My name is love
by 遙か
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君は知っているだろうか
僕がいつもここにいることを
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あ。雪ですね。
とうとう、降り出しましたね。
急いで帰らないと。
僕は持っていた買い出しの荷物を抱え直して。
足を速めました。
買い忘れた物を買いに行っただけなのに。
つい、特売品を見たら…予定していない物まで、買ってしまいました。
主夫してますねえ、僕って。
自分でも笑ってしまうのですから、きっと悟浄も笑うんでしょうね。
…想像が付くから、話すのは止めておきましょう。
悟浄との同居が、同棲生活に変わったのは。
つい、先日の事です。
男同士という不毛さを乗り越えてしまったのは、後悔していません。
他人様から奇異の目で見られても、構いません。
妖怪になった身としては、今更ですから。
それよりも、変な拘りで自分にとって大事な物を。
二度と無くしたくない、だけなんです。
八戒となった僕にとって、それが悟浄だったという事だけなんですよね。
まあ…それなりの葛藤は、ありましたよ。
恋愛は一人でするものでは、ありませんから。
想う気持ちはあっても、一方通行の可能性大と決めつけていましたから。
無類の女好きの悟浄が。
罪人で妖怪でよりも、男の僕から告白されたら困惑するのは当然で。
拒否されるでしょうね、と決めつけていました。
悟浄の傍は、居心地が良いんです。
他人なのに、血が繋がっていないのに。
上辺遣いしなくて済むのが、本当に楽なんです。
気が合うというのは、こういう事なんですね。
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「ただいま。」
玄関の外で雪を払って、中へと声を掛けて家へと入りました。
悟浄は賭場に出掛けているので、居ないのは判っていますが。
帰ってくる場所への、僕からの挨拶なんです。
灯りを付けて、ストーブを付けて。
買ってきた物を片付けて…あっ、と手を止めました。
日常の生活必需品ばかりの中に、一つだけ。
似つかわしくないリボンの掛かった、綺麗にラッピングされている小箱に。
中身は………。
浮かれているんでしょうか、僕。
まさか、僕がこんな買い物をするなんて。
一番、自分で吃驚しています。
これを。
悟浄に渡したら、悟浄は吃驚するでしょうか。
そして。
その吃驚の後に、何を思ってくれるでしょうか…。
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「じゃあな〜。」
「おう、またな〜。」
適度な儲けのトコで、切りよく上げて。
俺は、店のドアを開けた。
うわっ。雪が降っていたのか。
店に入る前は降っていなかったんで、気付かなかった。
今は降ってねえけど、地面は真っ白で。
真夜中だってのに、雪の白が眩しかった。
どうりで、寒い筈だ。
以前だったら、回れ右して店の中へさっさと戻って。
そのまんま、一晩夜を明かしていたよなあ。
俺は上着の襟を立て、首を竦めた。
手をポケットの中に突っ込んで、外へと――雪の道を歩き始めた。
キーーーンとした寒さが、纏わりついてくる。
夜のせいもあって、吐く息も真っ白だ。
俺は、雪で足を滑らせないように慎重に、一歩一歩。
それでも、速度を速めて家へと向かった。
八戒が、俺を待っている家に。
先日、同居生活を新婚生活へと。
やっとの思いで、変えたばっか。
男相手に下心なんか起きるワケねえと、居候させといた相手に。
いつの間にか…惚れていたのは、吃驚だった。
何もかも、正反対のようで。
肝心なトコが、ピッタリと合う八戒。
シスコンのアイツが、他人の俺を見てくれるなんてよ。
思っても…みなかった。
諦めてはいたが。
アイツが少しずつでも、俺に笑ってくれんのが嬉しくてさ。
手に入らないんだから、このままでいいと。
自分に言い聞かせてきた。
それが、両想いだって判ったのが、つい最近。
勿論、本当にいいのかと戸惑ったが。
嬉しさの方が大きくて、俺は八戒を抱き締めて。
kissをした。
…即倒しは、何とか押し留まったけどな。
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家の灯りが見えて。
俺はダッシュをかけて、家の中に飛び込んだ。
明るさと温かさと。
八戒の『お帰りなさい』が、俺を迎えてくれる。
八戒が細々と俺の世話を焼いてくれるのに。
擽ったさを感じながら。
夜食の用意が整うまで、椅子に座ってると。
テーブルの上に置いてある、小さな箱に気が付いた。
ひょいと、持ち上げると。
軽くて…甘い匂いがふわっとした。
もしかして…これって…。
「ご、悟浄。あ、あの、それは…。」
振り返ると。
その場に固まっていた八戒に、俺は確信が持てた。
「―――俺に、だよな?」
「…はい。」
コクンと頷いた八戒から、目が離せなくなり。
俺も困った。胸が嬉しさで一杯で動けなくて。
至上の幸福
雪降る夜のハッピーバレンタイン―――
2004.2.11 UP
☆ コメント ★
夜香さまに捧げますv
これは今年のお正月に頂いた
年賀イラストのお礼なのですよv
(思い出した? 夜香さん・笑)
ふわふわとした可愛らしいお話が希望v
との事でしたので、こんな感じにしてみました
気に入って頂ければ、もうそれだけで嬉しいです
色々とお世話になっています
今年も宜しくお願いしますねv
では、慎んで贈らせて頂きますvv
モドル