スンダリ音楽資料館 その3

ネパール語の歌に日本語歌詞をつけてみるという試み・1
ネパール語を知らない人にも、ネパールの歌を気軽に口ずさんでもらえるように、
日本語歌詞を付ける試みをしています。
ネパール語の歌詞には日本語にはない単語や習慣がありますが、
その辺をどういうふうに日本語に反映させるかがスンダリMICAの腕の見せ所ですね。
サムジャナ ラヘ(想い出がいっぱい)
邦題 チョウタリの陰
ネパール語原詞意訳(ほぼ直訳ですが多少意訳をしています)
スンダリ的日本語詞
(実際のメロディーにのるように作っています)
貴女の思い出が胸にあふれている どうか戻ってきて下さい
貴女はあの道の向こうからやってきた
僕の周りをぐるりと巡っただけで また行ってしまった

牛を追って迷いこんだ森の中で
二人は出会い 楽しく過ごしたね
心に深く刻まれた貴女への思い
僕の心は悲しみに沈んでいるんだよ

貴女の思い出が胸にあふれている どうか戻ってきて下さい

僕の愛を裏切って
去っていってしまった貴女
僕のことなんか どうでもよくなってしまったんだね
両手を合わせて君に「おめでとう」と言おう 
愛を今まで有り難う


貴女の思い出が胸にあふれている どうか戻ってきて下さい
貴女はあの道の向こうからやってきた
僕の周りをぐるりと巡っただけで また行ってしまった
息を止めて待ち伏せた チョウタリの陰
馬鹿な女と笑ってよ 諦められず
貴男は通り過ぎた 知らん顔で
恋しくて泣く小鳥を 振り返りもしないの

想い出のあの森へは もう行けない
二人初めて出会った日には もう戻れない
心だけ盗んでいって、、、、それで終わり

息を止めて待ち伏せた チョウタリの陰

空がこんなに青いことを教えてくれた
夜がこんなに長いことも教えてくれた
心から愛しています、、、、だけど終わり


息を止めて待ち伏せた チョウタリの陰
馬鹿な女と笑ってよ 諦められず
貴男は通り過ぎた 知らん顔で
摘み取って捨てた花を 振り返りもしないの
「牛を追って迷いこんだ森」は原詞では「ガイ チャルネ バナ」と表記されていますが、音譜の数からすると、たった5文字分しか日本語を当てられないので、このまま訳して歌うことはまず無理。
ネパール語では
「牛を追って迷いこんだ森の中で二人は出会い 楽しく過ごしたね」と、これだけ沢山のことが言えるのに、この部分に相当するメロディーに当てることが出来た日本語は「想い出のあの森へは もう行けない」だけなのです。原曲ではもう一度「牛を追って……」の節を同じメロディーに合わせて繰り返すのですが、ここに「二人初めて出会った日には もう戻れない」という歌詞をのせて、「二人が出会ったのは森の中で、その森には想い出がいっぱいつまっているから、一人ではもう行きたくない」という意味の歌詞にしてみました。

特に工夫した点は、原詞の
「僕の愛を裏切って〜愛を今まで有り難う」の部分。こういう表現は何というか、陰気臭くて好きになれない。恨み言をいいながら「感謝しているよ」なんて、いったいどっちなんじゃ!と突っ込みたくなっちまうぜ。恋を知ってからの浮き立つような思いと、恋に傷ついた後のふさぎ込むような気持ちを「空の青さ」と「夜の長さ」を知った、ということで表現してみました。

原詞で「戻ってきてくれ」と何回も言っているのも、未練たらしくて嫌だ。スンダリ的解釈だと、たった一回だけ思い余って彼を待ち伏せたのだけど、彼はそんな自分に気が付いていながら、知らん顔して通り過ぎていったので、余計落ち込んだ、ということにした。この時彼はほかの友達と一緒だったのかも知れないが、赤の他人を見るような態度だったのが、非常に悲しかった、というシーンなのである。
エー カンチャー
邦題 ねえ!ダーリン(ダーリンは英語じゃねえか(;^_^)
ネパール語原詞意訳(ほぼ直訳ですが多少意訳をしています)
スンダリ的日本語詞
(実際のメロディーにのるように作っています)
女 ねえ、ダーリン 
  私に金の星を落としてくださいな
男 あの星だけじゃないよ 
  月も落としてあげましょう

女 牛飼いの仕事を済ませて早く会いに来て
  夜になると道が暗くなるから
  明るいうちにきて下さいね
男 道が暗いことが何だっていうんだい
  愛があれば何ということもない
  僕は会いに行くよ 暗やみを切り裂いて

女 ねえ、ダーリン 
  私に金の星を落としてくださいな
男 あの星だけじゃないよ 
  月も落としてあげましょう

女 ミツバチが花から花へと蜜を集めるように
  雲をむしり取って持ってきて
  その雲を合わせてアンチャル(結婚の儀式の時に必要な布)を
  作ってくださいな
男 まかせておいて 
  雲でアンチャルを作ってあげましょう
  アンチャルには贅沢な金箔も施してあげましょう


女 ねえ、ダーリン 
  私に金の星を落としてくださいな
男 あの星だけじゃないよ 
  月も落としてあげましょう

女 エー カンチャー
  空の星をとって首にかけて
男 君が望むなら月まで連れてゆくよ

女 エー カンチャー
  眠れぬ夜に恋の魔法かけて
男 君が望むなら夢まで会いにゆくよ

女 愛しいあなた 早く会いに来て
  暗くなる前に 気をつけてきて
男 心配はいらないよ 暗やみさえも
  恋に燃える瞳が照らすよ

女 エー カンチャー
  空の星をとって首にかけて
男 君が望むなら月まで連れてゆくよ

女 空の真綿を集めてきて
  糸を紡いで機を織ってあげる
男 ラ! フンチャ
  この雨が止んだらすぐ
  虹のたもとまで 君を連れていくよ

女 エー カンチャー
  空の星をとって首にかけて
男 君が望むなら月まで連れてゆくよ

女 エー カンチャー
  眠れぬ夜に恋の魔法かけて
男 君が望むなら夢まで会いにゆくよ

アルナ ラマ(故人)という民謡歌手が歌って大ヒットしたというアドニックロークギート。もう20年以上も前の歌だそうです。原曲詞の、恋人同士かわいらしいやり取りを、どのように再現するかに頭を悩ませました。
牛飼いの仕事を終わらせて、、という歌詞は、前出の「サムジャナ ラヘ」の中に出てくる「ガイ チャルネ バン」と共通していますね。
恋と牛は切っても切れない関係なのかな。
アンチャルというネパールならではの文化を直訳するのは日本語では難しいので、
雲で布を作る、というモチーフだけ使わせてもらいました。原曲では女の方が「アンチャルを用意しなくちゃねえ。(結婚してくれるんでしょうね〜)」といっているんですが、スンダリ詞では、まだ結婚の約束まではさせません。恋に恋する若い二人のかわいらしくも熱い愛の掛け合いです。原曲メロディーも編曲もとってもかわいらしいので、日本の人もきっと気に入ると思います。
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