I can't stop my love for you
by 遙か
「ホントに…いい?」
「…………はい。」
一大決心をして
やっとこさっとこ、しぼり出した問いに
小さく、掠れているけれども
しっかりとした返事が、返ってきた
ほんの少しの沈黙の後
空気が揺れる
溢れる気持ちと共に
その身体も動き出す
**********
何回も何回も、考えた。
八戒に【スキだ】と言ってもイイかと、考え抜いた。
愛の告白なんぞ、口説き文句の1つで。
本気ってコトは、一度もなかった。
まあ、今までの相手はその辺が了承済みの。
ちゃーんと、分かってる女ばっかだったから。
すっごい、軽い言葉だったんだよな。
【スキだ】と、言っておけばさ、気分イーだろ?
コトを運ぶのに、都合のイー潤滑剤だよな。
けどよ。
けどよ。まさか…さあ、その軽い筈の一言が。
こんなに重くなるコトになるなんてよ。
思いもしなかったぜ。
バカみてぇに、慎重になってる。
タイミングを図ってる。
チャンスを狙ってる。
そんな七面倒くさいコトを俺が、するなんての。
信じられねーけど、やってんだ。
―――――八戒、だから
答は、この1つだけだ。
俺は、八戒がスキでスキで、仕方ねえってコトなんだ。
八戒がしでかしたコトは。
八戒が負った身体の傷以上に、心に深い傷を作った。
一応、あの時のコトは終着している。
けど、あんな細い肩にずっしりと罪の意識が乗っかってんのが。
見てらんなくて、俺は八戒に付きっきりでいた。
言っとくが、最初は全然下心なかったからな。
じゃなきゃ、女だって分かってんのに八戒を引き取る訳ないだろ。
俺の好みは、ナイスバディのお姉ちゃん達で。
八戒は同い年だけど、女とゆーより。
15・6歳位の女の子にしか、見えなくてさ。
完全に、俺の守備範囲外だったんだからさ。
…ただ、さ。
気付いちまったんだよ。
あれ? ってな。
俺は、自分でも気付かねえうちに。
八戒を俺のテリトリーに、入れてたってコトにさ。
だから、そっから先は早かったぜ。
自覚しちまったら、大事にしてえ。守りてえ。
どこにも、やりたくねえって。
願望が、どんどんと膨らむばかりなんだよ。
もんどり打ったぜ、マジ…。
玉砕は、絶対にしたくねえ。
八戒に、俺をスキになって欲しかった。
俺だけを見て欲しくて、俺だけのモンになって欲しくて。
そればっか、考えてた。
けど、そんな。
日に日に、暴走しそうな俺を押し止めてたのは。
八戒の、痛々しい笑顔。
無理に、笑ってんのが分かる。
俺を心配させない為に笑ってんのが、分かる。
そんな笑い方しか、まだ、出来ない八戒に、
俺は、どうしても一歩が踏み出せずに…いたんだ。
**********
花喃の事は…まだまだ、上手に昇華出来ないのですけど。
少しだけ、落ち着いて考えられる様になってきました。
あんなに、苦しいだけで、どろどろしていて。
自分では、どうしようもなかったものが。
ほんの少しだけでも、落ち着く事が出来るなんて。
…不思議です。
でも、それ以上に不思議なのは…悟浄って、人でした。
こんな厄介者を拾ってくれて、面倒見てくれる…なんて。
どうして、優しくしてくれるか聞きたくて。
悟浄に何度も切り出し掛けたのですが、その度に。
口籠もるだけで、いつも聞けませんでした。
何故。
聞けないのか、分かりませんでした。
大した事では無い筈なのに、聞けなくて…聞けないでいて。
そうして、やっと、気付いたんです。
僕は悟浄を【好き】になっていたんです。
だから、恐かった。
特別扱いではない、ただの同情と知るのが恐くて。
その事実を知りたくなくて、僕は…聞けないでいたのだと。
気付いたんです。
でも、それが分かったからって、僕に何が出来ます?
悟浄の親切心に甘えているのに、これ以上の迷惑なんて…。
…掛けられないでしょう?
悟浄の周りには、綺麗で大人の女性の方々が居るのに。
僕は、同性と言っても女性らしさの欠片も無い、痩せた身体で。
悟浄の、そういった対象になれるなんて事は絶対無いのに。
無理…なのに。
そう、望んでしまう事を止められない、なんて………。
浅ましくて。
みっともなくて。
悟浄に知られたくない。
だから、黙っていようと強く決めていました。
堅く、隠し通すつもりでした。
少しでも長く、悟浄の傍に居られる為に。
**********
元々、我慢なんて出来ない悟浄が先に音を上げました。
夜のお出掛けに、気が乗らずソファで、ゴロゴロしていた悟浄に。
コーヒーを淹れて、持って来てくれた八戒の優しい笑顔に。
カップを手渡してくれた八戒の手を。
悟浄は、思わず握ってしまいました。
悟浄に、触られた事には。
八戒は、吃驚しただけで嫌ではないのですが。
突然の事に困って、固まってしまい。
悟浄は、自分の唐突さに一瞬固まりました。
綺麗な碧と真剣な紅の瞳が。
見つめ合いました。
「八戒…誰か、スキな奴って、居る?」
「え? …好きなって。」
「それとも、まだ姉ちゃんだけ?」
「ど…どうして?」
「俺、俺じゃダメか?」
「駄目って…。」
「俺、おまえのコト、スキなんだ。」
「!」
「だから、八戒。
俺のコト、スキになってくんない?」
「悟浄…。」
「今直ぐが、いーけど…待つからさ。
俺のコト、スキになって…八戒。」
拘ってること。
躊躇ってること。
挫けそうなこと。
問題は山積みたいだけど、願いは止まってくれない。
八戒が、大きくコクンと頷いたと同時に。
悟浄の歓喜の声が、大きく上がった。
―――――そう、想いは動き出す
2003.1.7 UP
☆ コメント ★
池田いづるさまに、捧げますv
1月1日に生まれたおめでたい、いづるさんへの
私からのお誕生日プレゼントです
勿論、リクエストをお伺い致しましたわv
【女の子八戒ちゃん】
はい、私達ふたり共、女の子好きです
だあい好きですv
心込めて書きましたの
どうぞ、貰ってね〜♪
モドル