悪戯なキス
by 遙か
**********
イタズラな kissして
何食わぬ顔 する
イジワルな 私は 子供じみてる?
**********
――コンコン、失礼しますと声が掛けられ。
――カチャリ、ドアが開けられる。
一連の動作が水の様で。
流れる様に、しなやかに。
ここ、西方軍の副官が大将の執務室へと入室しました。
すると、中には数人の部下に囲まれ。
苦虫を潰した顔をした大将が、おりました。
その様子を見つつ、副官は一礼してから。
「昨日の戦闘の事後報告書をお届けに参りました。」
透るお声で、ご自分の用件を述べました。
「済まない。少し、待っていてくれ。」
「判りました。」
そう言うと大将は部下達へ、次々と指示を与えていきます。
無駄なく的確な指示を受け、一人ずつ副官に一礼して。
部下達は退室して行きました。
「失礼致します。」
「おう、頼むな。」
最後の一人が、ドアを静かに閉めました。
「待たせて、済まなかったな。」
「いいえ。」
書類を手に副官は、大将の机の前…ではなく。
大将の座っている椅子の横へと足を進めてきて…立ち止まりました。
「お疲れ様でした、捲簾。」
「お前こそ疲れたろ、八戒。」
お互いに相手を見つめながら、優しさを込めた微笑みを浮かべました。
西方軍の、色々と賛美はありますが、美人と名高い八戒副官と。
漢の冠を尊敬と信頼を一心に集めきっている、捲簾大将が。
「はい、どうぞ。報告書です。」
「…随分と早いよな。」
「ええ、急ぎましたから。」
「まあた、そんな無理しなくたっていいのにさ。」
「無理してませんよ。」
にっこりと笑う八戒から差し出された報告書を受け取って。
捲簾は中身に目を通します。
「流石、文句の付けようのない完璧な報告書だな。」
「お褒め頂き、ありがとうございます。」
ポン、と。
承認の印を押して、捲簾は書類をポーンと机の上に投げました。
「あの…僕、報告書を提出しに行きたいんですけど?」
「敖潤んトコだろ?」
「上司の方を呼び捨てにしちゃ、駄目ですよ。」
「後で、俺が持ってとくって。」
「本当ですか?」
「本当本当。
それよりさ…。」
疑惑の目を向けてくる八戒の手を捲簾は、自分の方へと引き寄せました。
「? 何ですか、捲簾。」
「あのさ、仕事を早く終わらせたんだからさ。
これからは、恋人同士の時間ってコトv」
八戒の抗議の口が開く前に、捲簾の腕は。
八戒の腰を攫って、自分の膝の上に。
八戒の身体をあっさりと、乗せてしまいました。
「け、捲簾っ/////」
「油断大敵ってか?」
「仕方の無い大将ですね。」
「いいんだよ。副官が優秀だかさ、我が軍は。」
「何ですか、それは?」
「お前は最高だ、ってコト。」
「それは、褒めて頂いているって事ですか?」
「勿論。」
「でしたら、ご褒美が頂けるのですか?」
「ああ。沢山やるよ。」
捲簾は、八戒の細い顎を指先で掬い上げ。
どんな極上の宝石も敵わない翡翠の瞳を覗き込みました。
八戒は、至近距離で見つめられる瞳から目を離さずに。
両の腕をゆうるりと、捲簾の首へと回しました。
蔦が絡まる様な、優美な動きに。
それに応える様に、捲簾の力強い腕が八戒の身体を抱き留めました。
背へと回した、腕。
頭の後ろを支える、掌。
身体の間の距離を縮め、きつく抱き締め合いました。
「………捲簾。」
甘い吐息に。
自分を呼びながら、開かれた薄い唇に。
深く、唇を重ねる。
待っていてくれた、しっとりとした舌を絡め合う。
逃げるのを追いかけたり、差し出してくるのを掴まえたり。
戯れながら、2人はキスを交わす。
「……あっ、捲簾。……駄目、です/////」
「落としたくねえから、大人しくしててくれな。」
キスだけでは飽きたらず、軍服の中を探っていく手に。
首のところのホックを外して、鎖骨を舐めていく唇に。
八戒は、言葉だけの抵抗をしていました。
晒された喉元、軽く噛み付き所有の印を刻む。
捲簾の腕の中で、八戒は刺激に堪えようと息を詰めました。
けれど、八戒のその仕草があまりにも可愛らしく。
捲簾は、もっと先に進めようとしました。
――トントン
「済まない。こちらに八戒副官はいるか?
…何だ。…誰も居ないのか。
……仕方ない。他を探す事にしよう。」
――ガチャン
滑り込みセーフで、執務机の下に。
八戒を抱え込んだ侭、捲簾は潜り込み。
敖潤の声と気配が、完全に消えるまでジッとしていました。
「…ふぅ、危ねえなあ、敖潤の奴。」
「鍵を掛けていなかったんですか…もう。」
「スリルがあっていいだろ?」
「知りません。」
悪戯の共犯者の様に。
くすくすと笑いながら。
抱き締め合って。
2人は。
もう一度、キスを。
2003.11.22 UP
☆ コメント ★
のぞみさま&Rinne さまに、捧げますvv
サイトの相互リンクのお礼に
私からリクエストを頂いて書いたお話です
超甘々な捲八vv
よっしゃあvv
と、リクエスト頂いた時には
大喜びした自分がいました(笑)
だって、このCPがマイブームでしたものv
ただ、設定どうしようかな…と
そして、出来たのが西方軍副官の八戒さんvv
あ〜、楽しかった〜♪
では、慎んで贈らせて下さいませvv
モドル
|