リターン・マッチ
by 遙か
絶対にやってやる。
何がって、ナニをだ。
俺様のプライドを思いっきり引っ掻いたくせに。
ケロリとしている顔の八戒を。
絶対。
元の大きさに戻る前にやってやる。
じゃないと、意味がないからな。
大体、八戒のヤツ。
俺のコトを甘く見てる傾向がある。
今って訳じゃなく。
そうだ。
前々から、薄々、そんなカンジしてたぞ。
よくよく、考えると……。
いつもいつもと、飄々として。
【恋人同士】ってのに、肝心なトコはのらりくらりで。
…はぐらかされて、きてる…よな。
むかっ。
今まで、思い付かなかった分。
今、余計にむかついたぞ。
……………。
……………。
……………だったら、そう。
そうだよな。
八戒に、ちゃんと、それを思い知らせれば、イイってコトだよな。
……………うん。
どっちが上で。
どっちが下かを、さ。
悟浄が、ある朝。
突然、悟空と同じ位になって多少は驚きましたが。
別に僕に実害がある訳ではないので。
放っておいたら、一週間たってしまいました…ねえ。
う…ん、どうしましょうか。
三蔵は別に何も言いませんし。
悟空は同い年の友達が出来たって感じで、喜んでいるみたいですし。
だったら、別にこのままでもいい…ですよね。
それに。
僕も、楽しんでいますしね。
悟浄には内緒ですけど、ね。
だって、あしらうのが楽なんですもの。
以前の、あのでかい図体をかわすのって結構大変だったんですよ。
べたべたされるのは嫌いでは、ありませんが。
TPOっていうものを考えて欲しかったですもの。
三蔵と悟空の前では、特に。
わざと、やっている時なんか手に負えません。
しかも、その後の三蔵の不機嫌さや。
悟空とおやつの取り合いをするみたいに、僕を間に挟んでの大騒ぎなど。
悟浄、一人で背負ってくれるのならば、何も言いませんが。
どうしても、僕の事を道連れにするんですよね。
『俺達、一心同体じゃん。』
と、いけしゃあしゃあと言われる度。
その顔面に何度、パンチを喰らわせた事か。
それでも、又、再び。
同じ愚行を繰り返してくるのですから。
良い根性を持ってるって、いうか。
意地汚い根性の持ち主というか。
呆れるばかりでしたもの。
まあ、悟浄は今の姿に相当不満らしく。
あれこれ言ってきますが。
僕ではどうしようも出来ませんし。
後は、神様にお任せするしかないんでしょうね。
ねえ、悟浄?
とにかく、隙のないヤツだから。
一番、無防備な処を狙うのが。
一番の突破口だよな。
但し、朝駆けはパス。
寝てるからって、頭が呆けてるからって。
以前、思って実行したら、超・痛い目にあった……。
何しろ、猫が被れていないから。
一切の手加減なし。
あん時、後ろに捻られた腕の痛さは今でも忘れないぞ。
――と、いうコトでえ。
俺が狙うコトに決めたのは、八戒の風呂上がり。
気分的に緩んでいるし。
何より、服のガードも薄くなってるもんな。
よし。
思い立ったが吉日。
今晩、即実行してやる。
覚悟してろよ、八戒。
やっぱり。
これって、油断ですかねえ。
お風呂上がりの処を思いっきり、押し倒されました。
悟浄に。
まあ、ベッドの上にですから。
倒された時、痛くはありませんでしたから、いいですけど。
そのまんま、直ぐさま、キスというのは何でしょうか。
少し、強引過ぎると思いますよ、悟浄。
「いいから、もう、黙ってろ。
これ以上、余計なチャチャ入れんな。」
はいはい。
少し、焦らしすぎましたか。
いつになく真剣な紅い目が、僕を見つめてくる。
子供じゃない、男の目で。
いつもいつも、僕はそんな悟浄の目を見てきている。
そして、知っている。
だから、悟浄の頬に手を伸ばす。
「好きですよ、悟浄。
貴方だってら、何でも。」
「そんなの知ってるさ。」
「随分、自信家さんですね。
外れていたら、どうするつもりなんですか。」
「俺様に外れなんてねえの。」
「はい、じゃあ…。」
「じゃあ――何だ?」
「当たりのご褒美を上げましょうね――って、事ですよ。」
悟浄の表情が、一瞬吃驚してから。
直ぐに、見慣れた笑い顔へと変化する。
僕を翻弄する前に良く見せる小憎たらしい程、良い顔で。
悟浄が笑う。
いつもより、細い悟浄の首に腕を回して。
僕は、始まりのキスを悟浄へとねだった。
久々に触れた八戒の躯は、相も変わらず敏感で。
その敏感さは、俺が引き出したもんだから。
より、夢中になるのを止められなかった。
いつもの手順。
いつも通りの愛撫。
それは悟浄を良く知っている僕の躯は。
確かに、しっかりと反応していくのだけど。
やっぱり…。
どうも、しっくりとはこなくて。
ちょっと、って感じなんです。
だって、いつもだったら。
悟浄の腕に抱き竦められているはずなのに。
今、どちらかというと、しがみつかれている感じだし。
声…悟浄の低い、あの独特の低いトーンが好きなんですよ、僕。
それが、悟空と大して変わらないっていうのは……。
躯はそれなりの満足は得ました。
確かに、12歳の時にはもうすでに経験していたと自慢するだけあって。
確かに、上手いです。
けど……やっぱり……。
「悟浄。」
「――ん、何だ、八戒?」
いつもだったら、情事の後は、一服なんだが。
八戒がこの姿になってから、酒も煙草も禁止にして。
しっかりと、見張られているから、手元になくて。
多少なりの不満はあったが。
まあ、八戒と出来たらかいいやと、上機嫌でいたんだが。
「明日、三蔵に頼んで観世音菩薩様に貴方を戻す様に言いましょう。」
「へ、何だって?」
「だから、今言った通りです。」
「何、じゃあ、アイツが俺を戻せるのか。」
「――戻して貰います。
このままのサイズじゃ、嫌ですから、僕が。
では、シャワー浴びて来ますね。」
スルリと、ベッドから抜け出し。
俺が脱がしたシャツを軽く拾い上げ、八戒はバスルームへと入って行く。
それを見送った後。
俺はさっきの八戒の言葉を反芻してみた。
……………。
それって、つまり………。
八戒、今の俺のサイズじゃ満足が出来なかったってコトかっ?!
ポスン。
深く深く、傷ついた俺は。
枕から顔を上げる気力なんか、どこに探してもありゃしなかった。
躯は超・満足してんのに。
俺の繊細な心は、底なしの蟻地獄に放り込まれた。
八戒っ!!
次だっ、次っ!!!
このサイズでも、ぐうの音も出ない様にしてやるっ。
俺のプライドを傷つけた罪は、重いからなっ。
きっちり、躯で返してもらおうじゃないかっ。
いいかっ、覚悟なんてする前にしてやっからなっ。
覚悟しとけよっ!!!!
2001.5.20 UP
★ コメント ★
このお話は、北方の御三人に捧げます。
♪柾紀さん へ
笑って頂いて有難う。
ただ、私じゃもうリベンジへのネタは思い付きませんので。
良い打開策が見つかりましたら、是非、お知らせ下さいませ。
♪玲さん へ
そうですよねえ。これ以上、どうにもなりませんよねえ・笑。
悟浄が可哀想・可哀想と2人で言い続けましたが。
更に、続いた5歳児ネタ・爆笑。幼児虐待ネタ。
やっぱ、これは皆さんにも見て頂いた方がイイですよね。えへへ。
♪希実さん へ
あれから、こーゆーのを打ち込んでおりました。
如何なモンでしょうか、ね。
私はもうリベンジは諦めなさいと、悟浄に言ってやりたいです・笑。
ご意見・ご希望をお聞かせ下さいませませ。
書けば書くほど。
私…悟浄への同情の涙を禁じ得ませんの。
ホーント、八戒関係に関しては、悟浄ってば諦め悪くてねえ。
尻に引かれているのですから、これ以上はもう…無理だって。
イイ加減、悟ってくれないかなあ。溜息。
で、こんなのを用意してみました・笑。
もお、これ以上、悟浄の可哀想を見ていられないわっ。
と、いう方は 表に戻る へお戻り下さい。
よし、とことん、悟浄の可哀想を見届けてあげるわっ。
と、いう方は 次へ進む にお進み下さい。
では、お選び頂けましたね。
どうぞ、行ってらっしゃませ〜♪