炬 燵



by 遙か



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外は雨が、しんしんと
部屋の中はストーブの上の薬缶からの湯気で、ほかほかと
そして
炬燵に足を突っ込んで、皆でぬくぬくと――

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蜜柑の皮に、団子の串。
それから、焼き鳥の串に。
中身が空っぽの横倒しの…数本のお銚子がゴーロゴロ。
箸置きから、外れたトコにあるバーラバラのお箸。
山積みに重ねてある、汚れたお皿…。

現在の、炬燵の上の状況です。

そして…東西南北に一人ずつ。
ゴロリンと、寝っ転がっていました。


ここは、沙家の和室(…あったのか?)。
座布団を枕にして、4人――三蔵・悟空・悟浄・八戒が。
それはそれは、お行儀悪く横になっていました。

特別な日でも、記念日でもなく。
ただ、偶然。都合が良かった日の事で。
三蔵が土産と称して、悟空に持たせてお酒を持参して。
悟浄も文句を言いつつ、とっときの酒をどっからか出してきて。
八戒が料理の腕を奮うという。
ワンパターンコースの、宴会。

話題は、しっちゃかめっちゃか。
あーだ、こーだ、と。
あんな事があった。
そう言えば、こーいう事も。
愚痴もあったり、自慢もあったり。
食べて呑んで、仲良く沈没。
ウトウト、フワフワと、うたた寝中。


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………う、ん………あれ?
僕……どうしたんですか、ねぇ………。
ああ、いつの間にか眠っちゃって、いたんですね。
余りにも、気持ち良くて。
まだ、目を開けなくても、いいですよね。
このままで、まだ、いたいです。
身体も気持ちも起きたくないって、言ってますし。

…ふぅ、何かとてもリラックスしてます。
うたた寝は、風邪を引く危険性もありますけど。
部屋の中は温かいし、大丈夫でしょう。
――あ。炬燵のスイッチは切っておいた方が、いいですよね――パチン。

もう少しだけ、このままでいて…。

「……はっかい。」

え? 悟浄の僕を呼ぶ声に思わず目を開けたら・
…び、吃驚しました。
悟浄の顔のアップに。
こんな至近距離に居たなんて…。

本当、僕って悟浄に気を許しているんですね。
…そう、ですね。
こんな機会は滅多にありませんから、マジマジと見つめてしまいましょう。

端正で、男らしい、無防備な悟浄の寝顔を。


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ふわんとした、甘い香りに。
鼻を擽るって感じで、目を覚ましたら。
目の前で、八戒が眠っていた。

―――んー、あぁ、眠っちまってたのか。

酒呑んで、八戒の手料理食って、馬鹿騒ぎした後に。
見えねえけど、炬燵の向こう側からサルのイビキが聞こえてくるな。
三蔵サマの歯軋りも…ストレス溜まってんじゃねーか?

寒くはねえな。部屋は暖まってるし。
八戒が風邪引く心配はないな。
ん。だったらいいか。
慌てて動かなくても、さ。

…可愛いなあ。八戒の寝顔。
貼り付いた笑みも、毒舌も吐かねえ。
ただ、眠っているだけの顔。

最近は、悪夢見て魘されねえしな。
ちょっと、安心ってか。
クウクウと、穏やかな八戒の寝息にホッとする。

この眠りを守ってやりてえと、心底思う。
こんな風に思っちまう自分に、吃驚してるが。
それ以上に、八戒が愛しくてしょーがねえ。

愛なんて、未だに判んねえけどよ。
八戒が俺にとって、大切だって事ははっきりと判る。
一日毎に、スキになってんだよ。
俺は八戒のコトが。

口煩せえトコも、脆くて崩れやすいトコも。
笑ってくれるコトも、心配して怒ってくれるトコも。

――それこそ、全部。

俺は、お前がスキだと言えるよ……八戒。


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物音を極力立てない様に、悟浄がゴソゴソと動き出し。
八戒の小さな頭を細心の注意を払って。
いつもの様に、腕枕をする。

そっと、八戒の前髪を払って小さくkissをする。
コツンと、額を触れ合わせて悟浄は目を閉じた。

――柔らかな、眠りの中へと………。



2004.2.17 UP   



☆ コメント ★


あゆりんさまに捧げますv

超・遅刻しまくりの相互リンクのお礼です…ιι

『4人で炬燵』

これからあゆりんさんからのリクエストでした
まあ、坊主と猿が蔑ろにされるのは判っていたと思いますが
その通りになっちゃったv えへへvv

いつもお世話になっています
(某所でもね・笑)
今年も宜しくお願いしますねv


では、慎んで贈らせて頂きますvv



モドル