ひとつに なっちゃえ!



by 遙か


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どーして、オレのモンになんねぇんだよ。
オレに、惚れてるくせに、さあ。

さっさと、オレのモンになれよ。
オレだって、惚れてんだぜ。
オマエに…さ。

ナンで、それがわかんねぇんだよ。

**********


最高僧の位は、伊達じゃなく。
それに合わせた仕事量は、なかなかのものです。
傍若無人に見えても、中身は真面目なので、仕事はきちんとこなしますし。
結構、手抜きの出来ない性格なので、いつもお忙しそうです。

そんな三蔵のところに、どんな種類に分けていいのか分からない客が。
一人、やって来ました。
間を取り次ぐ小坊主も『お客様が………』と、続きの言葉が繋げられません。
『誰なんだ?』と、三蔵には普通でも、聞いた者には超不機嫌な声で言われると。

「…しゃしゃしゃ、ごじょー様っと、おっしゃる方でっ…。」
と、どもってしまうのは仕方ありません。

『通せ』と、珍しく機嫌がよっぽど良かったのかの、即返事に。
小坊主は、一瞬びっくりしましたが、この時を逃したら大変だと。
『分かりましたっ』と、頭を一つ下げ、自分の仕事を全うする為に立ち去りました。

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「よっ!」
「………。」

薄気味悪い位の爽やかな笑顔で、悟浄が部屋に入って来ました。
そして、珍しくも三蔵も、今まで動かしていた手を止めて、煙草へと手を伸ばし一服の体勢を取ります。
勝手知ったるとばかりに、悟浄も椅子を一つ引っ張ってきて、三蔵の執務机の前にドカッと座りました。

「火、貸してな。」

ポンとライターが投げ渡され、悟浄も煙草に火を付け、2人で吸い始めました。
プカプカとした煙の中、しーーーんとした沈黙が続きます。
けれど、そんなのは長続きする訳もなく……。

「あのさ。」
「何だ?」
「相談、乗ってくんね?」

悟浄の発言内容に、三蔵の眉がそれはそれは嫌そうに顰められましたが。
そんなのは構わないとばかりに、悟浄は話し出しました。

「八戒、とのコトなんだけどさあ。」
『やっぱりな。』
 と、八戒の名前に三蔵は、内心で反応しました。

大体、悟浄がここに来る理由は一つしかないものですから。
予想はしてましたが、こうもドンピシャリだと三蔵は笑い出したいのを我慢しました。

「八戒がどうした?」
「アイツさあ…ナンであんなにお固いんかねぇ。
 この俺サマが、あーんなにもアプローチしてやってのにさあ。
 ちーーっとも、靡くどころか、気付いてねーってゆーか。」

悟浄の真剣な顔をチラっと見て、三蔵は笑いを噛み殺して煙を吐いた。

「で?」
「酔い潰して、ラブホにでも連れ込んでやろーと思ったんだけどよー。
 あいつ、ザルどころか枠でさあ〜。」

思っただけじゃなく、実行して自分の方が先に潰れたんだなと。
簡単に、三蔵には予測が出来てしまいました。

「普段はよー、あ〜んな天然ボケボケの癖してさ。
 いざってなると、鋭くってよー。」
「ふん。」

それは、悟浄の態度があからさま過ぎてバレバレだとは。
三蔵は口には、しません。
親切なお節介とは、全く無縁の玄奘三蔵様ですから、ね。

「あいつだけだぜ。
 この俺様に落ちてくんねーのってさあ。」

吸いきった煙草を灰皿に押し付け(八戒の躾の賜物)。
悟浄は、ゴンっと良い音をさせて。
三蔵の机の上に、頭を突っ伏しました。
一回、バッサリと切った髪がだいぶ伸びていて。
重要書類の上に、パサリと軽い音を立てる。
つまり、その髪が伸びた分。
関わり出した時間も、長くなっている訳で…。

「なあ。三蔵、どーしたらいい?」

相当、悟浄も煮詰まって、身動きが取れなくて凹んでいるらしく。
くぐもった声で、三蔵へとアドバイスを求めてしまいます。

「…そうだな。禁煙でもしてみたらどうだ。」
「へ?」

まさか、天地がひっくり返ろうと。
三蔵様から返事が返ってくるなんで思っていなかった悟浄は、ガバっと顔を上げ。
そっぽを向いて、煙草を吹かしている三蔵の顔をまじまじと見てしまいました。

「どこの風習だかは覚えてないが、己の好物を断って願掛けをするとうのがあるそうだ。
 藁にも縋って、試したらどうだ?」

悟浄の紅い瞳が、驚きで見開かれましたが。
今の三蔵の言葉をブツブツと反芻しているうちに。
スーっと、いつもの癖のある目付きに戻っていきました。

『…これみよがしにやれば…八戒に、俺の真剣も伝わるよな…。
 よしっ。』

方向性が決まれば、こんなトコロには用がナイとばかりに。
スクっと、悟浄は立ち上がりました。

「サンキュ。またなv」

最後の礼儀とばかりに、三蔵に一応の感謝を口にして。
悟浄は、さっさと帰って行った。
悟空と負けず劣らずの品の無い、遠離っていく足音を聞きながら。
三蔵は、つい昨日の事を思い出して、ほくそ笑んだ。


『だって、本当に馬鹿なんです…あの人。
 僕の事…腫れ物扱いばかりして。
棚の上に置いてあるお人形じゃないんですよ、僕は。
 ちゃんと生きているのに。もう死ぬ事なんて考えてないのに…。
 それをちっとも判っていないばかりか。
 世界中で、2人だけにでもならないと…僕は悟浄を選ばないと…。
 本気で、思っているんですから…。
 本当に、大馬鹿ですよ。
 そんな風にならなくたって、僕はとっくに………。』


第三者から見る、恋愛状況程。
笑えるモノはない。
本人達が、必死であれば…ある程。

鳶に油揚げを攫われた、三蔵の意趣返し。
まだまだ、当分続きそうです。

どうせ、遅かれ早かれ。
くっついてしまう2人でしょうから。
これ位の事は、ご愛敬という事で………。



2003.11.18 UP   



☆ コメント ★


kaine さまに、捧げますvv

サイトの相互リンクのお礼に
私からリクエストを頂いて書いたお話です

ただね〜、一年以上も掛けてしまいました(苦笑)
お待たせ過ぎ…(溜息)
本当に、申し訳ありません

タイトルは某曲名から、そのまま付けましたv
この詞を聴いてると
早くくっついちゃえ、悟浄と八戒(笑)
なんですよね〜♪


では、慎んで贈らせて下さいませvv




モドル