1998年10月6日

京都市長

桝本頼兼 様

 

第一勧業銀行京都支店建替計画にかかる

「行為の承認」についての私たちの見解

 

京都の近代建築を考える会

代表 蓮佛 亨

第一勧業銀行京都支店の建替計画が報じられため、当会では8月25日付けで、第一勧業銀行京都支店に対し「現地での全面保存」と「当建物の有効な活用」を願う要望書を、また京都市長には、当該建物が「三条界わい景観整備地区」内に存在するため、それらにかかる一層の指薄を求める要望書を提由しました。

しかしその後、既に京都市がが第一勧業銀行の建替計画について承認していることを知り、当会で情報開示請求を行ったところ、公文書「三条界わい景観整備地区内における行為の承認について」が開示されました。

承認された計画は、現建物をすぺで撤去したうえ、新しい建物を現状に模した姿で建設するというものでありました。

当会として今回の承認内容について以下のような見解を公表します。

 

1.建物め価値そしてこの建物がもつ社会的影響

京部の明治期に建てられた多くの建物は文化財に指定(登録)され、美の財産として人々の間に生き続けています。明治39年竣工の当建物ば所有者の意向もあり、調査等もなく文化財指定(登録)に至っていませんが、90年余この建物をこの地で当初の目的を果たしながら便用し続けてこられたことに率直に敬意を表したいと思います。既に、専門家もこの建物に対して「近代建築史上重要な価値がある」との昆解を明かにされていますが、今、例えこの建物に文化財の位置が無くても、この地にあり続けてきたこの建物が市民の生活に溶け込み、私たちはそこに歴史的文化的価値があることを強く感しています。関係著において、この建物が既に社会的に深い影響を及ぽしていることを再度認融していただきたいと願わずにはおられません。

 

2.複製であることの弊害

今回の計画内容は、現建物を解体撤去した後に、複製建物を建設するものであり、歴丈的文化的な存在とば無縁なものです。私たちは、京部の近代を表出すろ本物の建物にこそ、歴史的文化的な価値が存在し、それこそが後世に伝えられるにふさわしいものであると考えています。

建物の解体撤去は建物のみならず、近代京部の歴史や文化などすぺてを失うことですが、そこにとどまらず、複製建物の出現は私たちに誤った認織すらもたらすことになるでしょう。今回承認された内容は、その場的な軽率な計画として指摘せざるを得ません。

 

3.京部三条通りの品格の低下

京都市が将来の世代に継承することを目指した「三条通界わい景観整備地区」において、その景観を形成する重要なエレメントとしての当建物が複製にとってかわる今回の計画は、近代京都を代表する地区の魅力を減ずることになることは自明であり、単に魅力を減ずることにとどまらず、地区全体の質の低下に寄与することになるのではないでしょうか。

 

4.叡智を傾けた保存活用策への期待

歴史的文化的価値のある建物が「建物の老朽化・機能低下」という現状から、とのように再生をはかるのかという課題は、当建物に限らず価値ある近代建築物の保存活用におげる課題であり、全国でも様々な試みがなされています。また技術の蓄積もあります。歴史的文化的価値のある建物についての、あらたな価値観の創出が求められているのではないでしょうか。

そのためにも京都市は関係者の叡智を集め、名実共に後世に送り届けるにふさわしい「三条通界わい景観整捕地区」を指導をされることを望んで止みません。