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大言快・覚書


不知是仏シリーズ(3) あたらずといえども遠からず

採集時期:

1999年6月18日

採集場所:

講談社ことばの新書「中国明言読本」(邱永漢監修)

補足説明:

「あたらずといえども遠からず」ってのは相手をはぐらかすときに使う言い回しぐらいに思っておりました。ところがたまたま見たCD-ROM版広辞苑の解説はこう。

[大学](心底から求めれば、目的にぴたりと合致しないまでも、大きな見当違いにはならないという意から) 推測や予想が的中していないとはいえ、たいしてまちがってはいない。大体、正しい推量である。
はて、「心底から求めれば」というのは一体なんでしょう。実は原典にはこの上があったのでした。
心誠にこれを求むればあたらずといえども遠からず
政治を母親と赤ん坊にたとえて、相手のことを思いやり慈しむ心があれば相手にたいしてそう見当違いのことはしないものだ、ということだそうです。いや、奥が深い。

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老婆は一日にしてならず

採集者名:

れいそう様(ホームページもお楽しみください

採集時期:

1998年6月

採集場所:

多田富雄「ビルマの鳥の木」(新潮文庫)p175

「老い」の姿というのが、廃墟のようだったらよいと、ふと思った。そのためには、老いの前の完成した構築が優れたものでなければならないし、老いに至る過程が自然でなければならない。「老婆は一日にしてならず」という名文句があるが、老いを完成する前段階は大変むずかしい。

補足説明:

男性には使う場面の判断に慎重さが要求される一句ですが、非常によくできています。採集者の脳裏に、「すべての道は、ローマに通ず。」というのが反射的に閃きましたが、「一日にして」には遠く及びません。

庵主雑感:

「すべての道はローマに通ず」の場合、「ローマ」を「老婆」にすると「年寄り嫌うな行く道じゃ」とかいうやつになりますね(何か違う)。
ちなみに私の住んでいる中部地区には、地元ラジオにセンスのいい投稿を続けているうちにとうとう出演者にもなってしまったペンネーム「老婆は一日にして奈良漬け」という人がいました。

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世の中は さようしからばごもっとも そうでござるか しかとぞんぜぬ

情報提供:

みのうら様(ホームページもお楽しみください

採集時期:

不明

採集場所:

不明

補足説明:

この絵は情報提供者とは無関係です

(秋田文庫「宇宙海賊キャプテンハーロック」(松本零士著)第1巻より)

庵主雑感:

中学生の頃に知って以来、坐右の銘にしております(嘘)。
何度か見た中ではこれが一番厳{いか}めしい表記でした。漢字の勉強にもなったりして。

  世の中は 左様然らば御尤も そうで御座るか確と存ぜぬ

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不知是仏シリーズ(2) 大男総身に知恵が回りかね

採集時期:

不明

採集場所:

不明。確か都築道夫の小説で紹介されていたが出典は別にある模様。

補足説明:

シリーズ名が変わっているように見えるのは気のせいです。目の迷いです。

  大男総身に知恵が回りかね

背の高い人というのは、必然的に目立ちます。うちの会社にも近づいてくるだけで気圧が高くなるんじゃないかと思うぐらいでかいのがいますけど、やはりからかいの対象にはされやすい。まあ半分はやっかみなんですけどね。背の低い人が対象だとしゃれにならないことにもなりかねないし。
とはいえ、やはり言われた方としては心中穏やかじゃあありません。逆襲の一つもしたくなるというものです。ではしてもらいましょう。

  小男の総身の知恵も知れたもの

見ての通り「総身に知恵が……」を受けたものですが、今ひとつ普及していないのはそのせいばかりでもないのかも知れません。

【追記】
ことぶきさんというかたから、落語(たぶん古今亭志ん生)の中でこういうのを聞いたことがあるという情報をいただきました。

「小男はまわり切ってもタカが知れ」


このあたりのバリエーションが「総身の知恵も……」なのかもしれません。

ちなみにこの後はこんなふうに続いていたそうです。

「おめえはホントにでけえなあ、それじゃあ、雨に先に濡れちまうだろ。俺はな、背が低いたってな、濡れるのが遅いんだ。ざまあ、みろい」
「そうは言うけどな、乾くのはおめえよりも早いぞ」


古典落語はこういったやりとりが偏見じみてなくてとてもいい味わいを出してますね。ご紹介ありがとうございました。
(2004/02/21)

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不知是仏シリーズ(1) 江戸っ子は皐月の鯉の吹き流し

採集時期:

不明

採集場所:

不明

補足説明:

さらに続くお茶濁し。ちなみに「不知是仏」は「知らぬが仏」を勝手に漢語風にしてみただけのものです。気にしないでください。

  江戸っ子は皐月の鯉の吹き流し

てな言い回しがあります。いかにも五月の爽やかな青空を泳ぐ鯉幟{こいのぼり}みたいな感じで、江戸っ子ってのはすかっと爽やか、からっとして粋{いき}で鯔背{いなせ}なおあにいさん……いや、ちょっと待ってください。今でこそ五月は梅雨入り前の爽やかな季節ですが、昔は梅雨のまっただ中。そう、この言葉は実は上の句で、ちゃあんと下の句が付くのです。ではどうぞ。

  江戸っ子は皐月の鯉の吹き流し 口先ばかりで腸{はらわた}は無し

口だけは立派だけど中身はないといってるわけで、上の句から受ける印象とはえらく違います。江戸っ子相手には使わない方が身のためかもしれませんね。

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それにつけても金の欲しさよ

採集時期:

不明

採集場所:

不明

補足説明:

作りっぱなしであんまり更新しないのもあれなので、ちょっとお茶濁し。

明治時代の作家だったかが、「どんな上の句にも付く下の句はあるだろうか」と言う話をしているときに、これはどうだい、ということで出てきて以来、もっぱら下の句しか知られていない言葉。太田南畝{なんぽ}

  世の中は いつも月夜と米の飯 それにつけても金の欲しさよ

が元歌と言われています。「それにつけても」でそれまでの話題を切り捨てた上で、俗人永遠の願望たる金銭欲に訴えるのだからまさしく万能。
それにつけても、江戸時代からある歌が元ネタなのだから人間そう変化はしないものなのですねえ。

  世の中に 金と女は仇なり どうぞ仇に巡り会いたい

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四十五日(横綱太刀山の渾名)

採集時期:

98年5月

採集場所:

ラジオの落語番組

補足説明:

滅法強い横綱だったらしく、とにかく負けず、負けた翌日には引退したそうです。以下、記憶を頼りに落語を再現してみます。
「なんで太刀山が『四十五日(しじゅうごんち)』かというと、立ち合いの突き押し一発で相手が土俵際まで飛ばされちゃう。次も力一杯突くとどこへ飛んでしまうかわからないので二発目は加減して突く。一突き半(一月半)で勝負がつくから『四十五日』。昔の人はうまいこと言ったね」

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墓場の丁(丁半博打の符牒)

採集時期:

不明

採集場所:

都筑道夫の小説

補足説明:

さいころの出目の呼び名で、5と3の丁の事。
賽の目は表と裏を足すと7になるように作ってあるので、5と3の裏はそれぞれ2と4。下に4・2(=死人)が埋まっているから「墓場」の丁。

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焼き芋・焼き薯・焼き藷

採集時期:

不明

採集場所:

新聞の投書欄

補足説明:

俳句の季語だそうで、それぞれ里芋、じゃが芋(馬鈴薯)、薩摩芋(甘藷)を焼いたもの。
こういう表現に出会うと、漢字を使う民族でよかったなあとしみじみ思ってしまいます。

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おのれの顔もSFにしたろかいー

採集時期:

不明

採集場所:

『がきデカ』(山上たつひこ著)

補足説明:

解説不能。
この作品には他にも「おのれは海抜三千メートルのあほじゃ」など魅力的な言葉がいたるところにちりばめられています。
ちなみに、「八丈島のキョン」はこちら

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