for you
by 遙か
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誰かに 何かをしてあげることは
とても 気持ちの良いこと
だって それは 好きだから
その人が好きだから してあげたいってことだから………
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「八戒。八戒。これ、ここに置けばいい?」
「はい、そこに置いて下さいね。
重かったでしょう? 悟空。」
「大丈夫。俺、力あっからvv」
「本当に、悟空は力持ちですね。
助かりました、ありがとうございます。」
「へへv」
街へ買い出しに行って、帰って来たところの母と子…もとい、八戒と悟空の会話。
三蔵の出張の為、悟浄宅に預けられて…3日目。
そんな悟空の為に、八戒は食料のストックを切らさない様に気を付けていました。
テーブルの上に、今買ってきたばかりの品物を出しながら。
八戒は悟空の頭をいい子いい子と撫でました。
白くて綺麗で、優しい八戒の手が大好きな悟空は。
褒められた事に、嬉しそうに笑いました。
「俺、何でも手伝うからさ。
次、次は何をすればいい? 八戒。」
「う〜ん。…じゃあ、この缶詰を食器棚の下の扉の中に仕舞って貰えますか?」
「OK!」
ぎっしりと詰まった缶詰の段ボールを。
悟空はひょいと持ち上げ、八戒に言われた食器棚の前に座り込み。
缶詰を仕舞い始めました。
その様子は、とっても可愛らしく微笑ましくて。
八戒も、自然と口元を綻ばせていました。
「そちらは悟空にお任せして、僕はこっちを仕舞ってしまいましょうか。」
と、生鮮品の袋を持ち上げ、冷蔵庫へと向かいました。
すると、突然、目の前に…。
「…お帰り。」
「わっ! 悟浄、驚いちゃいましたよ。
ただ今、帰りました。
お昼は食べましたか?」
「…ああ、食べた。」
いつ起きてくるのか判らない悟浄を待っていられなくて。
昼食の用意とメモ書きだけを残して、八戒は悟空と出掛けたのでした。
けれど、それが気に入らなかったらしく。
悟浄の機嫌が底冷えしているのに、八戒は直ぐ判りました。
『全く…悟空と良い勝負の子供なんですから、悟浄は。』
悟浄を見て、八戒は口にはしませんでしたが。
感の良い悟浄は、敏感にそれを察知して、更に機嫌を急降下させてしまいました。
「……八戒。」
「はい、何でしょうか?」
「…サル、いつまでいるんだよ。」
「ええっと…確か、三蔵の出張が明日までなので。
明後日に迎えに来る予定なので、悟空が居るのは明後日までですね。」
「明後日ーーーっ?!」
「はい、そうです。」
にっこり、綺麗に笑う八戒に。
冗談じゃねえと、瞬間湯沸かし器になった悟浄なのですが。
思いっ切り脱力してしまいました。
けれど、そんな悟浄に構わずに。
八戒は、テキパキと食品を仕舞い込み、お茶を淹れようと支度を始めました。
(悟空のおやつの用意含む)
その八戒の背中に、拗ねきった悟浄がべったりと貼り付きました。
「八戒〜。」
「悟浄?」
文句を言おうと、身構えたところに聞こえた悟浄のトーンの下がりきった声に。
これは、ちょっと重傷かな、っと。
右肩に乗っかっている悟浄の頭を。
悟空の時とは、明らかに違った感じで、八戒は撫で始めました。
元来、悟浄はスキンシップが大好きで。
特に、恋人の八戒に対しては。
過剰どころではなく。
母親の姿が視界に収まっていないと不安になる幼児みたいなところがありますので。
スキンシップが足りないと、途端にへなへな〜となってしまうのでした。
普段、格好付けの激しい悟浄なので。
この落差には、初め、八戒もかなり戸惑いましたが。
それだけ、自分にだけは気を許してくれている証拠と判って。
八戒は、実は大喜びでした。勿論、表には出しませんが。
「八戒〜〜。」
「はいはい、悟浄。」
背は大して変わらなくても、体型の違いから。
すっぽりと、八戒は悟浄の腕の中に収まりながら、頭を撫で続けました。
「今日は、悟浄の好きなカレーですよ。」
「ん。」
「フルーツサラダも作りますからね。好きですよね?」
「ん。」
「悟空だって、三蔵が居なくて寂しいんですから。」
「…判ってるって。」
悟浄の腕に、ぎゅうーーっと力が込められる。
頭で判っていても、感情が付いてこないのを。
何とか、宥めようとする様に。
それが、はっきりと伝わってきた八戒は。
力強い腕の中、強引に向きを変えて。
悟浄の首へと、腕を回して…。
ご褒美のキスをひとつ―――
悟空の『八戒ーっ、おやつまだーーっ!!』の声が飛んでくるまで。
悟浄へと、おくりました。
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「へたくそ。」
「悟浄だって、へたくそじゃんかっ。」
「お前より、マシだ。」
「ウソ付け。俺の方が上手いじゃんかっ。」
兄弟仲良く。
お手伝いで、カレーのじゃがいもの皮を剥くのを。
お母さんは、微笑みながら見守っていました、とさ。
2003.11.20 UP
☆ コメント ★
木染はづき さまに、捧げますvv
サイトの相互リンクのお礼に
私からリクエストを頂いて書いたお話です
はう〜
こんなにこんなに遅くなってしまい…
本当に申し訳ないです〜(汗)
でも、書くのはとっても楽しかったですv
親子3人の仲良いトコロが書けて(笑)
ん? そうすると、三蔵の配役は姑?(大笑)
では、慎んで贈らせて下さいませvv
モドル