グリーン22チャーリー。インディゴハッチ、アルファです。」「ようし追いつめる。逃がさんぞぉ、テロリスト共。ようやく見つけたのだ。」 3隻のナスカ級に追われることとなったエターナル。「グリーンおよびインディゴ、さらにナスカ級2。ザク、グフ、来ます。」 「くそー、振り切れ。下げ舵15。」画面にはエターナルの今後の針路と、ポッドの切り離し予定位置が計算されたグラフがモニターに映し出される。 それと同じ画面が、アークエンジェルのブリッジでも映し出されていた。「どのくらいの部隊に追われているのかは分からないけれど、突破が無理なら、ポッドだけでもこちらに下ろすということよ。」ラミアスの言葉に聞き返すキラとカガリ。「ええ?」「ポッド?」 その頃、アスランは何とか起きようとしていた。それを制しようとするかのようなネオ。「おい、何やってんだ、お前。」 「突破が無理ならなんて、ラクス。」キラが心配そうにつぶやくその時、ネオからブリッジに通信が入る。「おい!さっきから隣の奴が、さっきからじたばたうるさいんだけど。キラ行けって。」 「アスラン?」 アスランはベットの上で苦しみながら言っていた。「ラクスを守るんだ。。絶対に。キラ。。」 そのアスランの言葉をかいつまんで伝えるネオ。「彼女を失ったら全て終わり、だそうだぜ。」 その言葉で決意するキラ。「カガリ、ルージュ貸して。それからブースターを。」そう言って、ブリッジから飛び出していくキラ。「有り難うアスラン!」 「ブリッジの通信コードは覚えているのね。」そうネオに言うラミアス。「え?」というネオの言葉を最後にモニターはブラックアウトする。「全員で、キラ君のサポートを。」そう命令するラミアス。 切れたモニターを見つめるネオ。そこにアスランのベットからお礼の言葉が聞こえてくる。「ありがとう、ございます。フラガ少佐。」 「何でお前までそう呼ぶの。俺はネオ・ロアノーク、た・い・さ。」 その返事にびっくりするアスラン。「ええ?」 エターナル包囲網は確実に縮まっていた。 「ミサイル来ます。」「迎撃、面舵10。下げ舵20。」だが、ザクとグフの攻撃が激しさを増す。「モビルスーツを取り付かせるな。対空、かかれ。」 「電圧入れろ!他のスペックはどうするんだ。」マードックからの問いかけに、コンソール操作で忙しいキラが答える。「全てストライクと同じに。」「分かった!」準備が進むストライクルージュ。 準備完了。コンソールには「SYSTEM UPDATED」の文字が現れる。「マードックさん!」キラの叫びと同時に「総員退避!」というマードックの怒号が響き渡る。上げられるカタパルト。 「くそー駄目だ。俺が出る。」シートを立つバルトフェルド。「うるさいのを追っ払う。とにかく時間を稼げ。いいなダコスタ。エンジンを撃たせるな!」ブリッジより出て行くバルトフェルド。 「エターナルの軌道予想、いいわね。だいぶ降下してきているわよ。」ラミアスの言葉に「はい、大丈夫です。」と答えるキラ。「進路クリア、システムオールグリーン。ストライクブースター発進どうぞ。」 灯が入るブースター。「行きます。」加速するブースター。カタパルトから急上昇していくストライク。 その頃、エターナルからは、バルトフェルドのガイアが発進していた。次々とエターナルに取り付こうとするモビルスーツを撃破していくバルトフェルド。「ガイア?あんなものまで持っているとは。一体どういう組織なんです。」 「ポッドの射出ポイントまであとどのくらいですか。」ダコスタに尋ねるラクス。「あと20、いや25です。」「どうかそこまで頑張ってください。」「はい。」 バルトフェルド1機だけではいかんともしがたい状況。ついにビームライフルがグフのヒートロッドの餌食となってしまう。 成層圏を突き進む、ストライク。「ラクス。頼む、間に合ってくれ。」 ガイアはザクに囲まれていた。身動きの取れないバルトフェルド。一気に押しかける他のザク。ザクの長距離ビームがエターナルのコクピットを狙う。「ええい。」苦虫を噛むような顔のバルトフェルド。そこに接近する機体を知らせるアラーム。「何だ?」 それはたどり着いたキラのストライクだった。「ストライク?」 ブースターを外すキラ。ザクが構える長距離ビームライフルを撃破する。「キラ!」 「ラクス、バルトフェルドさん。」キラからの通信が入る。「すみません。でも心配で。」 取り付こうとするザクをなぎ払っていくストライク。そしてエターナルを狙った長距離ビームをシールドで受ける。爆破する右腕。その右腕に握られたビームライフルを拾い、ザクを破壊するバルトフェルド。 「馬鹿!だったら早くエターナルに入れ!」「えっ?」「お前の機体を取って来い!」「はい。」 キラを迎えるためにラクスはモビルスーツデッキに向かう。エターナルに回収されるストライクルージュ。そのデッキ入り口で、心配そうにストライクを見るラクス。「キラ!」ストライクからすぐに出てくるキラ。「ラクス!」 再会を喜び、抱き合う2人。「良かった。」「キラ!」「こうして君がここにいる。それが本当に嬉しい。」「私もですわ、キラ。」 「あれは。」キラのその言葉に、急に現実に引き戻されたラクス。「こっちです。」キラを案内するラクス。 ついにエターナルにナスカ級戦艦接近。戦艦からの攻撃を受け、震えるエターナル。よろめくラクスとキラ。ラクスを守るキラ。「急がないと。」「はい。」 そして、ラクスが案内したデッキには、静かに、ストライクフリーダムが立っていた。キラをそれに乗らせたくない様子のラクス。うつむき、何もしゃべらなくなる。キラは優しく微笑みかける。「有り難う。」キラを見るラクス。「これで僕は、ちゃんと戦える。僕の戦いを。」 「キラ。。」 「待ってて。すぐに戻るから。そして帰ろう、みんなの所へ。」 「はい。」 ストライクフリーダムのシステムを起動させるキラ。 「X20A、ストライクフリーダム、発進どうぞ。」 「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます。」 エターナルのカタパルトより飛び立つフリーダム。 「なんだ、あの機体は?」「新型か?速いぞ。」「フリーダム!?」 モビルスーツを蹴散らしていくキラ。そして、ヒートロッドで捉えたグフをスーパードラグーンを使って払い落とす。全ての砲門を開くストライクフリーダムに敵はいなかった。 「2分、わずか2分で25機のザクとグフが全滅だと?」そこに近づくストライクフリーダム。「敵モビルスーツ、接近。」「全砲門、開け。撃ち落とせ!」 ナスカ級戦艦からの一斉砲撃をモノともしないキラ。 「当たれーー!」 キラの指示通り、ナスカ級のエンジンを正確に攻撃するスーパードラグーン。 「ナスカ大破、航行不能です。」「ホルスト、カーナフォン、共に航行不能。」その報告に言葉を失う指揮官。「そんな馬鹿な。。」 こうして破壊をしたことにためらいを感じているかのようなキラ。だが、その気持ちを振り切り、エターナルへと帰投する。エターナルと併走するストライクフリーダム。 気が重そうな顔をしているラクス、それに気づき、微笑みかける。そしてキラも。。 |
PHASE - 40 | 黄金の意志 | 悪夢にうなされるシン。レイに起こされる。 「アスランとメイリン、俺。。。」 「彼らは敵だ。裏切ったんだ、シン。」 「はぁ?」 「仕方がない。」 「わかってるよ。それはわかってるさ。ただ。。」 「悪夢はそれか?俺が討てば良かった。優しすぎる、お前は。それは弱さだ。それでは何も守れない。」 そうレイに言われ、ハッとなるシン。 授賞式。シンはそこで2つ目のネビュラ勲章を授与していた。ヘブンズベース戦での功績を称えられてのものだ。そしてデュランダルはシンとレイにFEITHの称号を与える。 FEITHの紋章を見た、シンは思わずデュランダルに問いただす。「議長?」 「不服かね?」 「そんな、そんなことはありません。けど。」レイと顔を見合わせるシン。 「これは我々が、君たちの力を頼みとしている、ということの証だ。どうかそれを誇りとし、今この瞬間を裏切ることなく、今後もその力を尽くして欲しいと思ってね。」 「光栄です。ベストを尽くします。」とデュランダルに返答するレイ。 「俺、あ、いえ。自分の頑張ります。」即座にレイの後に続き、返答するシン。 わき起こる拍手。 退出するシン達を見送るタリア。そのタリアにこっそり耳打ちするデュランダル。「君が何も言わないなんて怖いな。タリア。」 「失礼しますわ。」そう言って、部屋を出て行くタリア。それを追うデュランダル。 廊下を歩く2人。「シンとレイをFEITHとしたことで、絶対何か一言あると覚悟していたんだがね。」 「何を今更。言いたいことは山ほどありますが、迂闊に言えることでもないので黙っているんです。聞く気がないのなら放って置いていただきたいわ。」 ため息をつくデュランダル。「聞く気がないだなんて。そんな。」 「アスラン・ザラとメイリン・ホーク撃墜の件、私は未だ納得した訳ではありません。」 「分かってるさ、それも。だが、」 その瞬間、ある士官がデュランダルを呼び止める。「議長!」 「何だ?」 「ロード・ジブリールの所在が分かりました。カーペンタリア情報員からの報告です。」 「カーペンタリアだと?で、彼はどこに。」 「オーブです。」その士官がデュランダルに見せた写真には、ジブリールとそれを出迎えるウナト、ユウナの3人が写っていた。 その言葉を聞いてしまったシン。オーブにいるということにショックを受ける。 「何だと、ジブリールがセイランに?本当なのか、それは。」カガリは、ジブリールがオーブにいるということを、キサカからの報告で知った。 「ああ、間違えない。そしてそれはもう、ZAFTにも知れたようだ。すでにオノゴロ沖合にカーペンタリアより発進した艦隊が展開中だ。」 「なんだと、なぜそんな。」悔しがるカガリ。 ZAFT軍ジブラルタル基地。デュランダルの前に士官十数名が集められていた。 「ともかく我々は、彼の身柄の引き渡しを要求する。ヘブンズベース戦での彼の責任、また既に得られた様々な証言から、彼の罪状は明らかなんだ。それを匿おうというのは到底許せるものではない。」 「既にカーペンタリアからこちらの要求を携えた艦隊が出動しているが、万一に備えて我らも非常態勢を取る。先駆けてミネルバには直ちに発進してもらいたい。」 「えっ?本艦が、ここからでありますか?」 「こちらも本気だということを示さねば、交渉にもならん。ミネルバは足自慢だろ。」 「連戦で疲れているところを本当にすまないと思うがね。だが頼むよ、グラディス艦長。」 デュランダルの言葉に承伏できないという顔をするタリア。 「オーブはその軍事技術の高さを誇るだけでなく、マスドライバーなどの宇宙への道をも持つ国だ。私はそれも気にかかる。ジブリールがオーブの軍事力をも持って、月の連合軍と合流するようなことになれば、プラント本国がまた危機にさらされる可能性も出てくる、ということだ。彼こそがブルーコスモスの盟主であるということを忘れた訳ではあるまい。」 そのデュランダルの言葉に聞き返すタリア。「オーブが彼に力を貸すと?」 「現に彼はオーブにいるのだ。我々が彼を捜していることを、あの国だけ知らないはずがないだろうに。」 席を立つデュランダル。「オーブは、ユニウスセブンの件があるまでは、友好国として親しくしてきた国だ。それを思うと残念でならないが。。だが、我々も、この度の件に関しては、一歩も引くことはできん。ロゴスの暗躍、これ以上は許さん。今度こそ必ず、彼を押さえるのだ。」 オーブではこれらの事態が一切知らされていなかった。領海ぎりぎりに展開するZAFT軍に対して、国防隊への出動命令も、そして市民に対して、これから起こると考えられる事態も。アークエンジェルの修理も最低あと2日。間に合う可能性は低い。そして何とか動こうとするアスランであったが、体が言うことを聞かない。ネオにたしなめられるアスラン。 苛立っているカガリに声をかけるアマギ。「カガリ様。」 「分かっている。まだ戦闘になるとは限らない、むやみに飛び出すな、ウナト達の対応を待て、と言うのだろう。」 「はい。キサカ一佐も。」 「分かっているさ。だが。。」 ジブリールは、セイラン家にいた。ウナトと話をするジブリール。「まあ、ちょっとは物の分かった人間ならすぐに見抜くはずだ。あんなデュランダルの欺瞞は。」 「ええ。」 「奴の支配する世界になったら、あなた方も居場所がない。まあ、心配せずとも我らはすぐに反撃に出る。奴が宇宙に戻り、私が宇宙に上がりレクイエムが流れれば、全て終わるのだ。」 「レクイエム?」 「その時勝ち残っていたければ、今どうすべきかは聡明なあなたにはよくお分かりだろうがなぁ。ウナト・エマ。」 オーブ政府からの声明が発表される。 「オーブ政府を代表して、通告に対し、回答する。」声明を出しているのはユウナである。「貴艦らが引き渡しを要求するロード・ジブリールなる人物は、我が国内には存在しない。また、このような武力を持っての恫喝は、一主権国家としての我が国の尊厳を著しく侵害するものとして大変遺憾に思う。よって直ちに進軍を止めることを要求する。」 「そんな、そんな言葉がこの状況の中、彼らに届くと思うのか!」怒り心頭のカガリ。 「もはやどうにもならんようだな。この期に及んでこんな茶番に付き合えるはずもない。我らの思いに、このような虚偽をもって応ずるというのなら、私は正義と切なる平和への願いをもって、断固これに立ち向かう。ロード・ジブリールをオーブから引きずり出せ。」デュランダルの檄が飛ぶ。 セイラン家にいると思われるロード・ジブリールを目標にして、ZAFT艦より、モビルスーツが発進する。ミリアリアの報告を聞き、「オーブ軍は、どう展開している?避難などの状況は?」と聞き返すカガリ。「まだ動いていないわ。」と答えるミリアリア。その言葉に驚くカガリ。「避難勧告も出ていない。それどころかオノゴロ沖がこうなっていることすら、市民には知らされてないみたいよ。」カガリは飛び出したいが必死でこらえている様子。 「オーブ本当に爆撃です。狙われたのはセイラン家のようですが。」ミリアリアの報告に、ラミアスはマードックに尋ねる「本艦はまだ出られないの?」「無理ですよ。まだエンジンが終わってねぇんですから。」との返事。 国防本部は、展開してくるZAFT軍モビルスーツを防ぎたくとも、何の命令も出ておらず、ただ指をくわえて見ているしかない。何故何の命令も出ないのかと怪訝がる兵士達。呼び続ける行政府。だが、応答が無い。 そんな国防本部にユウナが現れる。「ああ、もう。どうしてこうなるんだ。彼はいないと回答したのに、なんで奴らは撃ってくるの?」 「嘘だと知ってるからですよ。政府は何故、あんな馬鹿げた回答をしたのです。」冷たく答えるソガ一佐。 たじたじになりながら答えるユウナ。「だって昔、アークエンジェルの時には。。」 「あの時とは、政府も状況も違います。」ソガ一佐の言葉。国防本部のスタッフからも冷たい視線を浴びるユウナ。 「ああ、うるさい。ほら、とにかくこっちも防衛体制を取るんだよ。護衛官軍出動、迎撃開始。モビルスーツ隊発進。奴らの侵攻を許すな。」ようやく動き出す国防軍。 「アマギ、ムラサメ隊は出られるな。」 カガリの言葉に「は、はい。」と答えるアマギ。 「なら、行こう。艦長、スカイグラスパーを私に貸してくれ。」ラミアスに頼むカガリ。その言葉に驚く一同。「我々だけでも発進する。」 「そんな無茶よ!スカイグラスパーでなんて。」 「オーブが再び焼かれようとしているんだ。もう何も待ってなど居られない。」そう言ってブリッジを出て行こうとするカガリ。そこにブリッジに入ってくるキサカとエリカ。キサカにぶつかりよろけるカガリ。 「いくぞアマギ、機体はお借りする。」そう言って飛び出そうとするカガリを止めるキサカ。「待て、カガリ。」 「もう待たんと言っている。放せ!」 「いいから一緒に来るんだ。」 「いやだ。このままここで見ているぐらいなら国と一緒にこの身も焼かれた方がましだ。」 「ふっ、それでは困るから来いと言っているんだ。」 「うるさい、放せ。」キサカの手を振りほどくカガリ。 「はい、はい、はい。だから行くのはいいけど、その前にウズミ様の声を聞いてと言いたいの。」エリカがカガリをたしなめる。 「え、お父様の?」 「そう。遺言を。」 あるゲートの前に案内されるカガリ。「そこに言葉が掘ってあるでしょ。読んで。」 エリカの指示に従って読むカガリ。「この扉、開かれる時が来ん事を切に願う。」 開くゲート。「この扉が開かれる日、それはこのオーブが再び炎に包まれる日かも知れないと、そういうことよ。そしてこれが封印されていた、ウズミ様のご遺言よ。」ゲート内の照明をつけるエリカ。そこには黄金色のモビルスーツが立っていた。 どこからかウズミの声が聞こえる。「カガリ。」「お父様。」「もしもお前が力を欲する日来たれば、その希求に答えて私はこれを贈ろう。教えられなかったことは多くある。が、お前が学ぼうとさえすれば、それは必ずやお前を愛し、支えてくれる人々から受け取ることが出来るだろう。故に私はただ一つ、これのみを贈る。力はただ力。多く望むのも愚かなれど、むやみと厭うのもまた愚か。守るための剣、今必要ならばこれを取れ。満ちぬままお前が定めた成すべきことを成すためならば。」 「お父様。」ウズミの言葉を聞き泣き崩れるカガリ。 「が、真に願うのはお前がこれを聞く日が来ん事だ。今、この扉を開けしお前には届かぬ願いかも知れないが。どうか、幸せに生きよ。カガリ。」 「お父様。」泣き崩れるカガリ。その横でカガリに問うキサカ。「カガリ。アカツキに乗るか?」「アカツキ?」「うん。」 アカツキに乗り、起動させるカガリ。「ORB-01アカツキ、システム起動。発進どうぞ。」「カガリ・ユラ・アスハ、アカツキ、発進する。」 オーブ国防軍は総崩れとなっていた。「本当防衛線が総崩れです。立て直さなければ全滅します。」「だったらやってよ。いいからもう、早く。」泣きつくユウナ。「ですからそのご命令は。」ソガ一佐の返事。「そんなこと言って、また負けたら、貴様のせいだからな。」その言葉にユウナへの厳しい視線が送られる。 アカツキを先頭に、ムラサメ隊が出動した。「防衛線を立て直さないと、総崩れだぞ。」キサカの通信がカガリに届く。「まずは国防本部を掌握し、前線を立て直す。一個小隊、私と来い。残りは防衛線へ。」 「ソガ一佐。沖合上空に新手の友軍部隊が。」 「何?」 「この識別コードはタケミカヅチ搭載機のものです。」 「何だと?」 「加えてアンノウンモビルスーツ1。ムラサメと共にこちらに向かって来ます。」スクリーンに大写しとなるアカツキ。「なんだあのモビルスーツは?」 そこに通信が聞こえてくる。「私はウズミ・ナラ・アスハの子、カガリ・ユラ・アスハ。国防本部、聞こえるか?突然のことで真偽を問われるかも知れないが、指揮官とどうか話したい。どうか。」 そう聞こえた瞬間、無線でカガリに泣きつくユウナ。「カガリ!ああ、来てくれたんだね、マイハニー。有り難う、僕の女神!指揮官は僕、僕だよ。」 「ユウナ。私を本物と、オーブ連合首長国代表首長、カガリ・ユラ・アスハと認めるか?」 「もちろん、もちろん、もちろん。僕にはちゃんと分かるさ。彼女は本物だ。」 「ならば、その権限において命ずる。将兵達よ。直ちにユウナ・ロマを国家反逆罪で逮捕、拘束せよ。」 「えっ?」そのカガリの言葉に驚くユウナ。「命令により拘束させていただきます。」ソガ一佐の一撃で、床に倒され、直ちに拘束されるユウナ。 「ユウナからジブリールの場所を聞き出せ。ウナトは行政府だな。回線を開け。オーブ全軍、これより私の指揮下とする。いいか。残存のアストレイ隊は、カガミツダナに集結しろ。ムラサメの2個小隊をその上空援護に。国土を守るんだ。どうか、みんな。私に力を。」 立て直されたオーブ軍に押し戻されつつあるZAFT軍。そこにミネルバが到着する。 「ジブリールは?」 「まだ見つからないようだな。なかなか頑固に抵抗されているようだ。」 落ち込んでいる様子のシンに気づくルナマリア。「シン。」 「初手から3機出ることもない。俺だけでいいだろう。」レイが言う。 「いや、俺が行く。」 「ええ?だってシン。」シンの言葉にルナマリアが聞き返す。 「ああ、止めておけ。」 「いや、俺が行く。」(オーブを討つなら、俺が討つ。) ミネルバを発進するデスティニー。 「カガリ様、ご注意ください。ZAFT軍の新手が。」デスティニーの方を見るカガリ。「あれは。」 デスティニーに向けアカツキを向かわせるカガリ。ついに相まみえることとなるカガリとシン。 |
PHASE - 41 | リフレイン | 【アスラン】 「はぁ、俺は何でこんなところにいるんだろう。」アークエンジェルのベッドで横たわるアスランの思い。「前の戦争で戦うことのむなしさを知ったはずだ。だからオーブにいた。戦争を止めようとした。が、なに?なぜ?」 ユニウスセブンでの戦い。テロリストの言葉。 「確かに焦っていたかもしれない。何もできないでいる自分が嫌だったのかもしれない。だけど、俺にも出来ることがあるはずだった。」 ZAFTより逃げ出すアスラン。 「全てが俺の甘えだったのか?メイリンまで巻き込んで、結局何も出来ないまま。。」 再びアークエンジェルの横たわるアスラン。 「俺が欲しかったのは明確な答えだったのかもしれない。」シン、イザーク、ミーア、そしてデュランダルの言葉。それだけの力を持っていながら、何故オーブでくすぶっているのか。「だから、議長の言葉を信じたのか?すがるべきものとして。」FEITHの称号を与えられ、そして、セイバーを与えられたアスラン。「いや、すがったんじゃない。その言葉に真実を見たからこそ、俺はもう一度剣(つるぎ)を手にしたんだ。」 ミネルバと合流したアスラン。 「そして俺は、ミネルバと共に戦った。」ガナルハンのローエングリン砲台攻略戦。「戦争を止めるためには、戦う他に道は残されていなかった。それが、1日でも早く戦争を終わらせることになると信じて。」 地球連合軍と合流したオーブ軍と戦おうとするミネルバ。そこに現れたキラ、フリーダム。 「キラは戦場を混乱させるばかりだった。」 マルタ島でのキラとの再会。そしてキラのデュランダルに対する疑念。 「俺にはキラが分からなくなった。キラと俺の道はぶつかりあうはずがない、同じ方向に向かっているはずなんだ。なのに、なぜ戦う?俺とキラが。」 セイバーを討つキラのフリーダム。考え込むアスラン。錯綜するキラの言葉、デュランダルの言葉、レイの言葉。 「議長の言葉はどこまでも心地よく、どこまでも正しく思えた。でも、その裏にある真意を知った時、何もかもが信じられなくなった。」 メイリンと共に逃亡を企てたアスラン。 「脱走した訳じゃない。ただ真実を知りたかっただけだ。信じられるものが欲しかっただけなんだ。」 シンに落とされるアスランのグフ。そして、アスランはアークエンジェルに収容される。 エターナルの緊急発進。キラに思いを馳せるアスラン。「キラ、行け!」 【キラ】 エターナル発進を受け、ストライクルージュで援護に向かうキラ。場面は、ラクスが襲われ、そしてキラが再びフリーダムに乗ったあの日に戻る。 「あの日、ラクスを襲ったコーディネーターの暗殺者と戦ったその日から、僕はまた、モビルスーツに乗っている。そして今もまた、僕は、ラクスとエターナルを守るため、宇宙を目指す。無事でいて、ラクス。僕がすぐに助けに行くから。」 エターナルの危機的状態の時、ストライクルージュで現れたキラ。 「どれだけ血と涙を流せば、戦いが終わるのであろう。後に残るは、癒しようのない悲しみと、やり場のない怒りと、限りのない憎しみの連鎖だというのに。そして戦いの果て、僕はフリーダムという名の剣を砕かれてしまった。アスラン、君は言ったよね。こんな愚かな争いを1日も早く終わらせるために、プラントは、デュランダル議長は戦っているんだって。僕やマリューさん達のしていることは、ただいたずらに戦場を混乱させているだけだって。でも、それは本当にそうなんだろうか。」 デュランダルのロゴス妥当の演説。沸き立つ人々。 「確かに、君の言うことも分かるけど、でも、ラクスが襲われたあのときも、僕は感じた。何かとてつもなく大きな意志と力が、この戦いの中でうごめいているのを。何故ZAFTは、アークエンジェルを攻撃するの?そして何故、今またエターナルを沈めようとしているの?アスラン、君が僕の問いに答えられるの。君が信じるように、デュランダル議長を信じることが、僕にはできない。だって、戦いのない世界を創るためだからと言って、こんなにも多くの血を流さなければならないなんて、どうしても僕には正しいと思えないから。」 前回のヤキンデューエ戦に物語りは戻る。ザラ議長の言葉、そしてクルーゼの言葉。 「戦いによって勝ち取られた世界は、また新しい戦いを呼んでしまうだろう。アスラン、君はウズミさんが言っていたことをまだ覚えているかい?(このまま進めば、世界はやがて認めぬ者同士が際限なく争うばかりのものとなる。そんなもので良いか?君たちの未来は。)だから、今度こそそんなことにならないようにって、カガリも君も頑張ってきたんじゃない。」 カガリの言葉。 ジェネシスを破壊させるがため、ジャスティスを自爆させようとするアスランの前に現れたストライクルージュ。「アスラン!逃げるな!生きる方が戦いだ。」 プラントに乗り込み、デュランダル議長の前で交渉をするカガリ。「強すぎる力は、また争いを呼ぶ。」 「戦いじゃなく、言葉で、話し合いで分かり合える道を探そうって。。」 ストライクフリーダムを手に入れたキラ。 「君と僕に出来るのは確かに、ただ戦うことだけなのかもしれない。そして、戦いからは何も生まれないんだ。でも、ラクスやカガリ達は一生懸命、未来を切り開こうとしている。その努力を打ち砕こうとするなんて、許せないじゃない。だから僕は、まだ戦ってるんだ。」 オーブ。戦没者慰霊碑の前のキラとシン。 「いっくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす。」 「いつか全ての戦いが終わって、誰もが心から笑って、手を取り合える時を迎えるために、僕たちは、その日のためにここにいる。そうでしょう、アスラン。果てしのない戦いの連鎖から世界を解き放ち、自由な未来を築くために。」 |
PHASE - 42 | 自由と正義と | オーブが迎えた危機、エンジンの修理が何とか完了したアークエンジェルは、その危機に向かうために発進しようとしていた。そんなアークエンジェルブリッジに、メイリンの肩を借りて現れるアスラン。 「アスラン!」「おいおい、大丈夫か?」アスランを見て話すブリッジのクルー。 「大丈夫です。CICに座るくらいできます。」と答えるアスラン。 その頃、ラミアスは、スカイグラスパーの前でネオの拘束を解いていた。「何だ?どういうことだよ。」ラミアスに問うネオ。 「もう、怪我は治ったでしょ。ここにいると、また怪我するわよ。スカイグラスパー、戦闘機だけど、用意したから行って。」 そう言って涙をためるラミアス。そしてその顔を見られまいと、ネオに背を向ける。「あなたはムウじゃない。ムウじゃないんでしょ。」そう言葉を残し、走り去るラミアス。 そしてそのラミアスがアークエンジェルのブリッジに戻ってきた時、アスランはメイリンを説得していた。 「メイリン、君は降りてドックへ残れ。発進すればアークエンジェルはZAFTと戦うことになるんだ。それに君を乗せてはおけない。」 「アスランさん。」 「本当にすまない。有り難う。だが、このドックにいれば大丈夫。だから、な。」 首を横に振るメイリン。「でも、でも、私。」アスランの肩に抱きつくメイリン。「大丈夫ですから。私、大丈夫ですから。だから、置いていかないでください。」 「メイリン。」困ったような顔のアスラン、ラミアスの顔を見つめる。頷いてみせるラミアス。 「分かった。」 モルゲンレーテ、ドックを出て、発進するアークエンジェル。海面に出て、上昇を始める。上昇するアークエンジェルを見送るネオ。キャプテンシートに座り、ネオがいる方向を見つめるラミアス。 撃ち合いとなるデスティニーとアカツキ。「こいつに来られたらオーブは。」デスティニーを何とか食い止めようとするカガリ。 「ちっ、なんだよこれは。」シンはアカツキに対してビーム攻撃を展開する。が、デスティニーからのビームをはじき返すアカツキ。「ビームをはじく?ならば。」ソードを構えるデスティニー。そこにムラサメ隊の援護。「そんなもんにぃー。」ムラサメ隊の攻撃をことごとくかわし、ムラサメをなぎ払っていくデスティニー。残るはアカツキのみ。カガリは覚悟を決め、長刀を構える。 「あんたが隊長機かよ!」アカツキに突っ込んでいくデスティニー。「たいした腕もないくせに。」 アークエンジェルは、ついにオノゴロ島上空にまでやってきた。ZAFT艦隊の中にミネルバがいることを確認し、ざわめくブリッジ。「ジブラルタルじゃなかったのか?」「ジブリールを追ってきたのかよ。」 ミネルバでもアークエンジェルを探知していた。「アークエンジェル?」「やはり沈んでなかったのね。」 そしてアカツキが交戦中である画像が映し出される。その映像に驚くアスラン。「デスティニー!?シン!」 モビルスーツの性能がほぼ同じであっても、腕の差はいかんともし難い。アカツキはシールドを割られ、そして右腕を切り落とされていた。そして、正にトドメを刺そうと2つのビームブーメランがアカツキを襲おうとしていた。 「上空より接近する物体あり。モビルスーツ?いや、速い。」ミネルバブリッジで、何か接近する物体をレーダーが捉えた。「何なの?」その物体を確認しようとするタリア。それはキラの乗るストライクフリーダムと、それに引きつられてきたインフィニットジャスティスであった。カガリに近づくビームブーメランを撃ち落とすキラ。 カガリのアカツキをかばい、デスティニーに対して悠然と立ち向かうストライクフリーダム。「フリーダム?なんだよ。そんな。」愕然とするシン。「何で?」 「マリューさん、ラクスを頼みます。ここは僕が引き受ける。カガリは国防本部へ。」ビームサーベルを両腕に構えたストライクフリーダムが、デスティニーに立ち向かっていく。「くそぉー。」ストライクフリーダムとの白兵戦になるデスティニー。 ラクスの乗るインフィニットジャスティスがアークエンジェルに着艦する。ラクスに会うために、シートを立つアスラン。メイリンがそのアスランに肩を貸す。 ストライクフリーダムが来たことで、事態が変わったことを感じ取るタリア。ミネルバを最前線へと移動させる。「離水上昇急げ。これよりアークエンジェルを討つ。」 「ミネルバが来るわよ。いいわね。」緊張感張りつめるアークエンジェルブリッジ。 再びミネルバとアークエンジェルは艦隊戦へと突入する。 アカツキで国防本部を目指すカガリ。そこをキサカ達のムラサメ隊がガードする。「国防本部へ降りる。援護しろ。」国防本部へと降下するアカツキ。ムラサメもそれに続く。 上空より降下ポッドが現れる。降下ポッドが開き、オーブ地上へ着陸する3機のドムトルーパー。「ふっ、やはりうっとおしいな、地球の重力は。」「なぁに言ってンだ。ほら行くよ、野郎ども!」「おぅ。」「ラクス様の為に!」高速移動を始めるドムトルーパー。次々とオノゴロ本島に上陸したZAFT軍モビルスーツを撃破していく。 「何?あれは。」ミリアリアが気になって、確認を求めようとしたとき、ラクスより連絡が入る。「マリューさん、カガリさん。降下ポッドのモビルスーツは敵ではありません。」 ドムトルーパーの前に立ちはだかるZAFT軍モビルスーツの大部隊。「まずはあれだ。行くよ!」「おう!」「いくのかよ。」一直線に並ぶドムトルーパー。「ジェットストリームアタック」ドムトルーパーの三位一体攻撃により、次々と破壊されていくモビルスーツ。 「彼らは、私たちのお味方くださる方々ですの。どうかそのように。」 「わかったわ。」ラミアスへの通信が切れた時、ラクスの元に現れるアスラン。 「ラクス!」 「アスラン。」アスランの方を向くラクス。 「君が乗っていたなんて。大丈夫か?」 「はい、本当にただ乗っていただけですから。アスランこそ大丈夫ですか?」 「大丈夫だ。」 「お体のことではありませんわ。」ラクスの意味あり気な微笑みに、今までのことを思い出すアスラン。顔を背けるアスラン。そのアスランを見て、まだ大丈夫ではないということを察知するラクス。 「くそぉー、なんでこんな。」デスティニーに乗りながら、ちっとも捉えられないことに苛立ちを感じているシン。キラはSEEDを覚醒させる。デスティニーが振り下ろしたソードを正面で受け止め、デスティニーを攻撃するストライクフリーダム。「これがビームだったら、もう終わってるって、そう言いたいのかよ、あんたは。」シンもSEEDを覚醒させる。動きの良くなったデスティニーに、ややとまどいを感じるキラ。 アークエンジェルとの艦隊戦の指示に忙しいタリアに、レイから連絡が入る。「艦長、シンを戻します。」「えっ?」レイの言うことが一瞬理解できないタリア。「状況が変わりました。量がありません。」「なら、あなたかルナマリアが出なさい。」「無論、我らも出ますが、その前にシンの帰投を。整備と補給の必要もあります。あれを落とさねば、この戦闘に勝利はありません。」「いいわ。任せます。でも、急いで。」「了解。」 ジブリールは、オーブのどこかを逃げていた。それを聞き出すべく、カガリはユウナのいる国防本部に降り立った。 「こいつ、何で落ちないんだよ。落ちろ。」焦るシンにレイから通信が入る。「シン、帰投しろ。」「え?なんで。まだ。」だが、デスティニーのエネルギーゲージには警告が表示されていた。「命令だ。奴に勝ちたければ、一旦戻るんだ。いいな。」そのレイの言葉で、一度ミネルバへ帰投するシン。 キラはすぐさまオノゴロ島へ進路を取る。 国防本部の司令室に駆け込んできたカガリ。「ユウナ!」「カガリ、ひどいよこれは、あんまりだ。」顔面が腫れ上がったまま拘束されていたユウナが、カガリに訴えかける。「カガリ、僕、君の留守を一生懸命。。」そこにカガリの拳が飛んでくる。倒れるユウナ。 アスランはインフィニットジャスティスを見つめていた。ノーマルスーツから着替えたラクスが近づく。 「ジャスティスか。」 「はい。」 「俺に。」 「なんであれ、選ぶのはあなたですわ。」 殴られて床に座り込んでいるユウナに言うカガリ。「お前だけが悪いとは言わない。ウナトやお前、首長達と意見を交わし、己の任を全うできなかった私も十分に悪い。だが、これは何だ。意見は違っても国を守ろうという想いだけは、同じと思っていたのに。」 「いや、だからそれは。」 ユウナの胸ぐらを鷲づかみにするカガリ。「言え、ジブリールは何処だ。この期に及んでも、未だ奴を庇い立てするか?」 「だ、だから言ったじゃないか。僕は知らないって。」 「ユウナ!」 「本当に、本当に知らないんだってば。確かに家にはいたけど、今は。」 ユウナを突き飛ばすカガリ。「もういい。連れて行け。」「カグラの封鎖は完了しているな。」 「ともかく一刻も早くジブリールを捕まえるんだ。」 「諦めるな。押し返せば停戦への道も開ける。今はそのことだけを考えろ。」 「君も、俺はただ戦士でしかないと、そう言いたいのか。」 「それを決めるのも、あなたですわ。」ラクスの言葉を意外と感じた様子のアスラン。「怖いのは閉ざされてしまうこと。こうなのだ、ここまでだと終えてしまうことです。傷ついた今のあなたに、これは残酷でしょう。でも、キラは、」 (「私をこれで?」「うん、誤魔化せるし、一石二鳥じゃない。」「でも、今のアスランには。」「うん、そうも思うけどね。でも、何かしたいと思ったとき、何もできなかったら、それがきっと一番辛くない?」) 「キラ。」 「力はただ力です。そしてあなたは確かに戦士なのかもしれませんが、アスランでしょ。」そのラクスの言葉にハッとした表情をするアスラン。「きっと、そういうことなのです。」 今なお、艦隊戦の続くミネルバとアークエンジェル。「回り込め!」ミネルバからのミサイルがアークエンジェルを襲う。「11時の方向からミサイル8!」「回避!」ミサイルを撃ち落とすリゾルテ。だが、破壊し損なったミサイル2。そのミサイルが何者かの手で撃ち落とされる。アークエンジェルを追い抜いていくスカイグラスパー。その時、ネオから通信が入る。 「へへ、すまんな、余計なことして。」 「あ、あなた。」 「でも俺、あのミネルバって船嫌いでね。」 「え?」「 「大丈夫、あんたらは勝てるさ。なんたって、俺は不可能を可能にする男だからな。」そう言って切れる通信。 その言葉にフラガを思い出すラミアス。「ムウ。。」 カガリの元に続々とジブリールが確認できたかどうかの連絡が入る。だが、既にジブリールはシャトルの格納庫に到達していた。ジブリールの手の者に制圧された格納庫からの偽の連絡では、正確な所在を掴むことができないカガリ。 「デスティニー作業終了。発進可能です。」このアナウンスを聞き、待機ボックスから走り出していくシン。「シン!」後を追おうとするルナマリア。「ルナマリアは残れ。」「え?」レイに止められるルナマリア。 エレベーターに乗り込んだシン。「くそぉ、あいつ。今度こそ。」フリーダムへの怒りを露わにするシン。 「命令だ。気を散らせばシンは負ける。」「え、でも。。」「今のあいつにお前は邪魔だ。」そうレイに言われ、言葉が出ないルナマリア。レイもシンを追って、待機ボックスを駆けだしていく。 デスティニーの起動シーケンスを確認中のシン。そこにレイから連絡が入る。「落ち着いていけシン。お前が挑発に乗って自分を見失ったら、勝てるものも勝てない。それこそ奴らの思うつぼだ。」 「わかってるよ。」 「なら、いい。あれは亡霊だ。今度こそ沈めるぞ。」 「ああ。」 ミネルバを飛び出すデスティニーとレジェンド。「あれは。」その2機に気づくキラ。 悩むアスラン。そしてラクスの方を見る。ただ微笑み、アスランを見つめるだけのラクス。答えは出たようだ。 「俺は。。アスラン・ザラ、ジャスティス、出る。」 アークエンジェルより飛び出すインフィニットジャスティス。 |
PHASE - 43 | 反撃の声 | カタパルト内を動き出すインフィニットジャスティス。それをデッキより見送るメイリン。「アスランさん。」そして出撃を止めようとするマードック。「艦長!ザフトの坊主がモビルスーツに!」「ええ?あの体で?そんな無茶よ。止めさせて!」そこに入ってくるラクス。「艦長、どうか彼の思うとおりに。」 「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る。」 ジブリールを探すカガリ。だが、寄せられる情報はどれもジブリールは見あたらないというものばかり。「くそぉー、一体奴はどこにいるんだ。」苛立ちを隠せないカガリ。 ミネルバとアークエンジェルの艦隊戦はなおも続いていた。アークエンジェルを援護し、ミネルバに手傷を負わせるネオのスカイグラスパー。だが、ミネルバの攻撃により被弾、「へっ、降ろしてくれるか。」とネオより連絡が入る。「整備班、緊急着艦用意。」ラミアスの指示で、開くカタパルトゲート。そのカタパルトゲートに着艦しようとした瞬間、この光景がフラッシュバックするネオ。それを振り払うかのように首を振り、アークエンジェルへ着艦する。 キラは、シンのデスティニーと、レイのレジェントの連携攻撃に翻弄されていた。シンのデスティニーをはじき飛ばした瞬間、レジェントからの攻撃で姿勢を崩すストライクフリーダム。「今だシン!、撃て!」レイの言葉にシンは、ストライクフリーダムに向け、ビーム砲の照準を合わせる。ストライクフリーダムをロックオンした瞬間、「止めろー!」という声。。 ビームブーメランと共に、突進してくるアスランのインフィニットジャスティス。ビームブーメランを盾でかわした直後、体当たりをかませるインフィニットジャスティス。よろけるデスティニー。「止めるんだ、シン。」モニターに映し出されるアスランの姿にただ、呆然とするシン。 「アスラン?だって、そんな。」 「もう止めろ!自分が今、何を討とうとしているのか、本当に今、分かっているのか?戦争を無くす。そのためにロゴスを討つ。だからオーブを討つ。それが本当にお前が望んだことか?退かぬから、だから討つしかないと、あの国に刃を向けることが!」 混乱するシン。 「思い出せ、シン!お前は、本当は、何が欲しかったんだ。」 呆然としているシン。そこにレイのレジェンドが急接近してくる。 「ちぃ、この死に損ないの、裏切り者が!何をのこのこと。惑わされるな、シン!」 割ってきたレジェンドの相手をするストライクフリーダム。 「レイ!」援護に向かおうとするデスティニーの前に立ちはだかる、アスランのインフィニットジャスティス。「オーブを討っては駄目だ。お前が!」 ユウナは、近くのシェルターに幽閉されようとしていた。いやがるユウナ。「嫌だよ、こんなところ。僕は、本島のセイランのシェルターに!」「いいから、お入りください。」その時に低空で飛び去るモビルスーツ。その隙を突いて逃げ出すユウナ。そのユウナの頭上に落ちてくる撃墜されたグフ。 「その怒りの、本当の訳も知らないまま、ただ戦っては駄目だ。」シンを諫めようとするアスラン。 「何を!」アスランの言うことが納得できないシン。 「どうなっているんだ。ウナトさんとユウナさんは。遅いなぁ。」兵士がそう話す中、シャトルでジブリールは苛ついていた。 「何を言ってるんだ、あんたは!」ビームブーメランを投げつけるシン。「何も分かってないくせに。裏切り者のくせに。」 デスティニーの攻撃を巧みにかわすインフィニットジャスティス。 「潜行する。下げ舵20。」着水し、潜行を開始するアークエンジェル。 「艦長!」潜行を始めるアークエンジェルを見て、艦長に指示を仰ぐアーサー。「潜られたら、こちらに攻撃オプションは無いわ。離脱上昇、急いで!」上昇するミネルバに、アークエンジェルからのバリアントが襲いかかる。 「もう待てん、シャトルを出せ!」兵士に向かって怒りを露わにするジブリール。「しかし。」「重要なのは私だ。セイランではない。お前達にも分かっているだろう。私が月に上がらねばならないのだ。」 「くそぉー。」何度もインフィニットジャスティスを攻撃するシン。だが、全て攻撃を防がれてしまう。今までの自分への言葉が錯綜するシン。「くそぉー。」SEED覚醒。シンのデスティニーがインフィニットジャスティス目がけ、特攻をかけてくる。だが、アスランも同じようにSEED覚醒。すれ違いざまの攻撃で、手傷を負ったのはデスティニーの方だった。力の差に愕然とするシン。 「司令、状況は我が軍に不利です。一時撤退を。」タリアの進言を突っぱねようとする司令。「何を言うか。ここでジブリールを逃がしたら、どれほどの事態になることか。」「ですが。」とタリアが言った瞬間、通信が途切れる。それは、司令の乗った潜水艦が、アークエンジェルのミサイルで沈んだことを意味していた。「旗艦セントヘレンズ、シグナル消失。」 その時、本島より1機のシャトルが発進する。「本島2区より発進する機影。」国防本部では、そのシャトルを捉えていた。その言葉にシャトルを写すモニターを見るカガリ。「これは。」「セイラン所有のシャトルです。」「何?」 そのシャトルはミネルバでも捉えていた。「シャトル?」「島の裏側からか。」「ルナマリア発進、今上がったシャトルを止めて!」スクランブルするインパルス。 「ムラサメを向かわせろ、撃墜してもいい。絶対に宇宙に上げるな。」カガリもムラサメ隊への命令を下す。 追撃するムラサメ、それを追い抜き、シャトルに攻撃を仕掛けるインパルス。だが、一歩遅く、シャトルに逃げられてしまう。 「旗艦撃沈に伴い、これより本艦が指揮を執る。信号弾撃て!一時撤退する。」シャトルの撃墜が失敗に終わったことを見届け、命令するタリア。その言葉を聞き、意見するアーサー。「えっ?艦長。」「戦況はこちらが不利よ。彼も発見できない。これでは戦闘の継続は無意味だわ。」「しかし、それでは議長の。」「議長の命じたのはジブリールの身柄の確保でしょ。オーブと戦えということではない。モビルスーツ帰投。全軍、オーブ領外へ一時撤退する。」 上げられる信号弾。その信号弾を確認するカガリ達。「グラディス艦長。退くというのなら追撃はしない。全軍に徹底しろ。」そう命じるカガリ。 レイやシンもその命令を受け、ミネルバへと引き上げた。対峙していたアスランは、そのまま気を失ってしまう。「アスラン。」落下していくインフィニットジャスティスを追うストライクフリーダム。そのまま浮上してきたアークエンジェルへと帰投する。 コクピットから引きずり出され、寝かされたアスラン。治療をしていた傷口は再び開き、血だらけとなっていた。「ストレッチャーを、医療班を早く。」 「では、ジブリールはそのシャトルに」デュランダルに報告をするタリア。「確証はありませんが、私はそう考えます。」 「いずれにしても彼は捉えられず、君たちはオーブに敗退した。そういうことか。」 「はい。そういうことになります。アークエンジェル、フリーダム、そしてジャスティス、と言って差し支えないでしょう。それらの参入によって、状況は不利となり、その上、依然として彼が未だに国内にいるという確証も得られませんでしたので、あのまま戦っても、ただの消耗戦になるだけでした。」 「そうか。。いや有り難う。グラディス艦長。判断は適切だったと思う。シャトルの件についてはこちらで調べる。オーブとは何か別の交渉手段を考えるべきかな。」 「私はそう考えます。」 アークエンジェルデッキ。夕暮れの中、一人オーブの港を眺めるネオ。「こんなところにいたの?」ネオに近づくラミアス。 「居場所が無くってね。」そうラミアスに答えるネオ。「ネオ・ロアノーク、CE42、11月29日生まれ。大西洋連邦ノースルパ出身、BloodType O。」 ネオの方を見るラミアス。 「CE60、入隊。現在、第81独立機動軍、通称ファントムペイン大佐。のはずなんだがな。だが、なんだかちょっと自信がなくなってきた。」 「えっ?」言葉の意味が分からないラミアス。 「あんたを知っている、ような気がする。いや、知ってるんだ。きっと俺、目や耳や腕、何か。。だから、飛んでいっちまえなかった。」 後ずさりするラミアス。 「あんたが苦しいのは分かっているつもりだ。でも、俺も苦しい。だから、ここに居ていいか?あんたのそばに。」ラミアスの肩を抱くネオ。その言葉に頷くラミアス。抱き寄せるネオ。それに驚いていたが、強くネオの背中を抱くラミアス。 寝かされていたアスランが、ベットから起きようとしていた。「大丈夫ですか?」慌ててアスランに肩を貸そうとするメイリン。 「って言わない方がいいよ。アスランは絶対大丈夫って言うから。」「そうですわね。」入ってくるそうそう、アスランのことを茶化すキラとラクス。 「はい。」とだけしか返事できないメイリン。「本当に大丈夫だ。」ふて腐れたように答えるアスラン。 「でも良かった。またこうして、君と話せる日が来て。平和な時は当たり前で、すぐ忘れちゃうけど、そういうの、本当はとても幸せなことだって。」 「キラ。」 「テレビつけていい?カガリが声明を出すんだ。とりあえず意志を示す。後はそれからだ、って。」テレビをつけるキラ。 「オーブ連合首長国代表首長、カガリ・ユラ・アスハです。今日私は全世界のメディアを通じ、先日ロード・ジブリールの身柄引き渡し要求と共に我が国に侵攻したプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル氏にメッセージを送りたいと思います。過日、様々な情報と共に我々に送られた、ロゴスに関するデュランダル議長のメッセージは、確かに衝撃的なものでした。ロゴスを討つ、そして戦争の無い世界にという議長の言葉は、今のこの混迷の世界で政治に携わる者としては、また生きる一個人としても、確かに魅力を感じざるを得ません。ですが、それが、」通信が乱れ、割ってミーアの画像が映し出される。 「私はラクス・クラインです。過日行われたオーブでの戦闘はもうみなさんもご存じのことでしょう。プラントとも親しい関係にあったかの国々、なぜジブリール氏を匿う等という選択をしたのか、今もって理解することはできません。ブルーコスモスの盟主、プラントに核を放つことも、巨大破壊兵器で街を焼くことも、子供達をただ戦いの道具にすることも厭わぬ人間を、なぜオーブは戦ってまで守るのでしょうか。オーブに守られた彼、私達はまた、捉えることができませんでした。」 そのミーアの言葉にため息をつくアスラン。「では、キラ、私も参りますわ。」その言葉に振り返るアスラン。「ラクス?」「大丈夫ですわ、アスラン。私には、もう迷いはありません。」 ストライクフリーダムで、カガリのいる政府官邸に向かうキラとラクス。 「私達の世界も、誘惑は数多くあります。よりよきこと、多くのものを望むことは無論、悪いことではありません。ですが、ロゴスは別です。あれはあってはならないもの。この人の世に不要で、邪悪なものです。私達はそれを、」 そこで通信が途切れる。 「その方のお姿に惑わされないでください。」そのラクスの言葉にテレビを観ていたシン達が驚く。カガリの方を見るラクス。「私はラクス・クラインです。」 「馬鹿な、なぜ彼女がオーブに。」突然のラクス登場に計算が狂うデュランダル。 |
PHASE - 44 | 二人のラクス | 「私と同じ顔、同じ声、同じ名の方がデュランダル議長と共にいらっしゃることも知っています。ですが、私、シーゲル・クラインの娘であり、先の大戦ではアークエンジェルと共に戦いました私は、今もあの時と同じかの船と、オーブのアスハ代表の元におります。彼女と私は違う者であり、その思いも違うということをまずは申し上げたいと思います。」 突然の本物のラクスの登場に混乱するシン、タリア、そしてその他ZAFTの兵士達。うろたえるミーア。「わたくしは、」と演説を進めようとするが、ラクスの言葉に遮られてしまう。 「私はデュランダル議長の言葉と行動を指示しておりません。」この言葉に不安な態度をとるミーアはさらに動揺を隠せない状況となっていた。 「こちらの放送を止めろ。」ミーアの状況が映り続けるのを不利とみたデュランダルは、それを止める指示をした。「は、しかし。。」「いいから止めるんだ。奴らの思惑に乗せられているぞ。」「はい。」 「戦う者は悪くない。戦わない者も悪くない。悪いのは全て戦わせようとする死の商人、ロゴス、議長のおっしゃるそれは本当でしょうか。」その言葉に、オーブより脱出し、月の地球連合軍ダイダロス基地に潜伏していたジブリールは笑みを浮かべる。「ははは、これは。」 なおも続くラクスの言葉。「それが真実なのでしょうか。ナチュラルではない、コーディネータでもない、悪いのは彼、世界、あなたではないのだと語られる言葉の罠にどうか陥らないでください。」 そこまで聴き、立ち上がって喜ぶジブリール。「これは良い、すぐにオーブの彼女と連絡を取れ。」だが、その瞬間、その思いは打ち砕かれる。 「でも私はジブリール氏を庇う者ではありません。ですが、デュランダル議長を信じる者でもありません。我々はもっとよく知らねばなりません。デュランダル議長の真の目的を。」 「ええい。」ラクスの演説を聴き、苦々しい思いを露わにするデュランダル。 この演説に世界は混乱していた。「そうだ、シャトルをもう1機、すぐに。」と指示するデュランダルの元にすごすごと舞い戻るミーア。「ごめんなさい。私、あの。」とデュランダルに誤るミーア。そのミーアを見る顔が非常に冷たいデュランダル。「いやぁ、とんだアクシデントだったよ。君も驚いただろうが、私も驚いた。すまなかったね。一体何故こんなことになったのか。。だが、これではさすがに少し予定を変更せざるを得ないなぁ。」 デュランダルの言うとおり、世界の混乱ぶりは明かにデュランダルの意図していた状況とは異なる方向に動きつつあった。以前シン達が解放したガルナハンの街でも、どちらが本物のラクスかを巡って混乱が起きていた。その人たちの前に出て力説するコニール。「みんな何言ってるんだよ。ZAFTは悪い奴らじゃないぞ。悪いのはロゴスと連合なんだ。オーブなんかそっちの味方じゃないか。」「ああ、そうだ。誰が俺たちを苦しめたのか。そして誰が解放してくれたのか。みんなもう忘れたのか?」落ち着きを取り戻しつつある民衆。だが一度崩れた信頼は、そう簡単に戻るものではないということを端々で伺い知ることができる。 「なに、心配はいらないさ。だが少しの間、君は姿を隠していた方がいい。」ミーアに言うデュランダル。「決して悪いようにはしないよ。君の働きには感謝している。」その時、ミーアはアスランが脱走する際に言っていた言葉を思い出していた。「君のおかげで世界は本当に救われたんだ。私も人々も。それは決して忘れはしないさ。だからほんの少しの間だよ。」 ミーアはシャトルに連れられていった。デュランダルはかねてからの予定通り、機動要塞メサイアに上がる準備に入る。「いや、しかし色々なことがあるものだ。だがもう遅い。既にここまで来てしまったのだからね。」 ミネルバ艦内でも今だ混乱収まらない様子。CICに戻ってきたタリアを待ち受けていたのは何か聞きたそうなアーサー。「あの、艦長。」「聞かないでよ。私にだって何がなんだか分からないわ。まあ一つはっきりしているのは、我々の上官はラクス・クラインじゃないってことよ。彼女から命令が来る訳じゃないわ。それを」 通信が入ったことを知らせるアラームがタリアの言葉を遮る。「艦隊司令部からです。ミネルバはカーペンタリアへ帰投後、月艦隊と合流すべく発進せよ。」 「今度はいきなり宇宙へ、ですか。」アーサーの疑問。その言葉にタリアは何も答えなかった。 ミーアの演説の混乱冷めやらぬ部屋より一人出てったレイを追いかけるシンとルナマリア。「レイ待てよ。」 「なんだ。」振り返り止まるレイ。 「あのオーブのラクス・クラインのこと、レイはどう思う?」率直に問いかけるシン。 「どうって?」 「いや、だから。」 「どっちが本物って話。」 「なんだお前まで。馬鹿馬鹿しい。そうやって我々を混乱させるのが目的だろう。敵の。おそらくみな、そうして真偽を気にする。お前のように。なかなか穿った心理戦だ。だが何故かな?何故人はそれを気にする。本物なら全て正しくて、偽物は悪だと思うからか?俺はそれはどうでもいい。」 「レイ!」 「議長は正しい。俺はそれでいい。」そう言って待機ルームに入っていくレイ。 「シン?」そうルナマリアに言われ、同じように入っていくシンとルナマリア。 シンは、先の戦いで出てきたアスランのことを思いだし、頭を抱えていた。それを見抜いているかのようにパソコンを持って現れるレイ。「それより俺たちは考えておかねばならないことが、他にあるだろう。」コンソールを叩き始めるレイ。「フリーダム、そしてアスラン・ザラ」 その言葉に驚くルナマリア。「アスラン?」 「ああ」 「アスランってどういうこと。」シンに食ってかかるように質問するルナマリア。 「生きてアークエンジェルにいる。」その言葉に驚くルナマリア。「この機体に乗っていたのは、奴だ。」 「じゃあメイリンも、メイリンも生きているの?」 「さあ、それは分からない。だが生きているとすれば、あの船に乗っている可能性もある。」 その言葉にシンを見つめ続けるルナマリア。シンはただルナマリアの顔を直視せず、半ば呆然としているだけであった。 宇宙では、地球連合軍が、廃棄コロニーを流用した、ビーム偏光ステーション、グノーの配置を進めていた。ダイダロス基地では軌道間全方位戦略砲、レクイエムのジェネレータが臨界に達するまでまもなくというところに来ていた。 「しかし、本当に撃つのですかな、あなたはこれを。」その問いにジブリールは強い口調で答える。「当たり前だ。その為にわざわざこちらへ上がったのだからな。」 「それは頼もしいお言葉だ。嬉しく思いますよ。ならば我々も懸命に働いた甲斐があるというもの。こんなところでもね。」 「ん?」聞き返すジブリール。 「最近は、必要だと巨費を投じて造っておきながら、肝心な時に撃てないという優しい政治家が多いのでね。それでは我々軍人は一体なんなのかと、つい思ってしまうのですよ。」 「ふん、私は大統領のような臆病者でも、デュランダルのような夢想家でもない。撃つべきときには撃つ。守るために。」 「なるほど。」 グノーの配置を進めるモビルスーツを沈めるため、ジュール隊が出動した。戦闘を開始するイザーク・ディアッカ達ZAFT軍と地球連合軍。その動きはまさにZAFT軍機動要塞、メサイアに入ろうとしていたデュランダルの元にも届けられていた。その情報を最優先にすることを指示するデュランダル。 グノーの動きを阻止しようとするイザーク、ディアッカ。だが、レクイエムを撃つ準備は既に完了していた。「照準は何処に。」「アプリリウスだ。決まっているだろう。これは警告ではない。」「照準、プラント首都、アプリリウス。」「目標点入力。最終セーフティー解除。全ジェネレーター、臨界へ。ファーストムーブメント準備良し。レクイエムシステム、発射準備完了。シヤー解放。カウントダウン開始。発射までG-35。」 「トリガーを回せ。」出てきたトリガーを握るジブリール。「さあ奏でてやろうデュランダル。お前達のためのレクイエムを。」トリガーのボタンを押すジブリール。 レクイエムの発射をキャッチするメサイア。「月の裏側に高エネルギー帯発生。こ、これは。」レクイエムのビームは、グノーと同じような偏光ステーションを通過する度に曲がっていく。そしてそのビームはジュール隊のいるグノーにも到達した。 「全軍回避!」指示するイザーク。その瞬間、ビームがグノーの中を通過し、その瞬間、ビームは曲がって別の場所へと進んでいく。「ビームが曲がった?」驚くディアッカ。 そしてそのビームは一直線にプラントへ。プラントのコロニーを焼き切っていくビーム。裂かれる大地。コロニーは壊滅状態へと陥っていった。 その惨状に騒然とするメサイア司令部。「これは、一体何が。」「こんな馬鹿な。」「どういうことだ。どこからの攻撃だ。一体何が起きたというのだ。」怒りを露わにするデュランダル。 ダイダロスでは、レクイエムのビームが狙ったアプリリウスではなく、ヤヌアリウスに直撃したことに、動揺していた。「ヤヌアリウス1〜4直撃、ディセンベル7、8、ヤヌアリウス4の衝突により崩壊。」「ヤヌアリウスだと?どういうことだ。」「グノーの斜角が計算外にずれたようです。戦闘の影響かと思われますが。」「ちっ、アプリリウスを撃ち損じるとは。」悔しがるジブリール。 目の前を通過していったビームに、未だ混乱が続くイザーク。「何だ、一体。」「ヤヌアリウスが。。ディセンベルもか。」ディアッカは攻撃を受けたコロニーの名前を繰り返す。「くそぉー。」コンソールを叩いて悔しがるイザーク。「月の裏側からまさかこんな方法で。」ディアッカが落胆しているとき、「ディアッカ!」と呼びかけるイザークの声が聞こえる。「こいつを落とす。2射目があったら今度こそプラントはおしまいだ。何が何でも落とすぞ。」グノーに対する攻撃を始めるジュール隊。 プラント本国への空襲は、カーペンタリアに入港していたミネルバの元にも届いていた。「艦長!」アーサーの声に走るタリア。そしてアークエンジェルにもその報は到着していた。「えっ?プラントが。」ミリアリアよりその知らせを聞き、驚くラミアス。 ヤヌアリウスが崩壊している画像は、あまりにもショッキングな映像であった。この映像が流れ、半狂乱に陥るミネルバのスタッフ。「なんで、なんでこんな。」呆然とするシンとルナマリアにレイが口を開く。「ジブリールだな。月の裏側から撃たれた。こっちがいつも通り、表のアルザフィルを警戒している隙に。。ダイダロスにこんなものがあったとは。」 「なんで?裏側からって。そんなの無理じゃない。どうやって。」レイに詰め寄るルナマリア。 「奴らは廃棄コロニーに、超大型のゲシュマイディッヒパンツァーを搭載して、ビームを数回に屈曲させたんだ。」 「そんな。」 「このシステムなら、どこに砲があろうと屈曲点の数と位置次第で、どこでも自在に狙える。悪魔の業だな。」 「そんな、そんなことを。」 「ジブリールを逃がした、俺たちの責任だ。」レイの言葉に驚きの表情を浮かべるシン。 「ジブリールを逃がしたって、それは。」シンはインフィニットジャスティス、ストライクフリーダム、そしてアークエンジェルのことを思い出していた。 「なんであれ、俺たちは撃てなければならなかったんだ。」 ブースターを搭載したミネルバ。「みんな連戦で疲れていると思うけど、正念場よ。ここで頑張らなければ帰る家がなくなるわ。いいわね。」タリアの言葉に「はい。」と答えるブリッジのスタッフ。「機関最大。ミネルバ発進します。」宇宙に向けて飛び立つミネルバ。 「同じだ。ゼニスの時と。もうどうにもならない。」アスランのつぶやきにキラが続ける。「うん。プラントはもちろんだろうけど、こんなのもう、きっとみんなが嫌だ。」 「でも、撃たれて撃ち返し、また撃ち返されるというこの戦いの連鎖を、今の私達には終わらせる術がありません。誰もが幸福に暮らしたい。なりたい。そのためには戦うしかないのだと、私たちは戦ってしまうのです。議長もおそらく、そんな世界に全く新しい答えを示すつもりなのでしょう。議長の言う戦いのない世界、人々がもう決して争うことのない世界とは、生まれながらに、その人の全てを遺伝子によって決めてしまう世界です。おそらくも。」 ラクスの言葉に驚くアークエンジェルブリッジのみんな。「遺伝子で?」ラミアスが驚きの声をあげる。 「それがデスティニープランだよ。」キラが言葉を補う。 「生まれついての遺伝子によって人の役割を決め、そぐわない者は淘汰、調整、管理する世界だ。」アスランもその後に続ける。 「淘汰、調整?」 「そんな世界なら確かに、誰もが本当は知らない自分自身や未来の不安から解放されて、悩み苦しむことなく生きられるのかもしれない。自分に決められた定めの分だけね。」 キラが続ける。「望む力を全て得ようと人の根幹、遺伝子にまで手を伸ばしてきた僕たちコーディネーターの世界の究極だ。」 「そこにおそらく戦いはありません。戦っても無駄だと。あなたの定めが無駄だと言うと、皆が知って生きるのですから。」締めるラクス。 ネオがしゃべる。「そんな世界で、奴はなんだ。王か?」 「運命が王なのよ。遺伝子が。彼は神官かしらね。」ラミアスが答える。 「またか。」つぶやくアスラン。 「本当に無駄なのかな。」 キラの言葉に答えるネオ。「無駄なことはしないのか?」 「俺は、そんなに諦めが良くない。」アスランが強く言う。 「だよね。」キラがアスランの言葉に答える。 「私もだ。」カガリが言う。 「俺も、かな。」ネオもそう言う。ネオにのぞき込まれながら、ラミアスも言う。「そうね、私も。」 そしてメイリンが私もというようなポーズを見せる。 「宇宙に上がろう、アスラン。僕たちも。」 「キラ。」 「議長を止めなきゃ。未来を作るのは運命じゃないよ。」 「ああ。」キラに手を差し出すアスラン。その手を力強く握り返すキラ。 目指すはメサイア。目を瞑り、椅子に深く腰掛けるデュランダル。 |
PHASE - 45 | 変革の序曲 | プラント市内は突然の攻撃によりパニック状態へと陥っていた。「分かっている。だがそれを押さえるのが仕事だろ。泣き言を言うな。」市内の報告をメサイア司令室で聞きながら、指示を出すデュランダル。ZAFT艦隊はレクイエムの第2射を阻止すべく、月に向けて進軍を開始していた。 ZAFT艦隊の動きを睨みレクイエムの再チャージを急がせるダイダロス司令。「レクイエム再チャージ急げ。」「守り切れよ、今度こそアプリリウスを葬るんだからな。」檄を飛ばすジブリール。 「それも分かってはいるが、そうしている間に2射目を撃たれたらどうする。」「何か和解、停戦の手段などは。」「停戦?相手は国家ではないんだぞ。テロリストとどんな交渉ができるというんだね。力に屈服しろというのか。」 月の表側、地球連合軍アルザッヘル基地からは、ZAFT艦隊を迎え撃つべく、第8機動艦隊が出撃していた。ダイダロス基地からも、防衛を確実にするため、第3機動艦隊が飛び立っていった。 「もう絶対にプラントは撃たせん。」イザークが指揮するジュール隊は、月に向け針路を取るゴンドアナ隊と合流すべく、機能を停止させたグノーを後にして、動き始めた。 宇宙への発進準備が進むアークエンジェル。怪我でありながらも準備作業を手伝うアスラン。「アスラン、手伝うよ。」そんなアスランに声をかけるキラ。「こっち終わったから。」「いや。」そういうアスランを押しのけてコンソールに向かうキラ。「また無理すると疲れるよ。」そのキラの言葉に「すまない。」と言い、近くに座り込むアスラン。「どこから?デンバシーケンサーの設定は?」「プロシジャー2なら進行中だ。」コンソールを忙しく叩くキラ。その後ろでは、収容されたアカツキが、デッキに固定されようとしていた。 「どうなってるんだろうな、プラントの方は。」つぶやくアスラン。 「うん、ZAFTだって絶対、これ以上のプラントの攻撃は防ぐと思うけど。。。」 「ああ。」 「もどかしいね。今は何も出来ないって分かっててもさ。」 地球の重力圏を離脱しつつあるミネルバ。そのミネルバに司令部から通信が入る。「既にゴンドーラを中心とする月機動艦隊は、ホーレ第一中継点にて交戦中。ミネルバは合流予定を変更し、直ちに敵砲本隊に向かわれたしって、えー。」その司令内容に声を上げるアーサー。 「砲の本隊を俺たちだけでですか。」内容を聞き、タリアに尋ねるシン。 「だけかどうかは分からないけれども、ともかくこれが本艦への命令よ。」シンの質問に答えるタリア。 「確かにここからではダイダロス基地の方が近い。そういう判断でしょう。」レイが軌道図を見ながら言う。 「ええ。あれのパワーチャージサイクルが分からない以上、問題は時間、ということになるわ。駆けつけたところで間に合わなければ、何の意味も無いものね。」 「敵が月艦隊に意識を向けているのなら、うまく行けば陽動で、奇襲になるということですね。」 「そういうことよ。」見合わせるシンとルナマリア。「奇襲。。」つぶやくシン。「厳しい作戦になることは確かよ。でも、やらなければならないわ。いい?」 タリアの問いかけに「はい、分かりました。」と答えるレイ。「あ、はい。俺も。」続くシン。そして力強く頷くルナマリア。「また、あれを撃たれるのなら、もう絶対あってはならないことですから。」 「頼むわね。」タリアの言葉に「はい。」と返事をする3人。 月艦隊は、レクイエムの第一中継点への取り付きを急いでいた。その中で奮戦するイザークとディアッカ。 「第2射までに、月艦隊が第一中継点を落とせれば、かろうじてプラントは撃たれない。だが、奴らのチャージの方が早ければ、艦隊もろともなぎ払われるぞ。トリガーを握っている奴がそういう奴だということは、知っているだろう。」 レイの言葉に答えるシン。「ああ、分かってるさ。全ての元凶はあいつさ。ロゴスのロード・ジブリール。」 「私がオーブで撃ててれば。」後悔の言葉をつぶやくルナマリア。 「ルナのせいじゃないさ。悪いのは匿ったオーブだ。そんな風に言うなよ。」 「なんであれ、時は戻らない。そう思うんなら同じ轍は踏むなということだ。」「レイ!」レイの言葉に怒りを露わにするシン。「分かってるわ。」シンを押さえるかのように答えるルナマリア。「そうさ、プラントも月艦隊ももう絶対に撃たせはしないからな。」 「では、作戦を話そう。」シンとルナマリアに対して作戦を説明し始めるレイ。 「レクイエム稼働率50%。」 その報告を聞き、満足気なジブリール。「よぉしいいぞ。クォーレさえ守りきれば我々の勝ちだ。これでようやく終わる。長きに渡る奴らとの戦いも。」「左様ですな。」「今まで誰も出来なかったことを私は成し遂げる。歴史はようやく正されるのだ。あと数時間で。」 そのジブリールがいるダイダロス基地に、まもなく到着しようというミネルバ。コンディションレッドがついに発令された。レイの作戦説明も終了しようとしていた。 「ではいいな、ルナマリア。タイミングを誤るなよ。」 「ええ。」 「あ、いや、でも。」 「俺たちも可能な限り援護はする。だが基本的には当てにするな。すれば余計な隙ができる。」 「レイ!」レイの冷たい言葉に思わず口を挟むシン。 「分かってるわ。ご心配なく。」 「では行こう。今度こそ失敗は許されないぞ。」さっさと出て行こうとするレイ。 後に続こうとするシンに声をかけるルナマリア。「シン。」その様子を見て、「急げよ。」と言葉を残し、エレベータに一人で乗って出て行くレイ。 シンの首に腕を回すルナマリア。「気をつけて。」「ルナこそ。」ルナマリアを強く抱きしめるシン。 「でもやっぱり駄目だよ。」シンの言葉に「えっ?」と聞き返すルナマリア。「ルナが一人で砲のコントロールを落とすなんて危険すぎる。」「シン。」「やっぱりそれは俺かレイが。」そう言って出て行きそうな勢いのシンを止めるルナマリア。「シン。」腕に抱きつかれて、振り返るシン。 「同じ事よ。陽動で基地を撃つのだって、同じくらい危険だわ。みんな一緒よ。大丈夫よ。私は。。信じてよ。」 「ルナ。。。」「シン達こそ」と話し始めたルナマリアに抱きつくシン。抱きついたまま待機ルームを漂う2人。 「大丈夫だ。」デッキへ向かうエレベータ内でシンはルナマリアに話しかける。「ルナも船もプラントも、みんな俺が守る。絶対に。」その言葉に優しい表情で頷くルナマリア。 先行して発進するルナマリアのインパルス。インパルスを発進させた後、陽動作戦を開始するミネルバ。 「10時方向より接近する艦影あり。距離50、ZAFT軍ミネルバです。」その報告に驚くジブリール。「ミネルバだと?」「馬鹿者!何故今まで気づかなかったのだ。警報、スクランブルだ。ただちに迎撃を開始せよ。」悔しい表情を露わにするジブリールの横で、素早く指示を出す基地司令。 スクランブルにより、ミネルバ目がけ、押し寄せてくるモビルスーツ。それらを迎え撃つべく、デスティニーとレジェンドが発進する。陽動にひっかかった地球連合軍は、今だ近づくインパルスの存在に気づいていない。単機で密かにダイダロスに近づくルナマリア。 「議長、ミネルバがダイダロスに。」その報告に喜ぶデュランダル。「そうか。来てくれたか。」「はい。」「彼らに期待して祈ろう。戦闘の情報は随時市内へ流してくれ。ありのままを全て。コロニーで戦う彼らのことも。」「え、いえしかしそれでは。」「大丈夫だ。混乱など起きやしないよ。皆知りたいはずだ。自分の運命を。その行く末を。そしてその権利もあるはずだ。」「はっ。」 デスティニーとレジェンドを落とせない地球連合軍。ついには虎の子のデストロイ3機を投入してきた。さすがに3度目ともなると、手慣れているシンとレイ。いとも簡単にデストロイを血祭りに上げていく。 その頃、ダイダロスにあと一歩と近づいたルナマリアも行動を開始。攻撃を始めたインパルスの存在は、ダイダロス司令部でもキャッチされていた。その他から上がってくる報告も不利と思われるような内容ばかり。レクイエムの稼働率は61%。ジブリールは指示を出す。「レクイエム発射だ。フルパワーでなくとも良い。撃て。奴らをなぎ払うんだ。」 「駄目です。ホーレに異常発生。ポジション取れません。」 この報告に落胆の色を見せるジブリール。「駄目ならそれでも良い。ホーレの奴らだけでも。」 「それでは終わりです。次のチャージまではとても。」ジブリールに進言する基地司令。 「いいから撃て。その隙に脱出する。」急に小声となるジブリール。「私が生きてさえいれば、まだいくらでも道がある。基地を降伏させ、同時に撃つ。言い訳はいくらでもつく。君はよくやってくれた。共にアルザッヘルにでも逃げよう。また。」 囲まれ、窮地に陥っていたインパルスを助けるシン。「シン!」「行け!指揮所はもうすぐそこだ。ルナは絶対討たせはしない。」「有り難う」コントロールに向かうルナマリア。 「あれが。」一直線にレクイエムのコントロールに向かうルナマリア。 「シン!俺たちは基地の司令部を。」ルナマリアがコントロールに向かったのを見届け、レイと合流するシン。開くレクイエムの砲台。それを見て怒るシン。ダイダロスの基地司令部へとデスティニーを向かわせる。 その頃ジブリールは脱出を図るためにガーティ・ルーに乗り込んでいた。 レクイエムの集束口にたどり着いたルナマリア。「これね。」 「カウントダウン開始。発射までT-35。」それを聞き立ち上がる司令。「よぉし。全周波数で回線開け。トリガーはこちらに。」 レクイエムのコントロールを攻撃するルナマリア。そしてほぼ同じタイミングでダイダロス基地司令部を攻撃するシン。 脱出するために月面に現れたジブリールの乗るガーティ・ルー。それを待ちかまえていたレイ。レジェンドのドラグーンが、ガーティ・ルーに襲いかかる。ジブリールもろとも沈むガーティ・ルー。ついにジブリールは倒れた。 「有り難う、ジブリール。そしてさようならだ。」静かにつぶやくデュランダル。 アークエンジェルデッキ。月を一人見つめるアスラン。「アスラン、ここにいたの。もう寝ないと傷に障るよ。朝には発進なんだから。」 キラに言われ、「ああ。」と答えるアスラン。「ここはこんなに静かなのになぁ。なんで俺たちはずっとこんな世界にいられないんだろう。」 「それは、夢があるからじゃない。」キラの言葉に、そちらの方を見るアスラン。「願いとか、希望とか。悪く言っちゃうと欲望?」 「お前。」 「でも、そういうことでしょう。ああしたいとか、こうなりたいとか、みんな思うからここにいられないんだ。アスランだってそうじゃない?僕もそうだし。カガリやラクスもみんなそうだと思うよ。」 「そして議長の言う世界には、それがない。」 「うん。ある意味、ずっとここにはいられるよ。だが、ずっとここにいろってことでしょう。」 「そうだな。」 「それなら確かに何も起きないから、こんな戦争も起きないだろうけど、でも僕は。」 「俺もいや。」 「これってわがまま?」 「かもしれない。でも、だから人は生きてきたんだろう?長い時の中をずっと。」 「うん。」 「難しいなぁ、戦ってはいけないのか、戦わなきゃいけないのか。」 「うん。みんなの夢が同じだといいのにね。」 「いや、同じなんだった。」シンを思い浮かべ、そのように言うアスラン。「えっ?」と聞き返すキラ。「でも、それを知らないんだ。俺たちはみんな。」 翌朝。アークエンジェル。クルーを前にカガリが話す。 「月の情勢も、まだあまり詳しいことまでは分かっていない。時期が時期なので何のトラブルもなくとは保証できないが、アークエンジェルには正式にオーブ軍第2宇宙艦隊所属として、出来る限りのサポートを約束する。プラントの受けた大きな被害もあって、今やデュランダル議長は世界最強のリーダーだ。どうしても彼は正しく、全てを知って揺るがなく見える。だが我々と同じく、その強大な力を危惧する国もある。オーブは何より望みたいのは平和だが、だがそれは自由、自立での中でのことだ。屈服や従属は選べない。アークエンジェルもその守り手として、どうか力を尽くして欲しい。」 続いてラミアスが口を開く。「本艦はこれより月面都市、コペルニクスに向かい、情報収集活動の任に就く。発進は30分後。各員部署に着け。」散るスタッフ。 「ロアノーク一佐、アカツキを頼むな。」ネオに言うカガリ。「お任せを。」力強く返事をするネオ。そしてカガリは催促されるようにその場を後にする。カガリを遠くで見送るアスラン。「アスラン。」と声をかけてくるキラ。「いいんだ。今はこれで。焦らなくていい。夢は同じだ。」そう答えるアスラン。 カガリが戻る途中、メイリンと出会う。話しかけるカガリ。「一緒に行くそうだな。」「あ、はい。」「あいつ、頼むな。」その言葉に「えっ?」と聞き返すメイリン。「私は一緒に行けないから。。無事を祈る。」そう言って歩き始めるカガリ。目に涙をためながら。 「では、参りましょう。艦長。」ラクスの言葉に頷くラミアス。「アークエンジェル、発進します。」 海面を離れ、静かに上昇していくアークエンジェル。 |
PHASE - 46 | 真実の歌 | 地球統合軍制圧後の報告を聞くデュランダル。「同様の中継コロニーはあと3機ありました。制圧はもう全て混乱なく行われました。」 その報告を受け、デュランダルがつぶやく。「すると全部で5機か。」 「信じられん、あってはならぬ見落としだぞ。」 「はあ。」 再びデュランダル。「確かな。敵も巧妙だったが、こちらも地上に気をとられすぎていたようだ。それらは一旦月軌道にでも集めておいてくれ。処分は後ほど検討する。ダイダロス基地の方は?」 「ご指示通りローランの隊を向かわせてあります。もう到着するころだとは思いますが。」 「そうか、有り難う。ならばもう、ミネルバと月艦隊は休ませてやってくれ。連戦で彼らもきっとくたくただろう。」 「はい。」 一通りの指示が終わり、側近がデュランダルに話しかける。「でも、本当によくやってくれました。月艦隊もですが、特にミネルバはすばらしい。」 「ああ、おかげでようやく終わったかもしれない。またも脱出を図ろうとしたジブリールを、今度こそ討ったという報告もあるからな。まだ大西洋連邦大統領がアルザッヘルにいるという情報もあるが、もう軍を動かすということはあるまい。」 「はい。」 「しかし愚かなものだな。我々も。」 「はあ?」 「まさかそんなことにはなるまいという安易な思いこみが、とてつもない危機を生むということは、既に十分知っていたはずなのに、今度のことをまたも未然に防げなかった。」 「本当に面目次第もございません。」 「いや、君たちを責めているわけではないよ。私もまた詫びねばならぬ立場だ。失われてしまった多くの命に。だがそう思うのなら、今度こそ本当に、もう二度とこんなことの起きぬ世界を創らねばならん。それが亡くなった人々へのせめてもの償いだろう。」 「はい。」 休みとなったミネルバでは、レイに誘われ、シンは射撃練習をしていた。そのシンを見ているルナマリア。それに気づいたシンは、練習を止め、ルナマリアに会うため、外に出て行く。 「なに?どうしたの。」 シンのその言葉に苛立ちを隠せない様子のルナマリア。「何じゃないわ、もう。やっと休息になったのに何でいきなり射撃訓練なの?」 「え、だって俺もう寝たし、レイがやるっていうから。」 「あっそう。」素っ気なく立ち去ろうとするルナマリア。それを追うシン。 「ルナ、何怒ってるんだよ。」 「別に怒ってなんかないわよ。」 「怒ってるだろうが。」 その言葉に、ルナは諦めた様子。「もういいって。」そう言ってシンに背を向ける。 「良くないだろう。訳分かんないよ。」行こうとするルナマリアを引き留めるシン。 「ちょっと話したいと思っただけよ。あのときはバタバタしていたから、アスランとメイリンのこと。でも、もういい。言いたかったのは気にしないでっていうことだけだから。生きてるかもって思うと、私もなんだか落ち着かないけど、でもシンは悪くないから。」 「ルナ。。」 「命令だったの分かってるし。疑いは晴れてないんだし。だから気にしないでってそれだけ。ごめんね。」それだけ言って立ち去っていくルナマリア。シンは「ルナ。」と声を出し、止めようとしたものの、それ以上追おうとはしなかった。 アークエンジェルは月面都市コペルニクスへ入港していた。 「じゃあ、僕がやられたインパルスのパイロットは、そのシンっていう子だったんだ。」アスランから話を聞いているキラ。 「ああ、そうだ。あいつが今デスティニーに乗っている。」キラの言葉に答えるアスラン。 「デスティニー。。」 「でもあのときは正直驚いたよ。お前がシンにやられるとは思っていなかったからな。」 「あれは、僕もZAFTと戦っていいのかどうか迷ってたから。カガリもいて何とか逃げ切りたいと思っていて。」 「アークエンジェルも撃たれて、本当驚いたよ。でも、だからはっきり分かったのかもな。これはおかしいって。」 「アスラン。」 「議長やレイが厄介なのはそこなんだ。話していると彼らの言うことは本当に正しく聞こえる。」 「だよね。それは分かる。実際正しいんだろうし。」 「シンも、そこから抜け出せないんだ。おそらく。あいつも夢があって、そのために頑張る奴だから。」 「そうか。」 コペルニクスには、隠遁生活をおくるミーア・キャンベルがいた。特に何もやることがなく、滞在先の別荘のプールサイドで、自分の歌を口ずさみながら散歩をするミーア。思い出すのはラクスの言葉。(その方のお姿に惑わされないでください。私はラクス・クラインです。)そして、歌手を目指していた頃のラクスに化ける前の自分。それを振り払うかのように頭を激しく振るミーア。頼みにしているのはあのときの議長の言葉(なあに心配はいらないさ。ただ少しの間、君は姿を隠していた方がいい。決して悪いようにはしないよ。君の働きには感謝している)。 「そうよ私、だったあれはみんな私だもの。あの人じゃない。私がやったんだもの。」ラクスとして過ごしていた絶頂期を思い出すミーア。 だが、それと同時に、アスランの言葉が脳裏をよぎる。(だが君だって、ずっとそんなことをしていられる訳ないだろう。そうなればいずれ君だって殺される。) 「そんなはずない。そんなこと絶対ない。」自分に言い聞かせるミーア。その時、ミーアを呼ぶ声。デュランダルが付けたミーアの世話係の声である。 お茶を給仕する彼女に尋ねるミーア。「議長からはまだ何も?」 「はい。残念ながらそれは。でも仕方ありませんわ。今プラントは本当に大変ですもの。それはラクス様も良くご存じでしょう?」 「ええ、分かってるわ。そんなの分かっている。でも。」不機嫌そうに答えるミーア。 「本当に今はまだ、色々と情勢が難しいのです。このコペルニクスにも先刻アークエンジェルが入港したという話ですしね。」 「アークエンジェル?」 「ええ。どういうことでしょうね。こんな時に月に上がって来るなんて。やはりあの方も一緒なのでしょうか。ほら、オーブから自分はアークエンジェルと共にいると言っていたあの方ですわ。」 「え、ええ。」うろたえるミーア。 「本当に困ったものですよね。あの方にも。あれではせっかくの議長の努力も台無しですわ。何故あんな事をなさるのか。ラクス様って本当はそういう方ではありませんでしょう。ラクス様という方は常に正しく平和を愛し、けれども必要な時は私たちを導いて共に戦場を駆けてもくださる、そんなお方ですよ。だから私たちもお慕いするのです。そうでないラクス様なんて、それは嘘ですわ。」 その言葉に衝撃を受けるミーア。「嘘?」 「私は開戦の折からずっと議長のお側で頑張ってくださった方こそが本当のラクス様だと思っています。」 「あなた。」 「サラとお呼びくださいな、ラクス様。お力になりますわ。今はそうでなくては皆困るのですから。そうでしょう、ラクス様。」 その言葉に混乱するミーア。頭を抱え込んでしまう。たたみ掛けるようにしゃべりかけるサラ。「さあ、お茶をいただいて。もう少しお話しましょう。きっと良い考えが浮かびますわ。」 アークエンジェルでは、ラクスが、キラ、アスラン、メイリンの護衛を伴い、外に出ることとなった。「もう本当に久しぶりですわ。外に出るのは。もう何ヶ月も船の中に。」そのラクスの言葉に、「そうなんですか?」と聞き返すメイリン。「はい。先日まではずっと宇宙でしたし、その前は海底で。仕方のないことだと分かってはいますが。さすがにちょっと。」 4人で出かけていくキラ達を見送るラミアス。それを見て、話しかけるネオ。「本当にいいのか奴らだけで。」「大丈夫よ。ちょっと市内に出るだけですもの。ガードもしっかりしているし。」「いや、そうじゃなくて。あんたはいいのか?」「えっ?」意外な質問に聞き直すラミアス。「ちょっと外の空気吸いたいっていうのなら喜んでお供しますけど。」「え?」「ずっと船の中じゃあんただって辛いだろ?大変な立場だし。」「ふっ、有り難う。でも大丈夫よ。私はここで。」「じゃ、今は艦内をエスコート。」そう言ってラミアスの腰に手を回すネオ。「あ、お風呂入んない?一緒に。」「はっ、ちょっと。なんかやっぱ別人なんじゃない?」「ええ、そう?」 市内に出てきたラクス達をずっと監視するZAFTの諜報部員。そんなことを気にせず、ラクスとメイリンはウィンドウショッピングを楽しんでいた。そんな2人からちょっと離れてガードをしているキラとアスラン。「そんなに怒んないでよ、アスラン。」アスランに話しかけるキラ。「怒っちゃいないさ。ちょっと呆れているだけだ。」「おんなじじゃないか。」「だってお前なぁ、ラクスは。」 そのアスランの声に気づき、返事をするラクス。「はい?」「何でもないよ。」とラクスに返事をするキラ。「そうですか。」と再びウィンドウショッピングを楽しむラクス。「大丈夫だよ、アスラン。もう僕も、ラクスも。だからそんなに一人で頑張んなくていいから。ねっ。」そのキラの言葉に不機嫌そうに答えるアスラン。 試着をして楽しんでいるところに、突如ミーアのハロが現れた。ラクスの所に飛び込むハロ。「これ、ミーアの。」駆け寄るアスラン。そのハロにはメッセージカードが付けられていた。「Help!! I'm going to killed, Ms. Lacus! MEER」というメッセージと簡単な地図が。 「なんか、思いっきり罠ですね。」メイリンがぼそっと言う。 「ああ、だが放ってもおけない。くそぉ。それも見越してしかけている。」アスランが言う。 「この子は?」アスランに尋ねるキラ。「ミーア・キャンベル、議長のラクスだ。お前はラクスを守って、すぐに船に戻れ。」キラに命令するアスラン。「え?」と聞き返すキラ。 「ああ、いや。応援を呼ぶ。ちょっと待て、どこが狙いか分からない。」ポケットより携帯電話を取り出し、応援を呼ぼうとするアスラン。 「私も参りますわ。」そのラクスの言葉に「はあ?」と思わず聞き返すアスラン。「ばかな」と言いかけるが、ラクスの言葉に遮られる。 「この方が呼んでいるのは私です。」 「だが。」 「どこかでいずれ、ちゃんとしなければならないことですから。ね、キラ。」 キラは何も答えない。「キラ。」とアスランが説得して欲しそうに呼びかける。 「私はお会いしたいですわ。彼女に。」 「分かった。じゃあともかく、船には連絡して。」 キラの言葉に「お前」と反論するアスラン。 「大丈夫だよ、アスラン。罠だと分かってるんだし。みんないるし。ねっ。」そのキラの言葉に頭を抱えるアスラン。 「有り難う、キラ。」 「ううん。でも、気をつけて。」 野外劇場がミーアの指定した場所だった。一人客席で待つミーアの元にハロが戻る。それに気づくミーア。アスランが小声で呼びかける。「ミーア。」 「アスラン?アスラン。」アスランの元に駆け寄っていくミーア。 「ちっ、あの馬鹿。舞台へ誘えと言っておいたのに。」段取りと異なる動きをし、文句を言いながら移動するサラ。 「アスラン、あなた生きて」と駆け寄ろうとした瞬間、「そこで止まれ」と銃を構えるアスランに制止させられるミーア。 「メッセージは受け取った。罠だということも分かっている。だが最後のチャンスだ、ミーア。だから来た。」 そのアスランの後ろから現れるラクス。その姿を見て、「ラクス様」とつぶやくミーア。 「こんにちはミーアさん。初めまして。お手紙には助けてとありました。殺されると。なら、私と一緒に参りましょう?」 ミーアは今までやってきた自分の事を思い出す。「あれは私よ!あたしだわ。」その叫びに驚くアスラン達。 「ミーア落ち着け。大丈夫だ。だから。」手を差し出すアスラン。 「私がラクスだわ。だってそうでしょう。声も顔も同じなんだもの。あたしがラクスで、何が悪いの。」銃を撃とうとするミーア。だが、その銃はアスランが撃ち落とす。 「ミーア!もう止めろ。君は。」 「名が欲しいのなら差し上げます。姿も。でも、それでもあなたと私は違う人間です。それは変わりません。」そのラクスの言葉に愕然となり跪くミーア。「私たちは誰も、自分以外の何にもなれないのです。でも、だから私もあなたもいるのでしょう。ここに。だから出会えるのでしょう。人と。そして自分に。あなたの夢はあなたのものですわ。それを歌ってください。自分のために。夢を人に使われてはいけません。」 そんなラクスをサラの銃が狙っていた。そこに現れるトリィ。トリィの登場でサラを発見し、すぐにラクスを庇うアスラン。狙撃銃でラクスを狙うサラ。ラクスを物陰に隠すアスランとキラ。そしてアスランは、しゃがみ込んでいるミーアを連れ、物陰に隠れた。 「何人だ?知ってるか?」ミーアに尋ねるアスラン「分かんない。」取り乱しているミーアは、何も分からない様子であった。 恐怖に震えるミーアに、ラクスが近寄り、励ます。「ミーアさん、大丈夫ですわ。ねっ。」 先行するアスランの正確な射撃に、次々と倒される諜報部員。そして、サラも投げ込んだ自分の手榴弾が押し戻され、その爆発で倒れる。そこにネオの乗るアカツキが到着する。 「大丈夫か?坊主ども。」 「遅いです、ムウさん。」 「はあ?」 「ラクス達を早く。」 「ああ、分かったよ。」 戻ってくるアスラン。「大丈夫か?」「ああ、なんとか。」と答えるキラ。「本当に君も。いつもゴメン。」メイリンに謝るアスラン。「いえ、はい。まあ。」なんて答えたら良いか分からないメイリン。 「さあ、お姫様。」アカツキの手に乗ろうとするラクス。その時、爆風で倒れていたサラが、ラクスを撃とうと銃を構えていた。 「さあ、君も。」キラがミーアに手を差し出す。ためらい、そして手を出そうとするミーア。その瞬間、ラクスを狙おうとしているサラに気づく。「危ない。」 銃声。撃たれたのは、ラクスを庇ったミーアだった。すぐさま、サラに銃を発砲するアスラン。サラは力尽きた。 「ミーアさん。」ミーアを抱きかかえるラクス。 「私、わたしのうた。」ポーチから1枚の写真を取り出すミーア。「いのち。どうかわすれない。。」そこにはラクスに変身する前のミーアが写っていた。「明るい、優しいお顔ですわ。これがあなた?」そのラクスの言葉に頷くミーア。 「ミーア。」駆け寄ってくるアスラン。そちらの方を向くミーア。「もっと、ちゃんとお会いしたかった。みんな。」涙を流すミーア。「ごめんなさい。」そう言って意識を失うミーア。「ミーアさん。」「ミーア。」ラクス、そしてアスランの呼びかけにも反応しないミーア。 「くそぉ。」地面に正拳を突きおろし、悲しむアスラン。 そして、悲しみの中、何を思うか、遠くを見るラクス。 |
PHASE - 47 | ミーア | アークエンジェルに運ばれたミーア。ぐったりしたミーアを静かに抱きかかえて運ぶアスラン。それを見守るみんな。 「ラクスさんを庇って?」「ああ。あの娘だけだ。気づいていたのは。飛び出して。俺の機体の手の上だったっていうのに。情けないぜ。」 安置室で寝かされるミーア。ミーアを見つめるアスラン、キラ、そして少し離れ、ややうなだれた様子で座るラクス。 「プラントの娘だよね。名前の他は?」尋ねるキラ。 「いや、わからない。何も聞かなかったんだ。俺は。」 ラクスは、ミーアの遺品を調べていた。ポーチの中の一番上にあったリップスティックを見つめるラクス。そしてあるディスクの存在に気づく。「これは。」そのラクスの声に振り返るキラとアスラン。 ディスクを再生してみるみんな。 「10月11日。今日やっと包帯がとれた。なんだか不思議な感じ。鏡を見たら、そこには本当にラクス・クラインの顔が写っていた。」 「これ。」「ミーアの。」「日記、ですか?」 「ふしぎ、ふしぎ。だってこれはもう、どこからどうみたってラクス・クラインだわ。大ファンの私が言うんだもの。間違えない。それでいこう。身代わりなんて仕事、本当に大変だろうけど、あたし頑張る。絶対バッチリやってみせるんだから。声は大丈夫。元々似てるって言われてたんだし。問題はしゃべり方とか仕草よね。ラクス様は歌われる他はほとんどメディアに出ないから。普段が全く分からない。演説の時みたいにいつも凛々しいのかな。んーそんなことないよね。ラクス様だって女の子なんだし。化粧品とかどこの使ってるんだろう。できればそこまでちゃんと調べておいて欲しいんだけどな。」 ラクスは、そこで、ミーアのポーチよりこぼれ落ちたリップスティックを見つめた。 「お仕事は本当にある日突然やってきて、夢だったデビューとはちょっと違ったけど、でも考えてみれば、これってそれよりすごいことよね。私、ラクス様みたいになりたいってずっと思ってたんだし。本当にあたしになんかできるのかなって心配は心配だけど、でもずっとここで夢見てるよりいいじゃない?先の事なんて分かんないんだもの。なんでもまずはやってみなくちゃね。よぉし、頑張るぞ。」 「ラクス様のお仕事は、まずは歌うこと。じゃなくて、プラントや世界の平和のために、色々な活動をすること。大変なんだろうなぁとは思ってたけど、やっぱり大変。昨日はついにギルバート・デュランダル最高評議会議長、わぁ、呼ばれて、少しお話を聞いたけど、なんだか地球にユニウスセブンが落ちちゃったとかで大変なんだって。本物のラクス様は今はプラントにいらっしゃらないというし、もしかしてマジ私の出番なわけ?こんなに早く?わぁーだったらどうしよう。」 そしてアスランと出会った日。 「今日は、今日はもう大変。やっぱりいよいよやんなきゃなんなかったし、アスランよアスラン。アスラン・ザラ。議長はそのうち会えるよって言ってたけど、すっごい。本当に会えるなんて。やっぱり真面目そうで格好良くて、素敵な人。戦争のせいか今日はずっとブスッとしてたけど、でもお父さんを裏切ってラクス様のところへ行っちゃった人だものね。ラクス様には優しくて、ラブラブなんだろうな。うー、ミーアも仲良くなりたい。」 コンサートが始まり、そしてメディアへの露出が始まったミーア。そして慰問活動も始まった。 「お仕事の方は本格的に始まって、ちょっと緊張。大変。戦争の中でお仕事するのって、本当はとっても大変なのね。でも、みんな本当にラクス様のことが大好きなのね。すっごく大事にしてくれる。私、嘘だからちょっと気が引けるけど、でもみんなを励ましたいって気持ちは嘘じゃない。頑張らなくちゃ。ラクス様のように。ラクス様のように。私の声もみんなに届きますように。早く戦争が終わるように、みんな頑張ろうぜ。」 ディオキアへの慰問。そこでアスランとの再会。 「アスランと会うのも久しぶり。ちょうどミネルバが入港していてラッキー。でもアスランって結構おかしい。婚約者なんだから、もうちょっとそれらしくてもと思うんだけど。やっぱしラクス様一筋なのね。でも、こんな人とマジラブラブだったらいいよね。」 「慰問のコンサートはどこに行ってもすごい人。地球の人もみんな待っていてくれて、本当に嬉しい。私用のピンクのザク、初めて見た時にはもう感動しちゃったよ。私ももっと頑張らなくちゃ。」 次第に熾烈を極めるZAFTと地球連合軍の戦争。 「でも、戦争はなかなか終わらないし、結構たいへんよね。議長の言っていることは正しいんだから。みんなちゃんとそれを聞けばいいのに。」 「連合のやっていること、確かにちょっとひどすぎ。私だって許せないと思う。今の私の言葉はラクス・クラインの言葉。本当にこれで世界が変わるのなら、ああ、どうか変わって。みんなどうか私の声を聞いて。」 アスランはここまで聞いて、部屋を出て行く。それを追いかけるキラ。ラクスはその後を聞き続ける。 「このごろはつくづく思う。この仕事って本当にすごい。ただ歌うのと違う。議長と私の言葉で世界がどんどん動いていく。まあ、みんなラクス様が言ってると思って聞いてるんだろうけど。でも、今言っているのは私。原稿書いているのは私じゃないけど、でも私は本当にそう思うから、今いるのは私。だからこれは私の言葉、でいいのよね。」 アスラン脱走の日 「でもなんで?なんでこんなことになるの。アスランっておかしい。なんでなの。だって議長の言うことは正しいのよ。なのになんでこんなことするの。(議長は自分の認めた役割を果たす者にしか用はない。彼に都合の良いラクス。そしてモビルスーツパイロットとしての俺。そうなれば、いずれ君だって殺される。だから一緒に。)そんなことない。ああ、ううん。もしかしたらそうなのかもしれないけど、でも絶対そんなことない。」 部屋から出て行ったアスランは、デッキから遠くを見つめていた。その横に立つキラ。 「俺が最初に認めなければ良かったんだ。」ぼそっと言うアスラン。「こんなことは駄目だと。」 「うん。でもやっぱり、すぐにそんな風には言えないよ。後になんないと分かんないことが多くて。僕もラクスも狙われたりなんかしなきゃ、デュランダル議長のこと、信じてたと思うんだよね。戦わない方がいいって言った人だもの。でも、ラクスはこうだからって決められるのは困る。そうじゃないラクスはいらないとか。」 「ああ。」 「そんな世界は傲慢で。。」 「だろうな。」 ラクスは、安置室に横たわるミーアの側に立っていた。ミーアの日記を全て読んだ後に。 「(その方のお姿に惑わされないでください。私はラクス・クラインです。)ラクス・クラインって、ラクス・クラインって本当は何だったんだろう。誰のことだった?私?議長は大丈夫って言ってた。私が世界を救ったって。そうだよね、私がやった。だから私は、私が。。」 ミーアのディスクを抱え、一人泣くラクス。後ろから、その肩に手をかけるキラ。キラに抱きつくラクス。 (わたしのうた、いのち。どうかわすれない。)そのミーアの言葉に決意するラクス。「忘れないわ。ミーアさん。私は決して。」 棺桶に横たわり、出棺するミーアの亡骸。 「今、私の中にも、みなさんと同様の悲しみ、そして怒りが渦巻いています。なぜこんなことになってしまったのか。考えても、既に意味の無いことと知りながら、私の心もそれを探して、またさまよいます。私たちはつい先年にも大きな戦争を経験しました。そしてその時にも誓ったはずでした。こんなことはもう二度と繰り返さないと。にもかかわらずユニウスセブンが落ち、努力もむなしく、またも戦端が開かれ、戦禍は否応なく拡大して、私たちはまたも同じ悲しみ、苦しみを得ることとなってしまいました。本当にこれはどういうことなのでしょうか。愚かとも言えるこの悲劇の繰り返しは。一つには先にも申し上げた通り、間違えなくロゴスの存在の所以です。敵を創り上げ、恐怖を煽り、戦わせて、それを食い物としてきた者達。長い歴史の裏側にはびこる彼ら、死の商人達です。だが、我々はそれをようやく滅ぼすことができました。だからこそ、今敢えて私は申し上げたい。我々は今度こそもう一つの最大の敵と戦っていかねばならないと。そして我々はそれにも打ち勝ち、解放されなければならないのです。みなさんにも既にお分かりのことでしょう。有史以来、人類の歴史から戦いの無くならぬわけ。常に存在する最大の敵、それは何時になっても克服できない我ら自身の無知と欲望だということを。地を離れて宇宙を駆る。その肉体の能力、様々な秘密までをも手に入れた今でも、人は未だに人を分からず、自分を知らず、明日が見えないその不安。同等に、いやより多く、より豊かにと飽くなき欲望に限りなく伸ばされる手、それが今の私たちです。争いの種、問題は全てそこにある。だが、それももう終わりにする時が来ました。終わりにできる時が。我々はもはや、その全てを克服する方法を得たのです。全ての答えは皆が自身の中に既に持っている。それによって人を知り、自分を知り、明日を知る。これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。私は人類存亡をかけた、最後の防衛策として、デスティニープランの導入・実行を、今ここに宣言いたします。」 ついに発動されたデスティニープラン。アークエンジェルのアスラン、キラ、ラクス。その表情がこわばる。 |
PHASE - 48 | 新世界へ | 次々と表示される遺伝子情報のデータ。そしてプランの内容。コンピュータの音声がデスティニープランの概要を機械的に説明する。 「デスティニープランは、我々コーディネーターがこれまでに培ってきた、遺伝子工学の全て、また現在最高水準の技術を持って施行する、究極の人類救済システムです。人はその資質の全て、性格、知能、才能、また重篤な疾病原因の有無の情報を本来体内に持っています。まずそれを明確に知ることが重要です。 今のあなたは不当に扱われているかもしれない。誰も、あなた自身すら知らないまま、貴重なあなたの才能が、開花せずにいるのかもしれない。それは人類全体にとっても非常に大きな損失なんです。私たちは自分自身の全てを、そしてそれによってできることをまず知るところから始めましょう。これはあなたの幸福な明日への輝かしい一歩です。」 レイとシンは自室でデスティニープランの内容を見ていた。「こんな、議長。。」デスティニープランの概要を知り、つぶやくシン。 「お前が驚くことないだろう。議長が目指されていた世界がどんなものかは、お前も知っていたはずだ。」レイがシンに対してそのように答える。 「うん、それは。」以前デスティニーの機体を初めて見せられたときの議長の言葉が脳裏をよぎるシン。「でも、急にこんな事言ったって、世界は。大変だよ。」 「わかっている。だが、だからと言って、議長は諦めるお方ではない。それはお前も知っているだろう。今は俺たちがいる。議長が目指す、誰もが幸福に生きられる世界、そしてもう二度と戦争など起きない世界、それを創り上げ、守っていくのが俺たちの仕事だ。そのための力だろ?デスティニー。そしてそのパイロットに選ばれたのはお前なんだ。」 「あ、で。あ?」レイの言葉をにわかに受け容れがたい様子のシン。 「議長がお前を選んだのは、お前が誰よりも強く、誰よりもその世界を望んだ者だからだ。」 「俺?」 そこにシンを呼びかけるルナマリアからのコール。「今、大事な話をしている。後にしろ。」レイは冷たく、ルナマリアのコールに答え、回線を切る。 「レイ、何をする。」と反論するシンを止め、続けるレイ。「だが、お前の言うとおり、本当に大変なのはこれからだ。」「レイ。。」「いつの時代でも、変化は必ず反発を起こす。それによって不利益を被り、明確な理由はなくとも、ただ不安から異を唱える者が必ず現れる。議長もおっしゃる通り、無知な我々には、明日を知る術など無いからな。だが、人はもう本当に変わらなければならないんだ。で、なければ救われない。」熱く語るレイ。そして自分が熱くなっていることに気づき、それを恥じたように、冷静を振る舞うような仕草に戻る。 「そりゃ俺だってそれは分かるけど、でも。」 「あのエクステンデッドの少女や、あんなことを二度と繰り返さないためにも。これはやり遂げなければならないんだ。」 その言葉を聞きながらも悩むシン。レイのこぶしが力強く震える。 「強くなれ、シン。お前が守るんだ。議長とその新しい世界を。」そう言い、立ち上がるレイ。ふらつきながら席を離れる。その姿を見て、「レイ。」と心配そうに声をかけるシン。だがレイの言葉は続く。「それが、この混沌から人類を救う、最後の道だ。」そう言い、ベットの上に腰掛け、頭痛に耐えるような仕草をするレイ。 「どうしたんだ?レイ。」調子が悪そうなレイを気遣うシン。 「何でもない。構うな。」シンの気遣いに激怒するレイ。枕元から薬を取り出し、それをほおばる。 部屋の扉が開いているのを見て、中をのぞき込むルナマリア。そして今はシンと話ができる状況ではないことを確認し、そのまま立ち去っていく。 「でも、どうするんですか?これを。」ミネルバブリッジでは、アーサーがタリアに泣き言を言っていた。 「どうもこうもないでしょ。私にだって分からないわ。戦争は政治の一部よ。そこから全体などなかなか見えるものでもないわ。艦内の様子、気をつけておいてね。みんな、あなたと同じ気持ちでしょうから。」 「はい。」と小気味よくタリアの指示に従うアーサー。 「では、はっきりと拒否を表明しているのは、まだ我々とスカンジナビア王国だけか。」官邸内を移動中のカガリは側近達に、デュランダル議長のデスティニープランの各国の反応を尋ねていた。 「はい、どの国もまだ、どう判断すべきか決めかねているようで。」 「ロゴスという魔女狩りのおかげで、今はどこも政府はがたがたですからな。」 「それも全て、彼のプラン通りということなのだろうな。だがもうこれ以上、世界を彼の思い通りになどさせる訳にはいかない。かつてウズミ代表は連合の侵攻に際して、人としての精神への侵略という言葉を使われた。これはそれよりもなお悪い。オーブの理念、なんとしても守り抜く。それが必ずや、全てを守り抜くことになる。」 アークエンジェルとエターナルは次の出方をうかがっていた。 「思った通り世界の反応は緩慢なものだな。」バルトフェルドが言う。 「思った以上に、じゃない?」ラミアスが答える。「よく分からないっていうのが本音だろ。」その言葉に続けるネオ。「人種も国も飛び越えて、いきなり遺伝子じゃ誰だって判断に困るよ。」「あれだけ聞くと、本当に良いことずくめですものね。不安が無くなる。戦争が起きない。幸福になれる。」 「議長は信用ありますしね。今は。」ラミアスの言葉に付け足すキラ。 「だが、これがプランの提示だけで終わるはずがない。」アスランが不安を口走る。それに頷くキラ。 「導入・実行すると言っているんだからな。奴は。」バルトフェルドもアスランの意見に同意する。 「オーブは?」尋ねるアスラン。「もう防衛体制に入っているわ。プランの採択が拒否されるのは間違いないもの。」その言葉に「そうか」と答えるアスラン。 「力押しでこられたら、もう戦うしかないものね。」ラミアスの言葉に「戦うしかない。。か。」とつぶやくキラ。「キラ?」とキラの言葉に反応するアスラン。「いや、あっちもそう思ってるんだろうなと思って。」その言葉で意味を理解するアスラン。「戦うしかない。これじゃ戦うしかないって。結局僕たちは戦っていく。プランも嫌だけど、本当はこんな事ももう終わりにしたいのに。」「ああ。」キラの言葉に同意するアスラン。 「でも、私たちは、今は戦うしかありません。」力強く言うラクス。「夢を見る、未来を望む、それは全ての命に与えられた生きていくための力です。何を得ようと、夢と未来を封じられてしまったら、私たちは既に滅びた者として、ただ存在することしかできません。全ての命は、未来を得るために戦うものです。戦って良いものです。だから私たちも、戦わねばなりません。今を生きる命として。私たちを滅ぼそうとするもの、議長の示すもの、死の世界と。」 接収したレクイエムの発射準備の状況を見ながら、各国の状況を尋ねるデュランダル。「各国に何か新たな動きは?」「ありません。未だ明確なのは、早々に拒否を表明したオーブとスカンジナビア王国のみです。」その言葉を聞き、オーブのカガリの演説に視線を向けるデュランダル。「ですが、これに呼応としてか、アルザッヘル基地に少し動きがあります。」「おやおや。」「大西洋連邦大統領が議長にコンタクトを取りたいと、各国の首脳同様申し入れをしてきているのですが。」「なるほど。コープレンドも大変だな。彼女のように頑張ることもできないのに、一国のリーダーなどやらねばならぬとは。どうすれば良いのか指示してくれるロゴスも、もういない。まあ、いいだろう。ではまずアルザッヘルを撃つ。準備を始めてくれ。オーブはその後で良い。」「はい。」「私はちゃんと言ったはずだが。これは人類の存亡をかけた、最期の防衛策だと。なお敵対すると言うのなら、それは人類の敵ということだ。」 アルザッヘルの動きについて、直ちに月艦隊およびミネルバに集結命令が出された。集結ポイントに向けミネルバと月艦隊はダイダロス基地を発進する。シンはレイの様子を気にしていた。それに気づき、シンの不安を解こうとするレイ。 「さっきのことなら何でもない。驚かせて悪かった。持病のようなものだ。気にしなくっていい。」「いや、あの。俺。」「そんなことより、その前に俺が言ったこと、忘れるな。この先に何が起ころうとも、誰が何を言おうと、議長を信じろ。世界は変わるんだ。俺たちが変える。だが、そんなときには、混乱の中、これまでとは違う決断をしなければならないこともあるだろう。訳が分からず、逃げたくなるときもあるだろう。だが、議長を信じていれば大丈夫だ。」「レイ?」「正しいのは、彼なんだからな。」「けど、なんでそんなこと言うんだよ。いきなり。なんか、それじゃあドラマで死んでく親父みたいだぞ。やめろよ。」シンの言葉にクスっと笑うレイ。「実際、俺にはあまり未来がない。」その言葉に驚いた表情のシン。「テロメアが短いんだ。生まれつき。俺は、クローンだからな。」その言葉に驚愕の表情を隠せないシン。 その時、ダイダロス基地よりレクイエムが発射された。見事にアルザッヘル基地を引き裂いていくレクイエム。キノコ雲を上げているアルザッヘルの様子は、アークエンジェルのモニタにも映し出されていた。「これで残っていた連合の戦力も、ほぼ全滅だわ。」つぶやくラミアス。「あれの破壊力もジェネシスに劣らない。中継点の配置次第で、地球のどこでも自在に狙えるぞ。」アスランが言う。 「艦長、オーブに連絡を。エターナルと合流します。すぐに発進準備を始めてください。」ラクスがラミアスにお願いをする。それに対して、「ええ」と答えるラミアス。「ラクス。」「従わねば死。どちらにしても、このままでは世界は終わりです。」 デュランダルは、アークエンジェルが動くことを睨み、シンとレイに招集をかける。「ミネルバに連絡を。レイ・ザ・バレルとシン・アスカをこちらに寄こすように言ってくれ。ああ、機体共々だ。」 「逃げ場はありません。」ラクスの言葉に頷くキラとアスラン。「ああ。」「わかってる。」「行きましょう。」 シンはようやくルナマリアと話ができていた。ミネルバ内を歩きながら、先のレイの態度について話をするルナマリア。謝るシン。そこに血相を変えたヴィーノよりアルザッヘルがレクイエムにより攻撃されたことを知らされる。「何で?誰が?」ルナマリアの問いかけに、後ろから現れたレイが答える。「基地に反抗の動きがあったんだ。それをローラン隊が撃ったということだ。」「反抗?」「軍はあれを直したの?」ヴィーノやルナマリアの問いかけを無視して、シンに話しかけるレイ。「言った通りだ。シン。例え良いことでも、スムーズにはいかない。次は奴らが来るぞ。アークエンジェルだ。今度こそ奴らを討つんだ。俺たちが。お前の望んだ世界を守るんだ。」 アークエンジェルは、エターナルと合流すべく、コペルニクスを後にした。 |
PHASE - 49 | レイ | 「要はやはりこの一次中継ステーションだ。まずこれを落とさなければ、また何時、何処が撃たれるか分からない。」アークエンジェルとエターナルは、レクイエムの一次中継ステーションを落とすべく、侵攻を続けていた。 その頃、シンとレイは、議長の命令に従い、ミネルバを発進。一路メサイアに向けて機体を急がせていた。 「足の速い2隻が先行して中継ステーションを落とし、オーブ旗艦の主力がレクイエム本体を破壊。近くにはZAFT月機動艦隊もいるっていうのに、やれやれだな。」ぼやくネオ。 「でも、やるしかないわ。彼らに負けたくなければ。」決意を新たに話すラミアス。 「勝敗を決めるのはスピードです。敵の増援に包囲される前に中継ステーションを落とします。」ラクスの言葉。アークエンジェルとエターナルはZAFT防衛線の手前、150にまで接近していた。 この動きはメサイアのデュランダルの所に告げられていた。メサイア、ゴンドアナの月機動艦隊の半数をステーション1(一次中継ステーション)へ回し、残りはオーブ艦隊が迫るダイダロスへ回すことを指示するデュランダル。 守備隊が発進、ステーション1の守備を固めに入る。そしてキラのストライクフリーダム、アスランのインフィニットジャスティスもエターナルを離れる。ミーティアとドッキングし、ステーション1への攻撃態勢整う両機。 「こちらはエターナル。ラクス・クラインです。中継ステーションを護衛するZAFT軍兵士に通告致します。私達はこれより、その無用な大量破壊兵器の排除を開始します。」このラクスの言葉に混乱を来すZAFT軍守備隊。 「それは人が守らなければならない、戦うために必要なものではありません。平和の為に、その軍服を纏った誇りがまだあるのなら、道を開けなさい。」 シンとレイは、デュランダル議長の所に到着していた。議長に対して敬礼をする2人。「やあレイ、シンも。よく来てくれたね。」 守備隊からの攻撃無きまま、ステーション1へと突き進むフリーダムとジャスティス。「ええい、何をしているか。あれはロゴスの残党。議長からの言葉を聞かず、自らの古巣と利権を頑なに守らんとする奴らの残存勢力だぞ。撃て!撃ち落とすんだ。ZAFTの為に。これは命令だ。」この司令官で、ようやく動き出す守備隊。始まるアークエンジェルとエターナルへの攻撃。そして反撃。 ミネルバ、月機動艦隊に対して、ステーション1への支援命令が下る。 アスラン達の様子を見て、怒りを露わにするイザーク。「あいつら!」 「でも連絡無いのは当たり前だぜ。ZAFT軍なんだからなぁ。やっぱり。」イザークを茶化すかのように答えるディアッカ。 「分かっている。ともかく発進だ。とっとと船を出せ。」 「どうした?なんだかあまり元気が無いようだな。」元気のないシンを見て声をかけるデュランダル。 「いえ。」 「まただいぶ色々とあって、とまどってしまったかな。」 「はい。」落ち込んだような口調で返事をするシン。 「アーモリーワンでの強奪に始まって、ユニウスセブンの落下、そして開戦からこんな事態にまでなってしまったんだ。誰だってとまどうだろう。だが、そんなやりきれないことばかり続いたこの戦うばかりの世界も、もうまもなく終わる。」 「はい。」 「いや、どうか終わらせてくれ、というべきかな。君たちの力で。」 「戦闘を止め、道を開けなさい。」呼びかけ続けるラクス。「このようなもの、もうどこへ向けてであれ、人は撃ってはならないのです。下がりなさい。」ラクスの言葉にとまどう守備隊。だが、エターナル・アークエンジェルへの攻撃も絶え間なく続いていた。 「いま、レクイエムのステーション1が、アークエンジェルとエターナルに攻撃されている。私があれで、なおも反抗の兆しを見せた、連合のアルザッヘル基地を撃ったので、それを口実に出てきたようだが。。いや、全く困ったものだよ。我々はもうこれ以上戦いたくないというのにね。これでは本当にいつになっても終わらない。」 「はい。でも仕方ありません。彼らは言葉を聞かないのですから。今ここで万が一、彼らの前に我々が屈するようなことになれば、世界は再び混沌と闇の中へ逆戻りです。嘆きながらも争い、戦い続ける歴史は終わらない。変わりません。そうなれば、人々が幸福と平和を求め続けるその裏で、世界はまたも必ずや、新たなロゴスを生むでしょう。誰が悪いわけでもない。それが今の人ですから。俺はもう、絶対に世界をそんなものにはしたくありません。ようやくここまで来たのです。」 レイの力強い言葉に、「レイ」と思わず言葉をかけるシン。なおも、レイの言葉は続く。 「デスティニープランは絶対に実行されなければなりません。」 「そうだな。」 キラとアスランがあと一歩で、ステーション1に取り付けると思った瞬間、その行く手を阻む閃光が2機を襲う。ミネルバと月機動艦隊がついに到着したのである。 「君はどうかな、シン。やはり君も同じ思いか?」デュランダルの問いかけに対して、返事に困るシン。 「俺は。。」シンはレイから作戦前に聞かされたことを思い出す。 (「実際、俺にはもう、あまり未来はない。テロメアが短いんだ。生まれつき。俺は、クローンだからな。キラ・ヤマトという夢のたった一人を創る資金のために、俺たちは創られたんだ。おそらくはただ、出来るという理由だけで。だが、その結果に俺は。。ふっ、どうすればいいんだ?父も母もない。俺を創った奴の夢など知らない。人より早く老化し、もうそう遠くなく死に至る身が、科学の進歩のすばらしい結果だとも思えない。もう一人の俺は、この定めを守り、全てを壊そうと戦って死んだ。だが誰が悪い。誰が悪かったんだ。俺たちは誰もがみな、この世界の欠陥の子だ。だから、全てを終わらせて還る。俺たちのような子供がもう二度と産まれないように。だからその未来は、お前が守れ。」) 「はい。俺もレイと同じ思いです。」 増援部隊に対抗するため、アークエンジェルからはネオのアカツキ、そしてムラサメ隊、エターナルからはヒルダ達のドムトルーパーが出撃していった。 「はあ、なんだあのモビルスーツは?」それを見て、疑問の言葉を発するイザーク。 「そんなことよりどうするんだよ。隊長!俺たちは。」態度を決めかねているイザークを詰るように問いかけるディアッカ。 「は?」 「一応出て行って瞬殺されてくる?」 「馬鹿者!そんな根性なら最初から出るな。」 「いやぁ、だってなぁ。」 「俺が出る。」 「はぁ?」 「ヴォルテールは後ろから支援だけしていろ。いいな。前に出るなよ。死ぬぞ。」そう言い残し、イザークはブリッジを後にした。 タリアは迷っていた。今一度アークエンジェルと戦うかどうかを。思い出すオーブでのマリュー・ラミアスの言葉。 (「でも、同じですわ。やっぱり先のことは分かりませんので。私たちは今をもって信じたことをするしかないですから。」) 「私も同感よ。だから今は戦うしかないわ。終わらせるために。」 覚悟を決めたタリア。「これより本艦は戦闘を開始する。インパルス発進。全砲門開け。照準、アークエンジェル。ZAFTの誇りにかけて、今日こそあの船を討つ。」 タリアの覚悟を感じ取ったラミアス。「グラディス艦長。。」「ミネルバ、来ます。」「取り舵10、下げ舵15、ゴッドフリート、照準ミネルバ。」 発進したディアッカとイザークのザク。 「けどどうするんだよ、イザーク。お前まさか?」 「今、俺が殴りたいのは、あいつだけだ。」 「は?」 「よくもまたおめおめと。あんなところに。」 そのイザークの言葉にため息をつくディアッカ。 メサイアはゆっくりと月軌道へと移動していた。 「ステーション1はもうまもなく落ちるだろう。だが、まあいい。替えはまだある。」レイに話すデュランダル。「その後彼らはおそらくそのままこちらに来るだろう。なんと言っても数が少ないからな。」 アークエンジェル、エターナルに向けて一直線に突き進むインパルス。 「あ、お姉ちゃん。」インパルス接近に気づくメイリン。 「これでいいのよね。これでいいのよね。シン。」心の中で繰り返しながら、両艦を攻撃しようとするインパルス。 「お姉ちゃん、止めて!」メイリンの叫びが、ルナマリアに聞こえる。「メイリン!エターナルに?」 「何で戦うの。何で戦うのよ。どのラクス様が本物か、何で分からないの?」 その言葉に動揺するルナマリア。 「ミネルバや守備隊がだいぶ消耗させてくれるとは思うが、だが分かっているな。彼らは強い。それで討てねば全てが終わるぞ。」 デュランダルの言葉に「分かっています。」と答えるレイ。 その瞬間、インパルスに対してジェットストリームを敢行するヒルダ達。その様を不安ながら見続けるメイリン。 「左30度回頭。ターンホイザー起動。」タリアの指示で、艦首にターンホイザーが開くミネルバ。 「ミネルバ、陽電子砲、発射態勢。」その報告に「しまった」と苦渋の顔をするラミアス。(本艦が動けば、エターナルに。) 「撃てぃー。」タリアのかけ声と共に放たれる陽電子砲。一直線にアークエンジェルブリッジに向かってくるその光条。覚悟を決めたラミアス。 その陽電子砲を受け止めたのは、アカツキに乗るネオだった。「アークエンジェルはやらせん。」はじけ飛ぶ陽電子砲の光紋。その中でネオは全てを思い出した。「マリュー。。俺は。。」そして、ミネルバのターンホイザーを破壊するアカツキ。アカツキからのビーム攻撃で、沈むターンホイザー。 「大丈夫だ。」ブリッジの真正面に現れるアカツキ。モニターにはネオの顔が写される。「もう俺はどこにもいかない。終わらせて帰ろう。マリュー。」その言葉に涙ぐみながら「うん。」と答えるラミアス。 アスランの乗るインフィニットジャスティスを捉えたミサイル。それらを回避しようと逃げるアスラン。だがそのミサイルは何者かの手により破壊される。驚くアスラン。 「貴様、またこんなところで何をやっている。」 「イザーク。」 「何をって、こいつを落とそうとしてんじゃんかよ。」 「ディアッカ。」 「俺が言っているのはそういうことじゃない。」 「もういいだろう、そんなことは。それより早くやることやっちまおうぜ。」 「い、や、貴様。」 「こいつを落とすんだろ。」そう言って、ステーション1に向かっていくディアッカ。 ついにステーション1に取り付いたキラとアスラン。ミーティアのビームサーベルでステーション1は両断されていった。 マユの留守電を聞いていたシン。そこにレイが現れる。「少しは休めたか?俺たちもそろそろ出撃だぞ。」 マユの携帯をポケットにしまいながら返事をするシン。「ああ、大丈夫だ。状況は?ミネルバは?」 「ミネルバも奮戦したようだが、ステーション1が落とされた。今はこちらに向かっているアークエンジェルらを追撃している。心配しなくとも、ルナマリアは無事だ。もっと信じてやれ。彼女は強い。奴らはこのままダイダロスに向かう主力隊と合流し、レクイエムを破壊してオーブのその力を世界中に見せつける気だ。そうなればまた、世界は割れる。」そう言い残し、シンの元を離れるレイ。 「オーブは。」 「お前が救ってやるんだ。あの国を。そういうことだ。」出て行くレイ。 ダイダロス基地のレクイエム発射口に辿り着いた主力艦隊。 「目標、距離8000。ローエングリーン照準。撃て!」ところが、レクイエム発射口は、陽電子リフレクタにより守られていた。はじき飛ぶローエングリーンの光条。 「これよりメサイアは戦闘態勢に入る。コンディションレッド。繰り返す・・」近づきつつあるメサイアは攻撃態勢に入っていた。「全ての攻撃オプションを起動。ネオ・ジェネシス、スタンバイ。」 ついに主力艦隊の前にその姿を現すメサイア。「艦長、オレンジ180に巨大な構造物。」「要塞?」ラミアスがつぶやく。 「目標、射程まであと20。」「ニュートロンジャマーキャンセラー起動。ニュークリアカートリッジ、激発位置へ。」 「高エネルギー帯、集束。」メサイアに向かうキラとアスラン。だが間に合いそうもない。「艦隊を。」「くそぉ。」 「目標、射程内に入ります。」「撃て。」 ついに放たれるネオ・ジェネシス。回避するも巻き込まれる数隻の船。 「既発のチャージ急げ。デスティニー、レジェンド発進。」メサイアより飛び立つ、レイとシン。 「くそー、あんなものを伏せてあったとは。」ぼやくバルトフェルド。さらにミネルバなどの追撃艦が攻撃を開始した。 さらにキラとアスランの行く手には、シン達が現れた。 「さあ、今度こそ消えていただこう。ラクス・クライン。」微笑むデュランダル。 「アスラン。」「ああ、いくぞ、キラ。」ミーティアよりリフトオフし、キラ達を迎え撃つべく、準備をするフリーダムとジャスティス。 「キラ・ヤマト。お前の存在だけは許さない。」ラウ・ル・クルーゼの亡霊、レイ・ザ・バレルがフリーダムに襲いかかる。 |
PHASE - 50 | 最後の力 | 「まずいぞキラ。このままではオーブが。」レクイエム発射阻止をしたいアスランとキラであったが、シンとレイに阻まれ、向かうことはできない。「アークエンジェルは行ってください。アスランも。」キラの言葉に驚くアスラン、ラミアス。「ジャスティスならシールドを突破できる。この要塞は僕たちで抑えるから。」ストライクフリーダムのスーパードラグーンによる攻撃で、足止めを食うデスティニー。 「でも、それではエターナルが。」ラミアスがキラに訴える。「この船よりもオーブです。オーブがプランに対する最後の砦です。失えば、世界は飲み込まれる。絶対に守らなくてはなりません。私たちはそのためにここにいるのです。」ラクスはラミアスの言葉に答える。 迷っているイザーク達。「どうすんの?イザーク。」ディアッカの言葉に苦渋の決断を下すイザーク。「くっ。エターナルを援護する。ZAFTの船だ。あれは。」 キラやラクスの言葉に従って、レクイエムの方角へ針路をとるアークエンジェル。「行かせるか。ミネルバは何をやっている。」レイは、アークエンジェルに向かって、レジェンドを走らせる。だが、そのレジェンドを阻む、スーパードラグーンの光条。 「くそぉ、フリーダム。」シンがストライクフリーダムに向かって、突進してくる。それにSEEDを覚醒させたキラが立ち向かう。 「シン。お前はミネルバと共にアスランとアークエンジェルを追え。」レイのその言葉にややとまどいを覚えるシン。「フリーダムは、俺が討つ。」「レイ。。」「お前はジャスティスに。今度こそあいつを討つんだ。そして全てを終わらせろ。」「ああ、わかった。」 フリーダムから去っていくデスティニー。視線でそれを追うキラ。だが、ドラグーンの気配を感じる。その気配は、前大戦で倒したはずのラウ・ル・クルーゼのものに他ならなかった。「どういうことなんだ。。君は。。」とまどいを見せるキラ。 「そうさ終わらせる。今度こそ、全てを。」ビームサーベルを振りかざし、向かっていくレイ。 交錯するドラグーンの光条。「なぜなんだ。なぜこんな。」キラの叫びに攻撃で応えるレイ。 一方、レクイエムのあるダイダロス近辺へとやってきたアスランとネオ。向かうは多くの守備隊モビルスーツ軍。「えらいこったな、これは。」アカツキのドラグーンで、多くのモビルスーツを仕留めていく。「が、数だけいたってねぇ。」 「ラミアス艦長。」オーブの先行部隊よりの連絡が入る。「シールドを突破する。時間がないわ。早く陣形を立て直して。」その時追ってきたミネルバの出現の報告がある。アークエンジェルの左上方より襲いかかるミネルバ。アークエンジェルが攻撃されていることに気づき、急行するネオ。 ミネルバと共に突破してきたインパルス。そこにアスランのインフィニットジャスティスが現れる。「ジャスティス?アスラン?」「インパルス。ルナマリアか?」「アスラン。。」思い起こされるアスランとの日々。そしてメイリンの言葉。(お姉ちゃん、止めて。何で戦うの。何で戦うのよ。) 「よくも、メイリンを!」ルナマリアはジャスティスへの攻撃を始める。「ってぇい。止めろルナマリア。お前も。」「逃げるな。」ビームサーベルを振りながら、追ってくるインパルス。「えぇい。くそぉ。」インパルスの腕を叩き落とすアスラン。「邪魔をするな。君を討ちたくなどない。」「何を!」なおも攻撃を止めないルナマリア。やむを得ず、インパルスにビームブーメランを投げつけるアスラン。 「ルナー!」聞こえるシンの声。「このぉ、裏切り者が!」インパルスを庇うかのように現れるデスティニー。「大丈夫か?ルナ。」「シン。」 「あんたって人は。」エクスカリバーを振りかざし、突進してくるデスティニー。立ち向かうべく、ビームサーベルをかざすインフィニットジャスティス。「よくもルナを、ルナをやったな!」覚醒するシン。パワーが上がったかのようなデスティニーの動きに、圧倒されるアスラン。 「誰だ、誰なんだ。」目の前にいるレジェンドを誰が操作しているのかが気になるキラ。「君は。」 「分かるだろう?お前には。俺は、ラウ・ル・クルーゼだ。」クルーゼの亡霊にとまどうキラ。 「人の夢、人の未来、そのすばらしき結果、キラ・ヤマト。」レイのすさまじき気迫に、守り一方となってしまうキラ。 「ならばお前も、今度こそ消えなくてはならない。」 「ラウ・ル・クルーゼ。。。」目の前にいる倒したはずの亡霊に、恐怖心を抱くキラ。 「俺たちと一緒に。」レイの気迫。 押され続けるキラを感じ取ったラクス。「キラ。」 「生まれ変わるこの世界のために。」フリーダムのビーム攻撃を押し戻すレジェンド。 (「ねえ、ラウは。」「ラウはもう、いないんだ。だが、君もラウだ。」カプセルを差し出すデュランダル。「それが君の運命なんだよ。」) シンとアスランの戦い。再びアスランの力に押されていくシン。 「そんな、なぜ君が。なぜ君が、また。」キラの苦悩。 (「逃れられないもの。それが自分。」)「そして取り戻せない世界。それが過去。だからもう終わらせる。全てを。そしてあるべき正しい姿へと戻るんだ。人は、世界は。」 「でも違う。命は、何にだって一つだ。だからその命は君だ。彼じゃない。」キラの言葉に我に返るレイ。 その瞬間、ストライクフリーダムより放たれたいくつもの光条が、レジェンドを貫通する。 爆発するレジェンド。「うわぁー。」とレイの叫びがこだまする。 ミネルバの追撃を受けるアークエンジェル。「アスラン君は?」ラミアスの言葉に「駄目です。位置特定不能。」と返すミリアリア。 「俺が行く!」「ムウ」「ムラサメ1個小隊、ついて来い。」 アスランは、シンとの戦いが続いていた。「くそぉー、なんであんたなんかに。」 「もうお前も、過去にとらわれたまま戦うのは止めろ。」 アスランの言葉にハッとなるシンとルナマリア。 「そんなことをしても、何も戻りはしない。」 「な、なにを。」叫ぶシン。 「なのに未来まで殺す気か?お前は。お前が欲しかったのは、本当にそんな力か?」 迷いが生じるシン。「だけど、だけど。」 迷いを振り切るかのようにインフィニットジャスティスに突進していこうとするデスティニー。 インフィニットジャスティスの前にルナのインパルスが立ちはだかる。「シン、もう止めて。アスランも。」 だが、シンが放とうとしたパルマ フィオキーナを止めることはできない。 アスラン覚醒。インパルスを押しのけ、デスティニーの攻撃をビームシールドで受け止める。 「この、馬鹿野郎!」デスティニーをなぞるインフィニットジャスティスのビームサーベル。 両腕、片足を失ったデスティニーは月面へと落下する。 「シン!」ルナマリアがシンを追う。 「くそぉー。」あまりのモビルスーツの数の多さに、なかなか到達できないネオ。「もういい加減にしろ。なんでこんなもん、守って戦うんだ。」 艦対戦を繰り広げるアークエンジェルとミネルバ。逆さ反転して、ミネルバと上下に交錯するアークエンジェル。すれ違いざまの攻撃で、かなりのダメージを負ったミネルバ。さらにインフィニットジャスティスの攻撃により、メインスラスターを破壊されたミネルバは、月面に不時着。身動きが取れない状況となっていた。 「レクイエム発射口にオーブ軍モビルスーツ。」「ステーション2、まもなくポジションです。」「発射口のオーブ軍を排除する。ネオジェネシス、照準。レジェンドとデスティニーは?」「こちらもシグナルロストです。」「メイン18、ベータにフリーダム。」 (「レイも討たれたというのか?あれに。まったく厄介な存在だな。ラクス・クライン、キラ・ヤマト。まあ仕方がない。奴らの始末はまた後だ。」) かろうじて機体が生きていたレイは、その機体をメサイアに移動させていた。そしてキラは、メサイアを破壊すべく、ストライクフリーダムをミーティアとドッキングさせていた。 「面舵13、下げ舵8。ネオジェネシス、射線軸固定。出力90%。」「発射口の敵を掃討後、オーブを撃ってこの戦闘を終わらせる。全軍に通達。」 イザークよりエターナルに対して緊急通達。「エターナル!メサイアが撃ってくるぞ。射線上の連中を下がらせろ。早く!」 このイザークの知らせで、何とか上ネオジェネシスの餌食とならずに済んだ、アスラン、ネオ、そしてアークエンジェルを始めとするオーブ軍艦艇。 一方、回避が間に合わなかったZAFT軍艦艇はその光に飲み込まれていった。それを見ていたタリア。(ギルバート、あなた?) 「レクイエム、カウントダウン開始。T-30秒。」「ステーション2、射角固定。」開く発射口。集束し始めるビーム。 「くそぉー!」その中に突っ込んでいくアスランとネオ。 シールドを突き破り、持ちうる全ての火器で発射口を攻撃。 光が増し、離脱するインフィニットジャスティスとアカツキの後ろで爆発するレクイエム。 「シン。シン。」「ステラ。。。」シンの前に現れるステラ。「どうしたのステラ。駄目だよ。君はこんなところに来ちゃ。」「大丈夫。だからちょっとだけ会いに来た。」「ちょっとだけ?ちょっとだけなのか。」「うん、今はね。」「今は?」「でもまた明日。」「明日?」「うん、明日。ステラ、昨日を貰ったの。だから分かるの。嬉しいの。だから明日。」遠ざかっていくステラ。「明日ね。明日。」 レクイエムに突き刺さるようにそびえ立つ、光の柱。それはレクイエムの爆発を示していた。 「馬鹿な。」それを見て愕然とするデュランダル。 それはシンを膝枕するルナマリアの目にも映っていた。「ステラ。。」とうわごとを言うシン。 「シン。」と呼びかけるルナマリア。 気づくシン。「ルナ。」 「シン。もう。」ヘルメットをかぶったシンの頭を優しく抱くルナマリア。 「あれは。」光の柱を見て、聞くシン。 「レクイエムよ。オーブは討たれなかった。」 その言葉を聞き、涙を流して、ルナマリアに抱きつくシン。 そんなシンを強く抱きしめるルナマリア。 ミーティアでメサイアの破壊を続けるキラ。メサイアは徐々にその機能を停止していく。 「艦長、メサイアが。」アーサーの言葉に目をつぶるタリア。 方々で小爆発を起こしているミネルバ。「本艦の戦闘は終わりよ。総員退艦。」 ミネルバ上空を飛ぶアークエンジェル。ラミアスは、爆発するミネルバに敬礼を送っていた。「グラディス艦長。。。」 「こんな時に悪いんだけど、みんなを頼むわ。アーサー。私行かなくっちゃ。」「は、はい。」「ごめんなさい。」そう言って、ブリッジを後にするタリア。 「はっ。」と敬礼をして送り出すアーサー。 キラは一人司令室までやってきた。司令室の椅子に一人座っているデュランダル。 「君がこんなところにまで来るとは、正直思っていなかったよ。」デュランダルに向け、銃を構えるキラ。 「なるほど。だが本当にいいのかな。それで。」キラに対して自分も銃を構えるデュランダル。 その司令室に向かうレイ、タリア。 「止めたまえ。やっとここまで来たんだ。そんなことをしたら、世界はまた、元の混迷の闇へと逆戻りだ。私の言っていることは本当だよ。」 「そうなのかもしれません。でも僕たちは、そうならない道を選ぶこともできるんだ。それが許される世界なら。」 「だが誰も選ばない。人は忘れ、そして繰り返す。もう二度とこんなことはしないと、こんな世界にはしないと。一体誰が言えるんだね。誰にも言えやしないさ。無論君にも。彼女にも。やはり何もわかりはしないのだからな。」 裏にレイがたどり着いた。それに気づくデュランダル。 「でも、僕たちはそれを知っている。分かっていけることも、変わっていけることも。だから明日が欲しいんだ。どんなに苦しくても、変わらない世界は嫌なんだ。」 「傲慢だね。さすがは最高のコーディネーターだ。」 「傲慢なのはあなただ。僕はただの一人の人間だ。どこもみんなと変わらない。ラクスも。だからあなたを討たなきゃならないんだ。それを知っているから。」 エレベータから降りてきたタリア。その目の前では銃を構えたデュランダルとキラのにらみ合いが続いていた。 「だが、君の言う世界と私の示す世界。みなが望むのはどちらだろうね。今ここで私を討って、再び混迷する世界を、君はどうする。」 「覚悟はある。」銃を構え直すキラ。そしてそれを見て、銃を構えるレイ。「僕は戦う。」 鳴り響く銃声。胸を撃たれ、倒れるデュランダル。撃ったのはレイだった。おびえ、そして座り込むレイ。 デュランダルを膝枕するタリア。 「やあタリア。撃ったのは君か?」 「いえ、レイよ。」 「ギル。ごめんな・・さい。でも、かれは、あしたは?」 「はぁ。。そうか。」 爆発が上がる度に崩れていく司令室。 「グラディス艦長。」近寄ろうとするキラ。 それを許さないタリア。「あなたは行きなさい。」銃を構えるタリア。「この人の魂は私が連れて行く。ラミアス艦長に伝えて。子供がいるの。男の子よ。いつか会ってやってね、と。」 「わかりました。」そう言い、司令室を去るキラ。 「すまないねぇタリア。でも、嬉しいよ。」 「しょうのない人ね。でも本当、仕方がないわ。これが運命だったということじゃない。あなたとわたしの。」 「ふっ、止めてくれ。」 「レイ、いらっしゃい。」 タリアとデュランダルの元に来たレイ。そのレイを抱きしめるタリア。「あなたも、よく頑張ったわ。だからもういい。」 「おかあさん。」 3人のいる床から吹き上がる爆炎。司令室は、爆発にまきこまれていった。 月面に落下し、爆発しながら崩れていくメサイア。 それを見つめるシンとルナマリア。 |