やまいもの雑記

マグマ大使(おまけ)


そんなこんなで、『月刊少年画報』に掲載された「マグマ大使」の最終回が単行本になる可能性はきわめて低い。だから記憶に残っているうちに文章にしてしまおう。

マグマとガムとマモルが地球に帰ってみると(その前の号を見ていないので、どこへ何をしに出かけていたかは不明)、地球がどろどろになっていた。陸と海は色が違うだけで同じようにどろどろの世界。そこへゴアの円盤の大群が現れ、地球にトリモチのようなものをくっつけて地球を丸ごとゴアの本拠地へ運び去ろうとする。ゴアの「地球ぶんどり作戦」である。

阻止しようとして撃退されるマグマたちの前に宇宙船に乗ったアースが現れた。実はゴアが運び去ろうとしている地球はすべて石油で作った偽物だという。マグマはアースの指示でジェット気流の空気レンズを作って太陽の光を集め、石油の地球に火を付けてゴアとその一味を丸ごと吹っ飛ばした。宇宙船で見守っていたマモルたちに窓の外からにこやかに手を振るマグマ。ここに地球の危機は去ったのだった。

(完)

もともと荒唐無稽な話ではあったが、ここまで行くと何だかなあ。

ゴアの作戦そのものがあまりに唐突であり無計画の極みでもある。まず、本物の地球が別にあるのを確かめもせずに作戦を開始する。これについてはマグマたちも間違っているのだが、彼らはロケット人なので、肉眼で確認すれば座標も何もないだろう。ゴアの方は船団を率いているにしてはあまりに迂闊だ。

さらに、地球にはゴアの大好きな子供達がいる。ゴアが子供であるマモルを手にかけられなかったことで何度煮え湯を飲まされただろう。それなのに、地上の子供の安全も考えずに石油の地球に向かって無差別にトリモチ(?)を浴びせている。地球を引っ張れるほど強力な粘着力を持つものが、地上の子供達に被害を及ぼすとは考えなかったのだろうか。

そして、「宝石のように美しい地球」を、その環境を作っている太陽から無造作に引き離そうとする。おそらくあのまま宇宙を引っ張っていけば、本物の地球だったら凍り付いてしまって地上の生き物はほとんど死滅、元の温度に戻ったとしてもその姿は簡単には復元しないかもしれない。それに子供達は絶対に助からない。

アースにしても、いかにしてゴアの計画に気付いたかしらないが、マグマたちにすら気付かれずに地球と同じ大きさの偽物をいつの間に作ったものやら(案外「こんな事もあろうかと」((C)真田工場長)密かに作っていたのかも)。おまけに、マグマが作ったのは空気の凸レンズ。大気圏の厚さを考えると(地球の直径の約4%だっけ)、あの絵の配置からしてゴアより先にマグマの方が粉々になっているはずだ。

ひょっとすると、この最終回の方もゴーストライターがどうのより、こんなくだらない内容なので全集に入れたくなかったのかもしれない(まだ尾を引く邪推)。

そうそ、キワモノ特撮番組としてその筋でつとに有名な「魔人バンダー」は(何しろ、最終回で身勝手な地球人たちのためにバンダーを巨大隕石に突っ込ませて殺してしまい、あげくに悲しげに空を見上げるパロン水星王子たちのバックに流れているのが「同期の桜」のハミングなのである)、確か『月刊冒険王』に連載されていたが、作者の東連山は、「マグマ大使」を描いていたというゴーストライターの一人だそうである。

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