積ん読書庫


サギの手口

夏原武・著
データハウス・刊
ISBN4-88718-410-7
(※この項は、インターネットエクスプローラー2または3で見ると少しだけ効果的です)
副題が『最新裏仕事人列伝』である。帯には「『ナニワ金融道』も、『ミナミの帝王』も、まだまだぬるい!」とある。表紙は黒地に二枚舌。これが目印。

中を読んでみると、あるわあるわ、人をだます手段がぞろぞろ書いてある。こんな手があったのか、こんなあほな話に引っ掛かるのか、こんな法律知らねーぞ、などなどなど。

ほんとにこの著者は世の中そのものをよく知っていると思う。法律もそうだし人の心理もちゃんとわかっている。この本を読むと自分がいかに世間知らずか思い知らされる。

で、結局はだます方もだまされる方も、たいていどちらも必死だしなんとも悲しい。とはいえ、この本は実にあっけらかんとした語り口でそういったことを感じさせずにページを繰らせてくれる。実におもしろいし、おまけに紹介された手口に対して免疫ができる。実際、本に書いてしまったおかげで同じ手は使えなくなる、と詐欺師連中に恨まれるのではなかろうかなんていらん心配までしたりして。

でもまあ、これだけ思いきり警戒が必要だと教えてくれる本があっても、たぶん詐欺に引っ掛かる人はあとを絶たないだろう。そう、この本は人がいかに間抜けで懲りることを知らないかも教えてくれる。

それに、強力な農薬ができればさらにその農薬が効かない害虫が現れるように、また新しいサギの手口が出現する。人が人である限り、おそらくだます人とだまされる人がいなくなることはない。残念ながら。

一つ欠点を挙げるとすれば、この本で人間不信に陥る人が少なからずいるかもしれないこと。なにしろ、読んでいる間中頭の中をこの言葉が駆け回る。

人を見たら泥棒と思え

読んだ直後に玄関のチャイムが鳴ったら、おそらく一瞬詐欺師が来たと思ってしまうはずだ。


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