【 大キライっの、大スキ 】
by 遙か
あ、そういえば。
悟浄の煙草、さっきので最後でした。
急いで、買って来ないと…。
…直ぐだから、一人でいいですね。
「済みません、悟空。」
「あ、何、八戒?」
「ちょっと、買い物に行って来ますね。」
「俺も付いてこーか?」
「直ぐですから、大丈夫です。」
「うん、分かった。」
これで、大丈夫。
ちゃんと、言い置いた事に安心して。
僕は暮れ掛かった街の中へ買い物をしに出掛けました。
「サールー、八戒は?」
八戒の姿を探していたトコで、サルを見つけて。
何気に聞いた答えに、俺は銜えてた煙草をぶっと吹き出した。
「サルってゆーなっ、エロガッパっ。買い物だよ、買い物っ。」
「何、買い物って外かっ?」
「決まってんだろ。」
「まさか、一人でかっ?」
「ああ、うん、そーだけど…。」
「あんの、じゃじゃ馬っ。」
どーして、俺の言い付けが聞けねーんだ。
八戒が女化してから、身体は少女体型になっちまって。
外見は、可憐な美少女になってるもんだから。
男ん時より、危険度がUPしてるてゆーのに。
本人、全くその自覚ナシ。
だから、俺が口を酸っぱくして、何回も言い聞かせてきてるちゅーに。
どーして、人の心配を袖に振るんだか。
あーもー、あの馬鹿っ。
「悟浄、どこ行くんだ?」
「八戒の迎えだよっ。」
悟空に言い残して、俺は暮れてしまった街へと飛び出した。
ああ、思ったより時間が掛かってしまいました。
丁度、缶詰の安売りがあったものだから。
つい、買ってしまいました。
でも…早く、帰らないと…悟浄の怒っている顔が浮かびます。
以前から、僕に対して過保護を隠そうともしなかった悟浄ですが。
それが、最近、更に過剰なんですよね。……この身体になってから、特に。
そんなに心配しなくてもいいと思うのですが、ちっとも僕の意見は聞いてくれなくて。
もお、頭ごなしに直ぐ怒るんですもの。
心配掛けてるつもりじゃないのに…あれするな、これするなって。
子供扱いしないで下さいって言うと、自覚が足りないって……又、怒るし。
いい機会です。少し、心配すればいいんです。
…そう、思ってみても、僕の足は早くなってしまいます。
早く、帰りましょう。悟浄の心配顔を見る為に。
一気に街ん中を走って来て、八戒を見つける為に必死こいていた俺の視線の先に。
その八戒を見つけた瞬間。
俺の頭ん中に、ある考えがぶわっと浮かんだ。
いっくら口で言っても分からないヤツには。
絶対にお仕置きが、必要だっ、てな。
今が無事だって、この先何があっか分かんねえだろ。
それを八戒自身に、分からせちゃる。
俺は、直ぐ近くの路地に身を隠し、息を潜め、カウントを取る。
八戒を近づいて来るのを。
5、4、3、2、1、よしっ!
八戒の後ろから。
手を伸ばして、小さい口を塞ぐ。
細いウエストを抱き込んで、俺へと引き寄せた――。
なっ、何っ?
何が起きたのか、何がなんだか……。
重力が狂った様な感じがして、気が付くと。
僕の身体は、完全に拘束されていました。
後ろからの、2本の手で。
う…動け、ない……。
い、いやっ、だっ!
は、離してっ、下さいっ!!
逃げようと、力を入れても。
その力が巧く入らなくて、僕を掴まえている力の方が強まって。
嫌悪感が、湧き上がる。
僕は、悟浄以外に、触られたくないっ。
「はあっかいv」
えっ?
「俺だよ、俺。
ほおら、怖かったろ?
俺の言い付け守らないと、こーゆー目に遭うだぞ。
よおく、分かったろ? な、これに懲りたら…いってえっ!!!」
聞き慣れた声に後ろを見ると、悟浄で。
笑っている悟浄が居て。
安心はしたけど…こんな、こんな、こんな事って。
僕は持っていた荷物(缶詰入り)を悟浄の足元に。
全部落っことして、悟浄の手が緩んだ瞬間に。
その場から、走り出しました……。
「は、八戒っ!!」
藻掻いて逃げをうつ八戒が、あんまりにも可愛くて。
つい、思ったより力を込めて、抱き締めて。
俺だって正体をばらした時。
振り返った八戒の瞳は、大きく見開いてて、少し青褪めていた。
それも、可愛いモンだから、いつも通りの説教を始めたら。
持ってた荷物を俺にぶつけて、逃げてった。
やべえ。
やりすぎたか。
俺は慌てて、追っかけた。
はあはあ。ぜーぜー。
な、なんとか、追いついた…宿の部屋の中に、八戒が逃げ込む寸前に追い付いて。
八戒を丸ごと抱き込んで、部屋へと入った。
「離して下さいっ。僕に触らないでっ。」
「ごめん、ごめんっ、八戒っ。俺が悪かったっ。」
「知りませんっ、悟浄なんて、知りませんっ。離して下さいっ。」
「ごめん、八戒、ごめんっ。」
暫く、これの押し問答だったが。
八戒を腕から離さず、抱き締めて、髪の毛に、頬に。
何度も何度もキスをして。
何度も何度もごめんを繰り返して。
やっと、八戒が力を抜いてくれた。
「俺が悪かった。」
「怖かったんです、本当に…。」
「ごめん。」
「僕…。」
「ん?」
「悟浄以外に触られるの、厭です。
死にたい程…厭、でした……。」
「ごめん、八戒。」
八戒の告白に、俺は八戒の頬に手をあて、ゆっくりと持ち上げて。
静かに、そっと、唇を重ねた。
悟浄の背中に、手を伸ばしたくて…伸ばしました。
堅い肩、広い背中、乾いた肌。
とても…とても、安心します。
僕が、男でも女でも、悟浄は構わないと言ってくれて。
その逞しい腕の中に、僕を優しく包んでくれる。
僕も構いません。
こうして、悟浄に抱かれていると、何も考えられなくなります。
ただ…好きという気持ちだけ。
それだけが、身体の中に広がって。
悟浄を素直に受け入れられる。
「はっかい、平気、か?」
「…え、ええ。」
膝が立てられ、脚が開かれ、僕の上に悟浄の重みが掛かってきて。
ゆっくりと、悟浄の指に解させた…オンナノコノブブン…に。
悟浄が慎重に、進んでくる。僕を傷つけないようにって。
ひどい圧迫感と軋みを訴えてくる、慣れない身体。
でも、心が悟浄で満たされてしまうから。
僕は幸せで、それだけで、涙が零れてしまうんです。
「だい、好き…です、ごじょ…お。」
「ああ、好きだ……はっか、い。」
抱き締めて、抱き返して…僕は、そのまま眠りへと落ちて行きました。
悟浄に――心を寄せて――。
2001.8.30 UP
☆ コメント ★
あらいぐま倶楽部の夏生さんに捧げます。
夏生さーん、本当に本当に、遅くなってごめんなさい…ι
ウチのサイトの5555番のキリリクです。
【女の子】で【裏仕様】とのことでしたが…あまり、クリア出来てなくて。
二重に、ごめんなさーい(>o<)
でも、でも、良かったら貰ってねv へへ。
夏生さんの為に書きましたので、例えへっぽこでも…遠い目。
一応、返品は可能ですので、その時は遠慮なくどうぞ。はは。
では、お目汚し失礼致しました〜♪
おまけ行き