Flight Plan4
こんな設定で飛んでみました −もう少しリアルに旅客機を飛ばす
 keyword:FS2004,FlightSimulatior,解説,フライトプランナー,SID,デパーチャー,トランジッション,STAR,アライバル

前章では関空→福岡を飛ぶのにほぼ直線ルートを設定しましたが、もう少しリアルなルートを設定してみましょう。色々調べてみると、空港から離陸する際の出発ルートや、途中の航路、着陸する際の進入ルートなどは国土交通省によってきめ細かく決められていることが分かります(というか、最近調べました(^^;)。FSではあいにく国交省のデータがきちんと反映されているわけでは無いようですが、ちょうどATCの指示が実在の航路になるべく重なるようにフライトプランを作成することはある程度可能です。

SID(デパーチャーとトランジッション)
フライトプランの例を紹介する前に、いくつか用語の説明しておく事があります。ちょっと座学になってしまいますが、しばしお付き合いを。

まず一つ目はSIDと呼ばれる出発ルートについてです。これは空港ごとに決められている「滑走路を離陸したらどっちに曲がってどっちの方向に飛び立っていくか」を定めたもので、正確には「Standard Instlment Departure」、日本語訳は「標準計器出発方式」と言います。使用する滑走路、目的地の方角によっていくつかのパターンが用意されており、本来はIFRのクリアランスデリバリーで承認(復唱確認)されるものです(FSでは高度のみ指示がでますね)。

SIDは2つの部分から成り立っており、離陸直後のルート(転進パターン)を示す「デパーチャー」と、おおよその進路が定まったのちに主要航路に乗るための「トランジッション」に分かれます。実例を示したほうが分かりやすいと思うので下の図を見てください。例えば関西空港の場合、西方面に飛び立つ「MAIKO2デパーチャー」や、南方向に飛び立つ「TOMO2デパーチャー」などがあり(他にも数パターンあります)、「MAIKO2デパーチャー」から主要航路に乗るためのトランジッションとして「SOUJAトランジッション」や「WASHUトランジッション」などがあります。(*手元のデータが古いようで、現在の関空から西方向への出発経路はこれとは違っているみたいです。また、デパーチャーでそのまま航路に乗れたり直行ルートをとる場合にはトランジッションは指定されないみたいです。)

   
   離陸後左旋回してSKEの295ラジアルでMAIKOインターセクションへ
   
   MAIKOからSTEを経由してWASYUインターセクションへ
ジェットルート
航路のことです。これはFSのフライトプランナー上でも表示される(「J」アイコンで表示)ので、特に説明は要らないでしょう。ただ、巡航高度は西行きは偶数(FL240など)、東行きは奇数(FL310など)と決まっていることはFSの画面だけでは分からないですね。
STAR(アライバル)
3つ目はSTARと呼ばれる到着ルートです。これも空港ごとに決められている「どこからどうやって滑走路に向かうか」を定めたもので、正確には「Standard Terminal Arrival Route」、日本語訳は「標準到着経路」と言います。福岡空港を例に出すと、東からやってくる「OKINO-EASTアライバル」や西からやってくる「OKINO-WESTアライバル」などがあります。*FSでは進入は定められたルートよりもベクターに従うことになりますが、実際の管制もベクター優先なのか、ルートに沿ってベクターするのかよく分かりません。
   
   玄海灘を東から進入しOKINOで左旋回、福岡RWY16へ
これらの情報を入手するには
とまあ、旅客機で飛ぶにはいろいろと決まり事があるわけですが、こうした「定められたもの」はどうやって知ることができるのでしょうか?

こうした情報はチャート図(いわゆる航空地図です)とよばれるものに記載されており、本職のパイロットであればしかるべき所が発行する高価な専門資料を取り寄せることになりますが、専門でなくても趣味レベルであれば割と簡単に入手できます。例えば、飛行機ファン向けの雑誌の付録についていたり、簡単に取り纏めた本として刊行されているものもあります。もちろんあくまでホビー書として出されているので、実際のデータに精密に忠実であるか、最新情報であるかは保証の限りではないですが、FSで遊ぶならこれらで十分でしょう(言うまでも無いですが、ここで説明している内容も実際と同じかどうかは全く保証しません(^^;)。さしあたり「イカロス出版」から出ている「出発進入経路マップ」があればこれ一冊で日本のほとんどの空港について知ることができます。2000年発行でちょっと古いのが珠に傷ですけど。あとはネットで探すなどしてみてください。

フライトプランの設定例
さあ、前置きが長くなりました。では実際の航路により近い形でプライトプランを立ててみましょう。路線は今回も関空→福岡です。関空RWY6からSIDはMAIKO2デパーチャーWASHUトランジッション、FL240で巡航し、福岡STARはOKINO-EASTアライバルでRWY16に着陸します。

この設定にうまくFSのATCが邪魔しないようにフライトプランを組むと下記のようになります。これで飛ぶと、SIDは既定どおり飛べばATCから余計な旋回指示はきませんし、もし指示が来たとしてもそれは若干タイミングがずれてるだけなので無視して大丈夫です。ただし高度については指示に従います。トランジッション以降も同様です。福岡への進入についてはベクター(誘導指示)が入って、やや本来のルートから逸れますが、ここは従わざるを得ない(従わないと着陸許可が出ません(^^;)のでおおめに見ることにしましょう。

針路変更などはNav1、Nav2、ADFを駆使してVORだけを頼りにやってみてください。上手くやればGPSを見なくてもコース通りに飛べるはずですよ。操縦に加えてNav無線設定も入ると結構忙しくて副操縦士が欲しくなりますが(これでCOM無線設定が自動じゃなかったらとても一人じゃ追いつかないですね(^^;)、がんばって。
 

     
   フライトプランナーでルート作成
FSと実機のはざまで
今回の例は、実際には「FSのATCが実在ルートに近くなるようにフライトプランを設定した」というよりも、「FSのATCと重なるような実在ルートを選んでフライトプランを設定した」というのが正直なところです。例えばここではWASHUトランジッションとしましたが、SOUJAトランジッションでV29を飛ぶように設定した場合(こちらの方がルートとしてはスマートなんですが)、SIDについては問題ないんですが、終盤のベクターの入り方が一度南に振られてすぐまた西に向きなおすといった感じになってちょっといまいちです。また、現実の関空→福岡便の飛行ルートを確認したわけでもないですし、確認できたとしてもこうした理由でその通りにシミュレートできるとは限りません。まあ、そもそもルートを確認するのも難しいですけどね(^^; 方法としては無線機を持って空港に行って管制通信を聞けば、クリアランスデリバリーでSIDは交信に出てきますから、それとチャート図を見比べて飛んでく先を見届けるって感じでしょうか。あるいは「実際に乗ってみる」ってのが手っ取り早いですかね(笑) いずれにしてもここでのお話はあくまで雰囲気ってことで。でもまたそれっぽいフライトプランを作れたら紹介しますね。
フライトプランとNAV操作事例
(関西空港MAIKO2dep.-WASHUtra.-V28-福岡空港OKINO_EASTarr.-ILS16
 FL24000ft B-737)*基本操縦は「FlightPlan3」参照
     

<離陸前>
NAV1を信太VOR(SKE)=112.30にセット
NAV1STBYを小豆VOR(STE)=114.40にセット
NAV2を関空VOR(KNE)=111.80にセット
NAV2STBYを小豆VOR(STE)=114.40にセット
A/P HED=157(滑走路方位)にセット
NAV1方位(COURSE)=295にセット

<離陸後>
関空VOR3.7DME(Nav2距離表示で確認)まで滑走路方位を維持し、
その後左旋回して信太VOR(SKE)295ラジアル(Nav1で確認)をインターセプト
(ちょうど同じタイミングでATCからも左旋回指示が来ます)

Nav2を小豆VOR(STE)=114.40に切り替え、NAV2方位針が267に近づくまでHED維持
(区間距離が載ってる航空図があればVORからの距離で判断)

Nav2方位針が276に近づく=小豆096インバウンドとの交差点=MAIKOインターセクションが近づいたら、Nav1も小豆VOR(STE)に切り替えCOURSE=096にセット、左旋回でインターセプト(HEDは276)

小豆VOR(STE)上空で右旋回、COURSE=277にセットしラジアル上を維持、Nav2を岡山VOR(OKC)=115.90に切り替え、Nav1STBYにも岡山VORを入れてておく

Nav2方位針が256に近づく=岡山VOR256ラジアルとの交差点=WASHUインターセクションが近づいたら、Nav1も岡山VOR(OKC)=115.90に切り替えCOURSE=256にセット、左旋回でインターセプト

航路V28上を巡航、Nav2を玖珂VOR(IWC)=114.30にセット、
近づいたらNav1もこれにセット

玖珂VOR(IWC)上空で右旋回、COURSE=284にセットしラジアル上を維持
(ちょうど同じタイミングでATCからも右旋回と降下指示が来ます)

しばらくすると左旋回ベクターが入るので以降はATCの指示方位へ。福岡空港STARによるとOKINOインターセクションを12000ft以上で通過の制限があり(実際の航空機もそうしているか不明)。12000ft以上で通過するにはV/S=1000程度の緩めの降下が必要

Nav1を福岡ILS=111.70、COURSE=157にセットしておく

OKINOインターセクション(ATCのベクターではちょっと外れる)を12000ftで通過。この後、STARによるとSANDYインターセクションを3000ft以上という制限があるが、V/S=1500程度に降下率を大きくしないと3000ft付近まで降りきれないので注意

引き続きベクターに従い、最終ベクターの左旋回後にILSに乗るためAPPスイッチON

SANDYインターセクションを3000ft以上で通過

福岡RWY16へILSアプローチ

着陸
 


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